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「仕事でヘトヘト」に「家でゴロゴロ」は逆効果…自律神経の専門家が疲労感を和らげるために帰宅直後にやること

プレジデントオンライン / 2024年11月19日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mikko Lemola

病気にならず、健康でいるためにはどうすればいいのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「病院に行くほどではない心身の不調にきちんと対処することが大切だ。たとえば、疲労感がたまった時は帰宅してすぐに休憩するのではなく、ひとつアクションを挟むといい」という――。(第1回)

※本稿は、小林弘幸『病院に行くほどではない不調に医師がしたこと』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

■帰宅したら、休む前に「靴磨き」

外での用事を終えて帰宅すると、ホッと一息つきたくなりますよね。疲れていたり、不調を感じていたりするならなおさら、すぐにでも横になりたいもの。でも、帰宅後すぐ、椅子に座るのはちょっと待って。

自律神経は急激な変化を嫌います。歩く→座る、よりも、歩く→片付ける→座る。後者のほうが変化が緩やかです。

帰宅したら買ってきたものを袋から出して片付ける、バッグの中身を整理する、財布の中のレシートを処分する、部屋着に着替える、部屋のどこか一箇所だけ整理整頓する、こんなふうに、一息つく前に何かアクションを一つ挟むことが大事。

何をしようか迷うときは、それをすることでスッキリとした気分を味わえるものを探してみましょう。私の場合は、帰宅したら毎日靴磨きをすることが習慣。靴磨きセットを玄関に置いておいて、帰ってきたらすぐに取り掛かれるように準備万端の状態にしてあります。

とはいえ、仕事を終えて帰ってきたときには疲れているので、はっきり言って面倒な日も結構あります。

でも、毎日のルーティンを崩したくないですし、磨き終わった後の気分のよさも知っているので、その面倒な気持ちを封印するために、自分におまじないをかけます。帰宅して玄関を開けたら、「よし、靴磨きをするぞ」と大きな声で宣言。

たったこれだけのことですが、効果は絶大。掃除を始める前に「よし、やるぞ!」と気合いを入れるのと同じで、玄関の前で緩んだ気持ちを締め直すのです。

■疲れたときほど、すぐに休まないほうがいい

「よし、やるぞ」と思っているだけではダメですよ。言葉にして声に出す(それもなるべく自分を鼓舞するように大きな声で張り切って宣言するのです)ことで気合いを注入できますし、自分と約束したような気持ちになり、疲れていてもスイッチが入ります。

それに、宣言したのにやらないでいると妙な罪悪感に襲われるので、嫌々でも靴磨きをすることになります。

取っ掛かりこそ面倒ですが、やってしまえば5分程度で終わること。磨き終わった後のピカピカの靴を見れば、満足感が得られて気持ちが晴れ晴れとしてきます。

靴磨き後もよい気分は続き、帰宅から就寝までの時間も充実します。反対に、帰宅後にどっかり座ると、体を休められたような気がしますが、外出(交感神経優位)からの休息(副交感神経優位)の振り幅が大きく、かえって疲労感を増幅させてしまうことにつながります。

ちょっと休憩のつもりが座ったまま動けなくなり、何もできないまま日は暮れていき、夕食作りも入浴も億劫に……なんていうことが起こるのは、自律神経の働きからすると不思議でもなんでもないのです。

今日は疲れたなと感じたときほど、自分の心を自分の体に取り戻す習慣を取り入れてみましょう。終わりよければすべてよしじゃないですが、一日の終盤の自分をご機嫌でいさせるために、玄関を開ける前に「私は、今から○○をする!」と宣誓してみるのもいいものですよ。

■「マスク」で顔の筋力が衰えてしまう

最近不調だなと感じているなら、ぜひガムを噛んでほしい。コロナ禍がもたらした弊害の中でも、高齢者にとってとくに深刻なのが、マスク習慣による顔の筋力の低下です。

コロナ禍が収束してもなお、マスクをしている姿を目にします。歳を重ねるほど免疫機能が低下するので、予防のため自衛していたり、コロナやインフルエンザウイルスの罹患によって持病が悪化するのを防ぐためであったり、マスクを使い続ける理由が人それぞれにあると思います。

マスクの高齢者男女
写真=iStock.com/simarik
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simarik

しかし、マスクをしていると、どうしても口を大きく動かすことがなくなり、顔の筋力は衰えます。コロナが流行し始めてから、仮面様顔貌(かめんようがんぼう)といって、まるで仮面でもつけているかのように表情が動かなくなってしまった人が増えています。

コロナ禍が収まった現在になっても、「滑舌が悪くなった」「口元が緩んでよだれが垂れることがある」などの症状を訴える人も増加傾向にあります。それらの症状から、自分は認知症ではないか、脳梗塞など何か脳の病気の前触れではないのかなど、自身の健康を心配して受診する人もたくさんいます。

しかし、ほとんどのケースで検査をしても問題は見つからず、何年にもわたるマスク生活の弊害からくる筋力の緩みが原因の方がほとんどです。

私もマスク生活によって、滑舌が悪くなったり、声のハリがなくなったり、顔の表情筋が衰えてしまった一人です。マスクをすることがすっかり習慣になっていると、マスクなしで外出することがどうしても怖くなりますよね。

マスクを外したくないから外出は控えるとなっては本末転倒。人は行動することでしか変われないので、外にどんどん出ていただきたいのです。

■「ガム」や「グミ」が効果的

では、どうするのかといったら、マスク着用で衰えた筋力をカバーする習慣を持つことです。大きな口を開けて、「あ、い、う、え、お」とはっきり大きな声で言うようにするのもいいですが、おすすめはガムを噛むこと。

ガムを噛むことにはいくつものメリットがあります。場所を問わず、いつでも、ほかのことをしながらでも噛めること。ガムを噛んでいる間は、無意識のうちに顔の筋トレができるので、わざわざ筋トレをしようと思って臨むよりもハードルが低くなること。

顔の筋トレになることで顔周りの血行がよくなるだけでなく、脳の働きもよくなり、認知機能低下の予防が期待できます。

それに、ガムを噛むことは、一定のリズムを刻むリズム運動。リズム運動によって幸せホルモンと言われるセロトニンが分泌されますし、このホルモンは自律神経のバランスが整うように働きかけてくれます。

さらに唾液の分泌もよくなります。唾液中には免疫物質IgA(アイジーエー)があり、この分泌量がガムを噛むことで、2.5倍になるという研究結果があります。免疫機能が向上すれば感染予防に役立ちますし、口の周りの筋肉を動かすことは認知症予防や誤嚥性肺炎予防にもつながります。

私自身、滑舌が悪くなってからは、いつも持ち歩く鞄の中に必ずガムを入れておき、気づいたときにいつでも噛めるようにしています。一定のリズムで噛むことが重要なので、いろいろな味や食感を楽しみたい人はグミも効果的です。

■「1時間続けられるペース」でリズムよく歩く

私は毎朝6時半にジムへ行くのが長年の習慣になっています。ただし、コロナ禍の数年は、もっぱらサウナ専門で、運動はまったくしていませんでした。

そんな私も体調の底を経験し、さすがに心を入れ替えました。ジムのマシンで毎朝1時間ほど歩くことにしたのです。それも、ただダラダラと歩くのではなく、できるだけ大股でリズムよくさっさと歩く。普段、街中を歩いているときよりも早歩きを意識しています。

健康維持が目的ならば、歩く速度をそれほど意識しなくてもいいかもしれません。しかし、体力の向上を目指すのであれば、適度な負荷が必要なので、私は歩幅を大きく、リズミカルに、人と会話できる程度の早歩きをするようにしています。

無理をすればそれが体の故障となって跳ね返ってくる年代なので、けっして体の負担になるほどの無理はせず、1時間歩き続けられるペースを守っています。

とはいっても、ただ、ひたすらに歩き続けるのもしんどいので、ジムでの大股早歩きのお供は、いつも決まってユーチューブ。私はゴルフが大好きで、これからスコアを伸ばしていくためにスイングを上達させたいと考えているため、歩きながらありとあらゆるゴルフ関連の動画を延々と視聴しています。

■体力もつき、表情も明るくなる

ここだけの本音ですが、あまりにも毎日ゴルフのスイングのコツを動画で見すぎてしまって、いったい何がいいのかわからなくなってしまい……、結果、ゴルフのスコアを落とすという本末転倒なことも経験ずみです(笑)。

ジム通いをしている人ばかりではないでしょうから、ご自分にとって快適な時間帯に外に出て、1時間歩き続けてみるのをおすすめします。最初は、1時間ぶっ通しで歩くことが辛いかもしれません。私も辛かったのでわかります。

最初は、5分でも10分でもいいので、姿勢よく歩くことに意識を向けて歩いてみましょう。慣れてきたら、午前に30分、午後に30分と分けて、一日にトータルで1時間歩くようにするのもいいですね。

新緑の公園を歩く中年日本人夫婦
写真=iStock.com/kazoka30
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazoka30

体調や体力は人それぞれですから、自分なりのペースで、明日も歩きたいと思えるくらいの疲労を感じながら続けてみてください。少しずつ歩くペースが速くなり、歩ける時間が長くなっていくと、体力が右肩上がりに向上しているのが感じられ、それが毎日の張り合いになっていきます。

私は元気を取り戻してからは、1時間のウォーキングの合間に、心拍数が適度に上がるくらい速度を上げる1分間の超早歩きタイムを設けています。

10〜15分に1回くらい超早歩きを挟むことで心肺機能が鍛えられ、ますます元気になっていくという算段です。1時間、楽勝で歩ける自分になったころには、体力にも自信がつき、表情も明るくなっていますよ。

■寝る前に「明日すること」をイメージする

あれをしようかな。これをしようかな。ぐずぐずと考えている間に、結局、何もせず一日が終わってしまった。そんな日は自己嫌悪に陥ったり、何もしていないはずなのに疲労ばかりが蓄積されたりと、何だかパッとしないもの。

もしかしたら、何もしないで一日が過ぎてしまうことが多い人は、その日になって何をしようかと考えているのではないでしょうか。

私は、「今日、何しよう」と考えるのではなく、「明日、何をしよう」とぼんやりとでもいいから考えておくようにしています。明日の自分をイメージするきっかけ作りのために、布団に入る前に翌日の天気をチェックしています。これが、案外大事。

明日の自分がどう過ごすかをイメージしながら、明日の服装や、持ち物を前の晩に用意しておくのが日課となっています。これで翌日の選択や迷いがなくなり、天候に合った服の袖にすぐ腕を通せるので自律神経も安定します。

布団に入ったら目を閉じて、明日の行動をイメージします。簡単なことですが、脳内で明日の自分のリハーサルを行っておくと、翌日、スムーズに動けるような気がするのです。明日の準備をしながら今日を感謝する時間は、一日の中で一番ホッとできる、私にとっての癒しの時間です。

■朝起きたら「今日すること」を声に出す

朝はカーテンや窓を開け、「おはよう!」や「頑張るぞ!」と大きな声を出すのが日課。

その後、昨夜のうちに考えていた今日のスケジュールを思い返します。朝は一日のリズムを決める大切な時間なので、大きく伸びをしたり深呼吸をしたりしながら、今日の行動をイメージしましょう。

今日はあれもしてこれもしてと欲張るよりも、「今日は、ベランダの掃除をしよう」「○○さんに連絡をするぞ」など、何か一つを決めたら、これまた声高らかに宣誓します。

声にきちんと出したほうが記憶に残りやすく、実際に日中の行動につながりやすいというのが私の実感。声出しをすることで朝にきちんと交感神経のスイッチが入り、何をしたらいいかわからない、なんとなくダラダラしてしまうということを防げます。

小林弘幸『病院に行くほどではない不調に医師がしたこと』(サンマーク出版)
小林弘幸『病院に行くほどではない不調に医師がしたこと』(サンマーク出版)

とくにやることがないときも、「1時間だけ○○をする」ことを決めています。1時間だけ本を読む、整理整頓をする、ドラマを集中して見るなど、時間を制限して行動に移すことで、「やり遂げた」という達成感が得られます。

毎日、何もすることがなければ、自分でやるべきことを作ればいい。私なんて誰に頼まれてもいないし、誰からも指摘されていないのに、今、3カ月後を目標にゴルフのスイングの改善に取り組んでいます。

楽しんで取り組める目標を作って、日々の自分に充実感をプレゼントしていきましょうよ。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した“腸のスペシャリスト”としても有名。近著に『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)、『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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