勉強はいじめられないための"防具"だった…発達障害の息子が小学6年間「先取り学習」をした驚きの結果
プレジデントオンライン / 2024年11月12日 17時15分
※本稿は、赤平大『たった3つのMBA戦略を使ったら発達障害の息子が麻布中学に合格した話。』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■市販の副読本や問題集を使った「先取り学習」
小学1年生からずっと国語、算数、理科、社会のすべてを教えてきました。でも、私が行ったことはシンプルで、特別な学習メソッドではありません。
いわゆる「先取り学習」。学校の授業よりも先に、家庭でどんどん単元を学んでいくという学習スタイルなので、在籍している学年を飛び越えて――小学1年生で2年生の単元を学んだりしてもOKです。先取っておけば、たとえ授業に集中できなかったとしても、勉強についていけなくなる危険性はグッと少なくできます。
また結果論ですが、付きっ切りで教えることで息子が「何が得意か、苦手か」「どこが理解できているか、いないか」を私も細かく正確に掴むことができました。
私が息子の弱点を知っているので、効率的、効果的な復習ができていたと思います。
使用した教材も特別なものではなく、書店で売っていた教科書準拠の副読本や問題集でした。教材の使い方も、この通りオーソドックスです。
② 解答を私がチェック。間違った箇所に印を付ける。
③ しばらく時間を置いて、もう一度同じページを解答させる。
■現在も続けている毎朝10分の「新聞タイム」
また、毎日のルーティンとして、朝の同じ時間に10分間の「新聞を読む」時間を作っていました。世の中のニュースをはじめスポーツ、芸術、歴史、自然科学……さまざまな情報に無作為に触れさせるためで、小学校6年間は『朝日小学生新聞』、中学生になった現在は『日本経済新聞』を読んでいます。
これは、すでに実績や効果が証明されている発達障害教育や才能教育の知識をベースにした取り組みです。
このように、教材や勉強方法は一般的なアプローチでしたが、少しだけ独特だったかもしれないのは、徹底的に発達障害向けに“アレンジ”したことです。発達障害動画メディア『インクルボックス』の活動の中で身についた知識が、ここでも役に立ちました。
発達障害の療育では基本中の基本として教わる、本人の「発達特性に合った学習環境の調整」を何度もトライ&エラーで確認、実践していきました。
■目標は「小学生テスト」で“成績優秀者”
さて、息子は朝の1時間とスキマ時間で、コツコツ先取り学習を進め、算数に関しては小学2年生の時点で、6年生の内容まで終えていました。
「全部やり終えてしまったけど……次に使う教材はどうしよう?」
息子は小学1年生の時から、「全国統一小学生テスト」を受けていました。ある日、たまたまテストを運営する進学塾・四谷大塚のホームページにいろいろな教材や問題集があるのを見つけました。試しに1つ上の学年の4年生向けの難易度が高い算数の教材を取り寄せてみると、今まで使っていた教科書準拠の教材よりも面白く、解説が丁寧でした。
「これは、息子のやる気を引き出すのにちょうど良いかも」
すぐに全科目分を取り寄せて、3年生の時から切り替えて毎日取り組み始めました。
ですから、今考えるとある意味、この時から息子は中学受験の勉強を開始していたのかもしれません。ただ、この時は私も息子も中学受験なんてまったく考えていませんでした。頭の片隅にもありませんでした。
当時、私達が目標にしていたのは、「『小学生テスト』で“成績優秀者”になる」ということでした。当時の「小学生テスト」では全国で上位50位以内になると、成績優秀者として公式サイト上で名前が発表されました。さらにトップ30位に入ると、iPadが貰えたりアメリカの名門大学の視察旅行といった副賞が貰えることになっていました。
■息子の身を守るものとしての「勉強」
私は、年に2度ある「小学生テスト」をちょっとした“腕試し”に位置付けることで、日々勉強することの意味を持たせたいと考えました。そして同時に、息子にこう伝えました。
「勉強は人と競争をするものではないよ」
「今の自分がどれくらいできるかを知るためにテストがあるんだよ」
私は誰かと比べられたり、人と競い合うのが苦手です。競争すべきは過去の自分だけ。昨日の自分、1時間前の自分、1分前の自分には「絶対に負けちゃいけない」と常に思っていて、そう息子にも話していました。
テストは他人との比較ですから、私としては本来は好きではないのですが、社会はどこまで行っても競争がつきまといますから、息子もそれに慣れていかなければなりません。
実は成績優秀者を目指すのには、もう1つ意味がありました。
それは「勉強で身を守る」ということ。小学校では、息子の発達障害に由来する変わった発言や行動が多かったせいで、周囲から残念ながら辛辣な対応をされることがありました。私の目の前でいじめられたことも、1度や2度ではありません。
■飛び抜けたものがある子は一目置かれる
「小学生テスト」の公式サイトに息子の名前が載ったら――。これから中学受験を意識する家庭も増えていく中で、それ見たクラスメイトの親御さんは、「これって、あなたのクラスの赤平君?」と聞くはず。そうなれば、「赤平はちょっと変わっているけど、頭のいいヤツ」こんなポジションを確立できれば、いじめられないはずです。
「野球ですごい球を投げる」「サッカーチームのエース」「ピアノのコンクールで優勝した」「日本全国の鉄道を全部知っている」……等々、何か1つ、飛び抜けたものがある子どもは、何となく周りから一目置かれます。運動もピアノも苦手な息子ができそうな身近なことが、勉強でした。
いじめられて息子が二次障害にならないために、勉強が身を守る“防具”になるかもしれないと思っていたのです。
「小学生テスト」は6年間受け続け、結局一度も名前が掲載されることはなかったのですが、その結果から見えたことが、後々、麻布を受験するギリギリで役に立つことになります。
■50台半ばだった偏差値が突然70超に
6年生の11月、中学受験直前、そして1年生から受け続けた息子にとって今回で最後となる「小学生テスト」が行われました。
その結果に驚きました。息子の偏差値が70を超えていたからです。
小学校高学年になってからは、平均50台半ば。それがここに来て突然の70超え――。
志望校に入力した麻布はA判定。いつも“再考”だったのに、です。
四谷大塚も日能研も、塾に通っていない“外部生”が模試を受ける場合、塾の教室や提携塾の教室を使って受験させてくれます。ただ、自宅近くで毎回受験できるわけではなく、受験枠が残っている教室での受験となるため、模試受験人数が増える6年生の後半は自宅近くの教室がいつも一杯で、都内から離れた千葉や神奈川、埼玉への“遠征”でした。
この息子との模試遠征の帰り道には、試験を頑張ったご褒美に美味しいものを一緒に食べたり、ゲームセンターで息抜きしたりしていました。進学校を目指す“いわゆる中学受験”ではない息子と私にとっては、模試の結果に一喜一憂する必要がなかったので、小旅行気分だったのです。
■塾も驚いた「赤平家独自の勉強法」
外部生の模試の結果返却時には、必ず塾に受け取りに行く必要がありました。その際、入塾の勧誘も兼ねた「塾講師と親の面談」も必ずセットになっています。
この最後の「小学生テスト」の時も、私は結果を受け取りに行きました。すると塾の方から最初にこう聞かれました。
「赤平君は、どちらの塾に通われているんですか? SAPIXですか?」
「塾は行ってなくて、家で勉強を見ているんです。息子は発達障害があるので……」
「家庭学習だけですか⁉ どんな方法なんですか?」
私はこれまで行ってきた生活面の支援や勉強方法を説明しました。
「いやぁ、すごいやり方ですね……。これまで、そんな風に勉強しているという話、聞いたことがありませんよ」
受験直前の11月に起こったこの「偏差値70」事件は、私にとって1つの区切りとなりました。そもそも、「小学生テストで全国上位に入れば、学校でいじめられなくなる」これが、模試を受け続けた理由です。
でも残念ながら、息子の順位はまったくあがらず偏差値50台をウロウロ。高学年になると、いじめはほとんど無くなっていたので、テストを受ける大義は失っていましたが、それでも続けてきました。
「最後の最後でいい成績がとれて、頑張りが目に見える形になって良かった。息子の自信になった」
そう思っただけで、この時点でもまだ決して、麻布受験は考えませんでした。
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アナウンサー、ナレーター
1978年9月13日、岩手県出身。voice and peace代表取締役。2001年、テレビ東京入社。メインキャスターを務めた報道番組『速ホゥ!』をはじめとするニュース番組、バラエティー番組やスポーツ実況等を担当。2009年、退社しフリーアナウンサーに転身すると、ボクシングやフィギュアスケート、ラグビー等の実況や、番組ナレーション、経済番組キャスター、大学等で就職活動コンサルのほか、2015年から千代田区立麹町中学校の学校改革をサポート。2017年、早稲田大学大学院商学研究科を修了しMBAを取得。2022年から横浜創英中学・高等学校講師、2024年から代々木アニメーション学院で就活講師を務める。発達障害と高IQを持つ息子の子育てをきっかけに、発達障害学習支援シニアサポーターなどの資格を取得し、学校や企業向けの講演活動を開始。発達障害の知識を手軽にたくさん身につけるための動画メディア『インクルボックス』も運営。 note
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(アナウンサー、ナレーター 赤平 大)
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