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スーパーのブレンド米が安いのはなぜか…専門家が"安い米"を買う前に「必ずチェックを」と促すポイント

プレジデントオンライン / 2024年10月30日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/insjoy

米の値段が上がったぶん、価格に見合うものを選びたい。横浜で3代続く米屋の店主であり、米・食味鑑定士でもある芦垣裕さんは「スーパーなど量販店で売られているブレンド米は安めだが、価格を抑えるために古米を混ぜる場合も。買う前に米粒の品質をチェックしてほしい」という――。

※本稿は、芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■本来のブレンド米の目的はいくつかの品種の弱点を補うため

お米はブレンドされて販売されることがあります。ブレンド米(複数原料米)と聞くと値段の安いお米のイメージがあるかもしれませんが、これは一概にそうとも言えません。

お米は、タンクに入れて精米しますが、異なる生産者のお米だったとしても、同一の品種のお米を混ぜて売る場合は、ブレンドとは呼びません(ただし、生産者限定を謳うお米は、生産者を同一のものにしなくてはいけません)。

お米は柔らかさや粘りなどの食感、香り、甘味やうま味などの味において、品種ごとに様々な違いがあります。お米のブレンドの目的として最も多いのは、それらの弱い部分を補完するというものです。

私のお店では以前、「コシヒカリ」と「ササニシキ」をブレンドして寿司用米として販売していました。配合比率は企業秘密ですが、コシヒカリは長野県飯山市、ササニシキは宮城県登米市のものを使っていました。

このブレンドで重要なのは、米の粒の大きさを同じぐらいのものを選び、精米することです。そうすることで、炊きムラを最小限にできるからです。

さらに、コシヒカリの粘りと甘み、そして長野県飯山地域の一粒一粒にしっかりした弾カのある性質を活かしつつ、ササニシキの柔らかさとあっさりした食感も味わえるようにブレンドしました。炊き上がるとキレイに仕上がり、卸していたお寿司屋さんもとても満足していました。

このように料理に合わせたブレンドは、お米屋が最も得意としていることです。このほかに例えば、味を濃くしたいときは、「ミルキークイーン」に代表されるもち米に近い性質の「低アミロース米」をブレンドすることはよくあります。

■前年に収穫した米は夏になると「古米臭」がしてくる場合も

また、お米は7〜8月頃になると古米臭がしてくる場合があります。このような時に、独特の香りを持つ「香り米」をブレンドしてイヤな臭いを抑えることもできます。

ブレンドに適さないお米もあります。例えば、「ゆめぴりか」などは、食感が他のお米とは違うのでブレンドには適さないと思います。

スーパーなどの量販店で売られているブレンド米は、「価格を抑える」という目的で古米とブレンドしているものもあります。お米の表示欄や袋の窓からお米の粒を見て、品質は大丈夫そうかチェックをしてください。

■いまや45%の家庭が無洗米、なぜ洗わずに炊飯していいのか?

お米は、稲を育てて収穫をしただけでは、私たちの口に入れる形にはなりません。お米の身を穂から取り離す「脱穀」をして、外側の皮である籾(もみ)を除去する「籾摺(もみす)り」をした後、「玄米」の形になります。

そして、玄米には内側の皮である糠がついており、白米にするには糠を取り除く「精米」が必要になります。こうしてようやく白米ができるわけです。

このように、お米が私たちの食べる形になるまでには「加工」が必要になります。また、お米そのものを加工し、米粉や米油、餅、煎餅(せんべい)、日本酒といったものにもなります。さらには、白米を精製する過程で生じた稲藁(いねわら)、籾、糠(ぬか)といったものも様々に利用されます。お米にとって加工とは、切っても切り離せない工程なのです。

皆さんは、無洗米を利用されたことがあるでしょうか。利用されたことがある方は、無洗米がなぜ洗わなくて良いのかを知っているでしょうか。

通常、店舗で売られている精米されたお米は、精米機によって剥がされた糠(肌糠)が微妙に再付着している場合があるので、水で洗ったり研いだりする必要があります。肌糠が付いたままお米を炊くと、糠臭くて美味しくないご飯になってしまいます。

お米を研いでいる手元
写真=iStock.com/Yuuji
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuuji

■米糠を取り除く画期的な精米製法が、無洗米を可能にした

一方、1991年に誕生した無洗米は、洗ったり研いだりする必要がなくなりました。全国無洗米協会の調査によると、無洗米を購入する家庭は約45%だそうです。

改めて確認をしておくと、無洗米とは、お米を研いだり洗ったりしなくても水を加えるだけで炊飯できるように加工したお米のことです。このようにできるのは、精米後のお米の表面に付いている肌糠まで取り除いているからです。

今や無洗米の技術も進歩を遂げ、最新鋭の工場では、精米度合いの低い「分づき米」や「胚芽米」でも無洗米に加工できるようになりました。

では、具体的にどのようにして肌糠を取り除くのでしょうか。

まず、付着した糠を取る「BG精米製法」という製法があります。BGは、Bran(糠)Grind(削る)のことで、別名「ヌカ式」とも言われます。

精米したお米をステンレス製の筒の中でかき混ぜると、粘着性のある肌糠だけが金属壁にくっつきます。この肌糠に別の肌糠が次々と付着して無洗米が出来上がります。このほかにも、水で洗って乾燥させる方法やタピオカに肌糠を吸着させる方法、ブラシや不織布を使って肌糠を取る方法などがあります。

■手間が省けるぶん風味は微減、無洗米をおいしく炊くコツ

そんな無洗米のメリットは、お米を計量して水を入れるだけで炊ける、研ぐための水を節約できる、研ぎ汁が出ないので環境を汚さない、研ぐ力のないお年寄りやキャンプ時にも便利など様々です。

しかし、デメリットもあります。それは、普通精米のお米よりも価格が少し高くなる、甘味・うま味・粘りなどが若干(じゃっかん)少なくなるといったことです。

無洗米を美味(おい)しく炊くには、普通精米のお米よりも少しだけ水を多くすることです。粒が小さくてベタつきが少なく、より乾燥していることが多いのが理由です。また、家庭用の圧力IH炊飯器には、無洗米用計量カップが付属されていることもあるので、ぜひ活用してください。

また、無洗米でもその方式によっては、水に浸してかき混ぜる程度に軽く洗った方がいいものもあります。お米の表示をよく見て美味しいお米を炊いてください。無洗米は糠がないので劣化が進まず、普通精米のお米よりも美味しく食べられる時間が長いとされています。

とはいえ、家庭では2週間から1カ月ぐらいで食べ切る量を買うようにしましょう。高温多湿になる場所で、袋のまま置いておくのはやめ、においの強いもののそばに置かず、密封した容器で保管しましょう。以上の点を守ると味が落ちにくくなります。

■玄米より食べやすく、白米より栄養がある「胚芽米」

お米は、精米によって味が変わるだけでなく、栄養価にも影響を及ぼします。白米よりも玄米の方が栄養価が高いということは、聞いたことがあるでしょう。

こんな話があります。白米の文字を逆にすると「米白」。続けて書くと「粕(かす)」という字になります。白いお米は栄養価が抜けているからカスなのだ、と揶揄(やゆ)する話です。しかし、白米もまったく栄養がないわけではありません。まずは、精米によるお米の違いを確認しましょう。

玄米をキレイに白く精米したお米を「精白米」と呼びます。これに対し、少し(3分ぐらい)ついたお米を「3分搗(づ)き」、もう少し白くすると「5分搗き」、精白米の白さに近くまで精米すると「7分搗き」と呼ばれます。このように、玄米を精米する時に糠や胚芽を残す精米方法を「分搗き米」といいます。分搗き米は数字が大きいほど白米に近くなります。

また、特殊な精米器を使って胚芽(成長して芽になる部分)を残して白米のように仕上げたお米を「胚芽米」「胚芽精米」などと呼びますが、これらも分搗き米の1つです。

胚芽米には規格があり、胚芽の残存率が80%以上で白度34%以上のものが胚芽米として販売できます。

炊いた発芽米
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

■玄米の栄養価はすごいが、糠に農薬が残っていないかチェック

さて、栄養価の点では「玄米」は「白米」に比べ、ビタミン類は約2倍〜10倍、食物繊維は約6倍多いとされています。

ただ、玄米は糠がついており、糠の味と香りが強く出てしまうので一般的には食べにくいとされます。そこで、玄米ほどでなくとも、白米よりも栄養価が高く、白米のように食べやすいお米として「胚芽米」が販売されるようになりました。

玄米
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

ただし、胚芽米も炊き上がりを食べると、甘味が出て美味しいのですが、冷めてしまうと糠臭さが出て食べにくくなります。なお、玄米も冷めると少し硬くなり、やはり食べにくくなります。

余談ですが、残った玄米や胚芽米はおにぎりにして保存し、後日焼きおにぎりなどにすると香ばしくて美味しく食べられます。

また、最近では「発芽玄米」というお米も聞くことがあると思います。発芽玄米は、玄米をわずかに発芽させたお米のことです。発芽させることで、玄米中の酵素が活性化されるので、栄養価は玄米以上にあるとも言われています。

芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
芦垣裕『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

発芽玄米は、玄米を使って家で作ることもできますし、発芽玄米を作れる炊飯器も販売されています。味も良く美味しいのですが、雑菌などが入る場合があるので注意してください。

玄米や発芽米、分搗き米を買う時の注意点として、なるべく農薬を使っていないお米を選ぶことが重要です。

農薬のほとんどは糠につくと言われています。白米だと糠を除去してしまうので、理屈から言って農薬の影響はほとんどありません。しかし、玄米は糠に包まれたままで、農薬の影響を受ける可能性もあります。

せっかく栄養をたくさん蓄えても、農薬がついていたら食べるのを控えたいですね。お気をつけください。

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芦垣 裕(あしがき・ひろし)
米・食味鑑定士、初音屋代表取締役
横浜で3代続く米屋の店主。水田環境鑑定士・調理炊飯鑑定士・おこめアドバイザー。取り扱うお米は、田んぼの自然環境までを自ら確認し、気に入ったお米のみ。米・食味分析鑑定コンクール国際大会の審査員を20年以上務めている。そのほか、お米日本一コンテストin静岡の全国大会、天栄米コンクール(福島県)、栃木県産米食味鑑定コンクール、飛騨の美味しいお米食味コンクールなど、多数のお米コンクールの審査員を務める。また、ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」のお米特集をはじめ、フジテレビ「LiveNewsイット!」など、メディアでもお米に関するコメントを行い、お米の素晴らしさを伝えている。著書に『米ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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(米・食味鑑定士、初音屋代表取締役 芦垣 裕)

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