相手の目を見て「ごめんなさい」は絶対NG…悪質クレーマーから自分を守るための"5大ルール"
プレジデントオンライン / 2024年11月16日 9時15分
※本稿は、津田卓也『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
■顧客のなかには「非顧客」が隠れている
クレームの種類の見極めと同様に知っておきたいのが、顧客の見極めです。
もちろん、クレーム対応の現場は民間企業ばかりではありません。病院や介護施設などであれば“患者”、役所や図書館などの公共施設であれば“利用者”が顧客にあたる存在です。皆さんの立場によって、本稿本書の「顧客」を“患者”“利用者”などに置き換えながら、読み進めてください。
顧客とは、「その組織が求めるお客様としての、正しい行動をしてくださる方」のことです。「提供している商品やサービスを適正に利用してくれる人」と定義していいでしょう。しかし、一般に“顧客”と考えられているお客様のなかには「非顧客」が隠れています。「非顧客」とは、「提案している商品やサービスを絶対に利用してほしくない相手」です。
例えば次のようなお客様について、皆さんはどう感じますか?
・釣り銭を1円間違えるなどのささいなミスに対して、過度な謝罪を要求する
・スタッフにセクハラをする
このようなお客様に「またぜひ利用してほしい」と思う人はいないでしょう。そのような相手はもはや顧客ではありません。
これは、公共施設も同じです。「税金で運営しているから」「公的な機関だから」と、我慢する必要はありません。顧客は選んでいいのです。ただし、それには、お客様を定義づけする難しさも知っておかなければなりません。
■「転売ヤー=非顧客」とも言い切れない
ここ数年、限定商品を転売目的で大量購入する人たちの様子がニュースなどでよく取りあげられており、議論を巻き起こしています。たしかに一見、迷惑行為に見えます。でもこの事例だけでは、「非顧客」とは言い切れません。
「せどり」という言葉を聞いたことはありませんか?
購入した金額より、付加価値をつけて高く売る商売のことで、古本屋や古物商はこれに当たります。つまり、転売目的での商品購入自体は、法律に違反しているわけではないのです。店の方針によっては「大量購入してくださる良いお客様」と捉える場合もあるでしょう。
ただし、もし買い占めが原因で、商品を買えないお客様からクレームが入り、通常業務に支障が出たり、店舗の評判が落ちたりするようなら、「非顧客」と判断されるかもしれません。このように、業界・業種・業態によって、「非顧客」の定義は異なります。
また、「無理難題を押し付けてくるお客様」も、一概に「非顧客」と決め着けるのは危険です。なぜなら、文句を言う権利は誰にでもあるからです。もちろん「できない」と断っても、繰り返し要求をしてくる場合や、脅迫的な言動やスタッフが身の危険を感じるような言葉を伴う場合は別ですが、対応者が一目で判断することは厳しいのです。
■常に「お客様対応モード」で対応する必要はない
「非顧客」と判断するべきか否かは、組織があらゆるリスクを考えて決定します。私が研修などでお伝えしてきた今までのクレーム対応は「お客様をファンに変える」という観点で行ってきました。この原則は、どんな時代が来ようと揺るぎません。
しかし、「非顧客」であるにもかかわらず「お客様対応モード」で対応してしまえば、相手は増長し、無理な要求に拍車が掛かり、扱いに困るような厄介なクレーマーに変貌するでしょう。
逆に一般クレームの範囲なのに、判断を誤り「非顧客」として対応をしたら「何の改善もされないどころか、迷惑クレーマー扱いされた」と、お客様は憤慨してしまいます。
「顧客」「非顧客」の判断を、現場で対応しているスタッフ個人の感覚に委ねるのはとても危険です。対応者のスキル不足や個人のその時々の感情によってお客様を選別するようなケースを避ける必要があります。同じようなクレームなのに対応に差が出て整合性がとれなくなってしまえば、組織としての在り方を問われる事態が生じます。
その判断は現場スタッフに任せるべきものではないのです。
■笑顔で対応するのはNG
顧客の定義づけは、必ず組織がルールを整備して一定の基準で行えるようにします。組織として、「非顧客」の定義づけさえしてしまえば、現場のスタッフは、「非顧客」に無駄な時間を使う必要がなくなりますので、業務効率が上がり、働きやすくなります。
ここからは、現場でのクレーム対応の基本を確認していきます。お客様の要求内容を見極めるため、どのような相手でも最初は全て同じ対応をします。
一般クレームであっても、適さない対応をしてしまうと、ハードクレームやカスハラなどのトラブルに発展してしまいますので、ここでご紹介する対応の基本は、「型」としてしっかり身につけておくことが大切です。
①笑顔を封印する
接客の仕事をしている人のなかには、職業柄、いつ何時も笑顔が貼り付いてしまっている人が多くいます。しかし、クレーム対応に笑顔は不要です。完全に封印してください。
■前傾姿勢を取り、相手の目を凝視しない
②相手の目は見ず、顔の中心を見る
「謝罪するときは、相手の目を見なさいと習ったから」と、お客様の目を凝視する人がいますが、他人からじっと見られることを日本人はあまり得意としません。特にクレーム対応時に、相手の目を見すぎるのは危険です。
人は怒っているときに、目を凝視されると、「ケンカを売っているのか」と勘違いするからです。クレーム対応時は相手の目を直接見るのではなく、「目のあたり」を見るといいでしょう。顔の中心を見るイメージで表情をうかがいましょう。
【さらにワンポイント】
時折、うなずいたり、考えたりするような仕草をして、目線を自然に下にそらすようにしましょう。顔を見すぎていると、好戦的・威圧的にとられる場合があります。とはいえ、あからさまに視線を横に流したり、上を向いたりするのはNGです。目が泳いでいる印象を与え「話を聞いていない」とか、「本当のことを言っていない」と受け取られかねません。
③前傾姿勢になる
クレーム対応時は、軽く前傾姿勢をとります。体を後ろにそらしてしまうと、胸を張って偉そうに見えます。その逆で、前傾姿勢で向き合い「お話を伺います」という気持ちを、体で表すことができるのです。
■手を伸ばしても当たらない距離を保つべき
④右手を下にして、体の前で手を組む
話を聞くときは、お腹の前で右手を下にして手を組みます。右手を下にすることで、相手から見て自らの心臓に近い左側の手を抑えていることになるので「すぐに手が出せない」つまり、敵意がないということを表現できます。
【さらにワンポイント】
手を組むことには、自分を落ち着かせる効果もあります。誰だって怒鳴られるのは怖いです。ぎゅっと手を組むことで、万が一震えてしまっても、相手に知られずに体の震えを抑えられ、自分自身も落ち着くことができます。
⑤お客様からは75~120センチの距離をとる
人は自分の縄張りに他者が入ってくると、不快になります。「パーソナルスペースを侵害される」と言うとお分かりいただけるでしょうか。ただし、あまりに距離をとられると、避けられていると感じ、やはり不快です。
クレーム対応時は、相手が不意に手を伸ばしても当たるか、当たらないかの距離を保つことです。興奮状態の相手は、何をしでかすか分かりません。自分や仲間の安全のために、そしてお客様を加害者にさせないためにも、一定の距離を空けて立ちましょう。
【さらにワンポイント】
自分から見て、お客様の正面ではなく、少し左側(お客様から見たら右側)に立つのがお勧めです。心臓は左にあります。人は自分と親しい関係ではない人に、心臓の近くに立たれると、無意識に不快感を持つので、こちらが損をしてしまいます。
クレーム対応時はどんなベテランでも、焦ってしまいます。慌てたとしても、姿勢や態度の「型」が身についていれば、落ち着いた気持ちで、クレーム対応に入れるはずです。
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クレーム研修担当講師
キューブルーツ(Cube Roots)代表。1965年生まれ。京都府出身。1995年ブックオフコーポレーション株式会社に入社し、2000年にはブックオフコーポレーションの年間MVP獲得。2005年にセミナー&研修会社キューブルーツを設立。メディアでも活躍し、フジテレビ『バイキングMORE』、テレビ東京『解禁!暴露ナイト』、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」、NHK「あさイチ」等に出演。執筆活動にも力を入れており、雑誌では『日経ビジネスアソシエ』等にも寄稿。著書に『どんなクレームも絶対解決できる!』、『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(ともにあさ出版)、『なぜか印象がよくなるすごい断り方』(サンマーク出版)などがある。
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(クレーム研修担当講師 津田 卓也)
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