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世界で最も危険な暴走老人になる…海外メディアが報じたトランプ次期大統領(78)の「隠しきれない老化」の実態

プレジデントオンライン / 2024年11月13日 17時15分

勝利宣言するトランプ次期米大統領=フロリダ州ウエストパームビーチ - 写真=AFP/時事通信フォト

アメリカの次期大統領に、ドナルド・トランプ前大統領が選ばれた。国際ジャーナリストの矢部武さんは「米国ではトランプ氏の認知能力が問題視され、海外メディアは認知症の初期症状が出ていると報じている。1期目と比べて、2期目は周囲を“イエスマン”で固めると宣言しており、彼の暴走を止めるのは困難になるおそれがある」という――。

■トランプ勝利を不安視する声

78歳のドナルド・トランプ氏は来年1月20日、米国史上最高齢で大統領に就任するが、それははたしてこの国のために良いことなのだろうか。

というのも、詳しくは後述するが、米国では最近、精神科医や臨床心理士など医療および精神衛生の専門家から、「(トランプ氏が支離滅裂な発言を繰り返すのは)認知症の初期症状が原因の可能性がある」「トランプ氏には認知機能低下の兆候がみられる」などの指摘が相次いでいるからである。

実際、今回の大統領選では、トランプ氏の選挙集会や記者会見などで話の筋が通らない、とりとめのない発言が目立った。

たとえば、2024年6月9日、ネバダ州ラスベガスで行われた集会の演説で、トランプ氏は環境政策に関連した電気自動車について話し始めたと思ったら、突然、電動ボートの沈没やサメの襲撃の話に移った。

トランプ氏は次のように話した。

「船が沈みつつあるとします。船に搭載された大きなバッテリーの上に私は座っています。“船が沈むと、私は感電死するのでしょうか?”と人に聞くと、“そんな質問を受けたことはない”と言います。でも、私は船に乗っていて、船が沈んだら、バッテリーが搭載されているので心配になります。水が入ってきて、左を見ると、10メートルのところにサメの姿が見えます。感電死とサメに襲われて死ぬのと、どちらを選びますか? 私は感電死を選びます。毎回そうするでしょう……」(‘Why Trump’s weird rant about boats, batteries and sharks matters’ MSNBC)。

この集会が行われた日のラスベガスの気温は38度とかなり暑かったというが、その中で支持者たちはトランプ氏のとりとめのない話を延々と聞かされたのである。

ネット上ではそれに対する批判や嘲笑が相次ぎ、作家のスティーブン・キング氏はX(旧ツイッター)に「これは夕食の席で3杯目の酒を飲んだ後の痴呆の叔父の話を聞いているようなものだ」と投稿した。(ニューズウィーク、2024年6月10日)。

■2016年の大統領選との大きな変化

認知機能の評価(診断)などを専門とする臨床心理士のベン・ミカエリス博士は、トランプ氏が2016年の大統領選で立候補した時と今回の大統領選での演説を比較分析したところ、思考パターンに明らかな違いが見られたという。

ミカエリス博士は2024年10月24日、PBSニュースアワーの番組で詳しく説明した。

「2016年、2017年から現在に至る間に起こったのは、ボキャブラリー(語彙)の違いというよりも、思考パターンの違いです。彼は直線的思考(順序立ててひとつずつ考える方法)を維持していないのです。たとえば、私たちはいま会話をして、話題に沿って話を進めています。あなたが質問し、私はそれに応えています。ある意味、ちゃんとしたやり取りになっています。

しかし、トランプ氏について言えることは、基本的に直線からどんどん離れ、問題から逸脱しているということです。他のアイデアを織りまぜて、会話の焦点がどんどんそれてしまうのです。ある話題について話し始め、話の筋を見失い、それてしまう。彼のスピーチのパターンにはそのような部分が多く見られます」

だから電気自動車について話し始めても、沈没船やサメの話にそれてしまったのかもしれない。

赤と青に分断された米国の国会議事堂と星条旗
写真=iStock.com/Douglas Rissing
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Douglas Rissing

■父親は認知症だと診断されていた

ミカエリス博士は、「正式な診断には実際に本人と対面して、検査をする必要があります。本人のいない所での診断はできません」と断った上で、こう続けた。

「私たちは皆、年齢とともに衰えていきます。私が目にしているのは思考プロセスにおける問題です。彼が認知症だと言っているわけではありませんが、全体像を見れば、それは何かを示唆しているのです。記憶障害、コミュニケーション障害、気分の変化、判断力の低下、性格の変化といった問題はすべて認知症の症状です。そして、確かにそれを示唆する証拠があります。こう考えるのは理にかなっていると思います」

加えて、認知症は遺伝すると言われているが、トランプ氏の家系では父親のフレッド氏が認知症と診断されていたことがわかっている。つまり、それによってトランプ氏が認知症になる確率は上がるということである。

■「認知症を強く示唆する紛れもない兆候を示している」

トランプ氏の認知機能の問題を指摘しているのは、ミカエリス博士だけではない。2024年3月には、精神科医や臨床心理士などの専門家がトランプ氏の認知機能の問題を警告する嘆願書の署名活動を始めた。

資格を持つ専門家のみを対象とした嘆願書の冒頭部分には、こう書かれている。

「私たちは、次のことに同意します。長年の訓練と経験から、確定診断にはさらなる検査が必要ですが、トランプ氏の公の場での行動と情報提供者の報告から、記憶、思考、言語能力、行動、粗大運動能力、微細運動能力が徐々に低下していることがわかることから、同氏は認知症を強く示唆する紛れもない兆候を示していると、確信しています」

そのうえで嘆願書は、トランプ氏が認知症患者によくある最上級の言葉やつなぎ言葉を多用すること、人々や世代を混同すること、言葉を間違った方法で使用する「意味失語症」の兆候を示していることなどを指摘し、最後に署名者に「臨床的根拠を説明するコメントを残してください。あなたの声と言葉は重要です」と依頼している。

■対立候補の名前を間違え、混同する

3月3日に開始されたオンラインの署名サイト(Change.org)には11月12日時点で、3028人の署名が集まっている。

この署名活動で中心的役割を担い、ニューヨーク・タイムズ紙でベストセラーとなった本『The Dangerous Case of Donald Trump: 27 Psychiatrists and Mental Health Expert Assess a President』の執筆者の1人でもある精神科医のジョン・ガートナー博士は、最近のトランプ氏について「認知症の明らかな兆候がみられる」と述べている。

ガートナー博士は2024年4月27日、衛星ラジオ「シリウスXM」の番組『ディーン・オベイダラー・ショー』に出演し、こう話した。  

「トランプ氏は2021年1月に大統領職を離れて以来、認知機能の低下が加速しています。間違ったことを言ったり、人々や世代を混同したり、細かいことを思い出せないために話を捏造(ねつぞう)したり……。いまでは認知症の兆候を1つも示さずに選挙集会を終えることはできなくなっています」

アリゾナ州グレンデールで開催された集会で参加者と話すドナルド・トランプ前アメリカ大統領
2024年8月23日にアリゾナ州で行われた集会で、演説するドナルド・トランプ氏(写真=Gage Skidmore/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons)

ガートナー博士が指摘したように、トランプ氏は政敵や対立候補などの名前を繰り返し間違えたり、混同したりしている。

たとえば、「オバマ氏のおかげで、誰もが“勝てない”と言った選挙(2016年の)に勝った」と言ったり(これはヒラリー・クリントン氏の間違い)、今年の共和党予備選において、対立候補のニッキー・ヘイリー氏が「(2021年1月6日の)議事堂襲撃事件で、議事堂の警備を担当していた」と何度も述べていた(ヘイリー氏は議事堂の警備とは一切無関係だった)。

■ハリス氏に関するデマを拡散するも訂正せず

トランプ氏が人々を混同しても自分の間違いを頑なに認めなかったために、メディアを巻き込んで大騒ぎになったこともある。

バイデン大統領が選挙戦から撤退して、ハリス副大統領が民主党の大統領候補になった直後、トランプ氏は対立候補となったハリス氏に不利になる情報を広めようと記者会見で次のような話をした。

1990年代にハリス氏と不倫関係にあったとされる黒人男性のウィリー・ブラウン元サンフランシスコ市長とかつてヘリコプターに同乗し、墜落しそうになったことがあるが、その時に「ブラウン氏がハリスについてひどいことを話した」というのである。

しかし、メディアがこの話の事実確認をしたところ、ブラウン氏とトランプ氏がヘリコプターに同乗したという証拠は見つけられなかったという。ブラウン氏自身も「トランプ氏とヘリコプターに一緒に乗ったことはない」と否定した。

すると、トランプ氏はSNSで、「ニューヨーク・タイムズの2人のダメな記者が、元サンフランシスコ市長のウィリー・ブラウン氏と同乗したヘリコプターが野原に不時着したという私の話に疑問を呈した」と激しく非難した。

それから後になって、トランプ氏はヘリコプターに同乗した人を別の黒人政治家のネイト・ホールデン元ロサンゼルス市議会議員と混同していたことがわかった。その時はヘリコプターが機械のトラブルに見舞われ、ニュージャージー州に緊急着陸を余儀なくされたというのだ。

ということは、トランプ氏は2人を混同していただけでなく、「ブラウン氏がハリス氏についてひどいことを話した」というのも全くの嘘だったということになる。これはトランプ氏の生来の虚言癖と認知症の兆候の両方が現れた「事件」と言えるかもしれない。

■トランプ政権に待ち受ける“2つのシナリオ”

2016年の大統領選の時から、精神科医としてトランプ氏を注意深く見てきたというガートナー博士は4月のラジオ番組で、「トランプ氏はますます精神的に不安定で、衝動的になり、理解不能な発言を繰り返すようになっている」と述べた上で、「再選されたら、在任中に完全に職務遂行能力を失うだろう」と付け加えた。

もしそうなった場合、トランプ次期大統領に待ち受けるシナリオとして主に2つ考えられる。

1つは憲法修正第25条を発動して、トランプ氏を解任することだ。第25条は「大統領が“職務上の権限および義務を遂行できない”と副大統領と閣僚の過半数が判断した場合、大統領は職務停止となり、副大統領が大統領職の権限・義務を遂行する」と定めている。

これが承認されれば、J・D・ヴァンス副大統領が残りの任期を務めることになる。しかし、この条項が発動され、承認される可能性は高くないと思われる。

ホワイトハウス
写真=iStock.com/lucky-photographer
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lucky-photographer

■共和党の“操り人形”になるおそれも

その理由は、「大統領が職務を遂行できない」とみなされる基準が明確にされていないことに加え、ヴァンス副大統領と閣僚の過半数がトランプ大統領に「ノー」を突きつけるのは容易ではないこと、さらにトランプ大統領が解任要求を受け入れなければ、その判断は議会に委ねられ、トランプ氏を解任するには議会全体の3分の2(上院67人、下院290人)の賛成が必要となり、これもハードルが非常に高いと思えるからである。

そこで考えられるもう1つのシナリオは、トランプ大統領を解任せずに同氏の支持基盤である共和党の保守派が職務不能となった大統領を舞台裏で操りながら、彼らの優先政策を実現していくことである。そのなかには人工妊娠中絶の全面禁止、不法移民の大量強制送還、人種平等推進やLGBTQ(性的少数者)の権利保護政策の撤回などが含まれるだろう。

いずれのシナリオになったとしても、トランプ大統領の任期期間中は民主党の支持者にとっては「暗黒と恐怖の時代」となり、米国社会の対立と分断は一層深まることが予想される。

■認知機能検査を受けなければ、年齢制限を設けるべき

米国の大統領は世界で最も強大な強力を持つと言われているが、だからこそ、その人物を選ぶにあたっては慎重でなければならない。

多くの精神衛生の専門家は大統領選の立候補者には年齢制限を設けるか、あるいは高齢の候補者には認知機能検査を受けさせるべきだと考えているようだ。

オバマ元大統領やブッシュ元大統領(ジュニア)の診療を担当した元ホワイトハウス医師のジェフリー・クールマン博士は、「客観的な認知機能検査を受けることに同意しない候補者には年齢の制限を設けるべきだ」と主張している。

「公衆の安全のため、65歳を過ぎたら航空機のパイロットにはなれませんし、57歳を過ぎたらFBI捜査官にはなれません。米国の大統領は自由世界で最も強力な地位にあります」(インディペンデント紙、2024年9月25日)。

それに加えて米国の大統領は「核ボタン」と呼ばれる核兵器の使用権限を持っているのである。

星条旗と飛翔中の核ミサイル
写真=iStock.com/Leestat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Leestat

クールマン博士は9月25日の記事の中で、「トランプ氏に独立した専門家による認知機能検査を実施すれば、機能が低下しているか、認知症が進行しているかについて客観的な画像が得られるだろう」と述べたが、検査は行われなかった。

■「まともに考えられない大統領」という巨大リスク

第2次トランプ政権は1期目より過激で強権的になることが予想されている。

なぜなら、1期目の時はトランプ氏の暴走に歯止めをかける補佐官や閣僚が何人かいたが、2期目は大統領に従順で絶対的な忠誠を誓う人だけで政権を固めると、トランプ氏自身が明言しているからである。

そのことに加え、国務省や国防総省、司法省などの連邦政府機関の官僚に対しては、トランプ氏の命令に従わない職員は容易に更迭・解雇できるようにするための法改正を行うとしている。

このようなブレーキの利かない第2次トランプ政権は米国内だけでなく、日本や諸外国にとっても大きな懸念材料となることが予想される。

トランプ氏はすでに外国からの輸入製品には一律10~20%の関税(中国には60%)をかける方針を示し、安全保障面では欧州の同盟国を軽視してNATO(北大西洋条約機構)からの脱退をほのめかし、日本に対しては防衛費の増額や在日米軍駐留費の負担増を迫ることを示唆している。

元々衝動的で過激な発言や行動が目立つトランプ氏に認知機能の問題が新たに加わったとしたら、その対応は非常に厄介なものとなるだろう。

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矢部 武(やべ・たけし)
国際ジャーナリスト
1954年生まれ。埼玉県出身。70年代半ばに渡米し、アームストロング大学で修士号取得。帰国後、ロサンゼルス・タイムズ東京支局記者を経てフリーに。人種差別、銃社会、麻薬など米国深部に潜むテーマを抉り出す一方、政治・社会問題などを比較文化的に分析し、解決策を探る。著書に『アメリカ白人が少数派になる日』(かもがわ出版)、『大統領を裁く国 アメリカ』(集英社新書)、『アメリカ病』(新潮新書)、『人種差別の帝国』(光文社)、『大麻解禁の真実』(宝島社)、『医療マリファナの奇跡』(亜紀書房)、『日本より幸せなアメリカの下流老人』(朝日新書)、『世界大麻経済戦争』(集英社新書)などがある。

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(国際ジャーナリスト 矢部 武)

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