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焼きおにぎり、トーストの"香ばしさ"に潜むワナ…管理栄養士「子供の脳細胞を劣化させる食べ物」

プレジデントオンライン / 2024年10月24日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ahirao_photo

子供の自律神経を整える食事は何か。管理栄養士で健康料理研究家のマリー秋沢さんは「最近、起立性調節障害を起こし、不登校になる子供が増えている背景に、糖質のとりすぎがあるのでないかという報告がある。夕食で糖質に偏った食事をすると、血糖値の乱高下に振り回され、脳はゆっくり休めない。就寝前の夕食はお茶碗に軽く1杯程度のご飯に、たんぱく質と水溶性の食物繊維をしっかりとるといい」という――。

※本稿は、マリー秋沢『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「糖質をとりすぎる子」は脳細胞が劣化する

子どもの脳は、スポンジのように学んだことをどんどん吸収していけるもの。

そんなふうに思っていませんか?

わが子にそうであってほしいならば、やはり大事なのは血糖コントロールです。

血糖値がゆるやかに上がり、時間をかけてゆるやかに下がっていく。そして、血糖値が下がり切る前に、次の食事の時間がくる――。

こういう食事の仕方をしていくことで、脳は低血糖に陥ることなく、必要なエネルギーを得られます。それによって、脳は安定して働くことができます。

そしてもう1つ、血糖コントロールを行なうための重要な目的があります。

それは、脳細胞の「糖化」を防ぐことです。

「糖化」という言葉をご存じでしょうか。

糖化とは、体のたんぱく質と糖が結びつくこと。その結合が進んでいくと、中間体を経て、最終的に「終末糖化産物(AGEs)」がつくられます。このAGEsこそ、健康を害する大敵。細胞の質を著しく劣化させてしまう悪玉物質です。

「若い子どもの細胞に劣化なんて起こるの?」

と思われるかもしれません。しかし、子どもであったとしても、糖質をとりすぎる食生活は、糖化を引き起こします。

では、糖化が脳で生じると、どうなるのでしょうか?

中高年で問題にされているのが認知症や脳梗塞との関係です。脳にAGEsがたまると、認知症や脳梗塞が起こりやすくなることがわかってきています。

その糖化が子どもの脳で生じたとしたら……。

血管や細胞が若いため、認知症や脳梗塞が起こることはありませんが、記憶力や思考力が落ちることは十分に考えられます。脳細胞に糖化が起こっていれば、働きが低下していますから、学んだことをスポンジのように吸収していくことは難しくなります。考える力を落としては、勉強しても知識を身につけられません。

それほど、糖化が脳の働きに与える影響は大きいのです。

■「焼きおにぎり、トースト」は意識して食べる頻度を減らす

ただし、糖化がAGEsにまで進んでおらず、ごく初期の段階であれば、たんぱく質はもとのきれいな状態にスムーズに戻ることができます。

糖化は、血糖値が高い状態が続いたり、血糖値が急上昇するような状態がくり返されたりすることで、じわじわと時間をかけて進んでいきます。

反対に、血糖値が必要以上に高くなるような状況を引き起こさなければ、糖化した細胞はだんだんと改善されていくのです。

そのために、大事なのは4つです。

1、食後の血糖値を上げすぎず、体内によぶんな糖をめぐらせないこと。
2、血糖値スパイクを引き起こさないこと。

1と2の実現には、血糖コントロールが有効です。

3、体内のAGEsを分解し、排泄できるような食べものをとること。

つい最近まで、「いったん生じたAGEsは排出できない」といわれてきました。ところが現在、糖化を抑えたり、AGEsを分解・排出したりする食べものがわかってきました。

4、焦げた食品はなるべく食べないこと。

料理の焦げはAGEsの一種です。焼きおにぎり、トースト、こんがり焼けたグラタンなど。これらの香ばしさは食欲をそそりますが、体内にAGEsを蓄積させる一因にもなります。ですから、食べる頻度を減らしましょう。

マカロニグラタン
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

「食べてはダメ」と禁じるのではなく、今よりも食べる頻度を意識して減らす。一方で、AGEsを排出できる食品を積極的にとっていきましょう。

こうした日々のちょっとした工夫で、脳細胞を劣化させるAGEsが体内にたまっていくのを防ぐことができます。

■人体でエネルギーをつくる3つの方法

血糖コントロールがいかに大切なことか、ご理解いただけたでしょう。

一方、「糖質の摂取量を減らすと、脳がエネルギー不足になってしまうのではないか」という心配をぬぐえない方も多いかもしれません。

結論をお伝えすると、問題はありません。知っておきたいのは、人の体にはエネルギーをつくる方法が3つもある、という事実です。

1つめは「解糖系」という方法です。私たちが食事から糖質をとると、「解糖系」という回路が動き出し、ブドウ糖を使ってエネルギーを生み出していきます。

2つめは「糖新生」という方法です。体内のブドウ糖量が著しく減ると、体は体内にある別の物質を使ってブドウ糖をつくり出します。これを「糖新生」と呼びます。

3つめは「ケトン体回路」という方法です。ケトン体は、体に蓄えられた中性脂肪や、口からとり込んだ脂質を分解してつくられます。「脂質をエネルギーに変える回路」と覚えてください。

このケトン体は、細胞内にある小器官「ミトコンドリア」に入って解糖系より大量のエネルギーをつくり出します。ミトコンドリアとは、大量のエネルギーをつくり出す「エネルギー産生装置」。その働きが活性化すると、エネルギーの産生量も増大します。

しかも、1つの細胞に存在するミトコンドリアの数は100~2000個も。これらをすべて活性化できれば、エネルギーの産生量を爆発的に増やせます。

勉強に集中するためには、脳がしっかり働けるだけのエネルギーが必要です。そのためには、ミトコンドリアの働きがとにかく重要となってくるのです。

ただし、ケトン体回路は、糖質を大量にとっている状態では働きません。受験メシでは、糖質の摂取量を減らすぶん、良質な脂質をとることで、脳のミトコンドリアの働きを高め、エネルギーをしっかりとつくり出すことを心がけていきます。

■一度に大量の糖質をとることは、体にとって異常事態

私たちの体は、糖質の量が減ると、体内の物質を使って糖質を新たにつくり出します。これが「糖新生」です。この糖新生が、現代の生活では「朝、起きるのがつらい」という状況をつくり出している可能性があります。

そもそも人間の体は、長い進化の歴史のなかで、わずかな糖質で大自然を駆け回れるほどのエネルギーを産生できるように発達していると考えられています。自然界では木の実など糖質源が限られていたからです。

人体がわずかな糖質で元気に働けることは、糖質に対応するホルモンの数を見てもわかります。ホルモンとは、ある特定の器官に対して、情報を伝達したり、作用を及ぼしたりする、体内でつくられる化学物質のこと。

血糖値を上げるホルモンは5種類もあります。これらのホルモンは、体内の糖質量が減ると「ブドウ糖をつくり出して!」との情報を伝達して、糖新生を起こさせます。

これに対し、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみ。人類の長い進化の歴史では、血糖値を下げなければいけない状況はほぼ起こらなかったため、それに対応するホルモンも必要なかったと推定されています。

つまり、現代の食生活のように、一度に大量の糖質をとることは、体にとってまさに異常事態なのです。

■朝起きられないのは「前日の夕食」が原因?

最近、起立性調節障害によって不登校になる子どもが増えています。起立時に体や脳への血流が低下してしまう病気で、自律神経の働きの乱れが原因と見られています。これが朝の起床時に起こると、倦怠感や頭痛、立ちくらみに襲われ、気分が悪くなって、起き上がれなくなってしまうのです。

この疾患の原因が、糖質のとりすぎにあるのではないか、と報告されています。

夕食でごはんをたくさん食べたり、麺類だけ、カレーライスだけといった糖質に偏った食事をしたりすると、血糖値スパイクが起こります。

すると、就寝中に低血糖が生じます。こうなると、次に起こってくるのが糖新生です。体は血糖値を上げるホルモンをいっきに分泌させ、糖新生を急速に起こします。それによって、血糖値が急激に上がります。

血糖値は、急激に上がれば、必ず急激に下がり、しかも低血糖を引き起こします。

こうしたことが、就寝中にくり返されてしまうのです。

それによって、自律神経の働きが乱れます。しかも、血糖値の乱高下に振り回され、脳はゆっくり休めません。そのため、熟睡感を得られないのです。

父親が自宅の寝室で病気の男の子の世話
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

そして、低血糖が起こっている状態で朝を迎えることになります。そのとき、どんな症状が現れているでしょうか。「起き上がるのがつらい」「もっと寝ていたい」という感覚です。

症状が重ければ、フラフラして気分が悪く、頭痛も起こりやすくなっています。この状態では布団から起き上がる気力を持てません。

■スムーズに起床できる前日の夕食3つのポイント

実際、起立性調節障害を食事療法で治療するクリニックもあります。血糖コントロールに注目した食事療法で、劇的に改善すると聞いています。

なお、空腹のまま寝てしまうことも、脳に負担をかけます。体内の糖質の量が減ることで、睡眠中に糖新生が起こってしまうからです。塾で帰宅が遅くなったときにも、夕食は抜かないことが大切です。

そこで、夜はどんなことをポイントに食事をするとよいかをまとめます。

【夕食のポイント】

1、主食をとりすぎない。
お茶碗に軽く1杯程度に。

2、たんぱく質をしっかりとる。
肉、魚、卵、大豆食品、チーズなどの乳製品などのたんぱく源を多めにとる。

3、水溶性の食物繊維が豊富な野菜をたっぷり食べる。
水溶性の食物繊維には、消化吸収をゆるやかにする作用があり、血糖値スパイクの予防に効果的。海藻類、コンニャク、アボカド、豆類、オクラ、山イモ、モロヘイヤ、ナメコ、ニンジン、サツマイモなどに水溶性の食物繊維が多く含まれます。

■受験生の主食は「お茶碗に軽く1杯」が適量

では、主食の「適量」とはどのくらいでしょうか?

その答えを導き出すには、人の体の体組成を知ることがいちばんです。

人の体を構成する成分でもっとも多いのは、水分です。成人の場合で約60%前後。子どもの場合は、水分量がさらに多くなります。子どもの肌がピチピチしてみずみずしいのも、水分量の多さが関係しています。

では、残りの40%弱は何から成り立っているのでしょうか?

三大栄養素から見ると、たんぱく質が約50%、脂質が約47%、糖質が約3%という構成です。糖質はたった3%しかありません。人の体が大量の糖質を必要としていないことは、体組成から考えれば一目瞭然です。

そこで、受験メシでは、ごはんの適量を1回の食事につきお茶碗に軽く1杯程度とします。勉強時間が増えている反面、運動量は減っていると思いますから、エネルギー源として摂取するには、それで十分でしょう。

ただし、単に「糖質の摂取量を減らせばOK」とはなりません。そのぶん、たんぱく質と良質な脂質の摂取量を増やすことが重要です。

マリー秋沢『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)
マリー秋沢『受験メシ! 子どもの「成績を上げる」簡単で確実な方法』(三笠書房)

糖質のエネルギー量は、1g当たり4キロカロリー。これに対して、たんぱく質は1g当たり4キロカロリー、脂質は1g当たり9キロカロリーのエネルギー量があります。糖質の摂取量を減らしても、たんぱく質と脂質の摂取量を増やせば、脳や体がエネルギー不足になる心配はありません。

むしろ、たんぱく質と脂質は血糖値スパイクを引き起こさないぶん、低血糖時に生じるようなメンタル不調も起こらず、食後も精神的に安定した状態を保てます。

ただし、完全に主食を控えるような糖質制限を行なうのはやめましょう。糖質制限は、糖尿病やその予備軍の人には最適な食事療法ですが、育ち盛りの子に行なうと、身体的にも精神的にも多くの問題が出てきてしまうからです。

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マリー秋沢(まりー・あきさわ)
管理栄養士、調理師、健康料理研究家
一般社団法人日本ニュートリションフーズ協会代表理事。有限会社ビューティーニーズ代表。アメリカ・ミシガン州生まれ。上智大学国際教養学部卒業。元ミスユニバース近畿代表。健康、免疫力維持、生活習慣病予防、アンチエイジング、長寿などをテーマに活動し、充実した食と栄養、ライフスタイルを提案する機関として、2019年に日本ニュートリションフーズ協会を設立、現在に至る。子どもの食育にも熱心で、2022年アメリカの出版社Rowman & Littlefieldから『Eating The Shokuiku Way』を出版。アメリカの子どもの肥満率が40パーセントを超すことに危機感を抱き、日本の食育をアメリカに広げる活動も行なっている。簡単でおいしい糖質オフレシピには定評があり、各地で料理教室や講演会を開催。メディア出演など多方面で活躍中。

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(管理栄養士、調理師、健康料理研究家 マリー秋沢)

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