子どもが「インフルエンサーになりたい」と言い出した…その時、賢い親が返す"人生にかかわる質問フレーズ"
プレジデントオンライン / 2024年10月30日 17時15分
■子どもたちが憧れる職業は大きな産業に育つ可能性がある
小中学生に「将来就きたい職業」のアンケートをとると、ユーチューバーがベスト10に入ると話題になったのは10年ほど前のことです。近年はランキングの常連となり、例えば人事サービスのアデコが小中学生を対象に実施した調査では、「YouTuberなどの動画投稿者」が男子の第4位、女子の第8位にランクインしています。
小中学生がそれだけYouTubeに親しんでいることがわかる一方、子どもが本気で「ユーチューバーになりたい!」といえば、たいていの親はおそらく反対するでしょう。新しい職業は、どうしても不安定なイメージがあるので当然のことです。私自身も、子どもの頃に合唱団に所属してミュージシャンのバックコーラスなども経験したので、「将来はミュージシャンになる!」と言って、親に反対されたことがあります。
私が小中学生の頃は「ゲーム開発者になりたい」という友だちが何人かいて、みんなプログラムを勉強していました。当時の大人たちは「将来の夢がゲーム開発者だなんて」と思ったことでしょう。しかし10年、20年とたつうちにゲーム業界は大きくなり、いまでは国内で2兆円を超え、全世界では40兆円を超える産業に育っています。つまり、子どもたちが憧れる職業は、やがて大きな産業に育つ可能性があるということです。
■中国にはインフルエンサーの専門学校がある
私は、LINEの社長だった頃は韓国はじめアジアの国々でビジネスを展開し、2015年にC Channeを創業してからも主にアジア市場をターゲットにしてきました。アジアの国々では「将来就きたい職業」のアンケートで、インフルエンサーが1位になることがあります。
特に中国では、Eコマース市場が約200兆円あるうちの20%、40兆円ほどがインフルエンサーの市場だといわれ、インフルエンサーになるための専門学校があり、現実的な職業選択の1つとして認識されているのです。日本のアンケートにある「YouTuberなどの動画投稿者」は、職業でいえばインフルエンサーですから、日本の子どもたちも現実味のない夢を語っているわけではありません。むしろ、日本を元気にする起爆剤の1つがインフルエンサーだと私は確信しているほどです。
■日本への期待は薄れ、日本人はどんどん自信を失っていった
その理由を語るために、ここで少し私の来歴を説明させてください。
私が大学を卒業し、日本テレビに入社したのは平成が始まった1989年です。当時はバブル経済ですから、現在の若い世代が想像できないほど日本は元気でした。海外の空港やNYのタイムズスクエアでは日本企業の大きな広告がずらっと並んで目立ちましたから、日本が世界中から期待されていると実感できた時代です。
2000年にソニーへ転職し、2003年にLINEの前身となったハンゲームジャパンへ移籍した頃から、空港の広告は韓国企業や中国企業が増えていきます。反対に日本企業の広告が減っていく様子は、日本への期待が小さくなったみたいで、日本人はどんどん自信を失っていくように思えました。
C Channelを創業したのは「日本が元気になるような事業をやりたい」という思いから、女性向けに明るい話題を発信する新しいメディアをつくろうと考えたからです。
■女性向けメディアを立ち上げた理由
私が社会人になった頃は、短大卒の女性社員が職場の全員にお茶を淹れる慣習があるような社会環境でしたが、現在よりも女性が元気で強かった印象があります。あの頃より女性活躍は進んだはずなのに、むしろ最近の日本は「女性がどんどん保守的になっていないか?」と思うことがあります。社会にまだまだ不公平や理不尽が残っていますから、苦労して働くより、家庭に入ったほうが結局は幸せだと思えるのかもしれません。
女性が保守的だと、たとえば夫の起業やお子さんがチャレンジングな夢をもつことに反対するようなことはないか、日本全体の保守傾向が強まるのではないかといった心配もあります。
LINEの社長だった頃、韓国や中国では女性のほうが仕事ができると感じていました。社長もマネジャーも女性のほうが多かったのです。日本も女性が元気になれば、日本全体が元気になるのではないかと考えました。
また、メディアがネガティブな情報をやたらと発信するのもよくないと感じていました。ポジティブな情報をもっと発信すれば、若い人たちは自信がもてるし、海外からの期待も高まる。C Channelをスタートした頃は、メディア産業を変えていくことがビジョンの1つでした。
ところが、SNSが発展するにつれて、若い世代は新聞、テレビなどのメディアから影響をほとんど受けなくなりました。一方で、インフルエンサーのような個人が発信する情報の影響力が大きくなり、少なくとも販売促進などマーケティングの世界では、メディアよりも個人の影響力が強くなっている。こうした状況に気づいて、インフルエンサーマーケティングに取り組むようになったのです。
最近は、どうすれば個人が自信をもって情報を発信できるか、世界にインパクトを与えられる状態になるか、といつも考えています。
■中国では資格制度がある
以前のマーケティングは、消費者に「欲しい」と思ってもらうことが重要でした。しかし現在はモノがあふれ、何かを欲しいと思えない時代です。商品を買うきっかけは何かといえば、「あの人がすすめているから」「あの人を応援したいから」です。こうした“ヒト消費”や“推し文化”は、日本だけでなく、世界的に広がっています。
特に貧しい国では、インフルエンサーは一発逆転が可能になる夢のある職業です。貧しい家庭で育っても、学歴がなくても、インフルエンサーとして成功すれば大金持ちになれるからです。
産業としての期待も大きく、資格制度を設けている中国では、インフルエンサーは「網紅(ワンホン)」と呼ばれ、地方創生にも活かされています。地方には仕事がないため、インフルエンサーを育成して農作物、魚介類など地域の特産品について情報発信を推奨しています。個人が豊かになり、地域貢献もできる素晴らしい職業として多くの人が目指しているのです。
C Channelが支援している方の中には、シングルマザーで気合い入れて頑張っている人たちがいます。インフルエンサーという職業は、なかなか仕事に就けなくて困っている人たちにとって光明を投げかけているといえます。
■「人気商売」ではなく、起業家とほぼ同じ
ひとくちにインフルエンサーといっても、ビジネスの方法は多種多様です。初期の段階では、ネット上の人気者が自分のサイトやチャンネルで商品やショップを紹介し、企業などから広告宣伝料を受け取ることが中心でした。テレビCMに出演する芸能人やタレントのメディア機能です。
次に登場したのは、自分でEC店舗を運営し、商品を販売するインフルエンサーです。商品を仕入れるコストがあるので、リスクをとる流通機能をもったビジネスモデルです。
メーカーやショップとコラボして、商品を企画するインフルエンサーもいます。さらに進むと、自分で商品を企画して製造、販売まで管理しているインフルエンサーもいます。
中国には「1日に100億円以上売る」といわれるインフルエンサーもいます。大きな資産ができるので、好きなブランドの企業を買収して、自分が企画した商品を開発するといったこともできるわけです。
最近は視聴者からの投げ銭が主な収入という人も増えています。インフルエンサーという職業は、世の中にあるすべてのビジネスモデルが実現可能ではないかと思えるほど、多種多様なのです。
■子どもがインフルエンサーになりたいと言ったら
われわれの世代は、インフルエンサーといえば「ネット上の人気商売」という思い込みを持っている人が多いかもしれません。しかし実際は上述の通り、他の職業と変わらない高度なスキルやノウハウを駆使するビジネスです。
インフルエンサーは起業家と同じで、成果をあげるために粘り強く継続できるかどうかが重要です。成果を出せるようになるまでが大変。だからこそ、もしお子さんがインフルエンサーになりたいと言ったら、「自分が本当に好きなことは何か」「寝食を忘れて没頭できることは何か」という問いを投げかけてあげてほしいのです。
日本では、年間に1億円以上を稼ぐインフルエンサーは現在でも100人近くいるようです。今後、外国のように市場が拡大すれば、数十億円、数百億円を稼ぐ人が出てくる一方、小規模でも確実に収入を得る人たちも出てくるでしょう。日本でも将来を期待できる有望な職業であることは間違いありません。
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C Channel 社長
1967年、神奈川県生まれ。89年、筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。在職中に青山学院大学にてMBA取得。2000年にソニー入社。03年ハンゲーム・ジャパン(現LINE)に入社、07年社長に就任。15年よりC Channelを創業。
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(C Channel 社長 森川 亮 構成=伊田欣司)
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