「全国大会出場」のような派手な活躍は必要ない…推薦入試のプロが激推しする"活動プログラム"の種類
プレジデントオンライン / 2024年10月31日 17時15分
※本稿は、小林尚・橋本尚記『提出書類・小論文・面接がこの1冊でぜんぶわかる ゼロから知りたい 総合型選抜・学校推薦型選抜』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■活動実績は派手なものではなくてもいい
総合型選抜はかつてAO入試と呼ばれていました。その時代、とても重要だったのが活動実績でした。かつてのAO入試では、活動実績の優劣で合否がほとんど決まっていました。そのため、今でも「活動実績はとにかく派手にすべき」「華やかにしなければならない」という意見もあります。情報をアップデートできていないまま、AO入試時代のイメージが残っているのでしょう。
実際には、現在の総合型や公募型では実績の優劣だけで合否が決まることはほとんどありません[一部のトップアスリートを対象とした入試(いわゆるスポーツ推薦やアスリート選抜)等をのぞきます]。
では、活動実績は何を書けばよいのでしょうか。答えは「みなさんが一生懸命取り組んだ活動」です。それが部活動であれば部活動を書けばいいですし、委員会であればそう書きましょう。ボランティアでも構いません。
ひとくくりに部活動といっても、かならずしも全国大会や都道府県の大会に出ていなくても大丈夫です。たとえば、部員がおらず廃部の予定だった囲碁部で、文化祭やポスター掲示などを通して宣伝活動を行い、部員を集めて3年間存続させた。このような活動も立派な活動実績です。
その実績の中には、かならずみなさんの強みがあり、志望理由を補強する材料が存在します。みなさんの強みをアピールできるものであれば、実績の見た目(全国何位や、○○大会優勝など)を気にせず、堂々と活動実績だといっていいでしょう。
■学問に近い実績をつくる
そうはいっても、総合・推薦入試(本記事では、以降まとめて推薦入試と呼びます)の対策を始める時点で、すでに活動実績がある人は少ないはずです。推薦入試の対策として活動実績づくりに臨む人もいます。
あるいは、「何か探究活動や研究活動をしてみたいけど、どうせ何かやるなら推薦入試で使えるものを……」と考える人も多いでしょう。
活動実績であれば「部活動全国大会出場」や「コンクール入賞」などが代表的ですが、推薦入試のためにこれらの実績をつくるのは本末転倒かもしれません。
これから活動実績をつくる人にオススメなのは、より学問に近い実績をつくることです。たとえば自分の興味がある研究を進めて論文として発表したり、研究会でプレゼンしたりする活動です。
■おすすめは大学主催の研究会やワークショップ
もちろん、論文や研究、プレゼンなどという言葉が出てくると、ハードルが高くて無理そうだと思うかもしれません。ここでは、普通の高校生ができるものを紹介しましょう。
これから活動実績をつくりたい人には、大学主催の研究会やワークショップへの参加がオススメです。
手軽なものであれば、高校生に向けた公開講義や大学の研究見学、大学生と一緒に研究の一部に参加するようなイベントがあります。あるテーマについて大学生と高校生で議論するようなワークショップも開催されています。
大学のホームページで情報が公開されていますし、成績や学力の条件がなく、誰でも気軽に参加できるものがたくさんあります。
少し本格的なものであれば、長期間にわたって大学の研究室で研究をおこなうプログラムもあります。このような長期的なプログラムになると、はじめに研究のやり方などのガイダンスがあり、研究も大学生と一緒におこない、最終的には論文の執筆や研究会での発表を目指す、体系的なプログラムも多いです。これらは最初に選考があることが多く、それを突破した人のみが参加できます。
ですので、最初は気軽なワークショップから始めて、ゆくゆくは長期的なプログラムへの参加を目標にするとよいかもしれません。プログラムに参加できれば、大学生や教授と一緒に研究を進めることで論文の執筆につながり、対外的に発表する機会ももらえるかもしれません。
すぐに論文というのは無理でも、最初のきっかけは意外とハードルが高くありません。
■大学の教授とのつながりができる
オススメの活動実績について、もう少し補足していきます。ここでは「大学主催」の活動をオススメする理由をお伝えします。
1つ目は、その大学を受験する際に有利になるからです。もちろん、直接的に加点されるわけではありません。ただ、その大学の志望理由に説得力が増すことや大学の教授とのつながりができるメリットがあります。
面接の場で、自分が研究活動に取り組んだときの教授が面接官となれば、有利になることは簡単に想像できます。もちろんそれだけで合格するわけではないですし、面接官が誰かはわかりようがありません。しかし、無視できないメリットです。
■研究の仕方を学ぶ
2つ目は、アカデミックな実績をつくれるからです。大学で勉強するために入試を受ける以上、大学でおこなわれているアカデミックな研究がもっとも受け入れられやすいのは当然です。自己流でがんばることが悪いわけではありませんが、研究の仕方を本物の研究者に学べるのであればこれ以上の実績づくりはないでしょう。
そうはいっても「大学の研究に参加するなんて、私には無理!」という方もいらっしゃるでしょう。もちろん大学側も、すでに勉強している人だけに向けて研究会やワークショップを開催しているわけではありませんので、その分野の初心者の人が参加することに問題はありません。それでも、場違いにならないかと心配してしまう気持ちはわかります。
そういう人へ、活動実績の最初の一歩目としてのオススメは地域のボランティアやワークショップへ参加してみることです。
■気軽に参加できるボランティアもよい
ボランティアは、みなさんの地元のお祭りなどのイベントスタッフや、幼児や小中学生と遊んだり、勉強を教えたりする教育系のボランティア、外国から来た方に日本語や日本の文化を教えたりするものもありますね。
ワークショップについては、地元のまちづくりを考えるものや身近な公園の保全活動について考えてみるイベントもあります。大学が主催するような本格的なものではなく、地元の小学生や中学生に混ざって考えてみるものもあれば、地元の協会の大人が補助してくれるようなものなど、気軽に参加できるものが多いです。
たとえば教育学部を目指そうと考えている高校生の方は子どもたちの面倒を見たり勉強を教えたりするボランティアに参加してみるとよいと思いますし、国際系の学部に挑戦したい方は外国から来た方をサポートするボランティアなどがよいですね。
■ボランティアをする際の2つの注意点
ただこのようなお手軽な活動には、注意点が2つあります。
1つ目は、特に理系の方は自分の志望学部と結びつけづらいことです。
文系の方であれば何かしら自分のやりたいことや学部の分野と関連のあるイベントがあることが多いです。しかし理系の勉強はより専門的な研究などが必要になるので、「まず気軽に参加してみよう」という理系の人向けのイベントがあまりありません。
ですので、少し前の話に戻ってしまいますが、いきなり研究に参加するのが難しければまずは大学の講義を聞いてみるとか、研究室の見学に行ってみるというところから始めてみましょう。
2つ目は、これが直接高い評価を受けるわけではないことです。誰でも気軽に参加できることの裏返しですが、これらのイベント参加が他の人と差をつけられるかといわれると、そうではありません。
ですから、こういったイベントに参加したみなさんは、ここからさらに興味や関心を掘り下げて、継続して取り組むことを心がけてください。できればこれまで書いたような大学と直接関連する活動がいいですね。推薦入試の決め球として使うのではなくて、あくまでこれから始める活動のきっかけという位置づけで考えていただけるといいと思います。
■高校の探究活動で活動実績をつくる
高校の授業内でも活動実績はつくれます。そのときに活用していただきたいのが、「総合的な探究の時間」です。これは、2020年度の学習指導要領改訂のときに「総合的な学習の時間」から名称が変更されました。それにともなって、文字通り「探究活動」に高校が力を入れられるようになりました。
探究活動のやり方は高校によって違いますが、自分たちで探究したいテーマを選定し、情報の収集や整理・分析をしてまとめるという授業です。多くの場合は、まとめた内容をクラスで発表します。これは1回の授業で終わらず、学期や年間という長いスパンでテーマ選定からまとめまでを実施します。
大学によっては、提出書類の中に高校での探究活動を書くよう指示されることもあります。それくらい、大学側も気にしている内容です。もちろん、この探究活動を実績としてアピールすることができます。
さらに高校によっては、クラス内で優秀な評価を得た人に全校生徒の前で発表の機会を与えたり、他校との合同発表会、あるいは大学の先生方に向けた発表の場を用意してくれたりする場合もあります。
このようなクラスの代表や学校の代表としてプレゼンができれば、実績の高さをアピールすることができます。もちろん、その探究の内容が志望する学部であつかうテーマに近ければよりよいです。
このように、高校の探究活動は大きな可能性を秘めています。もちろんこの時間への力の入れようは高校によってムラがあり、この時間に英語や数学の授業を進めている高校や、ただの自習時間としている高校もあります。
しかし、探究活動に積極的な高校でその時間を真剣に取り組むことで、十分に活動実績としてアピールできます。学校の授業内で活動実績までつくることができれば、とても効率的です。
ぜひ、前向きに取り組んでみてください。
----------
個別指導塾CASTDICE 塾長
高校受験で開成高等学校に入学し、東京大学文科一類に現役合格。卒業後、経営コンサルティング会社の戦略部門を経て、株式会社キャストダイスを設立。YouTubeチャンネル『CASTDICETV』では、受験情報にとどまらず職業・進路情報を高頻度で発信。著書は『やりたいことがわからない高校生のための最高の職業と進路が見つかるガイドブック』(KADOKAWA)など多数。
----------
----------
推薦入試専門推進塾 塾長
早稲田大学政治経済学部経済学科を卒業後、塾講師・家庭教師の経験を経て、推進塾を設立。経済的に恵まれない生徒に対し中学校に出向いて学校授業の補講を行う「放課後塾」にも講師として参画。 YouTubeチャンネル『推進塾【推薦入試・総合型選抜専門】』にて、総合型選抜・学校推薦型選抜を中心に、受験情報や勉強法などの情報を発信している。
----------
(個別指導塾CASTDICE 塾長 小林 尚、推薦入試専門推進塾 塾長 橋本 尚記)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
高3でオール5をとっても全く間に合わない…推薦入試対策でもっとも早く準備しなければならない項目
プレジデントオンライン / 2024年10月30日 17時15分
-
「ほぼ無理ゲー」難関大合格が高校生には酷な事情 試験内容と環境がひと昔に比べて大きく変化
東洋経済オンライン / 2024年10月27日 9時0分
-
「有名私大で倍率1倍台」総合・推薦入試の穴場は? 情報戦を制して、一般入試より有利な条件を狙う
東洋経済オンライン / 2024年10月24日 8時40分
-
「今や5割超え」総合・推薦入試の形式と対策の要諦 かつての指定校推薦やAO入試などとは大きく変化
東洋経済オンライン / 2024年10月21日 8時0分
-
親世代とは大学入試の戦い方が様変わりしている…わが子の「全落ち」を防ぐ"3層戦略"の中身
プレジデントオンライン / 2024年10月18日 7時15分
ランキング
-
1冷水シャワーの驚くべき効果!パーソナルトレーナーが語る1カ月の体験から見えてきたもの
よろず~ニュース / 2024年11月1日 7時30分
-
2水虫がある人は「メラノーマ」に気をつけたい…30%は足裏に発症する
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月1日 9時26分
-
3食品の値上げが続く…食費を節約する鉄則5つ
オールアバウト / 2024年11月1日 11時30分
-
4男性は家事「ほぼしない」割合高く 労働時間の長短関係なく
毎日新聞 / 2024年11月1日 11時45分
-
5ラブホ街のニュース映像に「あ、パパだ」。娘の一言で“凍りついた食卓”のその後
日刊SPA! / 2024年10月30日 15時52分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください