「朝食はパンだけ」「疲れた脳に合格ラムネ」では志望校に合格できない…栄養士が勧めるパンとお菓子の種類
プレジデントオンライン / 2024年10月23日 15時15分
※本稿は、マリー秋沢『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「朝食にパン」は腸に悪影響を与える可能性
「朝ごはんは、パン派? それとも、ごはん派?」
こんな会話をよくしませんか? あなたの家庭はどちらでしょう。
「忙しくて手間をかけられない」「子どもが好きだから」などといった理由で、朝食にパンを食べる家庭は多いと思います。「とりあえずパンさえあれば、ほかにおかずはいらないからラク」とパン派を貫いている人もいるでしょう。
ですが、これから受験という大きな山を子どもに登り切らせるために、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
じつは、小麦粉でつくられたパンは、脳によくない影響を与える可能性が考えられるのです。
小麦粉には、「グルテン」というたんぱく質が含まれます。パンのフワフワ感、パスタやうどんのモチモチ感こそ、グルテンの働き。
白くてフワフワのパン、モチモチッとコシのあるうどん、とてもおいしいですよね。子どもたちも大好きだと思います。そのおいしさをつくるために、最近の小麦粉は品種改良によってグルテンの量が多くなっています。
ところが、そのグルテンは、腸の粘膜に炎症を起こす可能性があるうえ、継続してとることで体が過敏に反応するようになると、脳に悪影響を与えると報告されています。
脳にまるで霧がかかったようにボーッとし、やる気が起こらず、考える力も落ち、体がズドーンと重くなってしまう。「ブレインフォグ(脳の霧)」と呼ばれるその症状は、グルテンに過敏に反応するようになると、起こりやすいといわれているのです。
授業の1時間目は体がだるくて集中できない。もしくは、給食の次の授業は無力感に襲われてしまう。そんな背景には、もしかしたらグルテンの害があるかもしれない……これは、けっして否定できません。
■ごはんを主食にすると起こる変化
そしてもう1点、「朝食に小麦粉のパンだけ」という選択が、子どもの能力を邪魔しているかもしれない理由があります。
それこそが、本書(『受験メシ!』)でいちばんにお伝えしたい問題点です。
朝食は、英語で「ブレックファースト(breakfast)」。「ブレック(break)」は「中断する、壊す」、「ファースト(fast)」は「断食、絶食」の意味。
つまり、睡眠中の断食状態を破るのが朝食なのです。胃はすでに空っぽの状態。そこに「何」をどう入れるかで、1日の脳の状態は大きく違ってきます。
では、その「何」とは何でしょう? その答えは「糖質」にほかなりません。
糖質とは炭水化物から食物繊維を引いた栄養素の総称です。ごはん、パン、麺類などの炭水化物には、糖質が豊富です。ごはんもパンも同じように糖質は多いのに、なぜ、「朝食に小麦粉のパンだけ」は最悪の選択なのか?
ごはんを主食にすると、味噌汁や納豆、おかずなどを一緒に食べます。
一方、パンが主食の場合、菓子パンだけ、トーストにジャムを塗って食べるだけでも、食事としては十分に成り立ちます。
おかずや味噌汁と一緒にごはんを食べるのか、パンにジャムを塗っただけですませてしまうのか、この違いこそが脳の働きに大きな差を生む可能性が高いのです。
■「集中力がない」「イライラしやすい」の裏に血糖値の変動
受験生をお持ちのお母さん、お父さんに、知っていただきたいことがあります。
それは、血糖値と脳との関係です。
「血糖値」という言葉。親御さんは、よくご存じかと思います。血糖値は血液中のブドウ糖の値であり、一般的には、糖尿病を診断する際の指標となる値です。そのため、問題になってくるのは、中高年以降と思われているかもしれません。
ですが、この血糖値、子どもにも重要な値です。なぜなら、血糖値は脳の働きに大きな影響を与えるからです。
じつは、「勉強しない」「集中力がない」「成績が思うように伸びない」「イライラしやすい」「怒りっぽくなった」「気持ちが不安定」などの裏に、血糖値の変動があるかもしれないのです。
そこで、血糖値と脳の関係をお話しする前に、まずは血糖値そのものについてから説明を始めます。
私たちが食事をすると、食べたものは、消化液の働きによって細かく分解され、小腸から吸収されます。
ごはんやパンなどの炭水化物は、ブドウ糖などの糖類に分解され、血液中に運ばれます。そして、血液中のブドウ糖の量が増えるにつれて、血糖値が上がります。
血糖値が上昇すると、すい臓から「インスリン」というホルモンが分泌されます。インスリンは、細胞にブドウ糖をとり込ませ、血糖値を下げる働きを持ちます。
簡単にいえば、細胞には「糖をとり込むためのドア」があって、インスリンはそのドアを開け、「どうぞお入りください」と糖を招き入れる“ドアマン”の役割。
そして、細胞内にとり込まれたブドウ糖は、エネルギーを生み出すために使われていきます。
■血糖値をゆるやかに上げて、ゆるやかに下げる
通常、栄養バランスの整った食事をした場合、血糖値はゆっくりと上がります。インスリンは、血液中のブドウ糖の量にあわせて分泌されるため、血糖値がゆるやかに上がれば、インスリンもゆっくりと分泌されます。すると、細胞がブドウ糖を招き入れるスピードもゆっくりとなり、血糖値もゆるやかに下がります。
血糖値がゆるやかに上がり、ゆるやかに下がるように食べる――。
これこそが食事の理想形で、子どもの脳とメンタルを良好な状態に整えます。
ところが、食事の仕方によっては、血糖値が急激に上がり、急激に下がるという現象が起こります。血糖値が乱高下してしまうのです。この血糖値の乱高下を引き起こす食事が、炭水化物ばかりの食事、あるいは炭水化物を大量にとる食事です。
ブドウ糖には、ほかの栄養素より消化吸収の「スピードが速い」という性質があります。しかも、空腹時はブドウ糖の吸収がなおのこと速くなっています。
朝食に「小麦粉のパンだけ」「パンにジャムを塗っただけ」という食事が問題なのは、血糖値の乱高下を起こすから。それが脳に大きな負担を与えるわけです。
■ブドウ糖が脳をエネルギーで満たすのは、ほんのわずかな時間
血糖値が乱高下することを「血糖値スパイク」と呼びます。
血糖値の上昇と下降の仕方が、グラフにすると大きな釘のように、急激に上がり、その後、急激に下がることから「血糖値スパイク」と名づけられました。
やる気のなさや集中力の欠如、だるさ、眠気、疲労感、イライラ。こうしたことは、じつはこの血糖値スパイクが引き起こしているケースが多いのです。
空腹時に糖質が多く含まれるものを口にすると、この血糖値スパイクが引き起こされます。たとえば、寝起きにパンだけという朝食スタイルは、血糖値スパイクの原因に。
また、間食にスナック菓子や砂糖たっぷりのスイーツを食べたり、ジュースやスポーツドリンクなどの清涼飲料水を飲んだりしても、血糖値スパイクが起こります。
「おやつにスナック菓子やせんべい、クッキー」「のどが渇いたらジュースやスポーツドリンク」というスタイルが一般的になりつつある現代では、こうした食べ方が、脳に悪影響を与え、子どもが勉強に集中できない原因になっていることに気づかない人も多いかもしれません。
実際、「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」という人もいまだにいます(脳は、ブドウ糖のほかにも「ケトン体」という脂肪が分解されてできる代謝物もエネルギー源にしています)。
しかし、こうした糖質のとり方をした場合、ブドウ糖が脳をエネルギーで満たすのは、ほんのわずかな時間です。
■脳の疲れに「甘いお菓子」は逆効果
では、空腹時にスナック菓子やジュースを飲んで、血糖値が急激に上がると、体内ではどんなことが起こるのでしょうか。
高血糖の状態になると、血管壁が傷つけられてしまいます。「そうなっては大変!」と大量のインスリンが分泌され、手あたりしだいにブドウ糖を細胞のなかに引き入れて、血糖値を下げていきます。
すると、次に何が起こるでしょうか。
正常値より血糖値が下がりすぎてしまうのです。大量のインスリンが、ブドウ糖を必要以上に細胞内に引き入れてしまうからです。この状態を「低血糖」と呼びます。
血糖値の正常値は、70~110mg/dL。臨床的には、70mg/dLになると低血糖とされます。子どもであったとしても、糖質のとり方が悪ければ、血糖値スパイクも、低血糖も起こってきてしまうのです。
低血糖になると、体が危機を感じて、「アドレナリン」という心拍数や血圧を上げるホルモン及び神経伝達物質を分泌します。すると、心身にさまざまな不快症状が現れます。頭痛やめまい、抑うつ感が生じることさえあります。
この状態で勉強するのは大変なこと。にもかかわらず、この状態にあるお子さんを「勉強しない」と叱っている親御さんは多いかもしれません。
もしかしたら、スナック菓子や甘いお菓子、菓子パンなどを「脳へエネルギーを届けさせよう!」と思って、子どもに食べさせている人もいるでしょう。しかし、これは逆効果でしかないのです。
■「血糖コントロール」を制す者は受験を制す
「○○を制す者は受験を制す」といいますが、栄養の専門家である私は、
「血糖コントロールを制す者は受験を制す」
とお伝えしたいと思います。
「勉強しなさい」という親の一言は、子どものやる気を削いでしまいかねません。
対して、血糖コントロールは、子どものやる気や能力を高める効果があります。
メンタルを安定させ、受験を乗り切るために必要な高い精神力を築いてくれます。前向きに勉強できるようになるので、成績もグングン上がっていきます。
血糖コントロールは、受験生を支える親御さんのいちばんの仕事ではないか――大げさではなく、私はそれくらい血糖コントロールが重要であると考えています。
では、「血糖コントロール」とは、いったい何なのでしょうか?
血糖値がゆるやかに上がり、ゆるやかに下がるような食事をすることです。
血糖値はゆるやかに上がれば、ゆるやかに下がります。インスリンが必要以上に働くことがないからです。そのため、低血糖に陥ることもありません。
体内ではつねに必要なエネルギーがつくられ、脳にも十分なエネルギーがある状態のとき、脳は意欲的に働きます。思考はポジティブになって、記憶力も高まります。
もちろん、メンタルも安定し、自分の未来を見据えて「今こそがんばるときだ」と前向きに勉強できるでしょう。この脳とメンタルの状態は、食事がつくっているのです。
反対に、血糖コントロールがうまくいかない最たる例が、血糖値スパイクを起こすような食事や間食のとり方です。
■パン好きな子に「パンはダメ」ではなく、この食材を
では、どんな食事が血糖値スパイクを起こし、脳の働きを低下させるのか?
その筆頭が、朝食に小麦粉のパンだけ、もしくはトーストにジャムを塗っただけ、という食事です。ほかには、うどんだけ、パスタだけ、ピザだけ、カレーライスだけ、ラーメンだけ、ファーストフードだけ、丼ごはんだけという食事。前述したように、スナック菓子やジュースを間食にとることもその原因になります。
つまり、炭水化物ばかり、あるいは大量の炭水化物を一度にとるような食べ方は、血糖値スパイクを引き起こしてしまうのです。
ときどき、「健康管理のために毎朝野菜ジュースを飲んでいます」という人がいますが、市販の野菜ジュースには、糖質がたっぷり含まれる商品が少なくありません。
急上昇した血糖値は、必ず急降下します。それにともなって、脳の働きも低下していき、思考力・集中力が落ちるだけでなく、思考もネガティブになっていきます。
とはいえ、パン好きな子に「パンはダメ」と禁じるのも、ストレスになってよくありません。最近は、白い小麦粉ではなく、全粒粉やまったく別の材料を使ったパンや麺類が増えました。
全粒粉の場合、グルテンは含まれてしまいますが、真っ白に精製された小麦粉よりは、血糖値はゆるやかに上がります。
アーモンドパウダーや大豆粉などでつくったパンや麺類ならば、糖質とグルテンの摂取量を抑えられます。本書では「おから蒸しパン」「卵チーズパン」のレシピを掲載しています。簡単につくれますから、「朝はパン派」の人は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
■「合格ラムネ」「合格キャンディ」は依存性を高める
「合格ラムネ」「合格キャンディ」……。
受験シーズンに入ると、コンビニエンスストアなどには「合格」「必勝」と銘打ったお菓子類が並びます。大学受験では、受験当日に会場の前で、先生がラムネや飴を「がんばれ!」と配っている、という話もよく聞きます。
実際、勉強中にラムネや飴を口にする受験生も大勢いることでしょう。
しかし、ラムネや飴は、血糖コントロールの大敵です。あんなに小さな粒なのに、血糖値スパイクを引き起こしてしまうからです。
たしかに、ラムネや飴を口に入れた瞬間は、血糖値がガッと上がるため、幸福感を得られます。気分が上がり、やる気が出るように感じるでしょう。
しかし、ガッと上がった血糖値は、すぐに急降下を始めます。血糖値が下がっていくとき、気力も落ちていきます。低血糖になると疲労感や眠気に襲われます。それでもがんばって勉強しようとすれば、イライラして、集中できなくなります。
そんな最悪な気分を変えたくて、再びラムネや飴を口にするでしょう。すると、血糖値がガッと上がります。ですが、血糖値が上昇すれば、すぐに低下するのです。
こうしたことを何度もくり返していると、どんなことが起こると思いますか?
ラムネや飴がないと、勉強しようという意欲を保てなくなるのです。
脳は、糖質をとることで幸福感を得られることをよく覚えています。糖質が与えてくれる幸福感とは、脳にとってまさに快感。その感覚を強烈に覚えていて、ブドウ糖が多いものを口に入れるように促すのです。
そして、今度は甘いものがないと、がんばれないという気持ちをつくり出します。脳がブドウ糖に依存性を高めている状態です。
こうなると、甘いものをつねに口に入れていないと、脳が働かないと本人が感じるようになります。
■低糖質で血糖値を急上昇させないお菓子を選ぶ
しかし、本番の受験時に甘いものを食べながら、試験は受けられません。
休憩時間にとったとしても、試験中に血糖値が下がってくれば、思考力や集中力が落ち、疲労感が出てきてしまうことになります。
もちろん、勉強中に何かを口に入れたくなる気持ちはよくわかります。脳が疲労を解消したくて、欲するからです。
では、どうすればいいのでしょうか?
血糖値が急上昇しないものを選んで食べることです。
たとえば、チョコレートならば、糖質が豊富な甘さの強いタイプではなく、カカオ70%以上の苦味のあるタイプがおすすめ。カカオには、ポリフェノールという、細胞の健康によい成分も含まれています。
キシリトールのガムも、一度に口に入れすぎなければいいでしょう。キシリトールという甘味料は、血糖値の上昇がゆるやかで、しかも虫歯予防に働きます。
おしゃぶり昆布やあたりめなども◎。
「甘いものはダメ」と禁じるのではなく、低糖質で血糖値を急上昇させないお菓子を選ぶ。この選択が、受験という難関を乗り切るためには大切になってきます。
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管理栄養士、調理師、健康料理研究家
一般社団法人日本ニュートリションフーズ協会代表理事。有限会社ビューティーニーズ代表。アメリカ・ミシガン州生まれ。上智大学国際教養学部卒業。元ミスユニバース近畿代表。健康、免疫力維持、生活習慣病予防、アンチエイジング、長寿などをテーマに活動し、充実した食と栄養、ライフスタイルを提案する機関として、2019年に日本ニュートリションフーズ協会を設立、現在に至る。子どもの食育にも熱心で、2022年アメリカの出版社Rowman & Littlefieldから『Eating The Shokuiku Way』を出版。アメリカの子どもの肥満率が40パーセントを超すことに危機感を抱き、日本の食育をアメリカに広げる活動も行なっている。簡単でおいしい糖質オフレシピには定評があり、各地で料理教室や講演会を開催。メディア出演など多方面で活躍中。
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(管理栄養士、調理師、健康料理研究家 マリー秋沢)
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