灘→東大理III→医師…エリート一直線の和田秀樹「人にバカにされても全然いい、むしろ誇り」と語る納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年11月14日 10時15分
※本稿は、和田秀樹『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■大切なのは知識の量ではなく知識を応用する力
特に60歳以降の方々の「賢さ」について考えるとき、大切なのは「知識」ではなく「知恵」を身につけるということだと思います。
AIの時代が到来した今、昔と違って、博識であることに価値はなくなってきていると感じます。それよりも、得た知識をどう自分なりに咀嚼し、アレンジしていくか、つまり「知の運用力」が問われる時代がきているのです。
日本では、頭のよさ=知識の多さ、という空気が未だ色濃く残っていると思います。だからこそ「知らないと恥をかく○○」などといったテーマの本はよく売れますし、常識力や知識の有無を問うクイズ番組は根強い人気があります。
けれど、本当の頭のよさというのは、知識の量ではなく、知識をどう自分なりに加工して、自分にしかできない発想に展開していくか、ということに尽きると思います。
私たちの学生時代は、単語や史実、方程式などをひたすら頭に詰め込み、記憶することに重きを置く、インプット式の教育が行われていました。教科書や参考書を丸暗記すれば、ある程度はよい学業成績を収めることができたでしょう。
社会に出てからも、そういった面はまだまだあったと思います。上司の指示を素直に聞いたり、会社から与えられた目標をすんなりクリアできたりする人は、組織のなかで重用されたのではないでしょうか。
もちろん人生において、そういう時期もあったということは決して無駄ではありませんし、否定するつもりもありません。
私も「受験で結果を出すために必要なのは、地頭のよさではなく要領だ」と散々言っています。効率的にインプットをして志望校に合格できるのであれば、それに越したことはありませんし、会社でうまく立ち回れるのなら、それはそれで素晴らしいことだと思います。
ですが、せっかくシニア世代を迎えてさまざまな制約から解き放たれ、ある程度は自由に生きられるようになったなら、突飛でも奇抜でもよいから、「自分なりの発想や信念を持つ」ことの喜びを知っていただきたいと思うのです。
ちょっと手厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、「知らないと恥をかく」と言われるようなことを懸命に勉強したところで、最終的に到達できるのは「恥をかかなくなる」だけのことであり、決して「頭がよい人」と思われたり、尊敬されたりすることはないでしょう。
誰もが知っていることを知るために時間を割くくらいであれば、ありきたりな考えから脱却し、オンリーワンの話を展開することに力を注いだほうが、人としての知性や魅力も増しますし、人生もはるかに楽しくなると思います。
もちろん、馬鹿にされるのは誰だって気分のよいものではありません。
けれど、「心ない人にどう思われてもいいや」と開き直り、自分だけのユニークな道を極められる人のほうが、結果的に人から一目置かれるようになるのだと思います。
私に関していえば、人から馬鹿にされても別にいいやと思っています。
馬鹿にされるということは、その人にはない発想を自分はできているということですから、その感性やアイディアをむしろ誇りに思うべきなのです。
■なりたいのは、知の加工力を持つシニア
知識の多さではなく、知識をどのように自分なりに応用するか。その力が問われるなかで目指したいのは、「話が面白いシニア」だと思います。
シニア世代の頭のよさ=面白さだと私は思っています。膨大な知識を持つことを聡明であるとするならば、人は到底、AIより聡くなることはできなくなってしまいます。
若い世代がシニア世代に求めるのは、ただ知識を教えてもらう、ということでは決してないでしょう。高齢者に必要とされるのは、豊かな経験知に基づく「知の加工力」だと思います。
つまり、若者たちがシニアと対峙するときに聞きたいのは、その人ならではのストーリーや人生観なのではないでしょうか。単純な知識しか得られないのだとしたら、わざわざ人に聞かなくても、ネットでサクッと調べれば十分です。
これまでの長い人生で培ってきた経験知は、シニア世代の最強の強みです。それを生かして、ユニークな考えや発想を生み出してみてください。いわば、思想家を目指すのです。
独創的な考え方ができたり、面白い話ができたりする人はいくつになっても魅力的ですし、人が集まってくるでしょう。
実際に認知心理学においても、「頭がよい」とは知識が多いことではなく、その知識を使って推論できることであるとされています。知識を持つことそれ自体でなく、その知識をどう自分なりに素敵に発展させていくのか、ということにその人の知性が表れるのです。
■大きな夢を語れる人の脳は老化しない
前述のように、知りたいことは一瞬で調べられるこのAIの時代において、豊富な知識を持つことには、そこまで大きな意味はないと個人的には思います。
それよりも、周囲の人の想像の範疇を超えた、ユニークな夢や型破りなアイディアを語れることのほうが、ずっと人としての面白みや深みがあると思います。
型にはまらない発想ができるということは、知的冒険を叶えるということにつながります。枠にとらわれない自由な発想ができることこそ本当の知性です。そのような知性を持ち合わせた、話が面白く、独自性のある人は、いくつになってもモテるでしょう。
そして脳は新規のものを好みますから、自由な発想でのびのびと夢を語るときに、水を得た魚の状態になるのです。
「恥知らずだと思われたくない」「非常識な人間だとみなされたくない」という思いに縛られず、ぜひ知的な冒険を楽しんでみてください。
現状に足りないもの、実現したらよいものを見つけて提案できる人は、いつまでも脳の若さを保てますし、特にこれからの時代に輝いていくはずです。
皆さんも日常生活を送るなかで、シニア世代だからこそ感じるニーズや得られる発想が、きっとたくさんあるはずです。
たとえば、高齢者のおひとりさま向けのレストランがあったら居心地がよくて楽しそうだなとか、ずっと自分の行動を詳細に記録してくれるスマートウォッチがあったら、ものの置き忘れなどにも困らなそうだなとか。
あるいは交通量が多い横断歩道を渡るのはちょっと怖いから、シニアを乗せて運んでくれるドローンがあったらいいなとか、常にそういった課題やニーズを発見し、そのためのアイディアをのびのびと巡らせられる人は、脳や心の若々しさを保つとともに、生活に張りをもたらすことができるでしょう。
それだけでなく、この年齢になったからこそ得られた気づきが、そのままビジネスチャンスにつながり、人生が一変する可能性だって大いにあります。
まさに『ドラえもん』の世界ですが、「こんなことができたらいいな」とドラえもんに気軽に提案できる、のび太くん的な生き方を目指してみましょう。
そういう姿勢で過ごしていると、脳も思考もみるみる柔軟になっていくとともに、世の中を見渡すのが楽しくなっていくと思います。
ぜひ、大きな夢を描き、人に語ることを恐れないでください。「突拍子もないことを言って、人にどう思われるかな」などと気にする必要は、まったくありません。脳を元気にするのは、快活な積極性なのですから。
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精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)
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