3位は吉住、2位は福田麻貴(3時のヒロイン)、1位は…「役者として期待する芸人ランキング」女性編ベスト10
プレジデントオンライン / 2024年11月10日 9時15分
■思わずノートに書くほど惹かれた女性芸人の演技
男性芸人に比べて、女性芸人は役者としてのキャリア形成が難しいようだ。制作側のオファーがいかに刹那的かというのも想像できる。女優が断るルッキズム案件を託したり、話題になったときだけという使い捨て感も否めない。男性芸人に比べて出演作が少ないのはもどかしく思うだが、期待度ランキング、始めてみよう。
ポテンシャルが高そうと感じたのは4人。既に主演作がある人もいる。「この女優さん、いいわねぇ」なんて思ったら芸人で、驚いた人もいる。
10位 ベタな記憶喪失変身系を魅力ある物語に かなで(3時のヒロイン)
1作しか観ていないが、魅力的だったなと思い返してエントリーしたのが、3時のヒロインのかなで。根が暗く自己評価の低い太った女性が事故をきっかけに、超ポジティブになって恋に仕事に大活躍する「デブとラブと過ちと!」(TOKYO MX)で主演を務めた。
いわゆる記憶喪失モノだが、「話は普通でも、かなではずっと観ていたい」とノートに書くほど惹きつけられた。あの朗らかさは宝になる。
9位 達観した女友達、チーママもいけるクチ ヒコロヒー
落ち着いたたたずまい、やることはやってそうな頼もしい印象。悩むヒロインの背中を押したり、ダメ出しをしたりと女友達感は抜群。トリッキーだったのは「だが、情熱はある」(日テレ)で主役の母親役。母にしては若すぎると思ったものの、託されるだけの安定感があった。「ミステリと言う勿れ」(フジ)で演じた、ビッグマウスの彼氏に流され、常習的に嘘をつく、やるせない女役がしっくりきたので、高いスキルをもった詐欺師やワケアリなチーママなど演じてほしい。
■ロバート秋山っぽい特別な距離感
8位 近所に住んでたら安泰、自然体おばけ サーヤ(ラランド)
前述の女優と勘違いしたというのが彼女だ。叱咤も激励もしない、何があっても通常運転でいてくれるフラットな友達役にぴったり。
「完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの」(テレ東)で主人公(深川麻衣)の親友・ヨッピ役、「最高の教師」(日テレ)では主人公(松岡茉優)の親友・夏穂役。どちらも物言いはストレートで一切遠慮なしだが、心の距離が近い存在を自然体で演じていた。
7位 ウザキャラを土台に進化し続ける予感 丸山礼
「警視庁捜査一課長」(テレ朝)の1話ゲスト出演に始まって、あっという間に「ワタシってサバサバしてるから」(NHK)で主演を務めた。俯瞰してみると、ウザいキャラクターが得意。
「くるり」(TBS)では記憶喪失になった主人公の隣人で、何かと世話を焼いてくれる役がハマった。感覚的には、ロバート秋山っぽい距離の近さがあり、特殊な距離感をベースに役者として進化し続けるのではないか。
■独特な持ち味を生かすトリッキーさ(ランク外)
さて、思いっきり横道にそれよう。手練れというよりはトリッキーな役回りを得意とする女性芸人をまとめてみる。
番外編① 物憂げな仏頂面クイーン 清水ミチコ
モノマネ芸人は劇中のスパイスとしては強烈なのだが、モノマネではないキャラクターづくりも秀逸。武道館のライブであごはずれるほど笑った記憶が。
数多ある作品から2つ選ぶとすれば、キーワードは仏頂面。「家族八景」(TBS系)で演じた大家族でズボラな母の役。そして大河「真田丸」で演じたのは豊臣秀吉の妹・旭。ただ黙るだけではない、仏頂面の奥深さを教えてくれる名演だった。
番外編② CG合成のような特異なキャラクター性 竹原芳子(旧芸名・どんぐり)
落語家としても活動する彼女が一躍有名になったのは、映画『カメラを止めるな!』のプロデューサー役。鉛筆一筆書きのようなルックスは無二、キャラがかぶる女優も不在で引っ張りだこに。
彼女の面白さをたっぷりと味わえたのは「ルパンの娘」シリーズ(フジ)である。泥棒一家で鍵師の祖母役だが、孫や息子のピンチも救う。横浜メリーさんコスプレは彼女ならではの渾身の一撃で抱腹絶倒だった。
■逆に女優に演じられるという逆転現象
番外編③ ホラーやオカルトの印象よりも江古田ちゃん 鳥居みゆき
初期の芸風の見た目のせいか、サイコホラーやオカルトの印象をもつ人も多いが、政治ネタが辛辣で秀逸だったと思い出した。
主演作「臨死‼江古田ちゃん」(日テレ)が首もげるほどハマり役だった気がする。原作ではほぼ全裸だし、ドラマでは描き切れないジレンマはあったが、江古田ちゃんは適役。
最近は「シッコウ‼」(テレ朝)で裁判所の強制執行をうける妻の役で、執行官に悪態ついたりしてね。「陸王」(TBS)で演じた教師役のように、インテリが似合うと思うんだけどな。
番外編④ 姉妹ブランドが強すぎる 阿佐ヶ谷姉妹
姉妹じゃないけど姉妹感の強い、阿佐ヶ谷姉妹の渡辺江里子と木村美穂。ドラマ出演が多いのは渡辺のほうだ。「科捜研の女」(テレ朝)ではまさかの犯人役もこなした。
逆に、木村多江と安藤玉恵に演じられるという逆転現象も起きてしまう。イメージというかブランドが強いので、これはこれで維持していただきたく。
■角野卓造似よりインテリ役の方がハマる
もう、ついつい長くなっちゃう。ランキングに戻ります。
6位 女中頭に仲居頭、着物が似合う強みを生かす 友近
演歌歌手・水谷千重子として「徹子の部屋」に出演したくらい、多才なオールラウンダーなのだが、やっぱりしっくりくるのは和装。
朝ドラ「あさが来た」ではヒロインに生涯を捧げる女中・うめ役で、番頭の雁助(山内圭哉)との切ない恋模様で話題を呼んだ。
「プロミス・シンデレラ」(TBS)ではヒロインの初恋の相手が副社長を務める老舗旅館の仲居頭役で、物語をぐっと引き締めた。この年代の女芸人があまりドラマに出ないので、息の長い存在として牽引してほしい。
5位 議員役が意外とぴったり、次は実演を 近藤春菜
角野卓造似を活かした三の線起用が多かったけれど、最近はインテリ女性の役が増えて、説得力も貫禄も十分。
「悪女」(日テレ)では優秀なエンジニア役、「ラストマン」(TBS)では顔出ししない料理インフルエンサーの代理人を務める弁護士役、そしてついに「ブラッシュアップライフ」(日テレ)では市議会議員役まで上り詰めた(といっても選挙ポスターの写真出演だけだが)。
なんとなく社民党や共産党の議員っぽさがあるよね。ということで、次は実際に政治家役を推奨。
■山でも演技でもいい仕事してる
4位 登山家になった一方で、地味系から理系へ イモトアヤコ
「世界の果てまでイッテQ!」(日テレ)でその名をとどろかせ、もはや冒険家・登山家といってもいい快挙を達成。ただ、素朴でまっすぐな持ち味は役者としても発揮してほしいと願っている。
2010年に「99年の愛」(TBS)で俳優デビュー、その後は平凡で何の変哲もない女性のリアルを演じたり(NHK「ご縁ハンター」、日テレ「家売るオンナ」)、有能なエンジニア役で説得力をもたらしたこともある(TBS「下町ロケット」)。
女優とは異なるスポットライトを浴びてきた人だからこそ、芝居の世界で純朴さが活きるような気がするんだよね。
■女優としてもはやレジェンド(ランク外②)
既に肩書は女優のレジェンドたちにも触れておこう。平成、いや昭和の頃からテレビドラマ界を支え続けた4人の功績を称えつつ、令和の最新出演作も振り返る。
番外編⑤ 噂話もお節介もお任せ、近所のおばちゃんの権化 竹内都子(ピンクの電話)
昭和末期から多くの作品に点在しては噂話に花を咲かせたり、事件を目撃したり、ご近所CIAとして活躍した都子。最近では「さよならマエストロ」(TBS)で西田敏行の娘で宮沢氷魚の母親役、「燕は戻ってこない」(NHK)ではヒロイン(石橋静河)が世話になる春画家(中村優子)のもとで働く家政婦を演じた。声優向きとも言える独特の声で、ふわっとした和みをもたらす、息の長い女優だ。
番外編⑥ コメディエンヌとして控えめに、でも確実に君臨 ふせえり
抜群の間合いと無駄に疑り深い表情などで、「時効警察」「熱海の捜査官」(テレ朝)などのコメディ作品の完成度を高めてきた。観ないクールはないと言ってもいい(先日もテレ朝の「相棒」で復讐に囚われた作家を演じていた)。
朝ドラ「ブギウギ」ではヒロイン(趣里)の下宿先の女将で、元力士で寡黙な夫(隈本晃俊)の尻を叩く役がぴったり。また、「ザ・タクシー飯店」(テレ東)では主人公(渋川清彦)が運転するタクシーの乗客。離婚届を出しに行くと大喧嘩する夫婦を柳沢慎吾と演じていた。この夫婦がまた妙にしっくり。
夫婦役は間合いが大事。ある意味暴れ馬の柳沢の手綱を見事にさばけるのも、ふせえりならではと感心した。
■昭和の女の「従順と怨嗟」
番外編⑦ 陽気な三姉妹、女優としての人生に拍手を 正司照枝
今年91歳で他界した正司照枝は、かしまし娘の次女として陽気な歌声を茶の間に届けた後は、時代劇を中心に活躍。今再放送中の朝ドラ「カーネーション」でヒロイン(尾野真千子)の祖母を演じた姿を忘れない。また「陸王」(TBS)では老舗足袋屋の最古参縫製職人を演じ、職人のプライドを体現。追悼と感謝をこめて。
番外編⑧ 昭和の女の「従順と怨嗟」を背負ってきた大女優 泉ピン子
好き嫌いが分かれるかもしれないが、私は大好き。橋田寿賀子作品で名女優となったけれど、昭和初期生まれの女たちが抱えてきた、悩みも恨みも忍耐も絶望も、ピン子がまるっと引き受けてきた。
主人公の糟糠の妻を演じた「淋しいのはお前だけじゃない」(TBS)は、主人公を演じた西田敏行の追悼もこめて、ぜひ観てほしい(U-NEXTで視聴可能)。健気で従順なピン子の献身的な愛が痛いほど刺さってくるから。
で、最近の出演作「お別れホスピタル」(NHK)もテーマとしては延長線上にあった。長年尽くした夫が終末期治療に入り、衝撃の結末を迎える妻を静謐に演じたピン子。高橋惠子とともに「妻の在り方」を考えさせる名演だった。
■もっと観たいと思った女性芸人トップ3
寄り道も多かったが、ようやく本題へ。面白いを超えてうまいなぁと感心したトップ3を発表しよう。男社会で生き抜く若手女性芸人たちにエールをこめて。
3位 卑屈でシニカル、低い自己評価を売りに 吉住
「FM999」(WOWOW)で、希死念慮のあるホーミーの女をコミカルに切なく演じた(というか歌いあげた)のが初見。絶妙な距離感(近くて遠い)が面白かったのは「となりのナースエイド」(日テレ)で演じた小野夏芽役だ。一気にファンになって、吉住登場を心待ちにした記憶がある。
柔和な顔と温和な声音で毒舌を吐く姿も面白いし、卑屈もひとつの才能だ。刑事モノや医療モノなど定番すぎて飽き飽きするようなドラマに、ひとさじの毒とスパイスを盛ってくれる可能性大。
2位 恋愛の神様が宿りそうで宿らない健闘ぶり 福田麻貴(3時のヒロイン)
日曜劇場「危険なビーナス」や「ラストマン」(TBS)では、かなり重要な(しかもちょいと不倫絡み)役を演じて話題に。ホップステップで主演作「婚活1000本ノック」(フジ)で本領発揮である。
婚活中の作家役で、激しい面食いで男を見る目がない。相手を値踏みする舌鋒鋭さがコミカルな一方で、ふとした時に見せるオンナの表情がエストロゲン由来の天然モノ。
恋だの愛だのの時代ではないけれど、つまらなくなった恋愛ドラマを底上げしてくれる才が、彼女にはある。
■もう彼女には期待しかない
1位 ポジティブ封印、純朴から極悪への逡巡 ゆりやんレトリィバァ
今回の原稿を書くきっかけはNetflixの「極悪女王」。ダンプ松本役がすごくよかったんですわ。
ゆりやんはそもそも芸風がポジティブで、「ベビーシッター・ギン!」(NHK BSP)では新喜劇風味のヒロインだったし、「持続可能な恋ですか?」(TBS)でもポジティブ思考の人気インストラクター役、「FM999」(WOWOW)でもまゆげが個性的な女子として、世間体に唾を吐きながらも前向きに「かわいい」を追求する歌をほがらかに歌っていた。つまり、芸風そのままの印象もあって、何かひねりがほしいと思っていた。
そこにきて、ダンプ松本役。苦悩と絶望を糧に、不本意ながらも悪役レスラーの道を進む、ひとりの健気な女性を見事に演じきったのである。期待しかないの、今後のゆりやんの役者起用に。
女性芸人でもドラマで末永く活躍できる人が増えますよう。12月放送の「女芸人NO.1決定戦THE W2024」をチェックして、未来のピン子を待つことにする。
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ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。
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(ライター 吉田 潮)
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