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宗教界で準強制わいせつ…ウソ発見器でバレた50代師僧が尼僧に断続的にした絶対服従の卑劣の極み

プレジデントオンライン / 2024年10月11日 20時15分

会見する本門佛立宗の尼僧のAさん - 撮影=鵜飼秀徳

「加害者(50代住職)に対して、大きな怒りを感じています」。10月11日午後、日蓮系の本門佛立宗の尼僧Aさん(40代)が涙ながらに性被害を訴えた。弁護士を伴った会見を取材したジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「この性加害事件の特徴は、女性弟子の信心が利用され、師僧という優越的地位にある者が行ったスピリチュアル・アビューズ(宗教を利用した虐待や搾取)だ」という――。

■宗教界の「Me Too運動」天台宗に続き、日蓮系の尼僧にも性暴力事件

天台宗の尼僧が性加害に遭った問題に続き、日蓮系の本門佛立宗(ほんもんぶつりゅうしゅう)(本山:宥清寺)でも女性弟子(尼僧)に対する性暴力事件が起きていたことが10月11日、明らかになった。

加害住職は今年5月に緊急逮捕。準強制わいせつ罪で起訴され、公判において罪状を認めている。被害女性は、天台宗の尼僧の記者会見をみて、告発を決意するに至ったという。宗教界でも「Me Too運動」が起きつつある。

「私は加害者に対して、大きな怒りを感じています。加害者は、自身がしたことによって加害者を信じて慕う人々の心がどれほど傷つき、混乱させてしまったか」

11日午後、弁護士を伴って記者会見に現れた本門佛立宗の尼僧Aさん(40代)は涙ながらに訴えた。

事件は2023(令和5)年7月7日頃に発生。千葉県内の本門佛立宗の寺の住職を務めていたB(50代)は、師僧という立場を利用し、Aさんが抵抗できないことに乗じて犯行に及んだとされる。Aさんにキスをし、着衣をめくり上げて両乳房を手でもみ、下半身を触るなどの行為を行ったという。性加害は同年11月まで、断続的に続いた。

本門佛立宗の教義には、身体接触による罪障確認や治療の概念は一切存在しない。しかしBは、これらの行為が教義に基づくものであるかのように装い、わいせつ行為を正当化しようとしたという。

Aさんは、両親が本門佛立宗の熱心な信者であったことなどが縁で、2009(平成21)年に同宗に入信。その後、結婚・出産・離婚を経験し、シングルマザーとなった。2021(令和3)年にBに悩みを相談するうちに、信頼を寄せるようになった。

■「両乳房揉み」「下半身を触る」師僧が尼僧に断続的にした卑劣行為

被告人から得度(出家)を勧められる形でAさんは、2022(令和4)年6月2日に出家。Bの寺で修行を始めた。Bは「師匠仕えの在り方」として、Aさんに絶対服従を要求。自分の考えを持つことは許されず、Aさんを精神的に支配していった。

「謗法人(正しい教えを妨げる者)は家族も含めてみんな地獄へ落ちることになる」

「弟子は師匠の言うことに、全て“はい”と従い、返事は“YES”のみ。“No”はない」

「周りがみんな黒だと言っても、どう見ても黒だったとしても、私が白だと言ったら白だと言う。それが弟子であり、師に仕えるということだ」

「理解しようとするな。頭で考えるな。我を捨てろ」

「自分の考えを捨てて、素直正直に、言われた通りにやりなさい。仰せのままにという姿勢が大事」

などと、Aさんに洗脳を続けたという。

Aさんは、閉ざされた空間の中でBから絶対服従を強いられる日々を送っていた。Bには妻がいたが、その妻も服従を命じられていたという。

Bは寺を訪れるAさんに「なぜ、お前はスカートを履いてこないんだ」などと言われたり、身体の接触などのセクハラを受けたりしていた。そんな中、2023(令和5)年7月7日、先に述べた最初の被害が発生。その後11月頃までBによる断続的に性加害が続いた。

Aさんは得度の際にお世話になった住職に相談したのをきっかけに、両親や本門佛立宗務本庁にも相談。地元の東金警察署にも被害相談した。Aさんは還俗願(僧侶を辞める届出)を本庁に提出したが、現在も保留にされているという。

こういう状況の中でも、BはAさんの自宅を訪問するなど、執拗に接触を試みた。Aさんはパニック状態に陥り、一時気を失うほどの精神的苦痛を味わったという。

その後もBからの連絡は続き、AさんはLINEで被告人に対し「これまでの行為は正しかったのか」と問いかけた。しかしBは「もういいです。どんなことがあっても従うという気持ちがなかったようですね。もういいです」などとそっけなく返答するのみで、責任を直視する姿勢を見せなかった。

2024(令和6)年2月、AさんはNPO法人千葉性暴力支援センターに相談。精神科への通院も始めた。3月13日に東金警察署に被害届を提出した。同署は5月、Bに対する任意の取調べを実施。ポリグラフ(ウソ発見機)検査の際に、Bは自ら犯行の詳細を打ち明け始めたという。この供述内容が、被害者Aさんの話と一致したために、Bは緊急逮捕される。6月20日に準強制わいせつ罪で起訴された。

■優越的地位にある者が弟子に行ったスピリチュアル・アビューズ

現在、本件は千葉地方裁判所八日市場支部で審理中。9月3日の第1回公判で被告人は公訴事実を認めており、10月29日に予定されている第2回公判で結審の見込みだ。

この事件の特徴は、Aさんの信心が利用され、師僧という優越的地位にある者が弟子に対して性加害を行った「スピリチュアル・アビューズ(宗教を利用した虐待や搾取)」であることだ。

Aさんは今回の記者発表に際し、「自分がしっかりと被害と向き合い、声をあげることで、自分と同じような被害を受けている人の助けになりたい」とした上で、加害者Bに対しは、「大きな怒りを感じている。加害者にはしかるべき処罰が与えられるべきです」と語気を強めた。

被害者の尼僧Aさん(左)と弁護士
撮影=鵜飼秀徳
被害者の尼僧Aさん(左)と弁護士 - 撮影=鵜飼秀徳

Aさんは、同じように性暴力被害を受けている人へのメッセージも発信した。

「今回の公表は、加害者に社会的制裁を与えたいとか、そういった思いから踏み切ったわけではありません。踏み切るまでにはいろんな思いや葛藤がありました。身内や宗門からの反対もあり、声に出すことは悪なのかと悩みました。ですが、これらを公表することで性暴力や性犯罪について一人でも多くの方に関心を持っていただくことと、今まさにとても苦しい思いをしている人たちがたくさんいると思いますが、その誰か一人にでもこの声が届いて、ほんの少しでも気付きや力になれればという思いで、公表に踏み切りました。弱い立場の人が躊躇なく声をあげることができ、力のある人はその力を弱い立場の人を守るために使えるような、そんな世の中になっていくことを願っています」

本門佛立宗務本庁(京都市)は取材に対し、このように答えた。

「昨年末に被害者本人から問い合わせがあり、ヒアリングをしました。本人(住職B)への聞き取りを実施しようと思っていた際に、逮捕されてしまったために、いまだに調査ができていません。なお、起訴された段階で住職は退任しています。本宗では一般的には、懲戒対象の事案が生じた際には審判調停委員会を立ち上げ、加害者本人からの聴取を経て、具体的な処分という流れになります。最も重い処分は僧籍剥奪です」

また、Bが住職を務めていた千葉県内の寺院に問い合わせると、男性が応対した。「弁護士に一任している」とだけ述べるにとどまった。

仏教界の性加害は本件に始まったことではない。今年には天台宗の高僧らによる尼僧への性加害問題が発覚している。四国に自坊を持つ住職Cが、尼僧の叡敦さんを14年間にわたり監禁し、性暴行や恫喝を繰り返していたとされる。Cの師である大阿闍梨Dも、この行為を黙認していたとされる。天台宗務庁では現在、調査を実施している。

仏教界における性虐待は、水面下ではまだあると考えてよいだろう。今後、「Me Too運動」が広がりを見せていくこともあるうる。宗教界の自浄作用が早急に求められる。

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鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり)
浄土宗僧侶/ジャーナリスト
1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。

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(浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳)

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