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郷ひろみが社名連呼のCMへの評価でビジネスセンスがバレる…「セオリーに反する」と思った人が鈍いと言える訳

プレジデントオンライン / 2024年11月18日 5時15分

画像=プレスリリースより

消費者の購買意欲を向上させるマーケティングの鉄板理論に「AIDMA」がある。だが、2019年から美容中心の医療機関「にしたんクリニック」の支援事業を展開しているエクスコムグローバル社長の西村誠司さんは「当社はAttention(認知・注意)しか意識していません。消費者のみなさんにとにかく知ってもらうことの一点突破で、認知度を高めることだけに全精力を傾けている」という――。

※本稿は、西村誠司『最強知名度のつくりかた 売り上げ98%減からのV字逆転を実現した必勝術』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■商品説明不要。名前を知ってもらうことだけに全力を注ぐ

「ワンフレーズ・ポリティクス」という言葉をご存じでしょうか。

これは、小泉純一郎元首相が多用したことで知られるようになった政治手法です。まさにワンフレーズで、自分の政策やメッセージを国民に届けることをこう呼びます。「自民党をぶっ壊す」「改革なくして成長なし」といった小泉元首相が発信したワンフレーズを覚えている人も多いのではないでしょうか。良きにつけ悪しきにつけ今なお印象に残っているという時点で、少なくとも政治家のマーケティング戦略としては大成功だったと言えるでしょう。

私たちのマーケティング手法「知名度一点突破戦略」も考え方は同じです。

当社は2020年の新型コロナウイルスの感染により大きな危機に直面しました。これにより海外旅行客が一気にいなくなったことで当社の屋台骨を支えてきた海外用Wi-Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」の需要も激減し、会社全体の売り上げが実に98%減まで落ち込みました。コロナ禍で窮地に陥った企業は数多くあると思いますが、ここまで急速に業績が落ち込んだ会社は珍しいのではないでしょうか。

そんな正真正銘、絶体絶命のピンチを救ったのが、2020年8月に開始した「にしたんクリニック」の新型コロナウイルスのPCR検査事業でした。

とにかく「イモトのWiFi」「にしたんクリニック」という名前を覚えてもらうことが狙いです。だから商品説明は一切せずに、「にしたん」だけをほぼひたすら連呼しているのです。CMの歌詞(30秒バージョン)を書き起こすとこうなります。

た~んたんにしたん たたんたん
たん たたん にしにし にしたん
に~したんたん に~しにし たたんたーん にしたーん!
にしたんクリニックへGo!

郷ひろみさんに歌唱していただくために書き上げたオリジナルソングです。いかがですか? PCR検査の「ピ」の字すら流れていないことがわかりますよね。

プレジデントオンラインアカデミーはこちらから
動画でも学ぶ「「バズる」SNSでファン化&集客力アップの極意」
プレジデントオンラインアカデミーでは、西村誠司さんによる「どうすれば、少ない予算で知名度を上げられるか?」のレッスンをご覧いただけます。

勉強熱心な読者の中には、こうした考えはマーケティングのセオリーに反するとお感じの方もいると思います。まさにその通りで、私たちのやり方は、例えば「消費者の購買行動モデル」を、ある意味で否定した戦略です。

消費者の購買行動モデルとは、消費者がある商品を認知し、購入に至るまでの行動をモデル化した考え方です。これにはいくつか種類がありますが、代表的なものに「AIDMA」があります。AIDMAは1920年代に米国の学者サミュエル・ローランド・ホール氏が提唱したモデルです。

AIDMAとは、消費者の各行動の頭文字をとったもので、

「Attention」(認知・注意)
「Interest」(興味・関心)
「Desire」(欲求)
「Memory」(記憶)
「Action」(行動)

という5つのプロセスで構成されています。

マーケティングAIDMA(認知、興味、欲望、記憶、行動)を表すペンギン
写真=iStock.com/ribitts
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ribitts

テレビCMなどで「注意」を引かれ、商品に「関心」を持ち、商品が欲しいという「欲求」が芽生え、商品やブランドを「記憶」し、商品を購入するという「行動」を起こすという流れです。

多くの企業がこのモデルの全体を踏まえ、広告・販売戦略を立てていると思います。消費者とどう接点を持ち、いかに自社の商品やサービスを知ってもらうかを考えるとき、どこの企業もAIDMA全部が円滑に進むように知恵を絞るわけです。

■マーケティングセオリーは関係ない

しかし、当社の場合は、最初の「Attention」(認知・注意)しか意識していません。消費者のみなさんにとにかく知ってもらうことの一点突破で、認知度を高めることだけに全精力を傾けています。その先にある例えば「Action」(行動)、つまり売り上げをどう伸ばすかとか、店舗にどう足を運んでもらうかといったことは、少なくとも事業立ち上げの段階では、ほとんど考えたことがありません。その意味では、当社のマーケティング手法は、従来のセオリーからは逸脱していると言えます。専門家の視点で見たら「間違っている」と言われてしまうかもしれません。

しかしながら、私は今の方法を変えるつもりは一切ありません。極端なことを言えば、少なくともスタート段階では、商品の詳しい内容を知ってもらおうとも、好感を持ってもらおうとも全く思っていません。

実際には、マーケティング調査もしています。ですが、私は認知度の項目しか見ていません。私にとって重要なのは「知られているか」「知られていないか」の項目だけです。これ以上わかりやすい指標があるでしょうか。結果が明白で、何の言い訳もできないのがいい。イエス、ノーの2択で、曖昧な回答がありませんから。

限られた枠の少人数の間での好感度など認知度以外の項目もいろいろと調べてくれていますが、結果をもらっても私はあまり見ていません。

■重要なのは「知っているか」「知らないか」

考えてみてください。知名度が低いままで好感度を議論したところであまり意味はないですよね。限られた枠の少人数の間での好感度がいくら高くても、企業としての大きな成長にはつながりません。

それに知名度と好感度の二兎を追うと、かえって非効率になるものです。例えば、「知ってもらうだけでは意味がない。どうしたらその先の購入につながるかをよく考えてマーケティング施策を考えろ」と指示されても、現場は一体何から手を付ければいいのかわかりませんよね。

それよりも、「売れようが売れまいが、責任は私が持つ。好感度を上げようとか考えなくていい。シンプルに知られることだけに専念してくれ」と言われたほうが、部下も取り組みやすく、結果を出せるのではないでしょうか。

それこそKPI(重要業績評価指標)を認知度だけにしてしまってもいいと思います。その先の展開まで考えてマーケティング設計をしたら、頭が回らないはずです。

西村誠司『最強知名度のつくりかた 売り上げ98%減からのV字逆転を実現した必勝術』(KADOKAWA)
西村誠司『最強知名度のつくりかた 売り上げ98%減からのV字逆転を実現した必勝術』(KADOKAWA)

実際、広告代理店のテレビCM制作チームからも「通常、クライアントからはあれもこれも盛り込んでくれとよくお願いされるのですが、西村社長の場合は毎回『知られることだけでいい』という指示なのでとてもやりやすい」と言われています。

そもそも今の時代、精緻にマーケティング施策を組み立てている間に、状況が変化してしまうことも考えられます。だったら認知だけにフォーカスしてそこに迅速かつ全力で取り組むほうが、成果が出せると思います。多くの人に知ってもらえさえすれば、その先使える手法が格段に増えるからです。

事実、「イモトのWiFi」も、「にしたんクリニック」も認知だけに特化するやり方だったからこそ、知名度がここまで大きく向上し、その結果として、売上にもつながったとのだと思っています。

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西村 誠司(にしむら・せいじ)
エクスコムグローバル代表取締役社長
1970年愛知県生まれ。名古屋市立大学卒。1995年にインターコミュニケーションズ(現在のエクスコムグローバル)を設立し、1997年海外用レンタル携帯電話事業をスタート。2012年海外用Wi-Fiレンタルサービス「イモトのWiFi」ブランド提供を開始。2019年よりメディカルサービスをスタート、「にしたんクリニック」開院を支援。2020年、コロナ禍での市場ニーズを察知し、わずか数カ月でPCR検査サービスを実現した。

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(エクスコムグローバル代表取締役社長 西村 誠司)

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