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なぜ私は3カ月で約50キロもやせられたのか…元米海兵隊「不可能を実現する人とそうでない人の決定的な違い」

プレジデントオンライン / 2024年11月15日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mihailomilovanovic

人間に限界はあるのか。元米国海軍特殊部隊員(ネイビーシールズ)のデイビッド・ゴギンズ氏による『CAN’T HURT ME』(サンマーク出版)より、本人が経験した壮絶なダイエットの一部を紹介する――。(第1回)

■海軍を志望する俺が気付いた「人間の本当の限界」

ゴギンズは、人生のどん底、自分を変えたくて米海軍・シールズを志望する。そこで「135kgある体重を3ヶ月以内に48kg減量するように」厳命される。しかし、初めてのランニングでは400メートル持たず、挫折。その後、自宅で見たのは、何度も奮い立った映画『ロッキー』のビデオだった――。

俺はビデオを消して、自分の人生について考えた。何の目的も、情熱もない人生。でも俺は自分に言い聞かせた。もし今恐れや劣等感に屈したら、その感情に振り回されたまま一生を終えることになる。それでいいのか?

残された道はただ一つ、俺を打ちのめすネガティブな感情を原動力に変えて、立ち上がることだ。それを、俺は実行した。

シェイクをゴミ箱に投げ捨て、靴ひもを締め直し、もう一度通りへ出た。さっきは4分の1マイル(400メートル)で脚と肺に鋭い痛みを感じ、動悸がひどくなって立ち止まった。今度も同じ痛みを感じ、心臓はオーバーヒートしたエンジンみたいにドクドクした。でも俺はそのまま走り続けた。そのうちに痛みは消えた。そして、かがんで息を整えた時には1マイル(1.6キロ)走ってたんだ。

その時、初めて気がついた。俺の心身の限界は「本当の限界」とは限らない、とね。それに、早くあきらめすぎるクセがついていることもわかった。

不可能をやってのけるには、勇気と力を最後の1滴まで振り絞らないといけない。つまり、数時間、数日間、数週間ノンストップの苦しみに耐え続けるってことだ。生きるか死ぬかの瀬戸際まで自分を追い込むってことだ。死んでしまう可能性を現実のものとして受け入れるってことだ。

だからどんなに心臓が早鐘を打っても、どんなに痛みを感じても、やめるつもりはなかった。ただ、俺には何の戦闘計画も、何の青写真もなかった。そこで一からやり方を考えた。

■目標は135キロ→87キロの減量

典型的な1日はこんなふうだ。朝4時半起床、バナナを平らげながらASVAB(編註 入隊審査試験)の勉強。5時に教科書を持ってエアロバイクにまたがり、2時間汗をかきながら勉強。俺はクソデブだっただろう? まだ体が重すぎて長距離を走れなかったから、バイクでできるだけカロリーを燃やす必要があったんだ。

それが終わると、近くの高校まで車を飛ばして、プールで2時間泳ぐ。それからジムでベンチプレスとインクラインプレス、下肢エクササイズのサーキットトレーニングをやる。

敵は自分の巨体だ。俺に必要なのは「くり返し」だった。それぞれのエクササイズを100回か200回ずつ、5、6セットやる。それからエアロバイクに戻ってもう2時間。

いつも腹を空かせていたね。まともな食事は夕飯だけ、それもたいした量じゃない。鶏もも肉のグリルかソテーに、野菜炒めと米をちょっと。夕飯後はまたエアロバイクを2時間漕いでから床につき、起きるとまたすべてをくり返す。

俺がとんでもなく不利な状況に置かれていることは知っていた。俺がやろうとしていたのは、落ちこぼれがハーバードをめざすとか、カジノで1回のルーレットに全財産を注(つ)ぎ込む、みたいなことだ。何の保証もないのに、自分に全賭けしていたんだから。

■「俺には何の価値も力もない」と鬱に

毎日2回体重を量って、2週間で11キロ減らした。粘り強く続けるうちに、体重がスルスル落ち始めた。次の10日間で115キロまで減らした。体が軽くなったおかげで腕立て伏せと腹筋を開始し、本格的に走れるようになった。

朝起きてからのエアロバイクとプール、ジムのルーチンを続けながら、2マイル(3.2キロ)や3マイル(4.8キロ)、4マイル(6.4キロ)のランも組み込んだ。ランニングシューズを捨てて、シール候補生がBUD/S(編註 米海軍特殊部隊で行われる基礎水中爆破訓練)で履く、「ベイツライト」のブーツで走ったね。

これだけ努力していたんだから、夜はさぞ心安らかに眠れたと思うだろう? それが違うんだ。俺は不安で一杯だった。胃がキリキリ痛み、思考が堂々めぐりした。試験当日に頭が真っ白になる悪夢を見ることも、次の日のワークアウトが嫌でたまらないこともあった。

問題を抱えた人の頭のシルエット
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

燃料不足の状態で馬力を出しすぎたせいで、心身が疲労して、鬱みたいになった。結婚生活はボロボロで、離婚まっしぐらだった。パム(当時の妻)には、たとえ奇跡が起こって俺が入隊試験に合格してサンディエゴに行くことになっても、絶対ついていかない、と言われちまった。

パムはほとんどの時間をブラジルの実家で過ごし、俺は家で1人途方に暮れていた。「俺には何の価値も力もない」という自虐的な考えに溺れて、押し潰されそうになっていた。

■逆に鬱を起爆剤にする

鬱に苦しんでいる時は、すべての光が消えて、一筋の希望も持てなくなる。ネガティブなことしか見えなくなる。これを乗り切るには、鬱を起爆剤にするしかない。

自己不信と不安は、裏を返せば、目的のない人生を生きるのをやめた証拠だ、と考えることにした。この骨折りは無駄に終わるかもしれないが、少なくとも生きる意味をまた見つけることができたんだ、と。

気分が落ち込む夜は、シャルジョ(編註 新兵勧誘官)に電話をかけた。シャルジョは早朝と深夜はいつもオフィスにいたんだ。心配させたくないから、落ち込んでいるとは言わなかったよ。

自分に気合いを入れるためだけに電話した。何キロ減量して、どれだけワークアウトしたかを報告すると、シャルジョはASVABの勉強も続けるんだぞ、と励ましてくれた。

了解!

『ロッキー』のサントラをカセットテープに落として、『ゴーイング・ザ・ディスタンス』で気分を上げた。自転車(バイク)の遠乗りや長いランをする時は、爆音で『ロッキーのテーマ』のホルンを聴きながら、BUD/Sで冷たい海に飛び込み、ヘルウィーク(入隊後に待ち構える、地獄のように厳しい訓練)を突破する自分を想像した。そうなれることをただただ願い、夢見ていた。

カリフォルニア州カンポ、2007年10月16日 SEAL資格訓練生
カリフォルニア州カンポ、2007年10月16日 SEAL資格訓練生(写真=米国海軍/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons)

■「楽をしたい」という誘惑

でも体重が115キロまで落ちた時、BUD/Sの参加資格を得ることは、もう夢物語じゃなくなった。俺自身を含むほとんどの人が「不可能だ」と思ったことを達成できる可能性が、現実のものになっていたんだ。

とはいえ、スランプもあったよ。115キロを切ってしばらくたったある朝、体重を量ったら前日から0.5キロしか減っていなかった。これだけの体重を減らそうと思ったら、少しの足踏みも許されない。

6マイル(9.7キロ)のランと2マイル(3.2キロ)のスイムの間、俺は不安で頭が一杯だった。その後、3時間のサーキットトレーニングをするためにジムに着いた頃には、疲れと痛みでヘトヘトになっていた。

懸垂を数セットに分けて100回やってから、最後にもう一度懸垂バーに戻って、限界までやることにした。めざすは12回。でも10回目にあごをバーの上に出した時、手のひらに焼けるような痛みが走った。

何週間か前から「楽をしたい」という誘惑に駆られ、そのたびに踏みとどまっていた。でもその日はあまりの痛みに、11回で誘惑に負けて床に落ち、目標に1回届かないままワークアウトを終えちまった。

■なぜ懸垂をもう一度やり直したのか

この1回の懸垂が、0.5キロの体重が、頭を離れなかった。どうしても頭から追い出せず、家に帰る間も、台所のテーブルでグリルチキンと味のないベイクドポテトを食べる間も、悶々としていた。何か手を打たないと、眠れそうにない。俺は車のキーをつかんだ。

「手抜きをしているようじゃ成功できねえぞ」と、俺はジムに戻りながら、自分に活を入れた。「ゴギンズよ、近道なんてものはねえんだ!」

懸垂を一からやり直した。足りなかった1回を埋め合わせるために、250回やった! 同じようなことが何度もあった。腹が減ったから、疲れたからと、ランやスイムで手抜きをしたら、必ず戻って、何倍も自分を追い込んだ。心の中の魔物を抑えつけるには、そうするしかないんだ。

どっちを選んでも、苦しいことに変わりはない。その瞬間の肉体的苦痛に耐えるか、やり損ねた1回の懸垂、1往復(ラップ)のスイム、4分の1マイル(400メートル)のランのせいで、一生に一度のチャンスをふいにするかもしれないという不安に苦しめられるかだ。シールズに関する限り、俺は何事も運任せにするつもりはなかった。

■毎日10キロのラン、32キロのバイク、3キロのスイム

ASVABの前夜、BUD/Sまであと4週間の時点で、体重はもう不安材料じゃなくなっていた。98キロまで減量して、かつてないほど俊敏で強靱な体になっていたんだ。毎日6マイル(9.7キロ)のランと20マイル(32キロ)のバイク、2マイル(3.2キロ)のスイムを欠かさなかった。真冬にだよ。

デイビッド・ゴギンズ『CAN'T HURT ME』(サンマーク出版)
デイビッド・ゴギンズ『CAN’T HURT ME』(サンマーク出版)

俺が一番好きだった「モノン・トレイル」ってコースは、インディアナポリスの街路樹をぬうように走る、歩行者や自転車のための6マイル(9.7キロ)のアスファルトの遊歩道だ。サイクリストに、赤ちゃん連れの親、週末ランナー、シニアたちの憩(いこ)いの場所だ。

俺はシャルジョからもうネイビーシールズの準備命令をもらっていた。そこにはBUD/Sのフェーズ1(体力錬成訓練)でやるワークアウトが書いてあったから、喜んでその倍をやった。

BUD/Sの訓練生は多くても約190人で、そのうちすべての訓練を突破するのはわずか40人ほどだ。俺はその40人のうちの1人というだけじゃなく、「トップ」になるつもりでいた。

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デイビッド・ゴギンズ 退役海軍特殊部隊員(ネイビーシール)
米軍でシール訓練、陸軍レンジャースクール、空軍戦術航空管制官訓練を完了した、たった一人の人物である。これまでに60以上のウルトラマラソン、トライアスロン、ウルトラトライアスロンを完走し、何度もコース記録を塗り替え、トップ5の常連となっている。17時間で4,030回の懸垂を行い、ギネス世界記録を更新した。講演者としても引っ張りだこであり、全米の大企業の社員やプロスポーツチームのメンバー、数十万人の学生に、自らの人生の物語を語っている。

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(退役海軍特殊部隊員(ネイビーシール) デイビッド・ゴギンズ)

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