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こう言えば相手の怒りがスッと収まる…産業カウンセラーが伝授「弁解を聞き入れない人」に効く唯一の一言

プレジデントオンライン / 2024年11月3日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HbrH

悩んでいる友人を励まそうと「そんなの大したことないよ」と言ったら、相手を怒らせてしまった――。産業カウンセラーの山本衣奈子さんは「失言や不用意な発言をしてしまったときは、うやむやにせずに一度きっちり回収&撤回する方が気持ち良く済むこともあります」という――。(後編/全2回)

※本稿は山本衣奈子『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■こんなときどうする?3 励まそうと思ったのに…

励まそうと思って「そんなの大したことじゃない」と言ったら、
「どうせあなたにはわからないよね」と言われてしまった……

「ちょっと聞いてくれる?」と始まった相談。かなり困っているらしく、真剣に悩んでいる様子。「どう思う?」と聞かれたのだけれど、少しでも気を楽にしてくれたらと「まぁでも、大したことないよ」と伝えたら、「大したことないって、そりゃあなたにとってはそうかもしれないけどさ」となんだかガッカリさせてしまったみたい……。
あなたなら、どうしますか?

NG
「だって、あの人のあれと比べればさ」などと、他の誰かのことや違う出来事と比較して「大したことない」をさらにアピールする
OK
相手の気持ちに寄り添い、話を聞く
Recovery(大丈夫!)
「真剣に悩んでいるのに『大したことない』とか言われたくないよね。ごめん、この言葉は言い換えさせて」と、いったん言葉を回収&撤回する

■つい「大したことじゃないよ」と言ってしまうけれど

「大したことじゃないよ」
「単なる考えすぎでしょ」
「そんなの大げさにとらえすぎだよ」
「そんなことで悩むのは無駄だと思うよ」
「いつもそうやって悪く考える癖があるよね」

相手を励ますつもりで、ついこういう言い方をしてしまうことはありませんか? 根底にあるのは「そんなに悩まないで」という相手を思う気持ちであるにもかかわらず、こういった言い方では、残念ながら伝わりにくいものです。

■相手は「軽く扱われている」と感じてしまう

なぜなら、あなたが心の中でどんな気持ちを持っていたとしても、相手がまず受け取るのは言葉そのものであるため、その印象が、「どうでも良いと思われている」とか、「軽く扱われている」と感じさせてしまうこともあるからです。

相手にとっては、誰かに相談したいと思うほど真剣に悩んでいるのです。それを「軽く扱われた」と感じては、良い気はしないですよね。これでは、相手は「あなたにはわからない」となるのが当然の反応かもしれません。

以前いた職場で、中途入社してきた方に、パソコン作業を教えたことがありました。一通り説明が終わり、1人でやってみるという段階になりました。

ノートパソコンに入力する手
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

しばらくすると「すみません、ちょっとわからないのですが」と聞かれたので、サポートに入ることにしました。見ると、シンプルな作業の部分だったため、私はふと「ここ? これは簡単なんだけどな」とつぶやいたところ、「簡単なことを聞いてすみません。自分は慣れていないので」とかなりムッとさせてしまいました。

私としては、「難しくないから、すぐに覚えられるよ。大丈夫だよ」といったイメージで伝えたかったのですが、私の言い方から相手が受け取ったのは「こんな簡単なこともできないの?」という責める文句としての印象だったようです。

■相手の価値観や気持ちを「判断」してはいけない

そもそも「大したこと」であるかどうかを決めるのは、こちらではなく相手です。相手が真剣に相談してきた時点で、すでに相手にとってはかなり「大したこと」なのです。仮にこちらにとっては「大したことじゃない」と思うようなことであってもです。

人と向き合う時は、相手の価値観や感性、気持ちや感情などを、“判断”するのではなく“尊重”するという意識を持つようにしましょう。それがあれば、不用意な一言が出ることはそもそもなくなっていくはずです。

とはいえ、こちらも人間ですから、気をつけていても、ふと漏れてしまう言葉は誰にだってあることでしょう。もし、ふと口にした言葉が相手の表情を曇らせてしまったと感じたら、一度きっちりとその言葉を回収して、違う言い方に変えましょう。

■言い訳せずにきっちり回収&撤回する

先ほどの例にあった「大したことじゃない」に限らず、失言や不用意な発言をしてしまった時に、次のような行為はあまり良いリカバリーになっていきません。

・「そういう意味で言ったんじゃない」と言い訳する
・「こういう意味で言ったんだ」と理由づけする
・「まぁまぁ、問題はそれじゃないでしょ」とうやむやにする
・「だったら私に聞かないで」と逆ギレする

こういったリカバリーをしようとすると、話や関係が余計にこじれてしまう可能性が高まってしまいます。むしろ不用意な発言だったことを認めて、一度きっちり回収&撤回する方が気持ち良く済むこともあります。

うやむやにしてやりすごすことを考えるのではなく、「○○なんて言い方はすべきでなかった。申し訳ない。さっきの言葉は言い換えさせてもらってもいい?」とはっきり伝える方が、潔くかつ気持ち良く、有効なリカバリーになることもあります。

そのうえで、「さっきの話だけど、聞きながら私はこう思った」と、相手の相談に対する自分の考えをきちんと言葉にして伝えると、不用意な発言へのフォローの気持ちが伝わるだけでなく、「あなたにはわからない」と突き放されるような状況は避けられます。

【point】
「ごめん、さっきの言葉、言い換えさせて」で言い直す

■こんなときどうする?4 「やせたね!」とほめたつもりが…

話題にした内容が、気にしていたことだと後で聞き、
言ってしまったことを後悔……

こちらとしては軽い話題のつもりで言ったことが、意図せず相手を傷つけてしまう。どんなに気をつけていても、残念ながらそういうことは起こり得るものです。

たとえば、ダイエットをしているのかと思い、「やせたね!」とほめたつもりが、実は本人が最近食欲がなくてやせてしまったことをとても気にしていたらしい……。そうと知っていたら言わなかった言葉。その場では本人も周りも特になにも言わなかったけれど、自分の不用意な発言を後悔していたたまれない気持ちに……。

あなたなら、どうしますか?

NG
直接もしくはメールなどで「この前はすみませんでした」と蒸し返して謝る
OK
初めからパーソナルな話題には触れないように話題を選ぶ
Recovery(大丈夫!)
相手に関する“別の話題”について「聞きたい」「知りたい」と伝える

その場で相手の気持ちに気づければ、すぐに謝ることもできますが、案外、相手も気をつかって気にしていないふりをしていることもあります。相手のとりつくろった笑顔に安心して、その気持ちに気づけなかったなんてことも少なくありません。

「失敗した!」と思うほど、「早くなんとかしなければ」と焦ってしまいがちです。いきなり相手のところに走って行って、「気にしていたって聞きました。本当にごめんなさい」なんて深々と頭を下げる。これは一見すると誠実な行動に見えますが、ちょっと冷静に立ち止まりましょう。

「なんとかしよう」とすることが、かえってさらに相手を傷つけてしまうこともあります。そもそもその場で、気にしていることを悟られないように振る舞っている時点で、それは相手にとって隠しておきたい感情なのかもしれませんよね。そこをあえて蒸し返して謝るというのは、相手のためではなく自分のためになってしまってはいないでしょうか。

■自分を守るために謝るのはかえって失礼

いたたまれない気持ちになったから、言ったことを後悔したから、そういう理由で行動しているとしたならば、それは自分のその気持ちをおさめるためにしているということです。相手の傷ついた気持ちに寄り添っているようでいて、実は自己満足のためにしている行動とも考えられますよね。これでは決して、相手に対するフォローにもリカバリーにもなりません。

水面に落ちる水滴と波紋
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

自分を守ろうとすると、逆に同じことを2度してしまうことがあります。たとえば、待ち合わせに遅刻しそうになったけれど、あまり待たせるのも申し訳ないし、ルーズな人間だとは思われたくはないので、到着までの時間を短めに伝えてしまう……なんて経験はありませんか。本当は10分遅れそうなのに、短めに「5分」と伝えるようなイメージです。

猛ダッシュしてみたものの、やはり5分というわけにはいかず、7分で到着したとしましょう。確かに10分遅れるという状態にはなっていませんが、それでもやはり2分の遅刻です。自分を守ろうとした発言のせいで、結局2度も遅刻を繰り返すことになり、さらに信頼を失いかねません。最初から素直に「10分」と伝えていた方がよほど印象は良かったでしょう。

自分を守るための行動は、時に相手に対してさらに失礼であったり、傷つけるようなものであったりするのです。

■「なにもしない」というリカバリー

リカバリーというと、「なにをするか」と考えやすいですが、あえて「なにもしない」ということが必要なケースもあります。あれこれと言葉や行動をむやみに積み重ねることで、リカバリーになるより、かえって話を複雑にしてしまうこともあるからです。

相手が傷ついていたことに後で気づいて、どうしようもなく申し訳なさが湧き上がってきたとしても、わざわざ蒸し返して謝ると、相手にしてみれば「せっかくもう忘れようとしていたところだったのに……」とか「それにはもう触れないでほしいのに……」と、かえって嫌な気持ちが増すこともあります。

ですから、あえてそこには触れずにそっとしておく方が親切になることもあります。急いで同じ話題でなんとかリカバリーしようとするのではなく、次に会えた時に相手が楽しく話したくなるような話題を探す方が、むしろ喜ばれることもあります。

■喜ばしい楽しい記憶で上塗りする

たとえば、その時の会話をよく思い出して、相手が言っていたまったく別のことに触れるようにするのです。

山本衣奈子『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』(日本実業出版社)
山本衣奈子『「言ってしまった」「やってしまった」をリカバリーするコツ』(日本実業出版社)

「そういえばあの時、○○が好きっておっしゃっていましたよね、あの場では伝えそびれてしまったのですが、実は私の家の近くに良いお店があるんですよ」
「昔、□□をされていたことがあるって言っていましたよね。それがずっと心に残っていて、とても興味があるのですが、その話をもっと聞いても良いですか?」

自分の話を覚えていてくれるというのは嬉しいことですし、覚えていてほしくないことには触れずにいてくれるのもありがたいことです。そこで弾む話ができれば、過去の嫌な気持ちも薄らいでいきます。

喜ばしくない記憶は、喜ばしい楽しい記憶で上塗りするのが最も良いリカバリーです。失言は二度としないようしっかり反省しつつ、相手の忘れたいと思う気持ちも大切にできることが思いやりの表れにもなります。

【point】
「なにもしない」という選択もリカバリー

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山本 衣奈子(やまもと・えなこ)
産業カウンセラー、E-ComWorks代表
「伝わる伝え方」の研究を重ねながらサービス業、接客、受付、営業、クレーム応対等の業務にて30社以上に勤務。コミュニケーション術の講師として企業や官公庁を中心に、コミュニケーション研修、プレゼンテーション研修、セルフマネジメント研修、マナー研修等を実施。年間180回近い企業研修や講演を行う。

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(産業カウンセラー、E-ComWorks代表 山本 衣奈子)

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