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「もはや誰も話題にしない」紅白司会の橋本環奈主演「おむすび」は転げ落ちてネズミの穴に"すっとんとん"の状態

プレジデントオンライン / 2024年10月15日 17時15分

2018年11月30日、ソウルで行われた新作映画『銀魂2』のPRイベントに出席した橋本環奈さん - 写真提供=Yonhap News/ニューズコム/共同通信イメージズ

頼みの綱だった若者層も脱落しはじめた、NHK朝ドラ「おむすび」。主演は、2年連続紅白歌合戦の司会を務める国民の顔・橋本環奈だが、「酷い展開」「理解に苦しむ」「ぺらっぺらな内容」「次回予告見ても全然ワクワクしない」とSNS上でネガティブな意見が目立つ。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「相撲でいえば、まだ土俵につま先が引っかかっている視聴者が残っている。土俵の中央まで押し戻されるか否かは、第3週がラストチャンスだ」という――。――。

橋本環奈主演「おむすび」の「脱落」現象が止まらない。

筆者は先週、朝ドラ史上まれにみる「第1週で脱落」現象…橋本環奈の「おむすび」が「これから面白くなる気がしない」辛辣理由 「虎に翼」→「おむすび」のギャップが評価にダイレクトに出た PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)で、伊藤沙莉「虎に翼」の後を受けた「おむすび」第1週での脱落現象を分析した。そこでは視聴者たちが、「これから面白くなる気がしない」と辛辣に批判する様も紹介した。

そして第2週。

残念ながら「脱落」は止まらず、このままでは“おむすびコロリンすっとんとん”(※)になりかねない。

※童話「おむすびコロリン」には、転がり落ちたおにぎりがネズミの穴に落ちた後の2組のおじいさん、おばあさんの対応の違いを物語にしたもの。心優しい人には幸運が、欲張りで意地悪な人には悪いことが返ってくるという教訓を得られる。

誰が物語から逃げ出しているのか、今後はどうなのか、各種データから分析してみた。

■このままでは話題にすらならない

第1週では朝ドラ史上稀なギャップが「虎に翼」と「おむすび」にあったと指摘した。

法律を軸に社会問題に真正面から向き合うと同時に、弱い立場の人々への配慮も忘れなかった「虎に翼」は、これまでにない朝ドラとして新たな視聴者を獲得した。

ところが「普通の人の普通のお話」から入った「おむすび」は、「虎に翼」が獲得した新たな視聴者を含め多くの人々に逃げられ、結果として両ドラマの視聴率や評価に大差が出た。

【図表】「おむすび」リアルタイム検索のポスト数
筆者作成

「おむすび」第2週もおおむね同じような状況となった。

その結果は、ヤフー・リアルタイム検索のデータに明確に表れている。まずポスト数。第1週の初回放送時に8000を超えていたポスト数は、その週のうちに3000前後まで下落した。それが第2週では、2000台前半にまで後退した。

ポストの内容でも、課題が浮き彫りとなる。

初回こそ7割を超えていたポジティブなツイートは、第1週後半で6割を切るようになった。さらに第2週ではネガティブな内容が半分前後になってしまったのである。否定的な意見をポストした人が、2週間の間に話題にしなくなっている。当然、途中で見るのをやめた人も少なくない。

そして第2週後半でも、相変わらずネガティブな意見が4割ほど続いている。

さらに第3週月曜は、遂にポスト数が2000を下回った。同ドラマが人々の話題にならなくなり始めている様がみてとれる。

■ギャルで若者にリーチできるのか?

「おむすび」は“平成青春グラフィティ”路線とホームページにある。

確かに「パラパラ」や「ギャル文字」が何度も出てくるあたり、伝統的な朝ドラとはちょっと異なる。

若者の視聴率を狙ったのだろうが、そのギャルに共感できる人はどれぐらいいるのか。

「ギャルの掟」で【自分が好きなことは貫け】が登場し、制作統括はここに共鳴したというが、本当に視聴者はそこについて行くのだろうか。

【図表】両ドラマ1~2週の年齢別視聴率
※スイッチメディア「TVAL」データより筆者作成

なるほど第1週では反応した若者はいた。

1層(男女20~34歳)の視聴率は、「虎に翼」第1週より高く、しかも最終週より大きく上げていた。ところが第2週では2割が脱落し、「虎に翼」に逆転されてしまった(スイッチメディア「TVAL」データによる。以下同じ)。

ギャルの要素が若者に届かなかった理由は、ポストの内容でも明らかだ。

「ギャル? の設定で一気に失せる。これは酷い展開」
「等身大の若者の丁寧な描写なんて全然面白くないんよー」
「何故今時ギャルの必要性があるのか理解に苦しむ」

「ギャルの掟」は他に2つあった。

【仲間が呼んだらすぐ駆けつける】【ダサいことだけは死んでもするな】。ところが主人公・橋本環奈のセリフにも「くらだない」とあったくらいで、視聴者がこの展開に納得できないのは仕方ないだろう。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 おむすび Part1』(NHK出版)
画像=プレスリリースより

かくして若者にすら届かなかったギャルという切り口は、中高年で大損失につながった。

F4(女性65歳以上)でみると、「虎に翼」は第2週で数字を上げていた。ところが「おむすび」では、1.2%も視聴率を失った。

「もう2週間経ったけど面白くないな~」
「くだらないギャルの事ばっかりでつまらないんだけど」
「朝からずーっとギャル……2週目で脱落しました」

朝ドラの主な視聴者は中高年だ。

ここで数字を大きく失い、結果として個人全体も0.4%超が消えてしまった。

■朝ドラファンも失った?

視聴者層拡大はNHKにとっての課題だ。

筆者も同局職員時代、ミニ動画展開で若年層へのリーチを試み、経営課題に挙げていた接触者率(1週間で5分以上NHK発の情報に触れる人の比率)を3%ほど上げることに成功した経験がある。

【図表】両ドラマ1~2週の女性特定層別視聴率
※スイッチメディア「TVAL」データより筆者作成筆者作成

ただしトライアルは、コアファンを失っても構わないわけではない。

残念ながら「おむすび」は、隘路に陥り始めている。「虎に翼」では、第2週で企業に勤める女性の役員や管理職の視聴者数を急伸させた。併せて非管理職や派遣・パートの人々も伸ばしていた。

ガラスの天井に挑んだ女性を主人公にしつつも、弱い立場の人々への配慮も忘れなかった展開が幅広い層の支持をとりつけたからだ。

ところが「おむすび」は失敗している。

「虎に翼」が獲得した新たな視聴者層をわずか2週間で気前よく手放してしまった。急伸した女性の役員や管理職は、瞬く間に離脱した。派遣・パートの女性たちも興味を失っている。

なによりも女性20~50代の「テレビドラマ好き」層が、じり貧なのが痛い。「虎に翼」が急伸させた貯金を、序盤で浪費した格好なのが残念でならない。

■残る可能性は土曜ダイジェスト⁉

「おむすび」は月~金で視聴者を失っている。

ただしまだ一縷の望みが残っている。平日の視聴をやめたが、まだ土曜の1週間ダイジェストを見ている人が残っているからだ。

「今週から土曜日のみ観ることにした」
「しばらく土曜だけ見て様子見かなぁ」
「内容ぺらっぺらなので土曜の週間総集編だけでいっか」

こんな声もSNSには少なくない。

「(月~金で)無駄にした時間は戻ってこない」から、対応措置として土曜だけチェックしておくという人が一定程度残っているのである。まさにタイパの時代と言えそうだ。

ただし安心してはいけない。

「続きが全く気にならない」「次回予告見てもワクワクしない朝ドラは久々」など、今後に期待できないという声も少なくない。

最大の課題は、主人公はじめ周囲のギャルたちの言動を、多くの視聴者が“じぶん事”と受け止められないからだ。

「虎に翼」には、その要素がいくつもあった。

過去100年で女性たちが何度も思い知らされた悔しさや、弱い立場の人々の絶望感がバランス良く散りばめられていたからだ。

これに対して「おむすび」では、ここまでの展開上で大きなウエイトを占めるギャルの言動に共感できない。さらに彼女たちをほっとけない主人公の性格(=米田家の呪い)が説明不足で、橋本環奈にも気持ちが乗らない。

これらを放置した展開は危ない。

いつまでも課題を放置せず、今後に一縷の望みを持つ層の期待に早く応えないといけない。

「脱落しそうだったけど 昨日の放送(第2週の金曜)で泣けた」
「ギャルは実は純粋、結果面白かった」
「今週、少し面白くなってきて、多分、徐々に面白くなるであろうことを期待している」

相撲でいえば、まだ徳俵につま先が引っかかっている視聴者が残っている。

そんな人々が土俵の中央まで押し戻されるか否かは、第3週がラストチャンスと言えよう。

「普通の人の普通のお話」を選ぶか否かは演出陣の自由だ。

ただしドラマである以上は、魅力的で登場人物に共感できるように描いてほしい。さもなくば、「おむすび」は“コロリンすっとんとん”で終わってしまう。

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鈴木 祐司(すずき・ゆうじ)
次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト
愛知県西尾市出身。1982年、東京大学文学部卒業後にNHK入局。番組制作現場にてドキュメンタリーの制作に従事した後、放送文化研究所、解説委員室、編成、Nスペ事務局を経て2014年より現職。デジタル化が進む中、業務は大別して3つ。1つはコンサル業務:テレビ局・ネット企業・調査会社等への助言や情報提供など。2つ目はセミナー業務:次世代のメディア状況に関し、テレビ局・代理店・ネット企業・政治家・官僚・調査会社などのキーマンによるプレゼンと議論の場を提供。3つ目は執筆と講演:業界紙・ネット記事などへの寄稿と、各種講演業務。

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(次世代メディア研究所代表 メディアアナリスト 鈴木 祐司)

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