センスがいい人は自然とやっている…「エレベーター内の気まずい空気」をサラッと変える魔法の"声かけ"
プレジデントオンライン / 2024年11月2日 8時15分
※本稿は山本衣奈子『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■こんなときどうする?1 職場のエレベーターで…
でも、話しかけるタイミングを逃して気まずい空気……
エレベーターに乗った時には大混雑だったのに、だんだん人が減っていき、同じフロアの人と2人きりになりました。あまり話したことがない人だけれど、相手もこちらの存在には気づいている様子。(声をかけた方が良いのかな)と躊躇しているうちになんとなくタイミングを逃してしまい、無言が続いて、微妙な雰囲気……。
あなたなら、どうしますか?
気づかないふりをしたり、スマホを出して意識をそらしたりする
OK
「お疲れ様です」とこちらから声をかける
Recovery(大丈夫!)
その場で会話ができなくても、降りる時に一言言えればOK
■いちばん大事なのは「最後の印象」
顔見知り程度の人に話しかけるのは、相手がこちらのことをどのくらい知っていてくれているかもわからないですし、不安なものです。下手に話しかけて「変な人」だと思われたらどうしよう。「誰でしたっけ?」と言われてしまうのも恥ずかしい。いろいろな考えが行動の邪魔をします。無言の時間が長くなるほど、ますます声をかけづらくなって、結局なにも言えなかった……というパターンも。
そんな時落ち込んだり、自分を責めたりする前に覚えておいてほしいのが、「最後の印象が一番大事」ということです。
■「ピークエンドの法則」で印象を逆転する
心理学の用語に「ピークエンドの法則」というものがあります。これは「ある出来事に対し、人の記憶や印象に最も強く残るのは、感情が最も高まった時(ピーク)と、最後(エンド)の部分である」という法則で、心理学者および行動経済学者のダニエル・カーネマンによって提唱されました。
たとえば、大混雑のテーマパークで、アトラクションに乗るために何時間も行列に並ぶのは、退屈だったり身体がしんどかったりと、大きなストレスになるかもしれません。
けれども、いざ自分の番になり、そのアトラクションに乗ってテンションが上がり、最後はさわやかな気分で降りることができると、その前の行列のつらさより、上がったテンションや終わった時の爽快感の方が強く印象に残ります。だからこそ、長い行列に再び並ぼうという気にもなれるわけです。
つまり、人の印象や記憶というのは、出来事のすべてを通して生まれているのではないということです。ですから、たとえばエレベーターの中で気まずい時間が流れたとしても、最後の印象を意識することで、すべてをリカバリーすることも可能だと言えます。
■大切にしたいのは、去り際の一言
「会話」をしなければと思うほど、なにを話したら良いだろう、なにを聞いたら良いだろうとあれこれ考えすぎてしまうことがあります。
でも、実は「会話」がなくとも、「去り際の一言」があれば、人間関係を円滑に保つことは十分に可能です。たとえば、そのエレベーターを相手が先に降りるなら、「開」のボタンを押しながら「どうぞ」とニッコリする、自分が先に降りるなら、「お先に失礼します」と一言伝えて会釈する、これだけでも相手に伝わる印象は変わります。
相手からの反応や返事を意識しすぎるから、話しかけることが怖くなったり躊躇してしまったりするのです。たった一言で良いので、言葉をそこに“置いてくる”感覚で口にしてみると、「ああすれば良かった」という後悔も少なくしていくことができますよ。
「会話」ができなくても最後の「どうぞ」があれば大丈夫
■こんなときどうする?2 職場のランチタイムで…
つきあいの悪い人だと思われそう……
仕事が一息ついて、ランチタイム。皆さんは誰かと一緒にすごしたい派ですか? できれば1人でいたいと思う派でしょうか? 時と場合、相手にもよる、なんて人もいるかもしれませんね。
そんなつもりはなかったのに、誘いを断ることが続いたら、気まずい距離感が生まれてしまったみたい。
あなたなら、どうしますか?
仕方がないので、諦めて「1人が好き」なキャラを演じる
OK
「次はぜひ」と伝えて、次回また声をかけてもらいやすい状態をつくる
Recovery(大丈夫!)
「ちょっと教えてもらいたいことがあるのですが」「手を貸してもらえませんか」など、小さなお願いから始めてみる
■基本的にはそのつど選べばいいが…
ランチタイムは休憩時間ですから、その時間をどう使うかは基本的に自由です。職場なのだから一緒にすごさなければならないということもなければ、1人ですごすのがあたりまえなんてこともありませんよね。自分の状態や気分に合わせて、そのつど心地の良い方を選べば良いだけです。
とはいえ、1人でいたい気分だからといって、誘いを何度も断っていると、そのうちまったく声をかけてもらえなくなったり、後から輪に入りにくくなったりしてしまう、なんてことが起こったりします。
相手にしてみれば、事情がどうであれ、断られるというのは残念に感じるものですし、ましてやそれが何度も続けば「誘わない方が良いのかな」と思うのも自然なことでしょう。一方でこちらも、声をかけてもらえなくなった、なんてことがあると、つい「嫌われてしまったかな……」と思うこともあるかもしれません。
でも実は、多くの場合「嫌いになった」というわけではなく、「声をかけない方が良いのだろう」「1人でいたい人を無理に誘っては悪いな」と考える、一種の遠慮や思いやりのつもりだったりします。それを早合点して開き直ってしまって、距離感を広げる一方にしてしまうのは、もったいないですよね。
■「ザイオンス効果」で親近感を育てる
本当に1人が大好きで、「むしろ誘われない方が気楽だから、ちょうど良い」という考え方もありですし、それなら話は別です。ただそうではなく、確かに1人でいたい時もあるけれど、そうでない時もあって、できれば生まれてしまった距離感を縮めたいということなら、一気になんとかしようとせず、まず日常的にこちらから少しだけ関わりを増やしていくのがおすすめです。
心理学の理論に、「単純接触効果(ザイオンス効果)」というものがあります。これはアメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが提唱したもので、何度も目や耳にしたり、触れたりしているうちに、だんだんとその対象に対する警戒心が薄れ、親しみや親近感を感じるということです。
たとえば何度も聞いているうちに好きになった曲や、いつも同じ場所で見かけることでなんとなく親近感を覚えたりした人はいませんか? 特別なことがなくても、ただ目や耳にすることが重なるだけで、好意的な感情が生まれることがあるのです。
特に、まだお互いに良く知り合っていないうちは、当然ながら接触回数も少なくなります。そのままでは不安や警戒心が拭いきれないために、ちょっとした行き違いがあるだけで、お互いに過度な遠慮が生まれたりして、距離感は開く一方になりやすいのです。
だからこそ、開いてしまった距離感を埋めるためには、あれこれ悩むより、意識的に少しだけ接触を増やすようにすることが効果的なのです。
■「頼みごと」で距離感を縮める
軽く挨拶を交わしたり、近くを通って会釈をしたりするというのでももちろん良いのですが、距離感を縮めるには、“頼みごとをする”というのが、さらに効果的です。
人には自分を認めてほしいと思う「承認欲求」が根底にあるため、頼られることで必要とされていると感じます。そこで、相手からの頼みごとに手助けをすると、“私はこの人のことが好きだから手を貸したのだ”という気持ちが生まれ、相手のことを好ましく思うことがあります。これは心理学で「認知的不協和理論」と呼ばれています。
■人は手を貸した相手のことを好ましく思う
「不協和」というのは、自分の中で矛盾が生まれるということです。相手のことが嫌いだったら、手を貸したという行為に気持ちと行動の矛盾が生じます。矛盾を感じることは居心地の悪さにつながるので、人にとって好ましい状態ではないため避けようとします。
そこで、「認知」、つまり考え方を転換させようとするわけです。好きだから手を貸したのだと思えば矛盾がなくなり、心地が良いですよね。だから手を貸した相手のことを好ましく思うことが多いのです。
とはいえ、あんまり大きな頼みごとをするのは相手の負担を大きくして、かえって不快な気持ちを生み出してしまう可能性もあるので、あくまでも“小さな頼みごと”をするのがポイントです。
「ちょっと教えてください」
「ちょっと聞いても良いですか」
「ちょっとだけ力をお借りしたいのですが」
もちろん、頻繁すぎて迷惑がられては元も子もないので、なんでもかんでもということではありません。
もしも相手との距離感に悩んだら、なにか困ったことがあった時に、まずは少しだけ勇気を出して、小さなお願いをしてみてください。そうしていくうちにだんだんお互いの好意が高まり、生まれてしまった溝を埋め、たとえば気分に合わせてランチタイムに声をかけ合うことや、仕事や日常のコミュニケーションも、もっと楽になっていきますよ。
「ちょっと教えてほしいことがあるのですが」で、接触回数を増やすことから始めよう
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産業カウンセラー、E-ComWorks代表
「伝わる伝え方」の研究を重ねながらサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。コミュニケーション術の講師として企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う。
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(産業カウンセラー、E-ComWorks代表 山本 衣奈子)
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