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CMでおなじみの「老眼ルーペ」は買ってはいけない…眼科医「文字が小さすぎて読めない時、まずやるべきこと」

プレジデントオンライン / 2024年10月26日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

目の健康を保つにはどうすればいいのか。眼科医の平松類さんは「視え方に少しでも異変を感じたら、眼科を受診したほうがいい。老眼だと思ったら実は片目が緑内障で失明寸前だったというケースは珍しくない」という――。

※本稿は、平松類『視る投資』(アチーブメント出版)の一部を再編集したものです。

■「視え方」が少しでも変わったら…

40代以降の人に、特にお伝えしたいことがあります。

もし「視え方」がちょっとでも変わったら。老眼であるかどうかを眼科で確認し、その結果を受け入れ、適切な対応をとることです。

40代未満の人は、やがて通る道ですので、予行練習だと思って読んでください。

老眼とは、それほど大きなテーマです。特にビジネスパーソンにとっては一大事。

老眼は目のパフォーマンス、脳のパフォーマンスにダイレクトに影響します。

誤解なきよう申し上げておきますが、「老眼=悪」というわけではありません。

老眼にまったく気づかないこと、スルーしようとする態度、「気力で跳ね返そう」とする態度などが危険なのです。

「視る投資」の観点からすると、自分の目の変化を早めにキャッチし、先手を打ってケアをするくらいの姿勢が、むしろ◎です。

視え方に異変を感じて不快でいるのに何も手を打たないなんて、仕事のパフォーマンスが落ちる一方でしょう。

■3つの「老眼しぐさ」を見逃してはいけない

さらにいうと、視え方の異変が目の病気の兆候だった場合。せっかくの早期発見、早期治療の機会を逃すことにもなりかねません。

ですから「視え方の異変に気づけた自分はラッキー」というくらいの超前向きなマインドで、老眼を迎えてほしいのです。

それも理想の“目への投資”です。

なぜわざわざこんな話をするかというと、「老眼のサイン」をスルーする人があまりに多いからです。

その証拠に、巷では「老眼しぐさ」という言葉がありますが、ご存知でしょうか。

たとえば次のようなしぐさです。「無意識に」という点がポイントです。

1つでも当てはまったら、老眼のサインと捉えてください(図表1)。

このようなしぐさに気づいたら、老眼鏡などで対処することが大事です。

【図表】老眼しぐさ チェックリスト
出所=『視る投資』(アチーブメント出版)

■「老眼鏡を使うと老眼が余計に進む」はウソ

もし放置をし続けていたら、目のピントを合わせる機能を酷使することになり、あっという間に眼精疲労になってしまいます。

眼精疲労は目の疲れにとどまらず、頭痛、肩こり、吐き気などの全身症状へとつながり、深刻化します。そうなっては、仕事どころではありません。

「でも、老眼鏡を使うと老眼が余計に進んじゃうでしょ? それがイヤなんです」

こんな声をよくいただきます。

でも、それは非常に多い誤解です。老眼鏡をかけたからといって、そのせいで老眼が進行するということはありえません。

老眼とは老化現象の一種ですから、個人差はあるものの誰でも徐々に進むものです。

つまり老眼鏡をかけてもかけなくても、老眼の進行スピードは変わらないわけです。

それなら「視えづらい」「目が余計に疲れる」といった不快感を抱えながら過ごすよりも、頻繁に老眼鏡を変えたとしても、きちんと矯正した「視えやすい」状態で過ごすほうが、あなたの人生にとって“得”になると思いませんか?

眼鏡を試着している男性
写真=iStock.com/Zorica Nastasic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zorica Nastasic

■「100円老眼鏡」=サンダル履きでマラソンするようなもの

ただし、老眼鏡といっても「100円均一」のお店で扱われている「100円老眼鏡」には気をつけてください。

眼科での診察・測定を経て処方箋を出してもらい、それをもとにメガネ屋さんでつくってもらった老眼鏡と、「100円老眼鏡」には天と地ほどの差があります。

(このとき、眼科を受診することで「目に潜む病気がないか確認してもらえる」というメリットがあります。老眼だと思って眼科を受診したら、実は片目が緑内障で失明寸前だったというケースは、実際珍しくありません)

たとえていうと「100円老眼鏡」とは簡易的なサンダルのようなもの。

それに対して、眼科を経てメガネ屋さんでつくってもらった老眼鏡は、ランニングシューズのようなもの。

サンダル履きでマラソン大会に出場する人は、いないはずです。うまく走れませんし、足が豆だらけになってしまうでしょう。

ランニングシューズでないと、マラソンなんてできません。

それくらいの差があると認識してください。

■メガネ屋さんで老眼鏡をつくったほうが「お得」

そもそも「100円老眼鏡」の度数が、あなたにぴったり合っているかどうかは疑問です。数種類の度数から選べる商品もありますが「なんとなく合っている気がするもの」をカンで選ぶわけでしょう?

「100円老眼鏡」をしょっちゅう利用していると、そのたびに目に負担がかかり、目の老化が余計に進み、老眼の進行がより加速しかねません。

「度数調整ができる老眼鏡」もあります。メガネと目の距離を調整できるダイヤルがついていて、それを回すことで度数が変えられるという商品です。

確かに度数は変えられますが、そもそも度数を頻繁に変える必要はありません。

それより、メガネ屋さんで自分に合った度数の老眼鏡をつくったほうがお得です。

また「100円老眼鏡」にせよ「度数調整ができる老眼鏡」にせよ、乱視の補正などはできません。眼科の処方箋をもとに、メガネ屋さんできちんとつくれば、乱視の補正もしっかりと行ってくれます。それは大きな差ですよね。

■「近視の人は老眼にならない」に医学的な根拠なし

テレビCMで世間を賑わせたルーペ(拡大鏡)も、長時間の使用に推奨はできません。

そもそも、老眼鏡とルーペでは使用目的がまったく異なります。

ルーペの機能とは「拡大すること」だけです。

たとえば、少しぼやけて判別しにくい小さな文字があったとします。

これをルーペで拡大すると、文字が大きく視えるので、小さいときよりも確かに判別はしやすくなります。

しかし、このぼやけた文字を判別する作業は脳で行われます。

つまり脳に余計な負荷をかけてしまいます。

トレーニングとしてぼやけたものを短時間視るのはよいのですが、長時間ぼやけたものを視ていると、ぼやけた画像を正しく読み取れるように脳が“補正処理”を続けないといけないため、眼精疲労の原因になります。

目のパフォーマンスも脳のパフォーマンスも落ちてしまいます。

『視る投資』(アチーブメント出版)
平松 類『視る投資』(アチーブメント出版)

また、「近視の人は老眼にならない」という俗説に、医学的な根拠はありません。

近視の人はもともとピントが合う範囲が近方にあるため、老眼になってピントが合う範囲が狭くなっても、初めの頃は「近くが視えにくい」と感じにくいのです。

ただ、眼鏡などで矯正した状態では、一般の人と同様に手元が視えにくくなります。

ですから、近視があって「手元を視るときは眼鏡を外すようになった」という人は、老眼になっていると考えたほうがいいでしょう。

酷に聞こえるかもしれませんが、近視があろうがなかろうが、老眼からは誰も逃れられません。

でも「視え方」を正しく矯正することで、人生を好転させることはできます。

【参考文献】アイフレイル啓発公式サイト

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平松 類(ひらまつ・るい)
眼科医 医学博士
愛知県田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ! 講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。

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(眼科医 医学博士 平松 類)

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