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「お話しさせていただきたいと思います」は最悪…知らぬうちにあなたの評価をズルズルと下げる「過剰敬語」

プレジデントオンライン / 2024年10月29日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

人前で話す際に気をつけるべきことは何か。長崎大学准教授の矢野香さんは「心理学的に評価が下がると立証されている話し癖がある。それに該当するかどうか、自分が話す際の癖を知っておくとよいだろう」という――。(第2回)

※本稿は、矢野香『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■髪の毛を触る、服や眼鏡を触る

人前に出ると、自分の悪い癖が出てしまうことがあります。いつもなら気にならない程度の癖なのに、緊張することで強く出てしまう。とくに最初の第一印象を形成する段階では悪癖が出ないようにコントロールしたいものです。ここからは、あなたの評価を下げることが心理学的に立証されている話し癖を紹介します。

話し癖は自覚できていないことも多いものです。以下の話し癖に心当たりがある方はもちろん、ない方も周囲の方に自分が当てはまっていないか確認してみましょう。癖が出ないようにするための方法も提案します。ぜひ試してみてください。

やってはいけない話し癖① 自己接触 腕組みを防ぐ魔法のアイテム

「自己接触」とは、自分を触る行為のこと。人前に出てすぐに自分の顔や髪の毛、服や眼鏡などの装飾品の一部を触る癖です。頬に手を当てたり、腕組みしたりする動作も含まれます。

ある研究では自己接触の中でも、とくに髪の毛に触ること、ポケットに手をおくことが聞き手からの印象が悪かったと報告しています。頼りなく感じられたり、不信感を与えたりします。

なぜ人前に出たらすぐに自己接触をしてしまうのか。それは不安やストレスを低下させる効果がある行動だからです。人前に出るという居心地の悪い状態を回避しようとして自己接触をしてしまうのです。緊張しやすい人ほど自己接触をしないための工夫が必要です。

自己接触を避けるためには、最初から何かを持っておくことです。ペンや資料など片手に持ちながら話しても違和感のないアイテムを準備しておきます。プレゼンであればポインターやハンドマイク、演台があればその縁を握るのもお勧めです。

■3分間に41回も「えー」「えっと」

やってはいけない話し癖② 言いよどみ「一文を短く」を心がける

人前に立つと、開口一番「えー」と話し始める方がいます。「えー」「あー」「えっと」「あのー」など、言葉がスラスラと出ずに滞ったときに発する音のことを専門的にはフィラー(filler)と呼びます。これも悪癖のひとつです。聞き手にとってはノイズでしかない不要な言葉だからです。

この言いよどみのたちが悪い点は、自覚がない方が多いこと。あるクライアントは3分スピーチで「えー」「えっと」と言う言いよどみを41回口にしていました。4.5秒に一回「えー」と言っていた計算になります。

それでも本人は自覚がないのが、この言いよどみの困ったところ。聞き手は気になって話の内容に集中できなかったことでしょう。文字起こしを使ったトレーニングを実施したところ、「えー」「えっと」の部分に色をつけられた原稿を見てご本人も絶句しておられました。そして「これはひどい。絶対に直したい」と決意を新たになさったのです。

口を手でおおう
写真=iStock.com/simarik
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simarik

■口を閉じる意識

まずは、このように現実を直視し「やめよう」と本気で思うことが悪癖を断ち切るための第一歩です。言いよどみをなくすには、口を閉じること。

日本人は7割が口呼吸ともいわれています。口呼吸になってしまっている場合、口が薄く空いている状態が続きます。そのため次の言葉を考えながら話すと、「あー」という音が漏れてしまうのです。

話し方トレーニングでは、一文話し終える度にわざと口を強めにぎゅっと閉じることを意識します。口を閉じた状態からは、たとえ次に何を話そうか考えていたとしても言いよどみは起こりません。このトレーニングは一文を短く話すことにも効果があります。

「あー」「えー」と言いよどみながら一文だらだらと長く話すという方(多くの方はこの二つの悪癖を同時に行います)は、一度に直すチャンスです。

■『自己紹介させていただきます』という敬語は、正しいか?

やってはいけない話し癖③ 過剰敬語

私が担当する大学の講義では、初回に受講学生に自己紹介をしてもらいます。ある年度では受講学生80人のうちおよそ99%の学生が「自己紹介させていただきます」と話し始めました。初対面だから敬語を使ったのでしょう。

「自己紹介させていただきます」という敬語は、正しいのでしょうか?

学生たちにそう問うたところ、ほぼ全員が正しいと答えました。あなたはどう考えますか?

答えは、この講義場面では正しくありません。なぜなら「させていただく」は自分がそれを行うことについて、ふさわしいかどうかを相手に判断してもらい許可を得たい場面で使う表現だからです。課題として自己紹介を指示された場合は、「自己紹介します」が正解です。

同じように、話し始めに「させていただきます」と過剰に敬語を使うのは避けたい癖の一つです。「お話しさせていただきます」「ご説明させていただきます」などと、癖として「させていただきます」を使っていないでしょうか。

「させていただく」というのは、敬語の謙譲表現の中でも最高ランクの敬意表現です。「お話しします」「ご説明します」で十分。敬語は、使いすぎるとまわりくどく、時に慇懃無礼な印象を与えます。必要最小限で十分に敬意は伝わりますし、知的な印象も与えます。

■「お話しします」「ご説明します」で十分

さらに、「思います」をつけて「お話しさせていただきたいと思います」「ご説明させていただきたいと思います」というのもすぐにやめましょう。不要な「思います」は自信のなさを伝えます。

過剰な敬語や自信のなさを伝える言葉は、相手に優位な立場を譲ってしまうことにもなります。それでは交渉や説得をすることが目的の場合、不利に働いてしまいます。

矢野香『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』(PHP研究所)
矢野香『世界のトップリーダーが話す1分前までに行っていること』(PHP研究所)

×「お話しさせていただきたいと思います」
×「お話しさせていただきます」
○「お話しします」、「ご説明します」

ただし、「させていただきます」が正しいという場面もあります。予定していなかったのに話を聞いていただけるようになったときや、普通はなかなか許されないことであるのに特別に許可をいただいて相手に対して話をしているときなどです。

そのような場面であれば「お話しさせていただきます」は正解です。相手からの許可が必要であるかいなかを判断基準としてください。

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矢野 香(やの・かおり)
スピーチコンサルタント/長崎大学准教授
NHKキャスター歴17年。心理学の見地から「他者からの評価を高めるスピーチ」を研究し博士号取得。政治家、経営者やビジネスパーソンに信頼を勝ち取るスピーチやコミュニケーションを伝授。著書に『最高の話し方』(KADOKAWA)など。

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(スピーチコンサルタント/長崎大学准教授 矢野 香)

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