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プレゼンで常勝する人は「結論の書き方」がうまい…説明下手でも資料で賛同を得られる"魔法のフレーズ"

プレジデントオンライン / 2024年10月25日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MIND_AND_I

文章で相手を納得させるためには何を書けばいいのか。リクルートのオンライン学習サービス「スタディサプリ」講師の柳生好之さんは「小論文のテクニックが活用できる。たとえば反対意見をもっている人に自分の『主張』を伝える際は、冒頭にあるフレーズを書けばいい」という――。

※本稿は、柳生好之『どんな試験にも対応可能な書き方が身につく 万能小論文』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■小論文は問題に対して「意見」を述べる文章

そもそも小論文とは何なのでしょうか。それは、問題に対して「意見」を述べる文章です。

このように言うと、「『意見』を述べるだけだったら、小論文は簡単なのではないか」と思う人がいるかもしれません。しかし、「『意見』を述べる」のは、じつはなかなか難しいことなのです。

〈問題〉

次の文章を読んで、あとの問に答えよ。

私は、文章を書くのがあまり好きではない。小学生のころから、読書感想文などは3行くらいしか書けなかった。

問 この文章は小論文だと言えるか。(オリジナル問題)
a 小論文だと言える。
b 小論文だとは言えない。

答 b

どうしてこの文章が「小論文だとは言えない」のでしょうか。それは、「意見」を述べていないからです。

自分の個人的な「体験」だけに基づいた「好き」や「きらい」は、「意見」ではありません。これはただ趣味を述べているだけであり、せいぜい個人的な感想にすぎません。

「意見」というのは、「根拠(理由)」に基づいて述べられるものです。「感想」と「意見」との違いをおさえておきましょう。

たとえば、次のような文章なら小論文だと言えます。

(意見)学生のうちに小論文を勉強すべきだ。

(根拠)なぜなら、小論文で学ぶことは、社会に出てから役に立つからだ。小論文とは意見を述べる文章である。

(くわしい説明)社会に出れば、意見を求められることがある。

この文章は、「小論文で学ぶことは、社会に出てから役に立つ」という「根拠」に基づいて「学生のうちに小論文を勉強すべきだ」という「意見」を述べています。

また、「根拠」を補強するためにくわしい説明を加え、説得性をもたせています。これが「万能小論文」の盤石な構成です。

■まずは「問い」を理解し、「意見と根拠」を考える

〈問題〉

「コミュニケーション」において最も重要なことは何か。あなたの意見を述べよ。(オリジナル問題)

【ステップ1】「設問要求」をとらえよう

繰り返しますが、「小論文」とは、問題に対して「意見」を述べる文章ですね。ですから、まず初めに取り組むべきことは「『設問要求』をとらえる」ことです。

今回の設問は、「コミュニケーション」において最も重要なことを尋ねています。答案には、この設問に対する解答を書きましょう。

【ステップ2】「意見」と「根拠」を考えよう

次に、「意見」と「根拠」を考えましょう。この場合に、「どの意見により高い点数がつくか」を考える人がいるかもしれませんが、「意見」自体には点数はつきません。あくまでどれだけ納得できる「根拠」に基づく「意見」なのかが重要です。

たとえば、「コミュニケーションにおいて最も重要なことは、相手の意見を聴いたうえで意見を述べることだ」という「意見」だけでは点数はつきません。そこに「なぜなら、コミュニケーションとは双方向のものであるからだ」という「根拠」がセットになってはじめて点数がつくのです。

ですから、「意見」だけを考えるのではなく、納得できる「根拠」を思いつくかどうかまで考える必要があります。

■簡単な小論文の答案例

【ステップ3】実際に小論文の答案を書いてみよう

それでは、ここからは実際に小論文の答案を書いていきましょう。それぞれの文には役割(機能)がありますが、今回は「意見」と「根拠」に注目してください。

〈答案例〉

a:コミュニケーションにおいて最も重要なことは、相手の意見を聴いたうえで意見を述べることだ。

b:なぜなら、コミュニケーションとは双方向のものであるからだ。

c:相手を無視して自分の意見ばかりを話すことは、コミュニケーションとは言えない。また、相手の意見を聴くばかりで意見を述べないことも、コミュニケーションとは言えない。

d:自分の意見を述べるとともに相手の意見も聴くというやり取りこそがコミュニケーションである。

この答案例は、それぞれ下記に挙げたa~dの要素から構成されています。

a 意見:読み手に対して伝えたい自分の考え(主張)

b 意見に対する根拠:主張を述べる理由・裏づけ
(※aとbは、原則としてセットで用いられる)

c 根拠のくわしい説明:bの内容の具体化

d まとめ:a~cまでの結論

今回は、「意見」と「根拠」がセットになって「小論文」ができているということがわかってもらえればOKです。

■反対意見の人を納得させるには「具体例」を記入

小論文では「意見」を書く必要があると説明してきました。じつは、自分の「意見」を「主張」と言うのです。

小論文の中心は「主張」と「根拠」ですが、これらを示すだけでは「反対意見」の人は納得してくれません。客観的な裏づけがないからです。

そこで、「具体例」が必要となります。「具体例」にはいくつかの書き方があります。小論文で最も多く使われるのが、「事実」「データ」を用いる方法です。

主張:私は、地域コミュニティの活動が市民の健康によい影響を与えると考える。

根拠:なぜなら、コミュニティ活動に参加することで社会的なつながりが生まれ、精神的な健康が向上するからである。

具体例:たとえば、アメリカ心理学会の報告によると、社会的な支援はストレスを軽減し、うつ病のリスクを低下させると判明している。

「アメリカ心理学会」がストレス研究で有名だというのは、心理学に興味がある人にはよく知られていることです。もし何かを参照しながら書くことが許される状況であれば、「具体例」として「事実」「データ」を入念に調べましょう。

会社の会議で資料を広げて説明をする男性
写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/courtneyk

■データがない場合は「体験」も使える

一方で、「具体例」を挙げる場合に、「事実」「データ」が思い浮かばないこともありえます。その際には、「体験」を「具体例」として書くとよいでしょう。「体験」には、なるべく多くの読み手から共感が得られそうな出来事を選んでください。

主張:私は、地域コミュニティの活動が市民の健康によい影響を与えると考える。

根拠:なぜなら、コミュニティ活動に参加することで社会的なつながりが生まれ、精神的な健康が向上するからである。

具体例:たとえば、私が地域の清掃活動に参加した時には、近隣住民との交流が増え、以前感じていた孤独感が大幅に減少した。

「体験」として書く出来事は、自分の実体験以外にも、他人から聞いた話や、本の中に書かれていた話でもかまいません。

■主張を通したければ「譲歩」しよう

「反対意見」をもっている人に自分の「主張」を伝える際には、その「反対意見」をいったん受け入れる場合があります。このようなテクニックが「譲歩」です。

「譲歩」のポイントは、相手を認めてもよい場面で相手の立場を尊重することによって、こちらの「意見」の重要な部分を通す、という点です。

その際には、「たしかに、~」という形で「反対意見」の人に一歩譲ります。そして、そのあとに「しかし、……」という形で自分の「意見」に転換して「主張」を述べるのです。

たとえば、「オンライン教育の是非」というテーマについて自分の「主張」を述べる際に、「論点」を明らかにするためには以下のような表現を用いるのが有効です。

譲歩:たしかに、オンライン教育はアクセスしやすく、多様な学習スタイルに対応できるという利点がある。

主張:しかし、対面教育には人間関係を築く機会や直接的なフィードバックがあり、これらも非常に重要である。

■冒頭に「たしかに」を書くと話を聞いてもらいやすい

上記の例を見ると、「オンライン教育」か「対面教育」かという「論点」があるとわかります。また、「対面教育」の重要性が説かれていることもわかります。

柳生好之『どんな試験にも対応可能な書き方が身につく 万能小論文』(KADOKAWA)
柳生好之『どんな試験にも対応可能な書き方が身につく 万能小論文』(KADOKAWA)

ポイントは、「オンライン教育」を認めつつ、「対面教育」の重要性を説いているという点です。

「反対意見」をすぐに「否定」してしまう人が多いのですが、真っ向から「否定」されると、相手はこちらの「意見」を聞いてくれません。ですから、「反対意見」を認めつつこちらの「意見」を通すテクニックである「譲歩」を使う必要があるのです。

このように、「譲歩」には「意見」に説得力を加えることができるという長所がある一方、使い方を誤るとかえって「意見」がわかりにくくなるという短所もあります。

とくに、初心者が無理やり「譲歩」を使うと、ミスが起きがちです。以下、典型的なミスを確認しておきましょう。

譲歩:たしかに、対面教育は生徒と教員の直接的なかかわりや社会性の育成に有利である。

主張:しかし、現代ではオンライン教育が最も効果的であり、対面教育は時代遅れであり不要である。

「譲歩」の箇所では「対面教育」を「有利」と評価している一方、「主張」の箇所では「対面教育」を「不要」と断じてしまっています。「譲歩」を使う場合にはこのようなミスが起こらないよう、十分注意する必要があります。

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柳生 好之(やぎゅう・よしゆき)
リクルート「スタディサプリ」講師
難関大受験専門塾「現論会」代表。早稲田大学第一文学部総合人文学科日本文学専修卒。文法・論理を重視する方法論によって得点力を飛躍的に向上させることに定評がある、小論文・現代文指導のエキスパート。著書多数。主要著書に、『大学入試問題集 柳生好之の 現代文ポラリス[1 基礎レベル][2 標準レベル][3 発展レベル]』『大学入試 柳生好之の 小論文プラチナルール』(以上、KADOKAWA)、『ゼロから覚醒 はじめよう現代文』(かんき出版)などがある。

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(リクルート「スタディサプリ」講師 柳生 好之)

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