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「仮性包茎」という分類があるのは世界で日本だけ…「被っているか」を異常に気にする日本人男性が多い理由

プレジデントオンライン / 2024年11月7日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

包茎に悩む男性は多い。自身の経験をもとに男女の性機能について取材を続けてきた径書房代表の原田純さんは「WHO(世界保健機関)のデータによると、世界の男性のおよそ6割はかぶったままであり、『仮性包茎』という分類があるのは日本だけだ」という――。

※本稿は、原田純、熊本美加、スドウユイ、(監修)関口由紀『愛されるペニス サイズ神話のウソ・ホント』(径書房)の一部を再編集したものです。

■1980年代に「包茎手術」がブームに

さて、ここからが包茎問題の本丸です。

最初に結論を言ってしまうと、仮性包茎の場合、ペニスの皮をむく必要はありません。むけているほうが洗いやすいことは確かですが、通常時は、かぶっているのが自然な状態。治療が必要なわけではないのです。

ところが、ペニスの美容形成が日本に導入された1980年代、包茎は3つに分類されました。

仮性包茎・真性包茎・カントン包茎です。治療が必要なのは真正包茎とカントン包茎だけなのですが、並列に並べられたからでしょうか、仮性包茎が、あたかも治療すべき病気であるかのようにとらえられてしまったのです。

1980年代のそのころ、日本では、包茎手術がブームになっていました。「包茎は恥ずかしい」「包茎だとモテない」という、コンプレックスを煽るビジネス商法がはびこり、多くの男性に「仮性包茎は手術が必要」との誤解を刷り込んだのです。

すでにご存じだと思いますが、ここで改めて、包茎についておさらいしておきましょう。包茎の医学的分類は次の3つです。

■包皮は体を守ってくれるありがたい存在

■仮性包茎…………勃起したときに、するすると皮がむけて亀頭が出る。医学的には問題なく病気でもない。※治療を希望する際は保険適用なし。
■真性包茎…………包皮口が狭く、勃起しても皮がむけないので治療が必要。※保険適用。
■カントン包茎……包皮口が狭いため、勃起時、虚血による腫脹で自分では戻せなくなり、緊急手術となることがある。無理にむくと亀頭が戻せなくなる。包皮口からペニスを出し入れする際に痛みをともなうので治療が必要。※保険適用。

真性包茎とカントン包茎は治療が必要です。それについてはのちほどお話ししますが、仮性包茎は「放置でまったく問題なし!」です。

そもそも、哺乳類のスタンダードは仮性包茎なのです。野山を駆け回って獲物を追いかけていた人間の祖先、原人のペニスがむき出しだったら、まるで、ヘルメットを着けずに、オートバイで暴走しているようなもの。危険極まりなし、です。つまり包皮は、大切なペニスを保護してくれているありがたい存在。感謝してもいいくらいです。

■英語では「ナチュラルペニス」と呼ばれる

さらに言えば、仮性包茎のほうが性的感度は高いともいわれています。包皮は敏感な部分なので、割礼や手術でそれを除去したりすると感度が落ちるからです。色味も、仮性包茎だと普段からこすれる頻度が低いため、亀頭は多くの場合きれいなピンク色をしていますが、キレイにむけている人は徐々に茶色くなっていきます。

『愛されるペニス サイズ神話のウソ・ホント』(径書房)の56ページで紹介したアンケート結果を見ると、包茎で悩んでいる男性は少なくありませんが、仮性包茎はノーマル。恥ずかしいことではないのです。

英語では、手術していないペニスのことを「ナチュラルペニス」と呼ぶことを多くの泌尿器科の医師たちが言及しています。仮性包茎=普通(自然)のペニスなのです。この言葉が定着していくと、無駄に悩んだり、不要な包茎手術を受けたり、ペニスの美容形成手術で被害にあう人を減らすことにもつながるでしょう。

■「仮性包茎」という分類があるのは日本だけ

そもそも海外には、仮性包茎という概念はありません。海外の論文は、割礼(circumcision)しているか、割礼していない(uncircumcision)かで分けられているだけ。割礼済みの人のなかには、もともと完全にむけている人も含まれます。

日本人男性は仮性包茎の人が大多数です。これは男児に割礼を施す習慣がないからですが、2007年にWHO(世界保健機関)が出したデータ(※1)によると、世界の男性のおよそ6割はかぶったまま。日本だけでなく世界でも仮性包茎が多数派なのです。

※1:Morris, B. J., Wamai, R. G., Henebeng, E. B., Tobian, A. A., Klausner, J. D., Banerjee, J., & Hankins, C. A. (2016). Estimation of country-specific and global prevalence of male circumcision. Population Health Metrics, 14, Article 4.

それでも日本では、最近、包茎手術が増える傾向にあります。衛生面に配慮して手術を選択している男性もいるのでしょうが、ペニスに自信がもてずにいる男性の多いことが影響しているのかもしれません。

泌尿器科のお医者さんは、ときどき「子どもの亀頭の成長に影響が出ることはありますか?」と聞かれるそうですが、その心配も一切無用です。仮性包茎によってペニスに悪影響が出ることはありません。

すでにお話ししたように、真性包茎とカントン包茎は、多くの場合、手術が必要になります。けれども、軽症の真性包茎なら、ステロイドの塗り薬だけで改善するケースもあります。ステロイドには、皮膚を薄くする作用もあるので、真性包茎から仮性包茎への改善が期待できるのです。重症の場合は、やはり手術が必要になるでしょう。

見た目を気にしなければ一般病院の泌尿器科で手術が受けられますし、保険が適用されるので、費用は数万円で済みます。

■温泉などで「見栄むき」をしている人も…

さて、ここからは、ペニスの美容形成について、お話ししていきましょう。「せっかく手術をするなら、より自然な仕上がりにしたい」と、自費診療クリニック(保険適用外)で美容形成を受ける人が少なくないからです。

日本で包茎手術を受ける人はいったいどのような理由で手術を受けているのでしょうか。

20~30代ですと、「マスターベーションでは問題なかったのに彼女ができて、いざというとき、むけなくて射精に失敗した」「臭いがキツイと言われた」など、セックスをしたときに問題のあることがわかって手術を決断する人が多いそうです。

40~50歳以上になると、異性の目線ではなく、同性の目線を気にする人が増えるといいます。

なかには、温泉などで「見栄むき」をしている人もいるそうです。見栄むきとは、仮性包茎の皮を自分でむいて、あたかも「ズルむけ」であるかのように装うこと。男性は、ペニスの見た目に、そこまでこだわっているということです。

温泉
写真=iStock.com/Gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gyro

人から見れば「なんで、そんなことを気にするの?」と思うことでも、本人にとっては深刻なコンプレックスになっていることは何も包茎に限ったことではありません。「美容形成で一重瞼を二重にしたら、長年の悩みから解放された」「歯並びを矯正したので、人前で堂々と笑えるようになった」というような話は珍しくないのです。

■「国民生活センター」が注意喚起

手術を決意する動機はいろいろでしょうが、包茎手術によって自信を取り戻せたり、恋愛に積極的になれたりするなら、美容形成と同じように、包茎手術を受けることも選択肢に入れていいでしょう。コンプレックスを抱えて苦しんでいるより、はるかに人生が楽しくなるからです。

ここまでのことを整理して図表3にまとめました。

包茎の種類とまとめ
出所=『愛されるペニス サイズ神話のウソ・ホント』

「独立行政法人国民生活センター」が、2016年に包茎手術を受ける人へのアドバイスを公表していますので、それも紹介しておきましょう(※2)

※2:独立行政法人国民生活センター.「美容医療サービスにみる包茎手術の問題点」 

消費者へのアドバイス5つ

①説明を理解して、納得できるまで契約しないこと。特に、即日施術・契約は厳禁です。時間をおいて本当にその施術を受けるか、施術内容が自分の求めるものかを冷静に判断し、特に、即日施術の必要性が医学上認められない場合には、即日施術は避けましょう。なお、仮性包茎は「ナチュラルペニス」であり、正常です。
②施術の内容を理解し、不要な施術は断りましょう。
③効果だけでなく、リスクについてもしっかり説明を受けましょう。
④ホームページや広告の情報を鵜呑みにせず、情報を集めましょう。
⑤トラブルにあった場合は、消費生活センターへ。一人で悩まず、早めに相談しましょう。

■300万円超を追加請求する悪徳クリニックも

国民生活センターのアドバイスを補足する意味で、手術を受ける前に確認してほしいことを、もう少し挙げておきます。

受診を検討している医療機関のHPで概要情報を調べるだけでなく、その医療機関の評判も、ネットで検索するなどして確かめておきましょう。病院を決めたら、手術を決断する前に、その病院でカウンセリングを受け、費用・手術内容・合併症についてきちんと説明してもらってください。

聞いた話ですが、手術台にのせられた状態でオプションを提案され、はっきり断らなかったせいか、術後に300万円を超える額を請求された人がいたそうです。そういう悪徳クリニックもゼロとはいえないので、きちんと確認しておきましょう。

仮性包茎で手術を受けるのは、通常時でもむけている状態になることを希望しているからでしょうが、その場合は、包皮を切るという方法だけでなく、ヒアルロン酸などを注入して亀頭を大きくして包皮をひっかけるという方法もあります。けれども、ヒアルロン酸は自然吸収されるので、一定期間しか効果は持続しません。

なかには、永続的に残るほかの素材を使用することを提案する医療機関があるかもしれませんが、よりハイリスクになり、副作用で血管閉塞による壊死が起こる可能性もあります。ほかにも皮膚が腐り、亀頭が欠けてしまうようなことも起きかねません。これらのリスクは、手術を決断する前に知っておくべきことでしょう。

■合併症のリスクは高くはないが…

包茎手術のリスクについては、WHOが発表しているデータがあるので、紹介しておきます(※3)

※3:Shabanzadeh DM, Clausen S, Maigaard K, Fode M. Male Circumcision Complications - A Systematic Review, Meta-Analysis and Meta-Regression. Urology. 2021 Jun;152:25-34.

WHOによると、合併症は3.84%程度。しかも、これらの合併症は簡単に治療できる範囲。つまり、ごく軽症とされています。青年期、成人期の割礼(≒包茎手術)は、出血したり、血の塊ができたり、細菌に感染するなどの合併症を起こす可能性がないわけではありませんが、経験豊富な医師が行えば、長期の後遺症が残ることはほとんどありません。

けれども、手術経験の少ないドクターや不衛生な環境での手術はリスクが高くなります。手術の経験がある医師であれば合併症は2.54%以下。しかし、未熟な医師だと合併症になる確率は4.56%。これには有意差があります。

■その前に「自信が持てない理由」をよく考えて

包茎手術を希望するなら、手術をしてくれるドクターがどんな人なのかしっかり見極めることが大切です。50例以上の手術経験があれば、まずはひと安心。そのうえで、直接会って、信頼できる医師かどうかを判断しましょう。

原田純、他『愛されるペニス サイズ神話のウソ・ホント』(径書房)
原田純、熊本美加、スドウユイ、(監修)関口由紀『愛されるペニス サイズ神話のウソ・ホント』(径書房)

もうひとつ、手術を受ける前に確認しておいてほしいことがあります。それは、「自分がどんなペニスを望んでいるか」を、はっきりさせておくことです。希望が漠然としているなら、カウンセラーと相談してもいいでしょう。

たとえば「竿の太さを調節したい」「亀頭を大きくしたい」といったニーズには、ヒアルロン酸、脂肪、シリコンなどを注入する方法も検討できます。リスク・費用・施術後に必要なメンテナンスなどを確認し、自分が望むペニスを実現するためにはどの方法が最も適しているか、リスクも含め、きちんと理解をしたうえで手術に臨んでください。

日本人男性の約80%は仮性包茎です。手術を選択する前に、ペニスに自信がもてないのは本当に包茎が原因なのか、よくよく考えてください。それは、「手術を受けたのにやっぱり自信がもてない」という残念な結果にならないために必要なことです。

患者に症状を説明する男性医師の手
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

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原田 純(はらだ・じゅん)
径書房代表
1954年、東京生まれ。編集者。15歳で和光学園高校中退。1980年、長女出産。1989年、径書房に入社。竹田青嗣氏に師事。現在、径書房代表取締役。著書に『ねじれた家 帰りたくない家』(講談社)、岸田秀氏との対談『親の毒 親の呪縛』(大和書房)、『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)『人生最高のセックスは60歳からやってくる』(径書房)がある。

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(径書房代表 原田 純)

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