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「お酒を飲む、飲まない」は関係ない…肝臓専門医が警告「脂肪肝になりやすい人」がやっている水分の摂り方

プレジデントオンライン / 2024年10月22日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝は、お酒を飲む・飲まないにかかわらず、代謝異常によって生じる。肝臓外科医の尾形哲さんは、「代謝を正常化して脂肪肝から脱却するには、水の飲み方が最大のポイントになる」という――。

※本稿は、尾形哲『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「脂肪肝」は代謝異常による肝臓のSOS

飲酒習慣がある人は日頃から気にすることが多い「肝臓」。もちろん過度な飲酒が肝臓にダメージを与えるのは事実ですが、飲酒によらず肝臓に不具合が起きている人が増加しています。それが、肝臓に5%以上脂肪がたまる「脂肪肝」です。

現在、成人の3人に1人は「脂肪肝」だと推計されています。一般的に、糖尿病が予備軍を含めて成人の5人に1人といわれるので、脂肪肝がいかに多いかがおわかりいただけるでしょう。

“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓は、病状がある程度進行するまで症状が出ないため、多くの人は自覚していません。健康診断の肝機能項目でアラートが出ていても、特段日常生活で困ることはないため、「病院に行くほどではない」とやり過ごしてしまうのです。しかし、脂肪肝を放置すると肝炎を起こして肝機能が大きく低下し、ひいては肝硬変や肝がんなどの大病につながることもあります。健康診断の血液検査項目にある“ALT値が30を超えていたら脂肪肝のサイン”。自己判断はしないで、かかりつけ医を受診してください。

■「NAFLDからMASLDへ」脂肪肝の名前が変更

「脂肪肝」はこれまで長きにわたって、アルコールの多量摂取による「アルコール性脂肪肝」と、飲酒以外の食生活や習慣で引き起こされる「非アルコール性脂肪肝疾患 non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD」という病名で大別されてきました。さらに、NAFLDのうち肝炎に進行する病態を「非アルコール性脂肪性肝炎 non-alcoholic steatohepatitis:NASH」と診断してきました。

しかし2023年6月、アメリカ、ヨーロッパの学会では正確な把握が困難な飲酒量ではなく、“代謝異常による病態”である点を明確にするため、代謝を意味する「metabolic」という単語を用いた「MASLD(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease)」と「MASH(metabolic dysfunction associated steatohepatitis)」という名称に変更。

日本でもこの流れを受けて、2024年8月にそれぞれの新名称を「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」にすると発表しました。

MASLDやMASHの診断基準は学会による正式発表が待たれますが、脂肪肝があり、肥満、2型糖尿病、やせ、あるいは正常体重で2項目以上の代謝異常(高血圧、内臓脂肪蓄積、耐糖能異常、脂質異常)がある場合は、MASLDと診断される可能性があります。

肝硬変や肝がんに進行するMASHを見極めるためにも、早期発見と改善が大切です。参考までにMASLDと関係の深い「メタボリックシンドローム症候群」の診断基準を挙げておきます。メタボ診断で該当項目がある人は、脂肪肝の可能性も大。要注意です!

「メタボリックシンドローム症候群」の診断基準
出所=『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』

■No.1の基礎代謝量を誇る「肝臓」

肝臓は脂肪をためやすい一方で、その脂肪は落としやすい特徴があります。皮下脂肪より、内臓脂肪より、肝臓の脂肪が一番先に落ちていくことがわかっています。

さらにうれしいことに、脂肪肝が改善すれば、ありがたいおまけがついてきます。それは、寝ていても脂肪が燃える“やせやすい体になれる”ということ。

私たちが生きていくために最低限必要なエネルギー代謝が「基礎代謝」です。安静状態での呼吸や心拍、体温維持、細胞の修復などに消費されるエネルギーのことです。この基礎代謝の中で、エネルギー消費がもっとも多いのが肝臓なのです。

肝臓は24時間365日、エネルギーを使い続けて栄養素を分解・合成し、代謝の中枢を担っています。そのため、肝臓から脂肪が落ちれば基礎代謝がおのずと上がり、寝ていても勝手に脂肪を燃焼できる体質になれるということです。

1日のエネルギー消費量の割合と、基礎代謝の内訳
出所=『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』

■“水分の摂り方”を変えれば肝臓から脂肪が落ちる

肝臓から脂肪を落とすためには食事を制限したり、運動をしたりしなければならず、「なんだか大変そう……」と思いがちです。しかし、ガマンせず、お金もかからず、効率よく代謝を促して、脂肪を落とす方法があります。

それが、「1日1.5Lの水を飲む」ことです。

私たちの体の55〜60%は水分が占めています。血流の多い肝臓にはさらに多くの水分が含まれます。しかし、脂肪組織の水分含有率は33%程度。つまり、体に脂肪が増えると水分含有率が減っている状態に。脂肪が多い人はやせている人よりも蓄えている水分量が少ないのです。これと同様のことが肝臓でも起きています。

忙しくて水分を摂取する時間がない、水を飲んだら太りそうという理由で水分摂取量が少ないと、体は脱水状態となって、代謝機能は低下します。その結果、エネルギーを消費しにくい“太りやすい体質”になってしまうのです。

成人は1日で平均、尿や便から1.6L、呼吸や汗から0.9Lの合計2.5Lほどの水分を失います。一方で、食事から約1.0Lの水分を摂取でき、体内で作られる水が300mlほどあるため、摂取すべき必要最低限の水分量は1.2Lということになります。

ただ、肝臓から脂肪を落とすには1日1.5Lを基準にするのが理想です。

というのも、水を飲むことで一時的に代謝率が上昇し、エネルギー消費が増加することが科学的に証明されているから。さらに、腸の動きも活発になるため、便秘の改善にもつながります。排泄機能が高まれば、脂肪を落としやすくなるのは当然のことです。

■「水分プレローディング」で脂肪が落ちる

肝臓から脂肪を落とす水の飲み方のポイントは“水を食前にコップ1杯飲む”こと。この方法を「水分プレローディング」と呼んでいます。プレとは「事前」、ローディングとは「補給」を意味し、「水分を事前に補給する=食前に水を飲むこと」になります。

体内の塩分濃度が上がると、体は水分不足で飢餓状態と認識し、脂肪をため込もうとする生体システムが自動的に働きます(※)。だから、食事によって塩分濃度を上げすぎないように水を飲んでおけば、余計な脂肪の蓄積も防げます。しかも、食前に水を飲めば満腹感が早まるので、食事量を減らす効果も期待できます。

※Natalia Rakova, et al.(2017). Increased salt consumption induces body water conservation and decreases fluid intake. Journal of Clinical Investigation. 127(5):1932-43.

「水分プレローディング」の効果

満足感を得やすい
食前に水分を摂取することで、満腹感が早く訪れます。食事量が自然に減って、食べすぎを防ぎやすくなります。

間食が減る
水を事前に飲むことで食事の満足度が高まり、次の食事までの間食を減らしやすいという報告があります。

エネルギー消費を増やせる
水を飲むと一時的に代謝効率が上がり、エネルギー消費が増加。食べても、脂肪を蓄積しにくい体質に変わっていきます。

■肝臓を元気にする水の飲み方5つのポイント

1 こまめに摂取する

一度に大量に飲むのではなく、こまめな水分摂取が効果的。ちょこちょこ体を潤すことが、絶え間ない代謝を促して肝臓から脂肪を落とす重要なカギ。起床後にコップ1杯、午前中に500mlを数回に分けて飲み、午後に500mlを数回に分けて飲み、入浴の前後にコップ1.5杯の水を飲むようにすると、習慣にしやすいでしょう。食前の水分摂取もお忘れなく!

1日の水の飲み方モデルケース
出所=『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』
2 常温か白湯を飲む

冷たい水は胃腸を冷やして消化・吸収を妨げやすい。内臓が冷えると代謝が下がりやすいので、常温か白湯で飲むことをおすすめします。

3 汗をかくときは水にたくあん2枚をプラス

たくさん汗をかくからとスポーツドリンクを飲むのはNG。500mlに糖質23g以上(スティックシュガー8本分相当)含まれるものもあり、脂肪肝の改善には向きません。その代わりに0.6g分程度の塩分をとれるたくあん2枚をプラスすれば、脱水症状を防げます。

4 無糖の炭酸水で代用可
尾形哲『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(KADOKAWA)
尾形哲『専門医が教える 1分で肝臓から脂肪が落ちる食べ方決定版』(KADOKAWA)

砂糖を含まない炭酸水なら、水の代わりにしてOK。お腹が膨らむので、食べすぎを防ぐ効果も期待できます。ただ、1日1.5Lの水分摂取量は必須。量を飲みづらい場合は、普通の水も含めて合計1.5Lの水を摂取してください。お茶やブラックコーヒーも含めてかまいませんが、緑茶やコーヒーには利尿作用があるので1日コップ3杯までに。

5 トイレに行くたびに飲む

トイレ後すぐに水を飲まないと体に不具合が起こるわけではありません。ただ、水分摂取を思い出しやすいタイミングなので、“出したら飲む”を習慣づけると、飲み忘れを防ぎやすくなります。

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尾形 哲(おがた・さとし)
肝臓外科医
長野県佐久市立国保浅間総合病院外科部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。1995年神戸大学医学部医学科卒業、 2003年医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、2009年から日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科で生体肝移植チーフを務める。さらに東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、2016年より長野県に移住。2017年スタートの「スマート外来」は肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来。著書に『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』、『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす7日間実践レシピ』『肝臓から脂肪を落とす お酒と甘いものを一生楽しめる飲み方、食べ方』(いずれもKADOKAWA)などがある。

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(肝臓外科医 尾形 哲)

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