「おたくの商品、高すぎるね」に「いえいえ」と否定するのはアウト…一流が反論で使うキーフレーズとは
プレジデントオンライン / 2024年10月23日 15時15分
※本稿は、松橋良紀『うまく「雑談できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■「子どものために」やった親の声かけが裏目に出る理由
できない人は反論する。
「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」
この言葉は、心理学者アルフレッド・アドラーの言葉です。
ベストセラーになった『嫌われる勇気』という書籍で、アドラーが提唱した考え方について紹介します。
アドラーいわく、「個人だけで完結する悩みなどというものは存在しない」
つまり、他の人間がいなければ悩みが生まれないと言います。
例えば、「背が低い」、「収入が低い」などの悩みは、他者との比較や、対人関係がなければ存在しないということです。
またアドラーは、「あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むことによって引き起こされる」とも言います。
たとえば、子どもが勉強しないで悩んでいるお母さん。これは誰の課題なのか? もちろん子どもの課題です。お母さんの課題ではありません。お母さんが勉強をしたところで意味がありません。
なのに、親が「勉強しなさい」と命じるのは、他者の課題に対して、いわば土足で踏み込むような行為。親は「子どものために」と思ってやっていたのでしょう。
でも、「親に無理やり押し付けられた」「自分の言い分を聞いてもらえなかった」と言って、孫がいるような年齢になっても親を恨み続けている人をたくさん見てきました。
■経験不足の営業は即座に反論する
ちなみに勉強しないと、どんな結末になるのでしょう?
その結末を引き受けるのは誰でしょう?
未来の選択肢が減ってしまう?
希望の学校に進学できなくなる?
希望の職業につけなくなる?
それらの結末を引き受けるのは子ども自身です。ですから、「勉強するかどうかは子どもの課題だ」とアドラーは言います。
相手が話すことにまったく共感できないことや、理解ができないこともあります。
あなたが大事にしているものを否定されることもあります。
そんなときにはどうしますか?
コミュニケーションがうまくできない人は、すぐに否定をしてしまいます。
たとえば、あなたが営業だとして、「おたくの商品、高すぎるね」と言われたら、どのように返しますか?
「いえ、ぜんぜん高くないですよ。A社の商品に比べてこの部分が優れていますから、安いくらいですよ!」
このように、経験不足の営業は即座に反論します。
雑談がうまい人は、理解ができないことでも否定をしません。
大事にしていることを否定されても否定で返しません。
「そうですよね。高いと思いますよね」
このように、「あなたはこう思いますよね」と返すのは、相手と共感をするだけであって、自分の意見を曲げることではありません。
「相手が自分と同じ考え方を持ってくれない!」
そういった悩みは、課題を分離できていないことから起きます。
相手とあなたは違う人間です。
同じ方向を見ることができたらそれはうれしいですが、違う方向を見ても大丈夫です。
お互いの選択の自由を受け入れると、自由な人生に変わります。
■銀座クラブのホステスの相槌はなぜ価値があるのか
できない人はやる気を削ぐ言葉を連発する。
「これやっといて」
「あなたには無理かもしれないけどやってみる?」
こんな言葉を言われたとたんに、やる気が下がる人が多いでしょう。
雑談が上手い人は、人のやる気を高めるのが得意です。
やる気を上げる言葉をいくつかご紹介しましょう。
ポジティブなフィードバックの技法を身につけたら、対人関係はかなりスムーズになります。
まずはほめ言葉のバリエーションを覚えましょう。5つの言葉の頭文字のSをとって、「5S言葉」と名付けました。
①最高です!
②素敵です!
③素晴らしい!
④すごい!
⑤さすがですね!
知り合いの経営者に銀座のクラブに連れていってもらったことがあります。連れて行ってくれた方は、ホステスさんたちに「すごい!」「さすが!」と言われてご満悦。
会計時、二人でハイボールを数杯飲んだだけで10万円。彼は女性たちの「すごい!」「さすが!」にそれだけの価値を感じているわけです。
フジゲンという世界的なギター製造会社があります。
創業者の横内祐一郎会長の講演会に参加したことが数回あります。世界的なギター会社と経営者として大成功した彼の運命を変えたのは、希望を与えてくれた言葉だったそうです。
■「すごいよ! 最高だよ!」の一言で、未来への希望を持てる
彼は20代の頃、家業を継いで農業をしていたときに、トラブルが起きて絶望の淵にいました。そんなときに、道端で占いをしている女性がいて、声をかけられました。
「あんた、ちょっと鑑定を受けてごらん」
鑑定をしてもらうと、占い師は言いました。
「あんたの運勢、すごいよ! 最高だよ! 将来経営者になるよ」
「えー! ほんとですか! そんなことを言われても全然そんな未来なんて、想像もできません」
会長いわく、
「すごいよ! 最高だよ! の一言で、未来への希望を持てるようになったし、勇気をもらった!
占い師は、ひょっとしたら、私が絶望で死にそうな顔をしていたから、適当にほめてくれたのかもしれない。
でも、それまで絶望の淵にいた私にとっては、暗闇にようやく灯がともった瞬間だった! よし、もうちょっとがんばってみようというやる気がわいてきた」
「その体験で思ったことがあります。
ああ、人はたったひと言で変わるんだ。
それ以来、『人と接するときは、常に勇気を与える言葉を言おう。未来への希望を持てる言葉を口にしよう』
それを教訓にしてきました。
それが今の成功につながったと思っています」
人はあなたのたった一言で変わるかもしれません。
あなたのほめ言葉が、相手に勇気を与えるかもしれません。
相手に未来の人生を変える一言になるかもしれません。
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コミュニケーション心理トレーナー
1964年生まれ。青森市出身。20代で営業マンを経験するが、強度の人見知りで人間関係が大の苦手なため、まったく売れず……。ところが30歳のとき、カウンセラー養成学校で心理学を学んだことで人生が激変。支店長となり社内研修講師として全営業所の全社員の営業研修を担当すると、1年で会社の売り上げが140%アップ。2007年にコミュニケーションが苦手な人、困っている営業パーソンのための協会を設立。著書はこれまでに30冊、累計40万部。『話し方で「成功する人」と「失敗する人」の習慣』(明日香出版社)、『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)、『何を話せばいいのかわからない人のための雑談のルール』(中経の文庫)など著書多数。
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(コミュニケーション心理トレーナー 松橋 良紀)
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