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キレやすい子どもは「脳の栄養不足」に陥っている…内科医が勧める「子どものイライラに効く食事メニュー」

プレジデントオンライン / 2024年10月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SewcreamStudio

子どもの言動に不安があるという親はどうすればいいか。総合内科医の梶尚志さんは「いつもイライラしている、落ち着きがないといった問題行動は、本人の性格や親の育て方のせいではなく、脳の栄養状態が影響しているかもしれない」という――。

■子どもの暴力行為件数は過去最多に

小さい頃からキレやすく、いわゆる「かんしゃく持ち」。または、授業中、教室を走り回り座って授業を受けられなかったり、友達ができずに学校になじめかったりする子どもが増えています。

文部科学省の調査によれば、2022年度の小・中・高校における暴力行為の発生件数は9万5426件で、過去最多となっています。中でも小学生の暴力行為が増加しており、23年度から25ポイント増加。2015年度から約3.6倍に増えています(※)

※「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」

お子さんのこんな状態に心当たりはありませんか? その状態は、「脳の栄養失調」が原因かもしれません。

・いつもイライラしている
・キレやすい
・落ち着きがない、じっと座っていられない
・集団生活になじめない、友達ができない

■本人の性格や親の育て方が原因?

このような状態を、子どもの性格や遺伝だからとし、なんとなく子ども自身のせいにしたり、「なぜ、こんな子になってしまったの?」とか、「育て方が悪かったのかしら?」と自らの子育ての仕方のせいにして悩んでいる方。一方で理由がわからずに悩んでいる方など、心を痛めている親御さん達は多いと思います。

でも、それは、性格や遺伝、育て方の問題ではなく、子どもたちの栄養状態からきているものかもしれません。

総合診療医として長年小児科診療に携わり問題を抱える多くの子ども達やご家庭を見てきた経験から、このような問題は、栄養学的な問題から生じた結果であると、私は考えています。なぜなら、脳の状態(精神的な状態や神経的な状態)は、脳のホルモン(神経伝達物質)の過不足に影響されるからです。

脳内のホルモン(神経伝達物質)には、やる気を高める興奮系、安定させる抑制系、これらを調整する調整系があり、そのバランスが取れているとき、脳(精神状態)は安定した状態となります。イライラやキレやすいというのは、このバランスが崩れ、興奮系のホルモンが優勢に働いている時に起こります。

つまり、「落ち着きがない」「キレやすい」「じっと座っていられない」「友達ができない」「集団生活になじめない」といった子どもの問題行動には、脳科学的な要因が大きく関与していると考えられています。

■ドーパミンは興奮と抑制、双方に働く

それでは、脳内のホルモンのうち問題行動の引き金とされ、特に注目されているドーパミン、セロトニン、GABAについて見ていきましょう。

① ドーパミン

ドーパミンは、脳内で興奮系と抑制系双方に働くことが知られています。脳内にはドーパミンD1受容体とドーパミンD2受容体という2種類のドーパミン受容体が存在し、それぞれがドーパミンの調節を行っています。これらの受容体の量が少なくなると、ドーパミンの調節がうまく行かなくなり、子どもたちの問題行動につながります。

ドーパミンD1受容体は、注意力や衝動抑制、行動の計画に関わります。栄養素が不足すると、この領域のドーパミン伝達が異常をきたし、結果として興奮が制御できなくなることがあります。また、ドーパミンD1受容体は、報酬や快楽に関わる神経回路(特に中脳辺縁系)に存在し、特定の刺激に対する反応を増幅します。

栄養不足がこの受容体の機能を低下させると、報酬系の調整ができず、過度な刺激を求める異常行動が引き起こされる可能性があります。

■衝動的な行動や感情の爆発につながる

一方でD2受容体は、神経細胞が過剰に興奮しないようにするためのメカニズムで、過剰なドーパミン放出を防ぎ、バランスを保つ働きをしています。これにより、感情や衝動の過剰な反応を防ぎ、行動を安定化させる役割を果たします。

栄養素が不足して、ドーパミンD2受容体が少ないと、ドーパミンの放出が過剰になり瞬間的な報酬や快楽を強く求める行動が増え、これが衝動的な行動や感情の爆発(暴力的な行動、キレやすさなど)につながります。例えば、瞬間的な快楽を求めて、他人を傷つける(暴力的行動)や、自分の欲求が満たされないとすぐに感情を爆発させる(キレやすい)といった行動が見られます。

また、D2受容体は、注意力や集中力の維持にも関与しています。これが不足すると、注意力が散漫になりやすく、感情的な刺激に過敏に反応するようになります。たとえば、教室などでじっと座っていられなかったり、突発的に友達に暴力を振るってしまうなどの行動が起こりやすくなります。

■セロトニンは不足しても過剰でも問題に

② セロトニン

セロトニンは感情の安定や衝動の制御に重要な役割を果たします。感情の調整や他者との関係を築く能力にも影響します。セロトニンが不足すると、キレやすい、感情の制御が難しいといった行動が引き起こされる可能性があります。また、セロトニンが不十分な場合、うつや不安といった精神的な問題も表れやすく、不登校の一因となることもあります。

ASD(自閉スペクトラム症)を持つ子どもたちの約25%において、血中セロトニンレベルが通常よりも高いことが確認されています。このセロトニン過剰症が、脳内の神経発達に影響を与え、社会的なコミュニケーション能力や感情制御に関わる可能性が示唆されています 。

*The serotonin system in autism spectrum disorder: from biomarker to animal models:Neuroscience. 2016 May 3; 321: 24–41.

黒板上のホルモンセロトニンレベル測定装置
写真=iStock.com/pepifoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pepifoto

PETスキャンを使用した研究で、自閉症スペクトラムの子どもたちの脳内でセロトニンの合成率が異常に高いことが確認され、これが自閉症の特徴的な行動(社会的な関与の困難さなど)と関連しているとされています 。

*Altered Serotonin Synthesis in the Dentatothalamocortical Pathway in Autistic Boys:Ann Neurol 1997;42:666–669.

■「GABA入り」チョコが売っているワケ

③ GABA

GABAは、中枢神経系において主な抑制系の神経伝達物質であり、興奮性神経伝達物質(例:グルタミン酸)の働きを抑えることで、神経細胞の過剰な活動を抑制します。この働きにより、感情の安定、行動の抑制、注意の維持などが促進されます。

ですから、GABAの不足や機能不全が、衝動的な行動や感情の爆発といった問題行動に結びつくことが示されています。特に、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やASDの子どもたちにおいて、GABAの機能異常が見られることが研究で確認されています。

GABAの不足は、脳内での興奮性シグナルの過剰な発火を引き起こし、衝動的な行動や過活動が増加します。GABAが十分に機能していれば、神経活動が適切に抑制され、衝動を抑えることができますが、GABAの働きが低下すると、感情や行動のコントロールが難しくなります。

また、GABAは不安感やストレスを軽減する役割を持っています。GABAの不足は、過剰な興奮や感情の爆発を引き起こしやすく、不安やストレスに対する耐性が低下します。これにより、「キレやすい」などの感情のコントロールの問題が発生します。GABAの働きが低下すると、注意力や集中力を持続させることが困難になり、注意欠陥や集中力の持続困難が生じやすくなります。

*Reduced GABA Concentration in Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:Arch Gen Psychiatry. 2012 Jul; 69(7): 750–753.

■「脳の栄養不足」は食事で改善できる

この3つのホルモンを作り出すには、その材料となる栄養素を摂取することが必要です。逆に言えば、栄養素が不足しているとホルモンも十分な量が生成できず、問題行動につながるということです。

以下、3つのホルモンに必要な栄養素を一覧にまとめました。

【図表1】子どもの問題行動につながる3つのホルモンと必要な栄養素

タンパク質、ビタミンB群、マグネシウム、鉄を多く含む食品(魚、肉、卵、豆類、緑黄色野菜など)をバランスよく摂取することが重要です。一方、砂糖や加工食品は、血糖値の急激な変動を引き起こし、落ち着きのなさやイライラを助長するため控えるのが理想的です。朝食をしっかりと摂ることで、集中力や安定した気分を保つことも重要です。

■肉と野菜を同時に摂れるおすすめレシピ

必要な栄養素を効率的に摂取できるレシピを2つ紹介します。

1.サーモンとアボカドのパワーボウル
栄養のポイント
サーモン:ビタミンD、オメガ3脂肪酸→ドーパミンD2受容体、セロトニン
アボカド:マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンB9→GABA、セロトニン
全粒キヌア:ビタミンB群、マグネシウム→ドーパミン、GABA

① サーモンフィレに塩・こしょうを軽く振り、オリーブオイル大さじ1をかけて10分ほど置く。アボカドを一口大にして、レモン汁をかけておく(変色防止)。
② キヌアをさっと洗い、水(1.5倍量)で約15分間煮て柔らかくする。その後、水気を切っておく。
③ フライパンを中火で熱し、サーモンを皮目から焼き始め、片面約4分ずつ焼く。表面に焼き色がついたら、ニンニクを加えて香りを引き立てる。
④ 炊いたキヌア、アボカド、好みの野菜をボウルに盛り付け、上に焼いたサーモンをのせる。レモン汁をかけて味を調えたら完成。

キヌアと生野菜のサーモンプレート
写真=iStock.com/Wirestock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Wirestock
2.鶏むね肉とほうれん草のガーリック炒め
栄養ポイント
鶏むね肉:タンパク質、ビタミンB6→ドーパミン、GABA
ほうれん草:マグネシウム、ビタミンB6、鉄→セロトニン、GABA
ナッツ:マグネシウム、亜鉛、ビタミンB群→ドーパミン、セロトニン
ニンニク:抗酸化作用、ビタミンB6→ドーパミン

① 鶏むね肉は薄くスライスし、塩・こしょうを軽く振っておく。ほうれん草はよく洗い、3〜4cmに切る。
② フライパンにオリーブオイルを中火で熱し、にんにくスライスを加えて香りが立つまで炒める。鶏むね肉を加え、色が変わるまで炒めたら、ほうれん草を加えてさらに炒める。
③ 醤油を加え、全体に味が馴染んだら火を止める。盛り付け後、刻んだナッツをトッピングして完成。

材料を牛肉やズッキーニに変えるのもお勧めです。牛肉にはタンパク質や鉄、亜鉛が含まれていますし、ズッキーニでビタミンB群、マグネシウムが摂れます。

スパイスと新鮮なバーベキュー牛肉
写真=iStock.com/Andreas Häuslbetz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andreas Häuslbetz

■家にこもりっぱなしはセロトニン不足につながる

食事以外にもホルモン不足を改善することは可能です。

規則正しい生活リズムをつくる

安定した生活リズムは、子どもの行動や感情のコントロールに大きく影響します。特に十分な睡眠は、脳の発達と回復に必要です。毎日同じ時間に就寝・起床する習慣をつけ、8〜10時間の睡眠を確保しましょう。

また、日中に太陽光を浴びることは、セロトニン分泌を促進し、気分の安定に寄与します。夕方以降はカフェインや興奮作用のあるものを避け、リラックスした環境を整えることも大切です。

ストレスを減らす遊びや運動の習慣

運動は、ドーパミンやセロトニンを増加させ、ストレス軽減に繋がります。特に有酸素運動や外遊び、自然に触れる時間は、心をリフレッシュし、過剰な興奮や衝動的な行動を抑える効果があります。

毎日30分程度の運動が推奨され、遊びの中で身体を使う時間を設けることが、情緒の安定と集中力の向上に役立ちます。また、家族で一緒に遊ぶことで、親子間の絆も深まります。

親子のコミュニケーションの質を高める

子どもにありのままの感情や思いを表現させ、親がそれをしっかりと受け止めることで、子どもは安心感を得て感情のコントロールがしやすくなります。叱ったり怒ったりするのではなく、努力や行動に対して肯定的なフィードバックを与えることは、子どもの自己肯定感を育て、問題行動を改善するために有効です。

また、親子の時間を大切にし、一緒にいる時間を増やすことで、子どもが抱える不安やストレスも軽減され、集団生活の適応力も向上します。

■スマホ依存、ゲーム依存はやっぱり悪影響

電子デバイス(スマートフォン、ゲーム)の利用を制限する

長時間のテレビ、スマホ、ゲームの利用は、脳に刺激を与えすぎ、集中力や情緒の安定に悪影響を及ぼします。特に寝る前は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質を低下させます。

1日のデバイス使用時間を決め、夜は早めにデバイスから離れ、リラックスできる環境を整えることが推奨されます。代わりに、読書や家族との交流の時間を増やすと良いでしょう。

今回は、増加する子どもの問題行動の観点から見た栄養不足についてお話してきました。

お子さんは皆さんにとって大切なだけでなく、これからの日本を背負っていく社会の宝物でもあります。健康な心とからだで、それぞれが持って生まれた才能を発揮して幸せに育ってほしいです。

そのために大人ができることは、正しい知識のもと栄養満点の食事を用意して愛情をたっぷり注いであげることだと思っています。ぜひ、ご紹介した内容を参考に食・生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

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梶 尚志(かじ・たかし)
梶の木内科医院院長
1964年生まれ、富山県出身。富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。医学博士。総合内科専門医、腎臓専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。著書に『え、私って栄養失調だったの? その不調は病気でなく状態です!』『え、うちの子って、栄養失調だったの? その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)がある。

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(梶の木内科医院院長 梶 尚志)

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