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「プロテイン生活」で腸内環境がヨボヨボに…「16時間以内」に排便されない人はたんぱく質を見直すべき理由

プレジデントオンライン / 2024年10月20日 7時15分

出所=『名医の食卓』(アチーブメント出版)

健康で長生きするにはどんな食生活を送ればいいのか。医師の満尾正さんは「食べたものをきちんと消化することが重要だ。消化する力は年齢とともに衰えるので、食べすぎによる余分な栄養素は老廃物となって体に負担をかけてしまう」という――。

※本稿は、満尾正『名医の食卓』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

■たんぱく質のとりすぎには要注意

わたしのクリニックでは毛髪分析により必須ミネラルの充足率を調べていますが、高齢の方ではほとんどのミネラルが不足している例も珍しくありません。食事で摂取するミネラルそのものが不足していたり、胃酸を抑える薬の服用によって消化が妨げられていることもありますが、きちんと食べていても消化・吸収がうまくいっていないことがかなりの要因を占めているのではないかと思います。

【図表2】有害金属の蓄積もなく、必須ミネラルも足りている健康な患者例
出所=『名医の食卓』(アチーブメント出版)

健康維持のためには、食べたものをきちんと消化してエネルギーとして利用することが重要です。「何を食べるか」が関心を集めますが、「消化しやすいか」は意外と食材選びの基準になりにくいのです。

年齢とともに、どうしても消化力は衰えるので消化できないほど食べすぎれば、使われなかった余分な栄養素は老廃物となって体に負担をかけてしまいます。とくに、たんぱく質を増やそうとして、肉ばかり食べたり、サプリメントのプロテインに頼るような食生活には注意が必要です。

■なぜ年をとると揚げ物がキツくなるのか

私たちが食べた食べものは、口の中で小さく噛み砕かれ、まず唾液と混ざります。唾液にはアミラーゼという分解酵素が含まれ、でんぷんをより吸収しやすいマルトースなどの糖質へ変化させます。

飲み込んだものは喉から食道を通って胃へ進みます。胃では酸性度の高い胃液が分泌され、これにはペプシンというたんぱく分解酵素も含まれています。胃はぜん動運動と呼ばれる動きを繰り返し、2~3時間かけて食べものをさらに細かく分解しながら腸へと移動させていきます。

腸の入り口にある十二指腸で消化酵素を含む膵液や胆汁を吹きかけられた食べものは小腸へ運ばれ、3~15時間かけて吸収されます。小腸の壁には無数のひだがあり、その表面にはさらに1mmの小さな突起(絨毛)が約300万本敷き詰められています。

これは養分を吸収する植物の根の構造とよく似ています。絨毛から吸収された栄養分は血管に入り、血液として全身に運ばれ、エネルギーや体の材料として利用されます。残ったカスに含まれるさまざまな成分は大腸の腸内細菌が分解し、カスが大腸を通過するうちに水分が吸収され、固められて最終的に便が形づくられていきます。

これが消化・吸収の仕組みです。消化の際には酵素が重要な働きを担っていますが、酵素の分泌は年齢とともに減少します。高齢になると揚げ物を食べられなくなったり、量を多く食べられなくなると感じるのは、そうした理由からなのです。

■「酵素ドリンク」を利用するなら慎重に…

◎消化酵素をサポートする

消化酵素の働きを助けるのはミネラルですから、野菜などからミネラルを適切に摂取することが大切です。また、消化酵素そのものではありませんが、生の食材には消化を助ける酵素が含まれています。納豆、キムチ、味噌などの発酵食品にも酵素は豊富です。

ちなみに、巷では「酵素ドリンク」も健康食品として注目されていますが、これは野菜、果物、海藻など多種類の食材を長期間発酵・熟成させてつくられる食品で、酵素そのものを十分に補えるわけではありません。多くは最終的に熱処理をおこなっているため、生きた酵素を摂れる可能性は少ないです。栄養素が凝縮された健康食品のひとつと考えましょう。また、食事を水と酵素ドリンクに置き換えてファスティング(断食)に取り入れる人もいますが、ファスティングの適切な方法については医学的にほとんど検証されていません。

酵素ドリンクは製品によって成分も価格もまちまちです。糖質量が高い甘い酵素ドリンクを常用して血糖値が上がってしまう例もあります。利用する場合は成分や製法をよく見極め、目的に合うものを選ぶ必要があります。1~2カ月試して効果が感じられなければ漫然と費用を費やすことのないよう、慎重に利用しましょう。

なお、食事内容を工夫しても消化しづらいときは、消化酵素を医薬品で補うこともできます。内科で処方される場合があるので、主治医の先生に相談してみてください。海外では消化酵素のサプリメントも販売されていますが、日本では市販されていないので、こうしたサプリメントを扱う専門の医療機関に相談してみてください。

■高齢者には「高齢者向きの食事内容」がある

まず、普段から量を食べすぎないことです。空腹感がないときには無理に食べなくてもよいので、お腹が空いてから食べるようにしてみてください。空腹感というのは、「食べ物を消化する準備ができました」という体からのサインです。

高齢になると「空腹感があるのに消化できない」ということも増えてきます。その場合は、消化力に応じた食事内容に変えてみましょう。もし、若いお孫さん世代と同居しているなどで、動物性たんぱく質・動物性脂肪中心の食事をとっているとしたら、もっと消化しやすい内容に変えてみてください。

たんぱく質で言えば、加熱するとたんぱく質は消化しづらくなります。いちばん消化にいいのは「生」。魚の刺身などです。また、たんぱく質と脂肪の割合を減らして糖質の割合を少し増やしてもよいかもしれません。必ずしも全員が同じものを食べなくてはならないわけではなく、高齢者には高齢者向きの食事内容があります。

タイの刺身
写真=iStock.com/Artit_Wongpradu
タイの刺身。たんぱく質で言えば、いちばん消化にいいのは「生」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/Artit_Wongpradu

■「空腹感がない食生活」では臓器に大きな負担

空腹感がないのに朝、昼、晩、間食と食べ続ける食生活では、肝臓、腎臓などの臓器は休みなく働き、大きな負担を強いられます。腎機能が低下する慢性腎臓病(CKD)や透析を必要とする人が増えているのも、長年、腎臓が傷めつけられていることと無関係ではないでしょう。

栄養学の世界では、食べたものの残りが16時間以内に排出されるのが理想的だとされています。便秘がさまざまな悪影響をおよぼすことは知られていますが、少なくとも24時間以内には出るくらいのペースで毎日の排泄ができないと、不要なものが溜まり、なんらかの不調につながるリスクが高まります。

満尾正『名医の食卓』(アチーブメント出版)
満尾正『名医の食卓』(アチーブメント出版)

人間の体はよくできていて、有毒なものは無毒化して排出する仕組みを備えています。食べものを消化・吸収して取り入れた栄養分や水分は、必ず肝臓に運ばれ、アルコールを分解したり、毒性の高いアンモニアを尿素に変えたりと、肝細胞がもつ酵素によって有毒な物質を解毒します。

そして、肝臓で変換された尿素や、水、酸素などを含む血液が心臓へ運ばれ、心臓がポンプの役割を果たして肺や全身の細胞に送られます。血液が腎臓に辿り着くと、全身を何回も巡っているうちに溜まった不要な物質が濾過され、ここで必要な栄養分をふたたび吸収したあと、残った液体が尿として排出されます。

消化力を上げる食生活は、不要なものを出す力(排泄力)も高めることにもつながります。

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満尾 正(みつお・ただし)
米国先端医療学会理事、医学博士
1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。キレーション治療の経験は延べ5万件を超える。著書に『ハーバードが教える 最高の長寿食』(朝日新書)、『医者が教える「最高の栄養」 ビタミンDが病気にならない体をつくる』(KADOKAWA)、『世界最新の医療データが示す 最強の食事術』(小学館)など多数。

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(米国先端医療学会理事、医学博士 満尾 正)

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