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わが子の自己肯定感が下がり、勉強嫌いになるだけ…和田秀樹が「9割の子は行ってはいけない」と説く場所

プレジデントオンライン / 2024年11月19日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

「頭のいい子」を育てるには、どうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「発達が遅い子供には、中学受験は絶対に向かない。これは頭の良し悪し以前の問題であり、違うやり方で勝てばいいだけだ」という――。

※本稿は、和田秀樹『逃げ上手は生き方上手』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■「選ぶ力」の裏にあるもの

私が『受験は要領』を出すまでは、受験生がみなそれぞれ独学で勉強法を編み出していました。

ところが今は、書店の「受験コーナー」に行けば、「受験は要領」的な本がたくさん並んでいるし、ネット上にはいろいろな情報が行き交っています。

だから、今必要なのは、編み出す力ではなく、「選ぶ力」だと思います。そして、「選ぶ力」の裏には、それ以外からいかに逃げるかという「逃げる力」がひそんでいるのではないでしょうか。

その際、たしかに選ぶセンスも必要かもしれませんが、センスがなくてもひとつひとつ実際に試してみればいいのです。

ちょっと時間がかかるかもしれませんが、試すことで答えが見つかるのです。だから最も必要なのは選ぶ力だと思います。

これからは、作詞家にしろ作曲家にしろ選ぶ力が求められます。

たとえば、AIにクリスマスのラブソングをつくってと頼んだら、1万個くらいつくってくれます。その1万個を前にして、9999個から逃げ、「これ、いちばん売れそう」と選ぶ能力のある人がすごい作曲家といわれるようになるでしょう。作曲家はこの先、選ぶことが仕事になると思います。

■「逃げる力」を発揮したワイン評論家の慧眼

ワインでもそれは同様です。やはり「選ぶ力」と「逃げる力」が大事なのです。

アメリカにはロバート・パーカーという有名なワイン評論家がいます。彼は当初アメリカの濃くて安い赤ワインを飲んでいましたが、弁護士になって3年目にやっと高いワインが飲めるようになったので、ボルドーの特級の中でもトップクラスで、評価も高いシャトー・マルゴーを飲んでみたところ、美味しくなかった。

そこで、他人の評価に頼るのではなく、自分が美味しいと思ったワインに高い点をつけていこうと『ワインアドヴォケイト』誌を創刊し、100点満点で独自の採点を公表しました。これがパーカーポイント(PP)で、今ではパーカーの評価によって世界のワインの価格が決まるとまでいわれています。

ここでも当然、「選ぶ力」と、その前に何千ものまずいワインから「逃げる力」が働いているのは言うまでもないでしょう。

■今でも「贅沢は敵だ」のメンタリティのまま

日本人は「勝ち逃げ」も苦手です。株式投資でちょっと儲かったところでの売り抜けです。逆から見れば、株であろうが、ギャンブルであろうが、勝ち逃げができる人が最終的に勝ちます。勝ち逃げや損切りができないから、負けるまで続けてしまうことになるのです。

なぜ、そうなってしまうのか。

当の本人も、勝っているところで止めるなんて、ズルいと思ってしまうのかもしれませんね。「負けるまで戦えよ」なんて、負けている人間がひがみで言っているだけなのですけどね。

勝っているところで逃げて、一生楽な暮らしをするという手だってあるわけです。

株式投資などでよく言われることですが、逃げるのがうまい人が結局、いちばん儲けるのです。バブル時代を振り返れば、それはよくわかります。

「これはバブルだからいつか弾ける」と気づいた少数の人は、そうなる前に全部財産を処理して、弾けたときに買い戻して大金持ちになりました。

しかし、大半の人はそうはいきませんでした。日本人は逃げ方が下手なのです。要するに玉砕というメンタルがまだ残っているのでしょう。

日本人のメンタルは昭和10年頃に書き換えられているのです。それ以前、とくに大正時代などは、贅沢は素敵なこととされていました。それが日中戦争が始まると「贅沢は敵だ」に変わり、いまだにそのメンタリティを引きずっているのです。そして、この時期から体罰が始まり、生きて虜囚(りょしゅう)の辱めを受けずなどといって逃げることが恥だという価値観や道徳観が植え付けられたのです。

■「やればできる」には条件がある

「やればできる」という言い方があります。

多くの場合は、会社や学習塾などをやめたいと申し出たときに、「キミはやればできるんだから」などと慰留の意味を込めて使われているようです。「やればできるんだから」の後には口には出さなくても、「だからここから逃げるんじゃない」という思いが込められているのでしょう。

机にうつぶせている子供を励ます両親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

たしかに、自分の経験上でも「やればできる」人は少なからずいますが、じつは「やればできる」には条件があることをご存じでしょうか?

それは何かというと、「逃げてこそ」、つまり今のやり方を変えてこそなのです。

「やればできる」ということは、「今はできていない」ということです。

それなのにそのまま今の職場にいたり、今の勉強法を続けていたりしていたのでは何も変わりません。

■「努力が足りない」ではなく、「やり方を変えてみる」

たとえば、ゴルフでなかなか前にいいボールが飛ばないとしましょう。それなのに同じやり方で1000回素振りしたところで、よけい下手になるだけです。

繰り返しますが、「やればできる」というのは、新しいやり方を見つけてこそという条件付きなのです。

受験勉強でもそれは同じで、今のやり方で成果が出ないのなら、「努力が足りない」などと思ってその場でさらに頑張ろうとするのではなく、とりあえずその場から逃げて、やり方を変えてみることです。

通っている学習塾を変えるのもひとつの方法です。自分でも「やればできる」と信じて、同じところで頑張っているとしましょう。それでもなかなか成果があらわれないのはよくあることです。

そんなとき、本人や親は「自分は(この子は)、頭が悪いのだろうか」と思ってしまいがちです。

でも、そうではなく、その学習塾の教え方が合っていないのかもしれないし、やっている問題の質が合っていないのかもしれません。私の経験上でも、後者のほうが圧倒的です。

うまくいかないときはまず逃げてみる。自分の能力を疑う前に逃げてみる。「やればできる」は、そうすることで初めて実現するのです。

■逃げてこそ「新しい道」が見えてくる

Sという難関中学入学をめざす人を対象とした学習塾があります。言ってみれば“東大受験専門超優等塾”といったところですが、こういうところは、上から1割の人にはとてもいい塾なのですが、それ以外の人にとっては単なる教育虐待を受ける場所に過ぎません。

こういうところに通っても、たいていの人は自分のことを頭が悪いと思わされ、勉強嫌いになるだけです。

そういう人は、Sからさっさと逃げて、やり方を変えればいいと思うのですが、それがなかなかできないようです。

親も「ここにいれば開成から東大に入れる」と思い込んでいます。しかし、Sから実際にこのコースに進むことができるのは10人に1人程度でしょう。

そもそも、中学受験に向かない子が半分くらいいます。発達が遅い子に中学受験は絶対に向きません。それに、図形の問題などは、センスのない子にとっては、小学校5年生や6年生でできるというほうが無理なのです。もちろん、頭の良し悪し以前の問題です。

自分の子は中学受験のセンスがないと思ったら、受験勉強はせずに、小学校4年生で中1の英語や数学の教科書を終えればいいだけの話です。中1の英語や数学の教科書のほうが、Sの小学校4年生の問題よりも、ずっと易しいのです。

さらに5年生で中2の問題をやり、6年生で中3の問題をやれば、無敵の中学時代を送れるでしょう。

和田秀樹『逃げ上手は生き方上手』(実業之日本社)
和田秀樹『逃げ上手は生き方上手』(実業之日本社)

他の人と違うやり方で勝てばいいだけの話なのですが、それを「逃げ」だと思ってしまうのでしょうか、Sに執着し続ける親子が少なからずいるようです。

逃げられない裏にあるのは「かくあるべし思考」です。我が子を東大に合格させるにはSから開成に進まないといけないと思い込んでいるのです。

しかし、東大に合格できる道は一本しかないわけではありません。Sでなかなかうまくいかなかったら、とりあえずそこから逃げてみる。そうすることで初めて新しい道が見えてくるのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)

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