3位はずん飯尾、2位はラバーガール飛永、1位は…「役者として期待する芸人ランキング」男性編ベスト10
プレジデントオンライン / 2024年11月9日 9時15分
■個人的願望込みの「期待度ランキング」10位は…
朝ドラも大河もNetflixも、お笑い芸人の起用が話題を呼んでいる。独特の風貌やたたずまいを活かしてピンポイント起用されることも多いが、うまい人はうまい。芸人ではなく俳優として認識される人も増えた。
もっと観たい、こんな役やってほしいなど勝手に妄想をこねくり回して、芸人で役者としての「期待度ランキング」を作ってみた。まずは男性編を。
うまいかどうかはさておき、ここ数年で1話ゲストや単発作品でも記憶に残った「適役」を記しておこう。本人にはもちろん、キャスティングした人の慧眼にも拍手を送りたい。
10位 力士役で魅せた矮小さと可愛らしさ 義江和也
「サンクチュアリ -聖域-」(Netflix)で憎たらしい先輩力士・猿河を好演。ムカつくのになんだか可愛らしい表情が印象的だった。その後も「ケンシロウによろしく」(テレ東)に力士役でちらっと登場。立ち位置としては、皆川猿時や小手伸也と重なる。「暑苦しくて愛くるしい役者」の激戦区ではあるのだが、力士以外の役も挑戦してほしい気持ちもこめてエントリー。
■早く裸芸に見切りをつけてほしいR-1王者
9位 着衣で化ける、まさかの二枚目系 アキラ100%
全裸+お盆芸のイメージが強すぎて、服を着ていると気づかない、そんな特色を活かして多くの作品に出演しているのがアキラ100%。芸人では数少ない「爽やかで無害なイケオジ」を体現できることが発覚。
「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」(TOKYO MX)もなんだかエエ話だったし、無難に小綺麗で引く手あまた。芸人っぽくないのが逆にいい。なんとなく石田純一にも見えてきた。裸芸に見切りをつけて役者道を邁進してほしい。
8位 嫌悪感と巧みさにリアリティをもたらした 酒井健太(アルコ&ピース)
「シガテラ」(テレ東)の第8話で、ヒロイン(関水渚)をまんまと騙してやり逃げる弁当屋の先輩役。女性嫌悪と不憫な境遇のフリをして情に訴え、誘導する見事なクズっぷりを、酒井が地味に、でも完璧に演じきっていた。あれは震えたな。忘れられない。出演作品が少ないからこそ、今後の期待をこめて。
■インテリ役がドはまりだった「お昼の顔」
7位 昭和初期が似合う一方、令和の空気が求める繊細さ 岩井勇気(ハライチ)
「江戸川乱歩短編集 満島ひかり×江戸川乱歩」(NHK BSP)で鮮烈な印象を残したのが「算盤が恋を語る話」の岩井だ。隣の席の女性(満島ひかり)に算盤で愛の告白を試みる男の役。特殊な作品だが洒落た雰囲気がぴったりで、外連味のなさがよかった。
また、「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK)では主役・松坂桃李の友人で准教授の役で登場。大学が舞台で、イマドキの大学のセンセイっぽさがしっくり。落合陽一のイメージかな。インテリ役を所望します。
6位 え?生きてる?気配を消せる特殊能力 水川かたまり(空気階段)
「妻、小学生になる。」(TBS)では中学生女子に憑依する霊の役、「罠の戦争」(フジ)では議員会館で神出鬼没の事務員・小鹿役。実は芸人と知らずに観ていたので、てっきり役者だと思い込んでいた。気配を消せるほど存在感の薄さは逆に武器になると思っていたら、映画初主演が決定したそうで。その名も『死に損なった男』。タイトルになるほど、と唸ってしまったよ。監督・脚本は『メランコリック』の田中征爾なので、面白くないはずがない。
■盤石の演技力と安心感の男性芸人5傑(ランク外)
ちと細かすぎたのでランキングからちょいと横道へ逸れる。横道というか王道を。キャリアを積み、盤石の立ち位置を掴んだ手練れ5傑に触れておこう。
① 性別の特性を超越、全人類対応可能の主演級 塚地武雅(ドランクドラゴン)
どこもかしこも丸みのある外見のアドバンテージを活かした役に始まり、さらに性別も超えてきた。主演作「パパがも一度恋をした」(フジ)では亡き妻の魂が乗り移ったおっさんを好演し、「新宿野戦病院」(フジ)での看護師長役は記憶に新しいところだ。
もちろんコントでも女性役をよく演じていたが、「こういうおばちゃんおるな」と思わせる動きが秀逸。声音でなく口調で中年女を再現できるのだ。「母に心配される独身中年息子」役もしっくり。とにかく体も芸も幅が広い!
② 顔と声の独創性が無二 平凡を平凡にしない今野浩喜
つい指で押したくなる特徴的な鼻、ひねりのある声、斜に構えた小心者役といえば今野。軍曹や上昇志向の強い学者など嫌味で威圧的な役が多く、最近では医師や刑事の役もこなす。
個人的には、戦にいやいや駆り出される農民(「真田丸」NHK)とか、賢いのに手癖が悪くてムショに入った(「極道めし」BSジャパン)矮小な今野が好きだ。
民の憂いと愚痴と怒りを内包した役を託したいし、日本の歴史上どこにいても違和感のない「世紀超越俳優」として活躍し続けてほしい。
■「地面師たち」で好演したバイプレイヤー
③ 色も誠も闇も調整可能、胡散臭さとうだつのあがらなさ マキタスポーツ
「定番」がないからこそ、多数の作品を飄々と渡り歩いてきた印象。ミュージシャンでもあり、演じる幅の広さは随一。話題の「地面師たち」(Netflix)では地面師詐欺に便乗しようとするも瞬殺される男を演じたし、今期は「ザ・トラベルナース」(テレ朝)に医師役で出演(意外と医師の役が多めの印象が)。
闇金業者で情の深い右腕、スクープ命の週刊誌編集長、密命を受けた刑事など、知的で鋭敏な役柄も託される一方、家族とは洗濯物を分けられてしまう父親役も演じている。変顔や決め顔ではなく、気を抜いた顔に技を感じる、名バイプレイヤーだと思う。
④ モラハラ夫から犬以下の父まで、2.5枚目の盤石 原田泰造(ネプチューン)
二枚目と三枚目の間、陰と陽の間でうろうろする感じは女性に人気。「運命の人」(TBS)で嫉妬深い神経質な男をチック症状で演じた印象が強く、モラハラ威圧系で台頭。
時を経て善人化した泰造は、優しい夫やいい父になりたいが空回りする主演作が急増。「全力疾走」(NHK)、「生理のおじさんとその娘」(NHK)、「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」(フジ)など。
裸芸は得意技、無駄にある色気も功を奏したか、「サ道」(テレ東)の主演にも説得力があった。
■「鼻からうどん」よりも演技で成功
⑤ 体罰教師も理想の上司も 星田英利
鼻からうどんはもう出さないが、関西弁でいい味を出し続けるのがほっしゃん。改め星田英利。「カーネーション」で横恋慕全開、「まれ」で職人肌全開、「おちょやん」で芸人魂全開と、朝ドラで暗躍。最近では「錦糸町パラダイス」(テレ東)で江戸時代から生きる男というトリッキーな役どころで牽引した。
コワモテで悪人面なので、体罰教師の役もしっくりくるのだが、義理も情も愛も厚いという持ち味がある。それが存分に活かされたのは「宮本から君へ」(テレ東)だった。関西弁がもたらす優しさと強さを使い分け、主人公・宮本(池松壮亮)を叱咤激励する姿が記憶に濃い。今後の大役を待つ。
5傑でまとめたけれど、他にもレジェンド級がいることも心に刻んでおきたい。でんでん、蛍雪次朗、緋田康人、住田隆、モロ師岡、田口浩正、堀部圭亮、板尾創路、石井正則らは役者道を貫いて、それこそ何十年も活躍し続けているのだから。ということで、ランキングへ戻ろう。
■声と顔が大きいのに威厳が全くない
ここからは、ほぼメガネという偏った趣味全開でお届けします。既に出演作多数だが、メガネを活かしても外してもいい、いろいろな顔を見せて、幅を広げてほしいと思っている上位5人を。
5位 ステルス犯罪者からの脱却を 鈴木拓(ドランクドラゴン)
テロリストに真っ先に射殺されたり、養育費を払わないでバックレたり、一小市民としてこっそり出演している鈴木。カメオ出演ではなく、気づかれにくいステルス出演で、初回か最終回御用達の傾向も。
また、指名手配犯や性犯罪者、執拗なクレーマーに不審な変質者などの陰の役を託されがちだ。役者で言えば、森下能幸や水澤紳吾が担う「貧相で不穏な男」枠かな。
意表を突いて勇ましく強い役を演じれば、面白いハレーションが起こる気もする。思い切ったキャスティングを待つ。
4位 声量の割に小心者という特性 おいでやす小田
名作朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で余計な一言を言ったり、適宜ツッコんだりする近所のおっちゃん役でがっつり爪痕を残した小田。小田が残す余韻がとにかくおかしかった。声と顔が大きいのは時代劇俳優っぽいが、威厳がまったくないところが評価できる。
ご近所シリーズは「石子と羽男」(TBS)でも続いた。ヒロイン(有村架純)に恋心を抱く近所の蕎麦屋の息子で、完全なる負け戦で無理ゲーと全人類がわかっている役どころ。
もうちょっと年をとれば、平幹二朗に近づける気もするので、メガネを外した渋めの役も見てみたい気がする(たぶん私だけ)。あるいは大河「光る君へ」で好演した、声のか細い矢部太郎との組み合わせで、化学反応が起こるような気もする(たぶん私だけ)。
■好物のドラマにこの芸人アリ
3位 人畜無害のおじさんに大きな使命を背負わせたい 飯尾和樹(ずん)
「アンナチュラル」「MIU404」「私の家政婦ナギサさん」(TBS)、「獣になれない私たち」(日テレ)などの人気作に出演し、笑いや癒しや驚きをくれた。困らせてガチで冷や汗をかかせたほうが実力を発揮しそうなので、使命感や焦燥感を背負わされる巻き込まれ型サスペンスなどで観たい。
ちなみに相方のやすには、高橋克実の弟役を推奨しておこう。
2位 無味無臭の優秀な人材をよりキナ臭い世界へ 飛永翼(ラバーガール)
好物のドラマに飛永の姿アリ。「来世ではちゃんとします」(テレ東)ではCG制作会社のリーダーで、漫画家稼業もこなすデキる男役(ただしソープ嬢に貢ぐ)、映画とドラマで展開する「ベイビーわるきゅーれ」シリーズでは殺し屋協会のマネージャー役。
地味だが仕事はできるイメージを活かして、裏金議員の秘書や闇稼業の頭脳担当に就いたらいいんじゃないか(最後は罪を被せられるヤツ)。
ちなみに、相方・大水洋介は地球上も地球外もどんな場面でも盤石の溶け込みようなので、このペースを維持してほしい。
■中井貴一の弟役なんてどうでしょう
1位 盤石の知性派・安定のヒールを大人の恋愛市場へ じろう(シソンヌ)
猫と会話できるとか、思い込みの激しいちょっと厄介な人を演じると秀逸。絵に描いたような律儀で真面目な顔立ちは、善悪両刀使いで有効活用されている。
NHKの正月時代劇「いちげき」で魅せた悪代官っぷりも評価したいし、「心霊内科医・稲生知性」(フジ)では実にクールな主演もはたした。大人の恋愛ドラマのメインキャストとして出てきたら面白いだろうな。中井貴一の弟役もぜひ勧めたい。
ちなみに相方の長谷川忍は主にNHKの作品で無神経キャラが続いているが、「凪のお暇」(TBS)で演じた兄のような天衣無縫な人間も立体的に演じられるはず。
ということで、偏向的かつ、ごく一部しか挙げられなかったが、芸人としての芸風とは異なる印象の役を演じた人のほうが高評価につながったような気もする。メガネじゃない芸人の活躍も、待ってます。
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ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。
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(ライター 吉田 潮)
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