これから始めると成績が上がり、頭も良くなる…プロ家庭教師が力説する「国数英理社で最初に勉強すべき教科」
プレジデントオンライン / 2024年10月24日 18時15分
※本稿は、青戸一之、西岡壱誠『家庭教師の技術』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
■主要5教科はどれから始めるべきか
Q どの教科から勉強を始めるべきか?
学校で勉強するのは、主に国語、数学、英語、理科、社会の5教科です。「これから成績をあげたい」と考えている生徒に対して、どの教科を最初に重点的に努力してもらうと成績が伸びやすいでしょうか?
答えは「理科と社会」です。国語や英語よりも、理科と社会の勉強を頑張っている生徒のほうが成績が上がりやすく、頭も良くなりやすいのです。
一体なぜなのか、理由がわかりますか?
その理由は、理科と社会は「勉強すればするほど成績が上がっていく感覚」が得やすい科目だからです。
英語や数学は、努力がテストの点数として結果に出るまでとても時間がかかります。英語は英単語を覚えたとしても、それだけで点数が安定的に上がるとは限りません。
数学も、公式を覚えればそれだけで単純に点数が上がるわけではありません。それに対して、理科や社会は「ただ覚えれば点数になる」という問題も多く、努力がすぐに見える形で生徒の目の前に現れます。すなわち生徒のやる気が持続します。
■プロ家庭教師がやっている工夫
当たり前ですが、「頑張ってもなかなか結果が出ない」というのは苦しいものです。特に勉強を始めたての段階では、頑張ったのに結果が出ないと、すごく苦しくなって勉強自体を投げ出してしまうことにもなりかねません。そうすると、せっかくやる気になった生徒の気持ちを無下にしてしまいます。
だからこそ、まず最初に頑張るべき教科は、勉強すれば勉強するほど結果につながっている感覚がある、理科や社会なのです。努力の手応えがないものから頑張り始めても、なかなか続けられません。
そうではなく、すぐに結果につながっていくものから努力を積み重ねていくほうが生徒のモチベーションにつながり、勉強の継続性が担保できるのです。
勉強の手応えを感じてもらうために、家庭教師ができる工夫もあります。
それは、「これを覚えればすぐ点数につながる」という知識をリストにまとめてあげることです。知識リストを覚えてもらったら、ちょっとしたテストを出題しましょう。そこで点数が取れれば、「頑張ったら結果が出る」というプラスの感覚を持ってもらいやすいですよね。
とにかく理科と社会を頑張って点数を取ってもらう。まずはここを勉強の第一ステップとするといいでしょう。そうすると1科目でも自信がついて、勉強のやる気につながり、「他の科目も頑張ろう」といういい波及効果があります。
■悩んでいる生徒にする正しいアドバイス
Q 生徒が悩んでいるときはどうアドバイスする?
生徒が問題を解けずに悩んでいる――家庭教師にとってはよくあるシチュエーションですが、このとき生徒に対するアドバイスには大きく分けて2つの方向性があります。
これは多くの家庭教師の現場や塾で議論になる難しい二択です。ベテランの先生同士でも答えは異なりますし、教育学部の先生の間でも意見が分かれます。
この2つ、みなさんはどちらが正しいと思いますか?
B 本人がギブアップするまで考えてもらう
要するに、答えを教えるか、悩んでもらうかの二択ですね。
なぜ議論が分かれるのかというと、どちらにもメリットがあり、どちらにもデメリットがあるからです。
まず「答えを教える」指導は、生徒がどんどん次の問題を解いていくように促せます。悩んでいても答えが出ない問題も多いですし、何度も同じような問題を解くことで「慣れる」ということもあります。ですから、多くのことを効率よく学んでもらうときにはAの指導方法が正しいです。
しかし、一見すると効率的な「答えを教える」指導にもデメリットがあります。それは、「悩む」という時間をカットしてしまっているところです。
■昔の入試対策は「もぐら叩き」でよかった
実は、最近の中学入試・高校入試・大学入試では、答えを知っているだけでは解けない、「悩む」指導を経験している生徒でないと解けない問題が多く出題されるようになっています。
「教科書や参考書の知識をベースにしているけれど、おそらくどの参考書にも載っていないような問題」が出題される傾向が強いのです。
昔の入試対策は、「もぐら叩き」に例えられていました。同じような問題が何度も出てくるので、参考書や過去問を何度も何度も反復練習することによって、対策が可能になる。まるで決まった巣穴から「もぐら」が出てくるのを叩くかのように、たくさん対策したらその分だけ成績が上がる、と。
しかし今は違います。今まで全く出て来なかった巣穴から「もぐら」が出るようになっているのです。
例えば大学入試にかつて存在したセンター試験は現在、共通テストに変わっていますが、共通テストではかなりの割合で「多くの受験生にとって初見の問題」が出題されています。
社会では今まで出題されたことがなかったグラフや統計データが使われることが多くなり、理科でも過去に出題された問題の焼き直しではなく、その場で改めて考えなければならない問題が多く出題されています。
これらの問題は、知識だけあっても解くことができません。いくら効率よく頭の中に知識を入れ込んでいたとしても、きちんと頭を使わなければ解けない問題が増えているのです。今までの「もぐら叩き」的な対策はもはや古いのです。
■「悩ませる指導」のほうが正しいワケ
そのため、「答えを教える指導か、悩ませる指導か」という二択の答えとしては、現在はBの「悩ませる指導」のほうが正しくなってきています。
昔の「もぐら叩き」的な対策が通用した時代ならAの「答えを教える指導」で成績が上がっていたのですが、最近は生徒に「この問題をなんとか解いてみよう」と粘り強く考え抜く時間を作ってあげる、いわば「悩む練習」をする指導のほうが効果的なのです。
実際、私たちも最近の入試で出題されている「思考力を問う問題」や、自分たちで作ったその類題を生徒に解いてもらっています。
教えていて驚くのは、今の生徒はどんどん「粘り強く考える」力が落ちている、ということです。
例えば、問題を出して「1分間周りの人と考えてみよう」と言うと、30秒くらいは周りの生徒と「ああでもない」「こうでもない」と相談するのですが、多くの生徒が30秒くらいで黙ってしまいます。そして、「先生、早く答え教えてよ」と言ってくるのです。
「いや、もっと考えてみようよ」とこちらも促すのですが、生徒は「これ以上考えたって答え出ないよ」「早く答えが知りたいよ」と言ってきます。多くの生徒が、考えることよりも「答えを知ってそれを覚える」ということに慣れてしまっているのです。
■悩む時間は無駄にならない
最近は、スマホでもAIでも、なんでも答えをすぐに教えてくれるようになりました。わからないことがあったらすぐにChatGPTに聞けば答えを教えてくれるようになっています。そんな状況に慣れているからか、すぐに「答え」を求めます。
一昔前であれば「ヒントください」と言ってくる生徒が多かったし、答えを言おうとすると「先生待って、もう少し考えさせて」などと言われた記憶があるのですが、今はそうではなく、「早く答え教えてよ」というスタンスになってしまっているのです。
何度も言いますが、悩む時間は、無駄になるものではありません。短期的には答えを知って類似の問題にすぐに答えられるようになるほうが成績が上がるでしょうが、それだけでは頭は良くなりません。
長期的に考えると、すぐに答えを求めるのではなく、少し自分で考えて答えを出そうとすることには意味があるのです。でも、それが今の子どもたちには難しくなってしまっているというのは、とても由々しき事態だと思います。
とはいえ、「じっくり悩む」と言っても、どこかで区切りをつけてあげたほうがいいとは思います。「10分は考えてみよう」とか「5分以上考えて答えが出なかったら答えを言うね」とか、そういう指導の仕方を実践してみましょう。
まとめると、家庭教師や子どもに接する方は、ぜひ子どもに対して「あえて悩ませる」という指導をしてみてもらいたいと思います。
すぐに答えを出すのではなく、考えるためのヒントを教えてあげて、十分に悩めていない状態であればもっと悩むことを推奨する。そうして子どもの脳に良い負荷をかけてあげることで、子どもは自分の頭を良くすることができるのです。
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プロ家庭教師、ドラゴン桜noteマガジン編集長
1983年生まれ。高校卒業後25歳で塾講師となる。東大志望の生徒を不合格にしてしまったことから自身の学力不足と大学受験経験の欠如を痛感し、30歳で東大受験を決意する。33歳で東大に合格し、卒業後はプロ家庭教師・塾講師、ドラゴン桜noteマガジン編集長として活動する。著書に『あなたの人生をダメにする勉強法 「ドラゴン桜」式最強タイパ勉強法で結果が変わる』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。
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現役東大生 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中に開発した独自の勉強術を駆使して東大合格を果たす。2020年に株式会社カルペ・ディエムを設立。全国の高校で高校生に思考法・勉強法を教え、教師に指導法のコンサルティングを行っている。日曜劇場「ドラゴン桜」の監修や漫画「ドラゴン桜2」の編集も担当。著書はシリーズ45万部となる『東大読書』『東大作文』『東大思考』『東大算数』(いずれも東洋経済新報社)ほか多数。
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(プロ家庭教師、ドラゴン桜noteマガジン編集長 青戸 一之、現役東大生 カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠)
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