「ランチ会はじめます」と社長が言い出したら要注意…優秀社員がどんどん辞めていく「ダメな会社」の共通点
プレジデントオンライン / 2024年10月21日 8時15分
■カジュアルな場のコミュニケーションは重要
かつては、「会社の飲み会やランチ会」は社員に歓迎されたものでした。普段の慰労や社員同士のコミュニケーションの場として受け入れられ、喜ばれることがあっても敬遠されるようなものではありませんでした。
ところが、時代が移り変わるとむしろ飲み会やランチ会のような集まりは、徐々に受け入れられなくなり、社員の満足度をむしろ下げてしまうことさえあります。では、会社が企画するランチ会は、もう企画すべきではないのでしょうか。改めてランチ会の効用を踏まえ、現代におけるランチ会の成功について、考察していきます。
ランチ会は社員同士の関係を深め、職場の雰囲気をよくするための効果的な手段として使われてきました。特に、日常の業務とは違うカジュアルな場でのコミュニケーションは、上司と部下、同僚同士の距離を縮める大きな役割を果たします。
普段なかなか聞けない社員の本音が聞けたり、新しいアイデアが生まれたりする場として、企業にとっては大きなメリットがあるのです。いわゆる「成功循環モデル」として知られるように、職場内での信頼関係が深まることで、業務の円滑化や生産性の向上に繋がると言われています。
■コスパ、タイパが叫ばれる世の中
しかし、こうしたランチ会の効果も、実際にはそのやり方次第で大きく結果が変わります。特に現代では、コストパフォーマンス(コスパ)やタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する風潮が強く、社員が「意味のある活動かどうか」をより意識するようになっています。以前は、社長や上司の声かけで自然と参加していたランチ会も、今では「ランチ会の時間は給料が出るのか」「本当に参加する意味があるのか」といった声が社員から聞かれるようになりました。
このような背景から、単純に「交流のため」としてランチ会を実施しても、思ったほどの参加率が得られなかったり、逆に「無駄な時間」と感じられてしまったりするリスクもあるのです。
■目的が不明瞭だと自然消滅する
ランチ会が失敗に終わる理由の一つに、「なぜこの会をやるのか」という目的や意義が社員に伝わっていないケースがあります。目的が不明確なまま開催されると、社員にとっては単なる「社長の一方的な趣味」や「強制参加の集まり」に映ってしまい、結果として参加者が減少し、自然消滅してしまうことも少なくありません。特に、仕事以外の時間を使って行うランチ会では、その意義をしっかりと説明し、納得感を得ることが求められます。
こうした課題を解決するためには、ランチ会の実施に慎重になることも必要です。例えば、まずは1on1のミーティングを通じて社員の意見を聞き、ランチ会へのニーズを把握することで、社員が求める交流の場を作りやすくなります。
さらに、ランチ会を進めるにあたっては、社長が「味方となる主要な社員」を見つけ、彼らとともにランチ会の意義を広めることが重要です。このような下準備を怠ると、ランチ会が「無意味な会」や「負担に感じる場」となりかねません。
現代の職場において、ランチ会の価値を再評価し、その効果を最大化するためには、実施方法やタイミングを工夫し、参加者が納得感を持てる場を提供することが鍵となります。ランチ会がうまく機能すれば、単なる食事の時間を超え、社員同士の絆を深め、会社全体のパフォーマンス向上に寄与する貴重な機会となるでしょう。
■ランチ会が「成功する会社」と「失敗する会社」の違い
ランチ会を導入した企業には、「成功する会社」と「失敗する会社」があります。その違いを決定づける要素は、目的の明確さや社員の納得感、そして社内のコミュニケーションに対する姿勢です。成功する会社では、ランチ会が社員同士の交流を深め、信頼関係を築く場として機能していますが、失敗する会社では、ランチ会が「無駄な集まり」と捉えられ、逆に社員の士気を下げてしまうことが多いのです。
成功するランチ会の特徴は、その目的が明確であり、社員にも共有されていることです。ランチ会を始める際に「この場を通じて社員同士の距離を縮め、職場のコミュニケーションを活性化する」という意義をしっかりと伝えることで、社員はその集まりに価値を感じやすくなります。
例えば、ある企業では、毎回のランチ会で「この3カ月で良かったこと」を共有する時間を設け、ポジティブなエネルギーを会社全体に広げています。具体的なテーマを設定することで、ランチ会は「成果を共有する場」「新しいアイデアを交換する場」として活用され、社員のモチベーションを高める効果があります。
■一部社員の「アピールの場」にならないために
対照的に、失敗するランチ会では、目的が曖昧なまま開催されることが多いです。例えば、「とりあえず社長が言い出したから」という理由で始まったランチ会では、社員もその意図を理解できず、結果として「何のために参加するのかわからない」と感じてしまいます。参加者が少なくなり、数名の社員だけが集まる会となりがちです。また、目的が共有されていないと、社員にとっては「単なる時間の無駄」や「社長へのアピールの場」となり、かえって人間関係の摩擦を生むこともあります。
また、社員のニーズに合わせた配慮ができるかどうかも、成功と失敗を分けるポイントです。成功するランチ会を実施する企業では、社員の食事の好みやライフスタイルにも配慮し、ダイエット中の社員には選択肢を広げるなど、柔軟な対応を行います。
さらに、ランチ代の一部を会社が負担するなど、目に見えるメリットを提供することで、参加しやすい環境をつくり出しています。このような工夫は、「会社が社員のことを考えてくれている」というメッセージを伝える効果もあり、社員の満足度を高める要因となります。
■場を回す「リーダーシップのある社員」がいればベター
一方、失敗する会社では、社員の状況や意見を無視した強引な進め方が目立ちます。ランチ会に何の特典もなく、あくまで「参加するのが当然」という雰囲気が漂うと、社員は負担感を感じるようになります。また、特定のメンバーばかりが楽しむ内容に偏りがちで、結果として社員全体の求心力が低下し、コミュニケーションの活性化には繋がりません。
例えば、社長の好みだけでメニューを決めたり、社員が苦手な内容の会話ばかりが続くと、次第に「ランチ会に参加したくない」という空気が広がります。
最後に、主要な社員を巻き込めるかどうかも、成功と失敗の大きな違いです。成功する企業では、ランチ会を始める際にリーダーシップを発揮できる社員を巻き込み、彼らが自主的にランチ会を盛り上げる役割を担います。これにより、社長だけが発信するのではなく、社員同士が互いに話しやすい雰囲気が生まれます。
また、業績が好調なタイミングでは、仕事に関連するテーマも話題として許容され、未来に向けたビジョンを共有する場としても活用できるため、より前向きな話ができるのです。
このように、ランチ会の成否は、その準備段階と進行方法に大きく左右されます。目的を明確にし、社員のニーズを尊重すること、そして主要なメンバーを巻き込みながら、全員が心地よく参加できる場を作ることが、成功の秘訣となるでしょう。
■社長が避けるべき行動、話すべき話題
ランチ会を社内コミュニケーションの活性化に役立てるためには、社長が「やってはいけない行動」を理解することが重要です。同時に、社長としてどのような話題を提供するかによって、ランチ会の雰囲気が大きく変わります。適切な話題選びを通じて、社員が自然とリラックスし、意見を交わしやすい場を作り出すことが成功のカギとなります。
まず、社長がランチ会で避けるべき行動として最も大事なのは、一方的に話しすぎないことです。社長が自分の話ばかりしてしまうと、社員は聞き手に回るばかりで、積極的に話すことができなくなります。ランチ会はミーティングではなく、あくまで自由な対話の場です。社員の意見を引き出し、双方向のコミュニケーションを心がけることで、ランチ会の雰囲気が良くなります。
また、前述のとおり特定の社員とばかり話すのも避けたいところ。全員と話すウエートを均一とまではいかなくても、全く話さなかったというような社員がいないようにすべきです。
逆に無理に仲良くしようとするのも逆効果です。プライベートな話題を過度に引き出そうとすると、社員は逆に距離を感じることがあります。社長としての距離感を大切にしつつ、適度なフランクさを心がけるのがポイントです。
■業績好調なら仕事の話題もOK
では、ランチ会で社長が話すべき話題にはどのようなものがあるのでしょうか?
まず、ランチ会は社員を褒める機会として活用するのが効果的です。普段の業務中ではなかなか直接的に伝えられない「ありがとう」や「よく頑張っているね」といった言葉を、このカジュアルな場で伝えることで、社員のモチベーションが上がります。
たとえば、最近のプロジェクトで活躍した社員や、地道に努力を続けている社員を具体的に褒めることで、他の社員にも「自分も頑張ろう」という前向きな気持ちが生まれやすくなります。社長が社員の努力をしっかりと見ていることが伝わると、会社全体の士気も高まり、ランチ会がポジティブな場として機能するのです。
また、社長の趣味や最近ハマっていることを話題にするのも効果的です。社員からすると、普段の業務では見えにくい社長の一面を知る機会となり、親しみやすさが生まれます。逆に、社員の趣味や最近の関心事についても軽く質問することで、会話が広がりやすくなります。
さらに、業績が好調な時期には仕事に関連する話題も有効です。未来のビジョンや会社の成長戦略について話すことで、社員に対して「自分たちの努力が会社の成功につながっている」という実感を持ってもらうことができます。こうした話題は、特に会社が良いパフォーマンスを上げているときに共有することで、社員のモチベーションを高める効果が期待できます。
■プライベートは深掘りし過ぎないように
休日の過ごし方やリフレッシュ方法も、リラックスした会話を生むのに最適な話題です。社長が「最近の休日はどう過ごしている?」といった軽い質問を投げかけることで、社員が気軽に話せる内容になり、自然とプライベートな話も広がりやすくなります。こうした会話を通じて、共通の趣味やリフレッシュ方法が見つかれば、親近感が生まれ、社員同士の距離が縮まります。
ただし、社員のプライベートなことに関しては、本人から話さない限り深掘りするのは避けましょう。例えば、家庭の状況や特定の趣味について、本人が触れない限りは質問を重ねるのではなく、あくまで軽い会話を心がけることが大切です。そうすることで、社員が気まずさを感じることなく、リラックスして参加できる雰囲気をつくることができます。
■退職者まで出した「気まぐれランチ会」の末路
最後にもっともやってはいけないランチ会の末路について事例を加えておきます。
ある経営者は、社員の親睦のためにランチ会を企画しました。本稿で伝えたような目的の明示や会話のルールなどにはあまり気を使わず、軽い気持ちでランチ会を実施。社員の人間関係はさほど悪い会社ではありませんでしたが、突然の開催で半ば強制的。社員の不満はややあったようですが、会社の付き合いということで参加者は一応集まりました。
その後、不定期で開催していましたが、毎回ランチ会の音頭は社長がとっていたものの、社長のランチ会への関心が薄れたのか、ほかに関心事ができたのか、主催を幹部社員に任せることが増え、しまいには社長自身は参加しなくなっていきました。勝手に開催し、そして自分はいなくなる。最終的にランチ会を積極的に開催する社員も、参加する社員も減少してきて、いつの間にか自然消滅してしまいました。
「社長がやりたいって言うから、参加したのに……」と社員からの信頼は揺らいでいきました。たかがランチ会ですが、「社長に一貫性がない」ということで、それからの社長企画は社員から反対されることが増え、徐々に勤労意欲が下がるどころか、退職者まで出てしまったのです。
このように、たかが「ランチ会」です。しかしながら、社員の時間を使っていることは事実。無責任な対応をして、自然消滅なんてことがあれば、ランチ会だけでなく人間関係、そして信頼関係まで消滅してしまう可能性を持っていることには、注意が必要です。
■ランチ会は「諸刃の剣」
ランチ会を企業文化として定着させるためには、採用時にランチ会があることを伝えることが重要です。後から「実はランチ会があります」と言うよりも、入社前に会社の文化として理解してもらうほうが、自然に受け入れられます。ランチ会を交流の場として大切にする企業であれば、参加に前向きな人材を確保しやすくなります。
また、繰り返しになりますが、主要な社員を巻き込むことで、ランチ会の雰囲気をより自然なものにできます。彼らがリーダーシップを発揮することで、社長だけに頼らず、社員同士の自主的な交流が促進され、ランチ会が会社全体の活力を高める場になります。
ランチ会はうまくやれば社員同士の信頼関係を深め、会社全体のパフォーマンス向上に繋がる効果的な手段です。しかし、適当に始めてしまうと、かえって社員の不満を生んだり、コミュニケーションを悪化させるリスクもあります。社員の士気を上げるどころか下げてしまい、最悪の場合は退職者まで出してしまうおそれもあるのです。
特に現代の会社経営では、しっかりと準備をし、社員がその意義に納得できる形で進めることが必要です。もし、こうした準備ができないのであれば、なんとなく始めるよりも、最初からやめておいたほうがいいのかもしれません。
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特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。パワーコンテンツジャパン株式会社代表取締役。特定行政書士。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設し、独立。2007年に士業向けの経営スクール「経営天才塾」(現:LEGALBACKS)をスタートさせ、創設以来、全国のべ1700人以上が参加。士業向けスクールとして事実上日本一の規模となる。著書に『小さな会社の逆転戦略 最強ブログ営業術』(技術評論社)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)共著で『合同会社(LLC)設立&運営 完全ガイド はじめてでも最短距離で登記・変更ができる!』(技術評論社)などがある。
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(特定行政書士 横須賀 輝尚)
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