知らないだけで年40万円の損になる…「ねんきん定期便」には載っていない"申請しないともらえない年金"の正体
プレジデントオンライン / 2024年10月25日 18時15分
■要件を満たせば誰でも年40万円もらえる
通常の年金にプラスしておよそ年40万ももらえる年金があるのをご存じですか?
それは、「加給年金」です。要件を満たせば誰でももらえます。ただし、この年金は申請しないともらえません。そして、みなさんのお手元に届く「ねんきん定期便」には、これらの年金について、何も書かれていません。
「え、本当に?」と驚くかもしれませんが、事実です。もらえる権利のあるものを、忘れずにきちんともらう。これは私が提唱する「年金最大化生活」の重要なポイントです。要件は次の通りです。
● 受給者本人(年金をもらう人)
厚生年金、あるいは共済年金(※)の加入期間が原則として240月(20年)以上で、以下の要件を満たす配偶者や子どもがいること。
(※) 共済年金とは、国家公務員や地方公務員などが加入する公的年金の一種ですが、2015年に厚生年金に統合されました。
● 家族
年金をもらう人が65歳になった時点で生計を維持する65歳未満の配偶者、高校3年生までの子ども、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子どもがいること。そして、配偶者または子どもの収入が、年収850万円未満(所得に換算すると、655万5000円未満)であること。
■加給年金は「年金版の家族手当」と言える
少しわかりにくいですね。ざっくりと説明するなら、年齢の異なる配偶者がいる人、または、成人していない子がいる場合で、配偶者と子の年収が850万円以下であれば受給できることになります。
配偶者の性別は問いません。また、同じ年の夫婦は年の差の数カ月分しかもらえないということになります。これは、年金版の家族手当のようなものです。
どれくらいもらえるのかというと、年間で、配偶者がいると23万4800円、子どもがいると2人目までがそれぞれ23万4800円、3人目以降は7万8300円が加算されます。
さらに、配偶者がいる場合は、受給者の生年月日に応じて3万4700~17万3300円の特別加算ももらえます。
これから年金をもらい始めることになる人は1943年4月2日以後の生まれですから、特別加算は17万3300円です。つまり、加給年金の合計額は年間40万8100円になります。申請するだけで、これだけの金額を受け取れるのです。
■65歳の誕生日の前日までに籍を入れることが重要
忘れてはいけないのが、加給年金がもらえるかもらえないかの判定のタイミングです。
加給年金が加算されるかどうか、判定されるのは65歳到達時です。もしも、この時に、妻と死別していたり、別れてしまっていたら、加給年金はもらえません。
また、内縁の妻がいる場合、この時点で内縁関係が証明できなければ、加給年金がもらえません。内縁関係であることがわかる公的な書類を用意しておきましょう。国は提出書類でしか事実を判断できません。
そして、独身の方が、結婚・再婚する場合は注意が必要です。結婚の時期によっては、加給年金の対象外となります。中高年で結婚を検討している方は、結婚の時期を意識することで加給年金がつきます。
具体的には、65歳誕生日の前日までに籍を入れていれば、加給年金が支給されるためとてもお得です。もし、婚姻届の提出が1日でも過ぎてしまえば、1円ももらえなくなってしまいます。機を逃さずに申請してください。
でも、65歳到達時に厚生年金加給期間が20年に達していない、あるいは、あと数カ月で厚生年金加入の期間が20年になるという場合もあるでしょう。
その場合は、65歳以降厚生年金に加入しながら働き続け厚生年金加入期間が20年になった時点で、生計を維持されている65歳未満の妻がいる場合、妻が65歳になるまで加給年金が支給されます。
ここでは、理解しやすいように、年下の妻と表現していますが、法律上は、夫婦は逆の立場でも良いことになっています。
加給年金は配偶者の年齢が65歳に達すると終了します。
■もらえる金額は配偶者との年齢差で決まる
最終的に加給年金がいくらもらえるかは、受給者と配偶者との年齢差によります。年齢差が5歳なら、5年間で約200万円、10歳なら10年間で約400万円、15歳なら15年間で約600万円が年金に加算されることになります。
ただし、加給年金には落とし穴があるので注意してください。
それは、繰下げ受給の待機期間は加給年金をもらえないことです。年金の繰下げ受給とは、通常65歳から受給がスタートする年金を、65歳以降からもらい始めることです。もらう時期を後ろ倒しにした分、もらえる年金額が増えます。例えば、70歳から年金をもらうとしたら、5年間が待機期間となります。
つまり、5年間繰下げた場合、70歳になった時点で配偶者が65歳未満であれば、加給年金はもらえますが、70歳になった時点で配偶者が65歳を過ぎているともらえないということになります。
「どうせなら、繰下げ受給をしたうえで、加給年金をもらえたら助かるのに」
そんな願いを可能にする裏ワザが、実はあります。
それは、国民年金か厚生年金のどちらかを繰下げるという方法です。どちらを繰下げるかというと、国民年金です。国民年金だけを繰下げると、配偶者が65歳に到達するまで、毎年約40万円の加給年金をもらえます。しかも繰下げた国民年金は、1カ月0.7%ずつ増額されていきます。
■4割の人が「知らない」と回答している
配偶者が65歳に到達するまでに5年だとしたら、その間繰下げると、42%の増額。国民年金を満額もらえるとしたら年間81万6000円(2024年)です。それを5年間繰り下げると61万6000円×1.42で、年間115万8000円です。
どうしてこういうことができるのかというと、加給年金は厚生年金に対する加算で、セットで支払われるためです。逆にいえば、国民年金とは連動していないため、繰下げても影響を受けないのです。
加給年金をもらえる要件を満たす人は、ぜひ実行してください。
加給年金は、ねんきん定期便に記載されていないせいか、4割の人が知らないというアンケート結果があります。
年金をもらい始める前なら忘れずに請求することです。また、請求を忘れていた場合でも、気づいたときには配偶者が65歳を迎えていたとしてでも、5年以内であれば、さかのぼって支給される可能性があるので、すぐに請求しましょう。
もらえるものは、きっちりもらっておくことです。
■「申請しないともらえない年金」は他にもある
年金には、60~64歳まで受給できる特別な年金もあります。
それが、特別支給の老齢厚生年金です。
しかし、この年金の請求を忘れている人がとても多いようです。原因は、「年金は65歳から」という思い込み。なかには、繰上げ受給と勘違いしている人もいます。特別支給の老齢厚生年金と、繰上げ受給は全くの別物です。
特別支給の老齢厚生年金は、1985年の法改正で厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに起因します。いきなり65歳からの受給に切り替えると、60歳からもらっていた世代と金額面での格差が生まれてしまうため、その是正のための対策です。移行期間の特別措置としてつくられた制度のため、知らない人が多いのかもしれません。
そして、特別支給の厚生年金も申請しないともらえない年金の一つです。それでも、しっかりもらっている人もいます。知らなかったからもらい損では、「年金最大化生活」は実現できません。
■生年月日と年金加入期間は要チェック
特別支給の老齢厚生年金をもらえる要件は、次の2つです。
一つは、生年月日です。対象となるのは、男性が1961年4月1日以前生まれ、女性が1966年4月1日以前生まれの人です。ただし、女性で公務員として働きながら共済年金の加入期間がある場合は、生年月日の期限が男性と同じになります。
もう一つは、厚生年金(または共済年金)の加入期間です。国民年金の受給資格期間が10年あり、厚生年金に1年以上加入している必要があります。例えば、生年月日が該当する範囲だったとしても、国民年金の保険料だけを払い続けてきた人は、残念ながら、特別支給の老齢厚生年金はもらえません。
例えば、結婚前に3年間だけ厚生年金に加入し、結婚後は第3号被保険者だった人は、特別支給の老齢厚生年金をもらえます。
■“申請忘れ”でも5年分はさかのぼって受け取れる
もらえる金額は、現役時代にもらっていた給与や賞与で変わってきます。これを、報酬比例といいます。当然ながら、現役時代の給与が高く、厚生年金への加入期間が長いほど多くなります。また、条件によっては加給年金がもらえなくなるケースもあります。
いろいろ複雑なので正確な金額を知りたい場合は、日本年金機構のねんきんネットにアクセスすることで年金記録、将来の年金見込み額などを確認できます。
ねんきんネットの利用方法がよくわからない人はねんきんダイヤル(0570-05-1165)に問い合わせることも可能です。また、年金事務所で直接聞きたい場合は予約をして行くと確実に受け付けてもらえます。
もらえる年齢になると、誕生日の3カ月前に日本年金機構から緑色の封筒に入った年金請求書が届きます。必要事項を記入して、返送しましょう。もし、受給要件を満たしているのに届かない、紛失してしまったという場合は年金事務所に必ず問い合わせてください。
ちなみに、特別支給の老齢厚生年金について、このような質問を受けることがあります。
「特別支給の老齢厚生年金の請求を忘れていた場合、どうしたらいいですか?」
年金は過去5年分までさかのぼって支給されるので、65歳になる前に請求すると、全額を一括で受け取ることができます。
しかし、60歳から特別支給の老齢年金をもらえる人が65歳を過ぎて請求した場合は、1カ月ずつ時効が生じて受給できる金額が減ってしまいます。忘れていたと気づいたら、できるだけ早く請求しましょう。
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社会保険労務士 YouTuber
年金をはじめとする「老後のお金」をテーマに情報発信を続ける社労士YouTuber。知識や経験のないまま投資を始めて失敗する高齢者が多い現状を変えるべく、「年金最大化生活」を提唱している。かつては大手銀行に勤務し、資産運用のアドバイスを行っていた。自身も20代から資産運用を始め、その運用歴は30年になる。50代に入って子育てが落ち着いたことをきっかけに、社会保険労務士として開業。開業社労士として活動しながら、主婦の経験も生かした生活者目線で専門的な知識をわかりやすく解説する動画も配信。FP2級も保有。
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(社会保険労務士 YouTuber 社労士みなみ)
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