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"またトラ"最大の懸念は「日本人の命」…動き読めぬトランプの"さじ加減"で日本が紛争に巻き込まれる恐怖

プレジデントオンライン / 2024年11月12日 11時15分

2024年7月13日、米東部ペンシルベニア州バトラーで、銃撃を受けた後に拳を突き上げるトランプ前大統領 - 写真提供=ゲッティ/共同通信社

米大統領に返り咲くことが決まったドナルド・トランプ氏。新政権の政策で日本はどんな影響を受けるのか。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「経済面では米中摩擦により中国依存度の高い日本の製造業が失速するリスクがあり、政治面でも対中政策の方針によっては東アジアの紛争に日本が巻き込まれるおそれがある」という――。

■トランプ政権は日本経済に吉と出るか凶と出るか

ドナルド・トランプ氏が米国の次期大統領に選出され、2025年1月20日に就任することとなりました。選出直後では、2度目のトランプ政権の経済政策に期待して、NYダウが1500ドルを超える大幅高となりました。

減税の継続などの景気刺激策や財政の拡大予想から、現状2%台前半のインフレ率が再び高まるという懸念からドル金利が上昇し、それにともないドル・円レートも3円ほど円安に振れ、154円台に上昇しました。この原稿を書いている時点では152円台です。

トランプ氏の選出直後に市場は好感して反応したわけですが、トランプ再登板で日本経済には懸念もあります。

ひとつは、中国との関係です。選挙期間中に中国製品に60%の関税をかけるとトランプは発言していました。大統領就任直後にすぐに関税引き上げを行うかどうかは不明で、トランプ氏特有のブラフの可能性もありますが、中国政府や中国製品に対する風当たりがバイデン政権時よりも強くなることは明らかです。中国経済への依存度が大きい日本は心配です。

トランプ氏が前回大統領だった時期の経済情勢が大いに参考になると考え、今回の原稿ではそれらを振り返りながら、次期政権での経済運営や日本への影響を考察してみます。

■前回大統領時の日米株価を振り返ると…

トランプが前回の大統領だった2017年1月から2021年1月までを振り返ってみましょう。

【図表】2017年1月~2021年1月の株価と為替レート
筆者作成

まず株価と為替レートです。

2017年1月に就任したトランプ大統領ですが、その時のNYダウ平均株価は、図表1にあるように1万9864ドルでした。ちなみに大統領選挙が行わる直前、オバマ政権末期の2016年10月のダウ平均は1万8142ドルでしたから、新政権への期待もあり、そこから少し持ち上がった株価のレベルで政権をスタートさせました。

その後、トランプが政権を担い、減税や景気刺激策をとったこともあり、NYダウは比較的順調に上昇し、米国でコロナの蔓延が本格的にはじまる直前の2020年1月には2万8859ドルまで上昇しました。就任3年間で1万ドル近く上がったことになります。

ただ、当時のトランプ大統領はコロナを軽視していました。コロナの影響が深刻になりはじめた2020年3月には、一時的に2万2000ドル台まで急落。バイデン大統領に大統領選で敗れ、退任した2021年1月には、2万9983ドルまで再び上昇しました。

こうして見ると、トランプが前回に政権を取った時期は、NYダウは後半にはコロナの影響を一時受けたものの、比較的堅調に上昇したと言えます。

その背後には、図表1にある短期金利の代表格であるTB(財務省証券;国債)3カ月物の金利の推移を見ると分かるように、中央銀行であるFRBが、丁寧に金利の調整を行っているのが分かります。景気が過熱しそうだと金利を高めに誘導し、景気が下落しそうだと金利を下げたのです。とくに、コロナ蔓延以降は、短期金利を一気にゼロ近辺まで下げました。

一方、日本の株価(日経平均)も前回のトランプ政権の時期には、比較的順調に推移しています。同じ時期を見ると、2017年1月には日経平均株価が1万9000円台だったのが、NYダウとある程度歩調を合わせるように上昇しました。2019年には日経平均は下落しましたが(後述)、その後、2020年はコロナが蔓延しはじめ、経済に深刻なダメージを与え、一時1万8000円台まで下落しましたが、米国同様、その後は比較的順調に推移し、2021年1月には、2万8000円台をつけました。

しかし、日銀は米国の中央銀行のように小刻みかつ丁寧に金利を動かすことはできず、ゼロ近辺で金利は止まったままで、日本の株価はNYダウともある程度の相関を持ちながら、日本の金融政策とは関係のないところで動いていたとも言えます。

■日銀短観からは違った側面も見える

株価は、先に見たように比較的堅調でしたが、前回のトランプ政権時には日本経済に違った影響も与えています。前述した2019年の日本の株価の下落とも関係しています。

日本経済は米中摩擦の影響を大きく受けたのです。日銀が3カ月に一度、企業の景況感を調査している「日銀短観」を見ると、そのことが顕著です。この調査は、景況感が「良い」と答えた企業のパーセントから「悪い」と答えた企業のパーセントを引いたもので、中間的な答えも認めているので、私の感覚では「20」を超えていると、景況感はかなり良いと言えると判断しています。

【図表】日銀短観業況判断
筆者作成

前回、トランプが就任した2017年の最後の日銀短観(12月調査)では大企業製造業は「25」、翌年2018年の最初の3月調査では、「24」とかなり良い数字でしたが、米中摩擦が激化した2019年は大幅に下落しており、12月調査では「0」まで数値が下がりました。この年に米中摩擦の影響が一気に出たのです。

比較のために大企業非製造業の数字を図表2に載せましたが、こちらは「20」を超えた数字が続き好調でした。米中摩擦は非製造業にはそれほど影響がなかったのです。

一方、その後コロナの影響が出はじめた2020年3月調査以降では、大企業製造業は「マイナス8」「マイナス34」と急速に悪化しました。非製造業も同様に悪化しました。

その当時に比べて現状の中国経済は、コロナ対策のための過剰生産と不動産不況のために、大幅に減速感を強めています。そういった中で2025年1月にトランプ政権が発足するのです。

現状の米国経済は実質GDPが9四半期連続で拡大するなど比較的堅調で、ソフトランディングすると私は考えていますが、中国経済はある意味「重症」です。

それがさらにトランプ政権の政策で下押し圧力がかかります。米国のみならず、中国経済から大きな影響を受ける日本経済、とくに製造業の失速が心配です。

また、すぐではないと思いますが、トランプ氏は日本を含めた海外からの製品に10~20%の関税を課す方針、といった報道もあります。

実現すれば、当然、日本経済には大きな悪影響が出ます。関税は米国の消費者にも悪影響を与えるのですぐには導入しないと思われますが、トランプ氏の動きは読めない部分もあります。トランプ政権による米国内の景気刺激策などは日本経済や現地進出の日本企業にもプラスの面もありますが、日本経済に不利なことが起こる可能性も小さくありません。

■安全保障面でも懸念

安全保障の問題も大きな懸念材料です。トランプ氏はウクライナへの支援の削減を以前から表明していますが、これは当然ロシアに有利に働きます。また、親密な同盟国であるイスラエルがからむ複雑な中東情勢の対応にも迫られます。

そうした中、日本に最も大きな影響を及ぼすのは台湾問題です。中国は台湾へのプレッシャーを強めていますが、トランプ政権になり台湾への関心や関与がバイデン政権より落ちることとなれば、中国がさらに台湾への関わりを強める、場合によっては統一を早急に進める可能性もあります。

そうした場合に、日本も紛争に巻き込まれる可能性も否定できません。北朝鮮の問題も同様です。

米国の関与が減れば、パワーバランスが変わり、日本の対応も変わらざるを得なくなる可能性もあります。もし、紛争が起これば日本の政治、経済にも少なからぬ影響があることは容易に想像できます。

いずれにしても、トランプの今後の発言や新政権の具体的政策に注目です。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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