靴底を見れば「姿勢の悪い人」が一発でわかる…運動指導のプロが教える「骨盤をゆがめる生活習慣」
プレジデントオンライン / 2024年10月26日 17時15分
※本稿は、中野ジェームズ修一『すごい股関節 柔らかさ・なめらかさ・動かしやすさをつくる』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■筋肉が変わると、骨盤の向きも変わる
股関節のトラッキング(関節の動き方や動きの軌跡)が不安定になる要因の1つに、骨盤の「ゆがみ」があります。
ここでいうゆがみとは、骨そのものがゆがんで変形しているのではなく、骨盤が前方に傾いたり後方に傾いたりする状態です。前者を「骨盤前傾」、後者を「骨盤後傾」といいます。
ゆがみの背景には、運動不足や活動量の低下による筋力や柔軟性の低下があります。
骨盤には、大腿四頭筋やハムストリングスをはじめ、下肢の筋肉の多くが付着しています。ですから、それらの筋肉が硬くなったり、力を出せなくなったり、バランスが悪くなったりすると、骨盤の向きも変わってしまうのです。
骨盤のゆがみは姿勢にも現れます。骨盤が過剰に前傾している人は腰を反った姿勢になりがちで、後傾している人はおなかの力が抜けた姿勢になりがちです。つまり、骨盤過前傾の人は、まっすぐ立っているつもりでも股関節が少し屈曲していて、骨盤後傾の人は逆に少し伸展しているのです。
■まっすぐ立っていない人のリスク
本書の第1章で、人間の股関節は直立二足歩行に完全には対応できていない、という話をしました。まっすぐに立った状態だと、大腿骨頭の球状の部分が骨盤の寛骨臼から少しはみ出ていて、骨の形状という観点から考えると、四つん這いの姿勢のほうが安定するというわけです。
ところが、股関節の軟骨という観点から考えると、まっすぐ立った姿勢のほうが有利です。まっすぐ立った姿勢だと、股関節の軟骨が最も厚いところに圧力がかかるからです。
ということは、骨盤が前傾して股関節が屈曲している人は、軟骨が薄いところに圧力がかかり、骨と骨がぶつかる衝撃で違和感や痛みが生じる恐れがあるということになります。
■職場で「座りっぱなし」は要注意
骨盤が過前傾している人にはどのような特徴があるでしょうか。
まず、病気やケガなどで股関節を動かす機会が減ってしまい、屈曲した状態で固まってしまった「屈曲拘縮」の場合が考えられます。骨盤の前側にある大腰筋や腸腰筋が硬く縮んでしまい、骨盤が前に引っ張られて前傾するのです。デスクワークが多くて座りっぱなしの時間が長い人も注意が必要です。
ほかには、高いヒールの靴や厚底靴をよく履いている人も、骨盤が前傾しやすくなります。ヒールを履くと、かかとが上がり、骨盤も前に倒れます。そのままでは体が倒れてしまうので、上体を起こすために腰が反った状態になります。
「昔はヒールで歩くのがつらかったけれど、今はスニーカーより楽なんだよね」と言う人は、ヒールを履いた状態に体が適応した結果、反り腰の姿勢がふつうになってしまったのです。その状態が快適ならば問題ないように思われますが、体の構造から考えると、あとで股関節や腰、膝などを傷めるリスクもあります。
■運動しすぎも、運動しなさすぎも危ない
もう1つ、骨盤が過前傾しがちなケースとして、「アスリート」が挙げられます。
骨盤のゆがみは運動不足が原因と思われがちなのですが、実は運動のしすぎも問題になるのです。体の使いすぎによる疲労から筋肉に炎症が起き、硬くなる現象を「短縮」といい、筋肉量が多いアスリートにも起こります。
アスリートは、非常に長い時間にわたって、股関節が屈曲した状態で運動します。例えば長距離ランナーにも骨盤過前傾の選手は多く、それが仙腸関節周辺の疲労骨折の原因になっている場合があるのです。特に女性ランナーには、日本代表クラスの選手でも骨盤が過前傾してトラブルを抱えている人が多くいます。
いずれにせよ、股関節のトラッキングを正常にするためには、筋トレやストレッチなどの運動療法が有効です。ただ、骨盤の前傾や後傾の時間が長ければ長いほど、修正には時間がかかります。
40代~50代にもなると、長い年月によりすっかり染みついた体の使い方のクセを軌道修正するのは簡単ではありません。しかし、全身のバランスを見ながら、その人に合った運動に取り組めば、トラッキングを修正していくことは可能です。
■履き慣れた靴の「底」を見てみると…
フィジカルトレーナーとしてクライアントの指導をする際には、その人の「靴底」が参考になります。靴底の減り方を見れば、ふだんどこに体重を乗せて歩いているのかがわかり、体の使い方のクセが見えてくるからです。
靴底と同様に、足の裏を見てみると、マメができている位置や皮膚の厚みから、やはり体重の乗せ方がわかります。
歩いているときの体重の乗せ方は、そのままふだんの姿勢に反映されます。ここでは、代表的な4タイプの靴底の減り方と、その典型的な姿勢を紹介しましょう。靴底なんてまじまじと見たことがないという人は、履き慣れた靴の裏を見てみてください。自分の歩き方や姿勢と向き合うきっかけになります。
私は街中でジョギングをしている人や歩いている人を眺めては、つい「この人は前側に体重が乗りがちだから、多分、足裏はこうなっているんだろうなぁ」と分析してしまいます。
足裏にはその人の体の使い方や生活習慣が現れます。それだけにトレーナーとしては非常に興味深いのです。逆に、足裏や靴底を見ずにその人の体の使い方を評価するほうが遠回りだと思います。
■股関節が外側に引っ張られているO脚
姿勢は、ふだんの体の使い方が反映されたものであり、股関節にも影響を及ぼします。
靴底の外側がすり減っている人の典型的な姿勢は「O脚」です。大腿骨が外側に開いた状態で骨盤の寛骨臼にはまっているため、股関節は外側に引っ張られている状態です。膝から下はそれを補正するように内側に倒れていくため、脚の外側に重心がかかり、靴の外側がすり減っているのです。
■X脚は男性よりも女性に多くみられる
逆に、内側がすり減っている人は「X脚」になります。大腿骨が寛骨臼から内側に向かって伸びているため、左右の膝が近づくレッグラインになるからです。膝から下は外側に開き、重心が体の内側に来ます。骨盤が男性よりも広い女性に多く見られるものです。
前側がすり減っている人は「反り腰」です。骨盤が前傾し、股関節が常に少し屈曲しています。重心が前に来るため、つま先側が減りやすいのです。足を踏み出す際に股関節が詰まりやすく、ヒールの高い靴を履く人、運動不足の人、体幹が弱い人に多いのが特徴です。
■デスクワークばかりの人は猫背になりやすい
後ろ側がすり減っている人は「猫背」です。骨盤が後傾し、股関節の位置が正常よりも前に位置しています。重心は後ろ寄りになるため、靴のかかと部分だけが減っていきます。股関節の伸展の動きが苦手で、デスクワークばかりの人や、高齢者に多いといえます。
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フィジカルトレーナー
1971年生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士。アディダス契約アドバイザリー。日本では数少ない、メンタルとフィジカルの両面を指導できるスポーツトレーナー。トップアスリートや一般の個人契約者の、やる気を高めながら肉体改造を行うパーソナルトレーナーとして数多くのクライアントを持つ。現在は大学駅伝チームのトレーナーも務めつつ、講演会なども全国で精力的に行っている。おもな著書に、『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(だいわ文庫)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)などがある。
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(フィジカルトレーナー 中野 ジェームズ 修一)
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