「財布を3つ持つ」のは多すぎるのか…人気ポッドキャスト番組で語られた2人の女性が"見ている世界"の違い
プレジデントオンライン / 2024年11月1日 16時15分
※本稿は、ジェーン・スー×桜林直子『過去の握力 未来の浮力 あしたを生きる手引書』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
■手に入れるためには具体的にイメージしないといけない
〈サクちゃん(桜林直子)〉
欲しいという感情をないものにしてきたわたしは、今でも「欲しい」が少し苦手です。
使っていたお財布の汚れが目立ってきたので新しいお財布が欲しいな。いいのがあったら買おうと思っていたのに、気がつくと4年が経ってました。
これって、「欲しい」と言いながら実はちゃんと欲しがってないんだと思って、どんなお財布が欲しいのかを具体的に頭の中でシミュレーションしてみました。
まずはサイズ。お札が折れるのか折れないのか。手触りはツルツルかザラザラか。色はどうしよう。細かいところを数分間考えただけで、なんと翌日には新しい財布が手元にありました。
手に入れるためには具体的にイメージしないといけないということが身に沁みてわかった瞬間でした。お財布屋さんに足を運んだり、ネットで探したり、写真を確認したり。すると、俄然現実味を帯びてきます。「欲しい」が「どれを手に入れるか」に変わります。
■「欲しい」ものを書こうとする手が止まるとき
「パートナーが欲しい」と、5、6年思い続けている女性と雑談をしたことがあります。話を聞いてみると、彼女はどうやら8割くらいはパートナーが欲しいと思っている。しかし、実際のところパートナーがいない毎日もそれはそれで楽しいので、いなくてもいいかもという気持ちもある。欲しいと思いながらも、本当に欲しいのか欲しくないのかが自分でもわからなくなっているという状態でした。
このとき、彼女に先ほどの財布の話をして、もし本当にパートナーが欲しいという気持ちがあるなら、具体的にどういう相手を望んでいるのかを箇条書きにしてみてはどう? と提案しました。ぼんやり見てるだけではあっという間に時間が経ってしまうし、出会っていたとしても見逃してしまう。きっと手に入らないよって。
書き出してみると、自分でも意外な項目が出てきたと言って、彼女はその作業を楽しんでくれました。
欲しいものを書こうとすると、なぜか手が止まることがありました。たとえば「赤いワンピースが欲しい」と書こうとすると、似合うかな、必要かな、無駄遣いじゃないかな……という声に邪魔される。「へえ、それが欲しいんだ」とバレるのが恥ずかしいような気持ちが邪魔することもあります。「欲しい」と言ってもいいと自分に許可が出ないとき、書く手が止まるのだと思います。
■「欲」を邪魔するもの
「欲しい」と思うのに許可も何もないと今ではわかりますが、確実に何かがわたしの欲を邪魔していました。いったい何が邪魔していたのでしょう。
小学生の頃から、早く大人になってひとり暮らしをしたいと思っていました。早く職に就くために専門学校に進んだ18歳のとき、父が倒れて4年間の闘病生活がはじまりました。あと1年でひとり暮らしという長年の夢が叶うはずだったのに、直前でなくなってしまいました。家族から離れるために願っていたことが、家族によって叶わなかったことで、より大きく落胆しました。どんなに強く願ってもダメなんだと思い込んでしまうには、十分な出来事でした。
こうした過去の経験から、欲しいと願うことを諦めるクセがついたのかもしれません。そうなってしまったのは仕方がないと今でも思いますが、それでも、「欲しい」と望まなければ手に入らないのが現実です。望むときには腰が引けたように遠慮がちに望むのではなく、具体的にイメージすることで、より手に入りやすくなるのだと思います。
■私の「欲しい」は理由が明快
〈スーさん(ジェーン・スー)〉
先日、私も財布を買いました。今まで使っていた財布はほとんど手元に残してあるので、それらを眺めれば「なぜこの財布を選んだか」を思い出すことができます。加えて、何が不便だったかも思い出します。そのおかげで、財布は常に具体的な理由に基づいて新調できます。
今回財布を新しくしようと思ったのは、チャック付きが欲しかったから。保存しておかなければならない領収書が多く、かといって毎日整理するほど私は勤勉ではないため、膨れ上がった財布の中身がバラバラと鞄の中に落ちてしまう。これはいただけない。よって、チャックが付いていれば大丈夫だろうという目論見です。
前の財布が黒の長財布だったので、今回は明るい色の二つ折りに変えよう。
さらに最近は現金をそう持たなくても大丈夫だから、遊びに行くとき用の手のひらに載る小さいサイズも欲しい。
■用途別に「3つの財布」を買うに至った
こうしたニーズを満たす財布を探した結果、3つの財布を買うに至りました。
ひとつはロイヤルブルーの手のひらサイズの小さい財布。小銭とお札とカードがちょっと入るぐらい。もうひとつは、チャックの付いた二つ折り。色は大胆にも白! 3つ目はカードとお札が少しだけ入れられるもの。小さな小さな鞄で出かけるときのためです。
メインがチャック付き二つ折りで、それ以外はサブ財布。
全部のニーズを満たすのは無理だったので、用途別に3つ。人によっては「多すぎる!」と思うかもしれないけれど、すべてをひとつで満たすことが難しい場合は複数選んだっていいんだよ。
こんな具合に、私の場合、「欲しい」の理由やニーズは明快なので「欲しい」と思ったら、かなりの短期間のうちにきっちり手に入れています。
さて、後日談。手のひらサイズの方はどちらも使い勝手がよく、頻繁に使用しています。一方、二つ折りの白財布は……。なんだかね、とってもかわいい財布なのです。
愛着が思わぬ方向に湧いてしまい、汚れるのが嫌で嫌でしばらく巾着に入れて使用していました。つまり、不便! そこで「ガシガシ使えなければ財布じゃねえ!」とばかりに、私はまた財布を新調しました。
■「サッと切り替えた方がいいこと」はたくさんある
今ふと思ったけれど、人によってはこれを「財布選びに失敗した」と記憶するのだろうな。事前に気づけなかった自分を責めたりするのかも。
いやいや、失敗なわけありません。欲しいものを選んで使ってみたら、思わぬ弱点があったので、別のを新調しただけの話。試してみないとわからないことがあるんだから、これは事前に気づけなくたっていいこと。
新しいのは黒の二つ折りです。チャックは付いていないけれど、ボタンが付いているので問題なし。
突然主語が大きくなりますが、生きることは選択の繰り返しで、つまりはトライアル&エラーの繰り返しでもあります。絶対にすべてをうまくやる必要なんてないし、そうできなかったことで自分の価値が毀損されることもありません。失敗があることは大前提。「違ったわ!」と思ったら、進む道を変えればいいだけなので。いや、それを失敗と定義するのも私は違和感があります。「違ったな」くらいのライトな感覚。
もちろん、物事には粘り強く頑張った方がいいこともある。しかし、サッと切り替えた方がいいことも同じくらいあるのですよ。
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作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ
1973年、東京生まれ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のパーソナリティとして活躍中。著書に『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(第31回講談社エッセイ賞受賞)、『生きるとか死ぬとか父親とか』『おつかれ、今日の私。』『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』などがある。
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雑談の人
1978年、東京生まれ。洋菓子業界で12年の会社員を経て2011年に独立。クッキーショップ「SAC about cookies」を開店(現在はオンライン販売のみ)。noteで発表したエッセイが注目を集め、ドキュメント番組『セブンルール』に出演。20年より「雑談の人」という看板を掲げ、マンツーマン雑談サービス「サクちゃん聞いて」を主宰。著書に『世界は夢組と叶え組でできている』がある。
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(作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ ジェーン・スー、雑談の人 桜林 直子)
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