1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

職場は「11分に1回」邪魔が入ってくる…時間を浪費しやすい環境で「超集中」状態をつくりだす脳科学の知恵

プレジデントオンライン / 2024年11月21日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Liubomyr Vorona

職場でいかに効率よく仕事をこなすかが問われている。脳科学者の枝川義邦さんは「職場は11分に1回の割合で邪魔が入るという研究結果がある。注意が散漫になるような状況を改善することがとても重要」と指摘する。では具体的に何をすればいいか。学びのサイト「プレジデントオンラインアカデミー」の好評連載より、第1話をお届けします――。

※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『最先端脳科学研究が導き出す 集中力アップ法、記憶力アップ法、時間の使い方……職場の脳科学 なぜ、あなたは時間を浪費してしまうのか』の第1話を再編集したものです。

■自分の仕事に集中できないまま1日が過ぎていく

「今回のプロジェクトの件で、どうしても不安に思うことがあります」だとか、「本日午前中に訪問したA社との商談について報告があります」などと、部下から声をかけられた――。そんなとき、部下思いの上司は、自分の仕事を脇に置いて、その一つひとつに丁寧に対応するでしょう。そして、それらが一段落したと思ったのもつかの間、上長の役員から「ちょっと来てほしい。来期の事業計画で相談しておきたいことがあるんだ」とお呼びがかかり、必要な資料を携えて役員室に向かうことになりました。

そして、ようやく自分の席に戻り、「やれやれ」と思いつつ時計に目をやると、すでに午後2時を回っています。朝9時の始業時間から5時間以上も経っているのに、自分自身の仕事にはほとんど手を付けることができません。そうした現状を振り返って途方に暮れていると、「時間を有効に活用できておらず、浪費しているだけではないか」と暗澹たる気持ちに襲われ、次第に自己嫌悪に陥ってしまうことに……。

このような経験をされた中間管理職の方もいるのではないでしょうか。現代の中間管理職はマネジメントだけでなく、現場の仕事も受け持つプレーイングマネジャーの役割を担うことが多くなり、様々なことに対応していかなくてはなりません。以前にも増して多忙になり、自分の仕事に集中できる環境に身を置くことが、しづらくなっているようです。

■一度中断した仕事に再び集中できるのは25分後

ここで、とても興味深い研究を紹介しましょう。それは、米国カリフォルニア大学アーバイン校が「作業中断の代償:スピードとストレスの増大」というタイトルで発表したものです。進めていたワークを一度中断されてしまうと、再びそのワークに深く集中するまでには25分余りかかると、その中で指摘されています。また、職場にいると電話やメール、話しかけなどの「邪魔」が、11分に1回の割合で入ってくるという別の研究結果もあります。つまり、職場は集中して仕事に取り組むことがしづらい状況にあり、生産性の低下とともに時間の浪費が発生しやすくなっているわけです。

では、どうしたら集中して仕事に取り組め、時間を浪費することなく、有効に活用できるようになるのでしょう。

スポーツ界のトップアスリートたちが、「ボールが止まって見えた」「何も考えなくても体が勝手に動いていた」などと、集中した状態での実体験について語ることがあります。そうした状態を、スポーツ心理学の世界では「ゾーンに入った」状態といいます。そのもとになった心理学での先駆的な研究が、M・チクセントミハイ博士が提唱した「フロー理論」です。ここからは、これに基づいて、どうすれば仕事に集中できるのかを考察していきます。

■「フロー」の状態に入るための7つのポイント

チクセントミハイ博士は、創造性が豊かな芸術家や音楽家、科学者、スポーツ選手たちに、いつどんなときに幸福感を得られるかを質問しました。その結果、創造的な活動や高い技術力を必要とされる仕事に没頭しているとき、時間が過ぎるのを忘れて活動を続けられ、それでいて疲労感もなく、高い満足感を得られていることを見出します。そして、自意識が薄れ、時間間隔も正確ではなくなってしまうような、非常に深く集中した状態のことを「フロー」と名付けたのです。さらに、チクセントミハイ博士は分析の結果、フローの状態に入る条件として、以下の7つのポイントがあることを指摘しました。

「フロー」な状態に入る7つの条件

この中で①②③と⑦については、日常のタスクマネジメントと関連し、時間の有効活用につながってきますが、今後の連載で脳科学の知見を交えながら見ていくことにします。残りの④~⑥について考えてみると、④と⑥はまさに「没頭」している状態であり、そうなるためには⑤の「注意の散漫を避ける」ことが大前提になってきます。先ほど示した研究結果にあるように、邪魔が11分に1回の割合で入ってきて、注意が散漫になるような状況を改善することが、とても重要になってくるわけです。

■デジタル機器の使い方の見直しが必要

そうした邪魔の排除に向けたポイントとして、私が真っ先に考えるのが、パソコン、スマートフォン、タブレットをはじめとする「デジタル機器」の使い方の見直しです。仕事に必要な取引先の会社情報や経済ニュースを検索したり、電子メールやチャットで社内外とのコミュニケーションを取ったりするために、デジタル機器はいまでは欠くことのできない「仕事道具」になっています。

しかし、検索サイトを利用していると、それに関連した興味をそそる情報が飛び込んできて、つい見入ってしまうことが少なくありません。また、大切なメールが来ていないか、頻繁にチェックすることで、本来やらなければならない仕事に集中する環境を自ら壊してしまっているのが、いまや現実なのです。

仕事で必要となる情報の検索は、実際に仕事に手を付ける前の「事前準備」の段階で済ませておきたいものです。事前準備の大切さを説いた言葉に「段取り八分、仕事二分」がありますが、情報の検索は段取りに含まれます。メールやチャットのチェックについてはよく言われるように、「始業時間のすぐ後、お昼休みの後、帰宅前の1日に合計3回だけ」といった自分なりのルールを決め、集中的に処理してしまうのがいいでしょう。本当に急ぎで大切な要件であれば、相手は直接話しかけてくるか、電話をしてくるはずです。

一日に数回チェックすることを決めるだけでも、仕事中に「メールやメッセージが来るかもしれない」と仕事以外に注意を払う必要がなくなりますし、メールを送った相手も、数時間の内に返事が来れば問題には感じないはずです。このような安心感も、他の仕事を進める上で大切でしょう。

上長や部下への対応で仕事を中断されるのを回避する方法としては、「早朝時間」の活用があります。始業前のまだ誰も出社していないオフィスであれば、話しかけられる心配はありません。取引先をはじめ、外部からの電話もかかってこないでしょう。始業までの時間を、自分自身にとってプライオリティの高い仕事に割り振ることで、職場での時間を有効に活用できるようになっていきます。

----------

枝川 義邦(えだがわ・よしくに)
早稲田大学リサーチイノベーションセンター教授
脳神経科学者。1998年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。2007年早稲田大学ビジネススクール修了。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』など。

----------

(早稲田大学リサーチイノベーションセンター教授 枝川 義邦 構成=伊藤博之 図版作成=大橋昭一)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください