「急ぎでお願いします」よりも好印象…仕事を頼むのがうまい人が"曖昧ワード"の代わりに使っている言葉
プレジデントオンライン / 2024年11月5日 8時15分
※本稿は、藤田卓也『伝え方で損する人 得する人』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「やってもらって当たり前」の考えは捨てる
職場でもプライベートでも日夜発生しているのがこの「お願い」でしょう。伝え方の基本中の基本ですから、あらゆる場面に応用していけるものです。
まず注意すべきなのは、マインドです。「仕事なんだから、頼み事はやってもらって当然だ」と心のどこかで思ってはいませんか?
何かを伝えるとき、言葉を選ぶのはあなた自身。こうした上から目線なマインドを抱いていると、それは顔や態度に出なくても言葉に出ます。
もし本当にお互いが「やって当然」と思っているのなら、そもそもお願いなんて丁寧なステップを踏む必要はないはずです。やるべきタスクをそのまま共有すれば事足ります。
お願いしなければ、という状況にいる時点で、やってもらって当たり前という考え方は捨てましょう。
お願いによって相手が動いてくれれば、あなたはきっと嬉しいでしょう。例えばプロジェクトに協力してもらえたり、資料ができあがったり、時間がもらえたりとあなたにとって嬉しいリターンが返ってくるからです。
■お願いする場面こそ等価交換を意識する
これはつまり、ギブ・アンド・テイクという観点で見れば、あなただけがテイクしている(受け取っている)状態です。こんな不均衡な状態では、ただお願いしただけで相手のモチベーションが高まるはずがありません。何度かは「仕事だから」としょうがなく引き受けてくれたとしても、長続きしません。
お願いする場面こそ、等価交換を意識しましょう。お願いする相手へ、自分も何か提供できないかを考えてみる。このほんのひと手間で、相手のモチベーションは大きく変わります。
お願いする代わりにこちらも別の仕事を担当する……ということではありません。これでは「私もやってるんだから、あなたもやってくれ」という無言の圧力でしかありません。
代わりに提供するのは、フィードバックやアドバイス、目標といったものです。いわば、ポジティブなパス。相手のスキルに対するポジティブなフィードバックであれば、仕事に対するモチベーションにつながります。短期的で具体的な目標であれば、スムーズなキックオフに役立つでしょう。中身が曖昧になりやすいお願いであれば、明確な目安を数字で伝えるのもいいでしょう。相手にとって、一気に想像しやすくなるはずです。
■お願いに小難しい言葉は必要ない
相手があなたのお願いに応えるとき、役に立ちそうなものは何でしょうか。ついついお願いすることで頭がいっぱいになってしまいやすいですが、ぜひ等価交換マインドでこちらから差し出せるものをしっかり準備しておきましょう。
お願いするときには、センスや語彙力が求められるような小難しい言葉はそもそも必要ありません。毎日のように起きているわけですから、大事なのは、あなたが迷うことなく使えるような言葉を選ぶことです。
ペンでもカバンでも手帳でも、毎日使う仕事道具を選ぶとき、自分にしっくりくるかどうかは欠かせないポイントですよね? 慣れない言葉を使うことは、あなたにとって変なストレスになってしまいます。言葉もツール。無理な背伸びは不要ですよ。
■「自分ならできる」と思ってもらえるか
【損】この仕事お願いできる?→【得】君の力を貸してほしい
人が行動する、その少し手前を想像してみてください。そこにはさまざまなハードルが存在しています。何をやればいいのか分からない不安。物理的な時間のなさ。失敗への恐怖。これらを乗り越えるためのシンプルな方法は、「自分ならできる」と思えるような自己効力感を高めることです。
「君の力を貸してほしい」、この言葉には、その人へのまぎれもない信頼が込められています。スキル、経験、視点。その人だけの大切な武器を頼りにしているという敬意が含まれています。こうしたポジティブな感情は、言葉を通じて相手へと確実に伝わっていくものです。
なぜあなたに頼んでいるのかを、しっかりと言葉にするのも良いでしょう。具体的に言及すると、相手もスムーズに「確かに私が適任かも」と思えるはずです。気をつけていただきたいのは、思ってもいないことを口にすること。あなたがもし、「別にこの人である必要はないんだけど」と感じているのなら、そのときは本当に必要な他の方を探すか、あなた自身で対処してください。思ってもいないことを伝える、それは得する伝え方でも、損する伝え方でもなく、シンプルに嘘ですから。
■「キレイに仕上げて」「いい感じにまとめて」はNG
【損】急ぎでやってほしい→【得】会議に間に合わせたいので15時までにできますか?
理由と具体的な目安を伝えましょう。その前提にあるのは、相手の不安や疑問をこちらが取り除くということです。なぜなら、人は言葉になっていない部分、言葉の裏をつい探ってしまうものだからです。
「楽に稼げる仕事があるよ」と言われたら、あなたは言葉の通り受け取るでしょうか。言葉の裏にある真実や意図を、ついつい勝手に推測してしまうのではないでしょうか。そう、言葉にしていないからこそ、悪い想像の余地が生まれてしまうのです。
相手に変な想像をさせてしまうのが曖昧ワード。実は、「急ぎで」といった時間系だけではありません。「キレイに仕上げて」「いい感じにまとめて」といった品質系もその代表格。「できる範囲で大丈夫」「もう少し広いターゲット向けに」といった加減系も要注意です。あなたの物差しと、相手の物差しは違います。明確にするだけで、相手へのポジティブなパスとなります。
さらに背景も伝えましょう。どうして急いでいるのかを言葉にすれば、相手はこちらの状況を想像することができます。社内打ち合わせのためなのか、それともお客様とお会いする正式な場に向けたものなのか。こうした背景が分かれば、相手にとってはどう動くべきなのかの目安ができます。
■鍵となるのは「受け取る側の視点」
【損】レポート期限を延長してください→【得】時間をいただければ、このレベルまで磨き込めます
相手にとってのポジティブな未来を見せる。これは特に、ネガティブに見えるお願いに有効なアプローチです。
「期限を延長してほしい」というお願いは、一見するとあなたにしかメリットがなさそうです。こういったタイプのお願いは、相手からすると自分本位に感じられやすく、負担だけが強く感じられてしまいやすいものなのです。
重要なのは、依頼する側の視点を補強することではありません。受け取る側の視点こそが鍵です。期限を延長することでどのような利益が生まれるのか? どんな未来を回避することができるのか? ここを具体的に示すと、自分本位だったお願いが両者にとってメリットのあるお願いへと変化するのです。
例えば、「時間をいただければ、このレベルまで磨き込めます」という伝え方なら、相手にとってのメリットにもなっています。これは、結果として相手がより高品質なレポートを受け取れることを約束しているからです。
ほんの少しだけ目線を工夫することで、相手にとってのメリットが伝わりやすくなります。特にビジネスの現場では、スピードはもちろん品質や成果物の完成度も重要視されます。相手の求めるものが時間と引き換えに手に入るのだと伝えましょう。
■意見が出ない会議を変える一言
【損】では意見をお願いします→【得】まずは良い点から挙げていきましょう
参加者が集まり、会議が始まる。そこに一つの提案が持ち込まれます。整理して、みんなで判断していかなければなりません。そんなとき、「ではみなさん、どうぞ意見を」と話を振ってしまうと、場が一瞬硬直することがあります。なぜでしょうか。
それは意見を求められていることが分かっていても、どんな意見が場にフィットするのか空気を読んでしまうからです。意見にはポジティブなものもネガティブなものもあります。受け手次第なので、何を求められているのか考えてしまいます。
そんなときは、今「何を」「どうしたいのか」を明確にすることで、発言のハードルをより下げることができます。例えば「まずは良い点から」という言い方で、相手は具体的な方向性に沿って意見を述べることができます。建設的なフィードバックから始めると、良い面に目を向けることになり場も和みます。
そして「挙げていきましょう」「整理しましょう」などと、今からどういうフェーズが始まるのかを明確にします。ブレストのように気軽にリストアップするのか、本当に重要な意見だけが必要なのか、先に結論の多数決を取りたいのか。この場はこれからこういうルールです、と宣言するイメージです。
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コピーライター
1987年生まれ。広島県出身。京都大学、東京大学大学院を修了。大学時代には京都学生祭典の実行委員長を務め、京大総長賞を受賞。2012年に電通入社。理系で言葉を扱うことが苦手だったものの、新卒でコピーライターに配属。主な仕事にIndeed「仕事さがしはIndeed」シリーズや史上初のワンピース実写化となった「麦わらの一味」シリーズ、日本コカ・コーラ「チーム コカ・コーラ」、スタディサプリ「18の問い」、漁師がつくったモーニングコールサービス「FISHERMAN CALL」など。国内外で20以上のアワードを受賞。最近の仕事に、ファミリーマート「コンビニエンスウェア」ブランドローンチおよびコンセプト、京都髙島屋 S.C. 専門店ゾーン「T8(ティーエイト)」ネーミング。現在はLINEヤフー社に所属。
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(コピーライター 藤田 卓也)
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