政権交代をしたところで国民の日常は変わらない…泉房穂が提案「5回の選挙で日本を変える」10年シナリオ
プレジデントオンライン / 2024年10月28日 16時15分
※本稿は、泉房穂『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
■政権交代をしたところで国民には変わりなし
現在の日本の社会構造は、「一番上に官僚がいて、その官僚の軍門に政治家が下っていて、その政治家が国民に負担を課す」という、上意下達の構造になっています。政治家は与野党ともに官僚の支配下にありますから、このまま政権交代をしたところで、国民にとっては変わりがありません。
それに加えて、マスコミが官僚の横にいて、政治家を叩くネタを官僚からもらい、検証も批判もなしに、国民に対して垂れ流しています。学者も同じです。テレビや新聞では毎日のように、官僚と結託している御用マスコミと御用学者たちが、「国民の負担やむなし」といった、官僚の側を向いた発言を重ねています。
前回の総選挙である、二〇二一年の衆議院議員総選挙の投票率は、五五・九三パーセントと低いものでした。それでも、曲がりなりにも、自分たちが選んだはずの政治家です。それなのに、選挙で選ばれていない官僚の言いなりになっている惨状です。
私たち国民は、「では、どうすればいいのか?」という話になります。
■上意下達の構造を逆転させる必要性
国民負担率がほぼ五割で、その恩恵となる社会保障も充分でない日本国民にとっては、今まさに社会構造を転換させるときです。
国民の居場所と官僚の居場所を入れ替えて、主権者たる国民が選んだ政治家が、国民の支持に従って、官僚に指示する。マスコミも、主権者たる国民の隣に立って、国民目線で報道をする。
官僚主権国家から、国民主権国家へ。私が現在、いろいろなところで発信している「救民内閣」構想も、このビジョンを実現するための第一のステップです。
石井紘基さんの晩年の著書『日本が自滅する日 「官制経済体制」が国民のお金を食い尽くす!』(PHP研究所、二〇〇二年)には、「構造改革のための二五のプログラム」という改革案があります。その一番目のプログラムが、「既得権益と闘う国民政権をつくる」でした。これはまさに私の救民内閣構想と同じ理念です。二二年前からすでに、石井さんは右左の対立ではなく、上意下達の構造を逆転させる立場で活動されていました。その他にも「徹底した地方分権を断行する」(プログラム一七)、「五年で予算規模を二分の一に縮小する」(プログラム一八)と、令和の大改革にも通じる国家のビジョンを、石井さんは見据えていました。
私は私の戦い方で、石井さんの遺志を継いでいきたいと思っています。
■「国民の味方チーム」で政権を取る意義
とはいえ現実的に考えたとき、救民内閣の実現は、簡単なものではありません。
現在、「七つのステップ」として伝えています。順番でいくと、まず、もっと世論が高まらないといけません。世論が高まり、大同団結して、候補者調整をして、「国民の味方チーム」として、次の衆議院議員選挙で過半数を取る。これは単独過半数である必要はなく、オセロの盤面にたとえれば、黒や白一色でなくてもカラフルな連帯で過半数を占めることで、政権を取ります。
政権を取るというのは、それにふさわしい人物が総理大臣になるということですが、議会の承認を得ないかぎり、総理ひとりでは、方針転換できません。ですから私の考えでは、方針転換を行なうまでに五回の選挙が必要になります。
最初の政権で予算を通そうとしても、おそらく既得権益側の議員は賛成しないでしょうから、解散総選挙をして、「国民の味方チームのふりをした方々」を「本当の国民の味方」に入れ替える必要があります。この二回目の選挙に勝って、予算を通します。
予算を通しても、関連法案は通りません。関連法案を通すためには、参議院の過半数が必要で、二〇二五年と二〇二八年の二回の参議院選挙に勝つ必要があります。こうして、やっと二〇二八年で法律が通るようになります。その間にもう一回衆議院選挙がありますから、結論からいうと、五回の選挙に勝たないと、国家の方針転換のための法律は通りません。
■財務省派の古い政治家を入れ替える
その法律の中には、「国民の負担減」に関するものも、「廃県置圏」に関するものも、「中央省庁の再編」に関するものもあるでしょう。中央省庁の再編の過程で、特殊法人や独立行政法人の改革も行なうことになります。
今の私の考えでは、まず一回目の選挙公約で、一つ目に「食料品などの生活必需品に関しての時限措置における消費税ゼロ」を掲げ、スーパーで買い物をしても、税金がかからないようにします。
公約の二つ目は「子育てや教育の無償化」。三つ目が「ガソリン税のトリガー条項凍結解除」。とりあえずこの政策で一致できる人たちと大同団結して、政権を取るということです。
その後の流れとしては前述のとおり、財務省派の古い政治家を入れ替え、中央省庁の再編を視野に入れ、国民生活が安定するような状況を見据え、断続的に改革を進めていくことになると思います。
中央省庁の再編には、やはり一〇年ぐらいはかかるでしょう。本書では、その青写真をすこしお見せしましたが、実現するには、かなり大変な作業になると思っています。約一〇年の経過措置を見ながら、選挙に勝ち続けて、主要省庁を再編成していくことになるでしょう。
■一票による成功体験がくらしを変える
そして、忘れてはならないのは、この選挙は、私たち国民のためのものであるということです。自分の投じた一票で、支援している候補者が当選する。政権が変わる。消費税がゼロになる。そういった成功体験があきらめを変え、力となり、日々のくらしを実際に変えていきます。
「自分たちが投票すると勝てる」と思うことが大事です。明石市民の勝利はそこから生まれました。自分たちでまちを作り変えてきたという誇りがあり、そのポジティブな気持ちがまわりにも波及していったのです。
できることは投票だけではありません。私たちには参政権があるのですから、立候補だってできます。既得権益側の古い政治家はもう必要ありません。情熱と判断力と責任、そして民衆への愛がある方に、ぜひ政治家になっていただき、国民の側を向いた政治をしていってほしい。そのように私は願っています。
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前明石市長
1963年、兵庫県明石市生まれ。東京大学教育学部卒業。NHKディレクター、弁護士を経て、2003年に衆議院議員となり、犯罪被害者等基本法や高齢者虐待防止法などの立法化を担当。2011年に明石市長に就任。特に少子化対策に力を入れた街づくりを行う。2023年4月、任期満了に伴い退任。主な著書に『社会の変え方』(ライツ社)、『子どものまちのつくり方』(明石書店)ほか。
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(前明石市長 泉 房穂)
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