「強盗に狙われやすい家」には共通点がある…元警視庁捜査官が勧める「家を守る防犯対策」9選
プレジデントオンライン / 2024年11月8日 17時15分
■強盗被害に遭わないための9つの対策
まず、強盗はどこから侵入するケースが多いのか。
横浜の事件では、玄関脇の窓が開け放たれた状態になっていた。ここのカギの部分が壊され侵入されたとみられている。松丸さんが説明する。
「トクリュウ強盗も含めて、強盗は窓を破壊して侵入するケースがもっとも多いと言われています」
「トクリュウ」とは、SNSなどのつながりで犯行に及ぶ「匿名・流動的組織犯罪グループ」のことだ。被害の多発を受け、警視庁と神奈川、埼玉、千葉の4都県警は10月、合同捜査本部を設置し、指示役や首謀者の摘発を急いでいる。
松丸さんによれば、強盗に遭わないために9つの対策が挙げられるという。
■犯人は自分の姿が残ることを嫌う
1. インターホンをカメラ付きにする
「カメラ付きのインターホンは侵入者の姿を録画でき、泥棒や強盗犯が自身の姿が映ることを嫌がって諦める可能性があるためです。
実際に、泥棒などの侵入者は住民が留守かどうかを確認してから犯行を行うことが多く、その方法として最も多いのが『インターホンで押してみる』ことであるため、カメラ付きの機器を導入することで犯罪者に狙われるリスクを減らすことが期待できます。
仮に何者かが侵入したとしても、その姿がインターホンに映っていれば映像を証拠として利用できるため、事件の早期解決につなげることも可能です。現在、カメラが無い機器を使用している方は、ぜひ録画機能があるカメラ付きインターホンの設置を検討してみてください」
■防犯カメラは「ダミー」でも効果あり
2. 防犯カメラ(ダミーでも可)を設置する
「防犯カメラを設置するだけで『防犯対策をしっかりしている家だ』と感じさせて侵入者を牽制でき、下見の段階で候補から外れる可能性が高くなります。また、カメラ付きインターホンと同様、防犯カメラで撮影した映像は犯行の証拠になるため、事件が発生したとしても早期解決につなげられる効果もあります。
映像を記録する機能がないダミーの防犯カメラでも、見た目が本物のカメラとそっくりで、配線やLEDランプが付いている機器であれば、泥棒や強盗などの犯罪者に対して牽制する効果が期待できます。
ただし、ただ闇雲にダミーカメラを導入するだけでは牽制効果が薄いので気を付けてください。最近では、屋外にも屋内にも利用可能な小型ドームや主に屋外で利用するバレット型などさまざまな形や大きさの商品が販売されているので、すぐに偽物だと見破られないよう、設置する場所に適したダミーカメラを選ぶようにしましょう。
ダミーカメラでもLEDライトが点滅するものや配線が付いているものは実際に稼働している印象を与えやすくなります。さらに防犯ポスターや注意書きなどと一緒に設置するとダミーカメラでも防犯意識の高さを示すことができます。併せてセンサーライトなどを設置するのも効果的です」
■狙われやすい窓の守りを強くする
3. 窓に補助錠を設置する
「補助錠とは、防犯性を高める目的で取り付ける2つ目の錠前のことです。窓についている主錠は窓ガラスを割ってしまえば窓を開けることが可能です。そのため、主錠だけの窓は侵入しやすく時間もかかりません。
補助錠を取り付けることで窓をスライドさせないと開けられなくなり、窓ガラスを割られて主錠が開けられても侵入に時間がかかります。防犯性を高めたいなら、補助錠の取り付けを検討してみてください」
4. 窓ガラス用の防犯シート
「窓に貼るフィルムで、以下に2つの特徴によって防犯性能を向上させる効果があります。
・大きな音が出るほどの威力で強打しないと破れない
また、防犯シートを窓に貼っておくことでガラスの飛散を防げるため、破片を踏んで怪我をするリスクも防ぐことが可能です」
■侵入にかかる時間を長引かせることが重要
5. 窓に警報機を設置する
「泥棒や強盗が窓から侵入しようとしたときに警報音が鳴ることで怯ませることができ、侵入にかかる時間を長くできます。また、通行人や近隣住民に異変があったことに気づいてもらえる可能性が高まります。
ちなみに、警報機は玄関に取り付けるタイプもあるため、窓だけでなく玄関にも取り付けることでさらに防犯性を高められます」
6. 窓に面格子を取り付ける
「窓ガラスを割っても面格子を取り外さないとすぐには侵入できないため、防犯対策として非常に効果的です。空き巣などの被害に遭うリスクを避けたいと考えている方は、検討してみましょう」
7. 人感センサーライトを設置する
「人感センサーライトとは、人が近づくとライトが点灯する機能を搭載したライトのことです。薄暗い場所に人感センサーライトを設置すると、侵入者などを検知した際にライトが点灯して人目につきやすくなるため、犯罪者が近づきにくい環境を作り出すことができます。特に自宅の敷地内で薄暗い場所がある場合は導入すると効果的です」
■宅配便を装った強盗犯を防ぐためには…
8. 宅配ボックスを活用する
「宅配ボックスを設置したり活用したりすることも防犯対策として効果があります。強盗犯の中には、宅配便の配達員を装って犯行に及ぶケースがあるためです。
宅配便を利用する際に宅配ボックスへの配達を依頼しておくことで、配達員に会う手間を省けるうえに、強盗被害に遭うリスクを大幅に軽減できます」
9. セキュリティ会社と契約し、防犯性を高める
「セコムやALSOKなどのセキュリティ会社と契約することも、非常に有効な防犯対策になります。異常が発生すると警備員が駆けつけてくれるのはもちろん、警報機やセンサー機器などを設置してくれて家の防犯性も高められるためです。
また、セキュリティシステム導入の証しとして契約したホームセキュリティ会社のステッカーを配布されるため、それらを貼ることで侵入者を牽制することもできます。
ただし、セキュリティ会社との契約は高額な初期費用(一般的に20万円前後~)が必要になる可能性があるうえに月の利用料も必要になるため、防犯対策はしたいが費用も抑えたいという方には向きません」
■プライバシーを守る塀や植木が隠れ場所に
次に、「狙われやすい家」の特徴はあるのか。戸建てに比べてマンションは安全なのだろうか。松丸さんが続ける。
「一連のトクリュウ強盗が戸建てを狙っているだけで、マンションにはマンションを狙う空き巣などがいますので、一概にどちらが安全とは言えません。
トクリュウ強盗は闇名簿である程度、家の構造や場所、家族構成、人定、資産状況を把握したうえで、下見役の情報に基づいて犯行に及んでいます。
異質なトクリュウ強盗ではなく、それ以外の強盗の標的になりやすい家の特徴には以下があります」
・無施錠のドアや窓
窓やドアが常に施錠されていない家は、侵入しやすいと見なされる。
・高い塀や植木
プライバシーを守るための塀や木々が多い家は、逆に強盗にとって隠れる場所が多いと魅力的に映る。
・照明が少ない
夜間の照明が少なく、暗がりの多い家は、強盗にとって安心して侵入できる場所となる。
・防犯カメラや警備会社のステッカーがない
防犯意識が低いと見なされ、狙われやすくなる。
・高価な車や物が外から見える
お金があると示唆され、強盗のターゲットになりやすい。
・ゴミが整理されていない
生活習慣が乱れている家は、防犯意識が低いと見られることがある。
・犬がいない
犬がいる家は防犯効果が高いとされている。
■空き巣に狙われやすいのは「午前中」
また、犯行を注意すべき時間帯や天候はあるのだろうか?
「一連のトクリュウ強盗については戸建てを深夜帯に襲う傾向がみられます。天候と犯行との関連性は今のところ見られません。空き巣と強盗犯は同じ時間帯に犯行に及ぶと思われがちですが、実際はそれぞれの犯罪が行われている犯行時間は異なります。
例えば、空き巣は午前8~12時の午前中に行われるケースが多いです。特に平日の昼間などの時間帯は、住人が留守である可能性が高いことで空き巣犯などからすると狙いやすい時間帯になるため、日中留守にする日が多い方は注意が必要です」
■強盗犯は住民が寝静まった夜を狙う
「一方で、強盗は午前0〜2時の時間帯に行われるケースが多くなっています。その次に午前2〜4時の深夜から早朝にかけて犯行が行われるケースが多いため、就寝時でも身の安全を守れるような対策が必要です。
このように、空き巣と強盗犯はそれぞれ狙う時間帯が異なるため、防犯対策を講じる際はどの時間帯でも身の安全や資産を守れるような対策を講じる必要があります」
最後に、侵入者と対峙せざるを得ない状況になった時のための防犯グッズについて、松丸さんはこう説明する。
「家の中で空き巣と対峙した場合(特に1対1のような場合)、身近にあって即席の武器として使うことができる物を挙げます。ただし、武器として物を使用する前に、まずは自分の身の安全を最優先し、可能ならば逃げることです。積極的な攻撃を推奨するものではありません」
■玄関に置いてある傘が「武器」になる
・取っ手の長い懐中電灯
強い光を相手の顔に向けることで一時的に目をくらませたり、打撃用の武器としても使える。
・ゴルフクラブやバット
長さがあり、相手に距離を保ちながら打撃を与えられる。
・傘
特に長い傘は、距離を取って相手を突いたり、打撃を加えたりできる。
・椅子
距離を取りつつ相手を押し返したり、足を狙うことで動きを封じることができる。
・フライパン
重さがあるため、強力な打撃を与えることができる。
・鍋の蓋
防御用の盾として使い、相手の攻撃を防ぐのにも使用できる。
・カバンやバッグ
ある程度の大きさと重さがあれば、相手を叩くのに有効で防御にも使える。
・ベルト
バックル部分で打撃を与えたり、相手を絡め取って動きを制限できる。
・雑誌や本
丸めて即席の棍棒にすることができ、意外と強い打撃を与えることが可能。
「ただし、武器を使う際は相手を攻撃することを目的とせず、自分や家族の安全を確保するために、一時的に時間を稼いで逃げることを念頭に置きます」
凶悪化する強盗の被害者にならないためにも、今すぐに実行に移してもらいたい。
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フリーライター
テレビ報道の現場で記者として主に事件取材を重ねてきたフリーライター。
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(フリーライター 一木 悠造)
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