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「とりあえず薬を」という横柄な医師が"秒"で黙る…医師・和田秀樹が伝授「診察時に出すと効果的なアイテム」

プレジデントオンライン / 2024年10月28日 10時15分

和田秀樹さん - 写真提供=筆者

人は誰もが老い病にもかかる。それらとどのように向き合えばいいのか。医師の和田秀樹さんは「医者は決して万能ではないし、医者の言うことは絶対ではない。薬の種類も量も患者自身で決めていい。賢い人は、医者の言いなりになることの愚かさを知っている」という――。

※本稿は、和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■医者の言いなりにならない賢さを持とう

60代以上の方の関心事といえば、老いや病気に関するものが圧倒的に多いのではないでしょうか。

誰だってできれば老化もしたくないし、病気にもなりたくはありません。けれど生きている以上、人は老いていくし、病にもかかります。そういったなかで、それらとどのように向き合うかという姿勢は、人生の質そのものに関わってくると言えるでしょう。

ここではそういったことを踏まえ、私が考える「老いや病気との知的な向き合い方」をお伝えしていきたいと思います。

読者の皆さんのなかには、かかりつけの病院がある方も多いかと思います。

ここで改めて振り返ってみてほしいのですが、その医師の言う通りに薬を服用して、調子は悪くなっていませんか? あなたが抱える疑問や不安に対し、その医師は雑な対応をとったりしていませんか? あなたの体質や状況を加味することなく、「とりあえず薬を飲んでおけば大丈夫」という雰囲気を出していませんか?

もし思い当たることがあるのなら、その医師を疑ってみてください。そしてその人が不機嫌になるのを承知の上で、診察の際、質問してみたり、臆せず自分の意見や希望を言ってみたりしてみるのです。メモをとったり、録音したりするような姿勢を見せると、医者も横柄な態度はとれず、丁重に対応しようとするのではないでしょうか。

それでも自分が安心できるようなコミュニケーションがとれないのなら、別の病院を探すことを視野に入れてみましょう。

多くの方が、医者という存在を絶対的なものだと思い込んでしまっているように感じます。どの病院に行っても、変わらず最善の治療が受けられるものだと信じている人は少なくないでしょう。

けれど、決してそんなことはありません。医者は万能ではないし、彼らの言うことは絶対ではないのです。

■本当に有益かわからない薬でも杓子定規に処方するケースが

経験のある方も多いでしょうが、病院が効率重視に陥り、一人ひとりをじっくり診ることができなくなっているというケースは多々あります。その人の状態をつぶさに観察することなく、ひたすら数値を正常値に戻すことに必死になってしまう。そのために、その患者にとって本当に有益かどうかわからない薬であっても、杓子定規に処方するのです。

私は、安易に薬に頼るべきではないと思っています。

もちろん、風邪や頭痛などが辛いとき、一時的に力を借りるぶんには問題はないでしょう。しかし、長期にわたって薬を飲み続けることで、内臓の機能が衰えていくことも考えられますし、多剤服用のリスクもあります。

様々なカプセル、丸薬
写真=iStock.com/apomares
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/apomares

ですが、医者がこういった薬の副作用について話すことは多くありません。

高齢になるほど薬の副作用は出やすくなるものですから、薬を飲んで体調が悪くなったのであれば、時には薬を捨てる勇気も必要になってくると思います。

血圧、血糖値、コレステロール値……大切なのは、血眼になってこれらの数値を正常値に戻すことではなく、自分の体からのサインに目を向けることです。

私は血圧が最大220ですから、高血圧とされる140をはるかに超えています。それでも医者から処方された通りに薬を服用することはありません。指示通りに薬を服用して無理に血圧を下げてしまうと、頭がボンヤリしてしまうからです。

そのため、自分で薬の量を調整しながら、おおよそ170あたりを維持できるようにコントロールしています。

また、血糖値に関しても放っておくと600くらいになります。正常な血糖値は140未満と言われていますから、こちらも平均よりかなり高い状態ですが、処方された通りの量は飲まず、運動をすることで300くらいまで下げています。

薬を服用して無理に正常値に近づけようとし、不調になるくらいなら、たとえ将来的に病気になるリスクがあったとしても、今、心地よく毎日を過ごすことのほうが、私にとっては重要なのです。必要以上に健康を気にして我慢を強いられる生活を送るよりも、長生きにこだわらず、死ぬまで楽しく、自分らしく生きたいと思っています。

自分が受ける医療は自分で決めていいと私は思います。それは、自分がどう生きたいかということにそのままリンクするでしょう。

あなたの医者は、あなたの人生観や死生観を理解しようとしてくれる人ですか?

大事な命を任せるに足る人でしょうか?

常にそんな問いを持ってみてください。医者の言いなりにならないということは、シニア世代を迎えた私たちの人生の質を向上させる、大切な知性だと思います。

■医者も病院も、自分で見極め、選ぶ

それでは、自分にとってよい病院、そしてよい医者とは、どのようにして見分けるのでしょうか?

まず先にお伝えしておきたいのが、恐ろしいことに、日本の医師は、患者のその後の人生については考慮せず、「死にさえしなければなんでもいい」と思っている人が圧倒的に多いということです。

彼らは、自分の病院を訪れる患者の生活の質がその後どれだけ低下してしまうか、どのような後遺症が残るのかといったことには、残念ながら関心を示しません。また時には、患者よりも、自身のメンツを優先することも往々にしてあります。

そういったなかで、患者の想いや不安にしっかりと向き合い、適切な治療を施してくれる医者に巡り合えるかどうかは、非常に重要です。

よい医者と出会えるか否かで、心身の健やかさや安定感、そして人生の幸福度は大きく変わってくるでしょう。

信頼できる医者の条件の一つとして、ことさらに標準的な数値や方法にとらわれるのではなく、患者一人ひとりの状態に合わせた、柔軟な治療ができるということが挙げられます。「基準値至上主義」の医師は信用できないと私は思っています。

たとえば薬を処方したあとは経過観察を丁寧に行い、この患者さんは薬の量を減らしたほうがよいようだとか、この方は血圧が多少高くても調子がよさそうだなどと、患者さん一人ひとりの状態を踏まえながら、柔軟に対処すべきです。

実際に私も、「先生に処方された薬を飲んだら調子が優れない」などと患者さんから言われれば、すぐに量を減らしたり、別の薬に替えたりします。そのようなことを繰り返しながら、その患者さんにとって最適な治療法を見つけていくのです。

また、特定の疾患や臓器だけを診る、というスタンスの病院は推奨しません。その人の年齢、体質、その他の持病などといった要素も考慮しながら総合的な治療を施してくれる病院を探しましょう。そういった意味では、個別の臓器を専門的に診ることが多い大学病院は、高齢者にとっては最良の選択とは言えないと感じています。

そして主治医は、話すと気持ちが楽になるような、通院するのが楽しみになるような人であることが大切です。心身を健康にするための病院で、不安やストレスを抱えてしまっては本末転倒でしょう。

場数を踏めば、相性のよい医師と出会える可能性もそれだけ高くなります。

医者も病院も、自分にとってベストな選択肢を自分で見極め、選ぶ。それはシニアに求められる大切な知恵だと思います。

■健康診断を絶対視する必要はないと理解する

健康診断の結果に一喜一憂したり、不安をあおられたりしている方も多いことと思います。そのような方には衝撃的かもしれませんが、私は、健康診断の数値を絶対視する必要はないと思っています。

その理由は、検査結果と実際の健康状態がリンクしていないから。数値が異常でも健康な方はいますし、その逆で、数値が正常でもあっても病気にかかる人もいます。

このような現象が起きる理由は、日本の健康診断は、相対評価によって「正常」の数値を設定しているからです。健康とみなされる人たちの数値から平均値を割り出し、その95%の範囲内に収まる人を「正常」、そこから外れる人を「異常」とします。

つまり、例えば「コレステロール値が異常」という結果が出た場合も、あくまで平均値から外れたというだけのことであり、明らかに病気になるというエビデンスがあるわけではないということです。

和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)
和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)

健診では何十項目という項目を検査されるかと思いますが、そのなかで病気との明らかな因果関係を持つのは、血圧や血糖値、赤血球数など5項目程度ほど。それ以外の項目に関しては、明らかな異常値ではない限り、将来的に病気になるというエビデンスはないのです。

コレステロール値に関しては、高いほうが免疫力が上がり、がんになりづらくなることがわかっています。また、血糖値を無理に下げようとすると、低血糖になり、意識障害のリスクが高まります。また、血圧を下げ過ぎると転倒の危険性が高まります。

こういったことを加味せず、やみくもに正常値を追いかけることは危険です。健康診断を受けるより、脳ドックや心臓ドックを受けるほうが、突然死につながる恐れのある病気の発見に役立つので、よほど価値があると言えます。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)

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