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高齢者が困るトラブル第1位は「アダルトサイト」…「年を取ると性的な興味がなくなる」の大誤解

プレジデントオンライン / 2024年11月23日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/byryo

高齢になるとどんなトラブルに巻き込まれやすいのか。医師の平松類さんは「意外かもしれないが恋愛や性に関するトラブルが多い。アダルトサイトを見ていて架空請求に遭い、振り込んでしまうこともあるので、家族内で相談しやすいような関係性を築いておくことが大切だ」という――。

※本稿は、平松類『老いた親はなぜ部屋を片付けないのか』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

■医療・介護の現場で起きている男女トラブル

親を施設に入れれば一安心、というわけではありません。思いもよらない問題が持ち上がることもあります。例えば、高齢になったら性的な興味などないだろう、と勝手に思っていないでしょうか。

老人福祉施設において、男性の29%に恋愛や性に関するトラブルが起きているという調査があります(※)。やはり男性はいくつになってもそういう問題があるのか、と思いきや、女性も、22%が恋愛や性のトラブルを経験しているという事実があります。具体的に、どういうトラブルがあるのでしょうか。

※熊本悦明ほか 老人福祉施設における“性” 高齢者のケアと行動科学1997;4:3-16

1つはセクハラ(セクシャル・ハラスメント)の問題です。医療現場でも、高齢の男性患者さんが女性看護師のお尻を触るなどのセクハラをすることが問題となっています。私はこれまで多くの医療機関で働いてきましたが、セクハラ問題が生じなかった病院はないと言ってもいいぐらい、頻繁に起きてしまっている問題です。

■セクハラ加害者と被害者の認識のズレ

看護や介護の現場では、スタッフが仕事のために患者さんや施設利用者と直接触れ合います。そのため、施設利用者や患者さんがスタッフに性的な関心を持ってしまうと、セクハラに発展しやすいのです。

セクハラをする側からすると「コミュニケーションのつもり」「単なるあいさつ代わり」「このぐらい問題ないだろう」と軽く考えがちです。一方、セクハラをされた側からすると「あの人はトラブルを起こすから、できれば看護(介護)を避けたい」という気持ちになります。

「昭和の頃はそのぐらい普通だった」と言われる方もいますが、トラブルが起きた場合、それは許される行為ではないということを、ご家族からも言っておく必要があります。

また、恋愛感情のもつれということもあります。施設の入居者同士が恋愛関係になる、または一方的に相手を好きになる、ということからトラブルに発展するケースです。

特に、夫や妻に先立たれている人の場合は、「前はダンナがいたからそういうことはしてはいけないと思っていた。でももう他界したし……」という心境の変化から、入居者に恋愛感情を抱くことがあります。さらに、認知機能の衰えがあると前頭葉の機能が低下して、行動が自制できなくなってしまうという問題もあります。

■恋愛感情がエスカレートし、暴力沙汰に

恋愛感情というのは一度持つと根深いものです。施設内での不適切な関係など、閉鎖された環境によって起きてくるトラブルもあります。恋愛の場合はセクハラのように悪というわけではありません。しかし、相手が拒絶しているのに執拗に追い回してしまうというのは問題行為です。

難しいのは、往々にして本人には追い回している意識があまりないということです。好きな施設入所者の男性がスタッフの女性と話しているところを見て、嫉妬して暴力をふるってしまう、などのように、エスカレートしてしまうと問題です。

性的なトラブルといっても、必ずしも体の関係を求めるものばかりではありません。特に女性は、恋愛感情を持った相手に体の関係を求める傾向が、男性と比較すると低いということも分かっています。

■最も多いトラブルは「アダルトサイト」

高齢の親を見守る子世代は、自分の親は高齢だから性的なことにはもう興味がないだろうとは決して思わないことが大切です。施設などの環境でなければ問題ないのかというと、そうでもありません。自宅でのトラブルもあります。特にそちらは金銭的な問題もかかわってきます。アダルトサイト・出会い系サイトの使用や、それらに伴う高額請求の問題です。

国民生活センターが実施した60歳以上の消費生活相談調査(2016年)で、高齢者の相談の1位は何だったかというと、アダルトサイトの利用に関するものでした(※)

※独立行政法人国民生活センター「アクティブシニアのトラブル増加!60歳以上の消費者トラブル110番」平成28年(2016年)11月2日

2位はパソコンサポート、3位は医療サービスなのですが、高齢になって起きてくる体の数々の不調に対応してくれる医療サービスより、なかなか慣れなくて操作がおぼつかないパソコンのサポートより、アダルトサイトの相談が多かったのです。

あなたが50代の男性だったとして、インターネットで若い20代の女性から「ぜひ会いたい。好きです」と言われたら、どう思うでしょうか。ついつい舞い上がるでしょうか? インターネットに慣れている人なら、最初は「詐欺では?」「まさかそんなことが」と思うでしょう。

けれどもインターネットに慣れていない高齢者は「そういうこともあるかも」とついつい思ってしまいます。70代になっても20代の女性と知り合えると本気で思ってしまいます。もちろん世の中には現実にそういうケースもあることは事実です。ただ、非常にまれであり、そういう出会いで費用が発生する場合は、一度は詐欺を疑うべきです。

■架空請求にだまされ、振り込んでしまう

出会い系以外にも、アダルトサイトを見て「あなたのIPアドレスは○○です。分かっていますので法的措置を取られたくなかったら下記の口座に10万円振り込んでください」というような画面が出てきます。

ある程度の知識があれば、接続先から自分のIPアドレスぐらいは分かるだろうし、こんなものに応じる必要はないということに気づけるでしょう。けれども、知識がない高齢者はあわてて、だまされてしまいます。

アダルトサイトを見ていたことを知られたくないという思いがあるため、なかなか周囲に相談できず、結果として振り込んでしまいます。さらには振り込んでしまったことが恥ずかしくて、誰にも言えません。そうやって、子が知らない間にだまされてしまっているのです。

高齢者が施設でのトラブルや自宅でのインターネットによる被害などを起こさないためには、何かトラブルがあった際に相談しやすいような関係性を築いておくことも大切です。

スマートフォンを手にした高齢者が自宅で請求書や書類、領収書を調べる
写真=iStock.com/ArtMarie
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArtMarie

■親がトラブルに遭うのを防ぐために

施設でのトラブルであれば、普段の会話の中で、他の入居者やスタッフとの関係性をそれとなく探っておくのが良いでしょう。その中で「実は○○さんのことが好きで」なんていう話が出てくることがあり得るのです。

さらには「この前お尻を触ったぐらいで怒られた」なんていう時代錯誤な話が出てくることもあるでしょう。大きなトラブルになった場合、施設は連絡してくれますが、小さいトラブルの場合はあなたに情報が届かないことがあります。

インターネットでのアダルトサイトトラブルに関しては、「ネットでのトラブルはいろいろあるから気を付けて」と言って、1つの例としてアダルトサイトのトラブルの例なども話しておくと良いでしょう。

「間違えてそういうのを押してしまうこともあるから」などと言って、故意ではなくてもあり得ることや、突然の請求があったら、必要であれば自分が代わりに対処できることを伝えてあげることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

■伴侶との死別が心身にもたらす影響

年老いた親が亡くなるということは、あまり考えたくないものです。とはいえ、残念ながらそれはいつか起こります。そしてほとんどの場合、一緒に亡くなることはなく、父親か母親、どちらかが先に亡くなります。

そのとき注意が必要なのは、残された親の心身のケアです。なぜかというと、伴侶と死別した高齢者は、その後半年間は死亡率が40〜50%上昇するということが分かっているからです(※)。片方の親の死から半年間。なぜこの時期が重要なのでしょうか。

※Manor O, et al. Mortality after spousal loss: are there socio-demographic differences? Soc Sci Med. 2003 ;56(2):405-13

一番の問題は、精神的な落ち込みです。長年連れ添ってきた相手が死去してしまう。そのことによって、生活に張り合いがなくなります。

まして高齢になると、人付き合いの幅も限定されます。限定された中で最も親密だった伴侶がいなくなるために、喪失感がより大きくなるわけです。孤独が増し、ストレスがかかり、最悪の場合、自死などのリスクも考えられます。

そのような直接的な問題だけではありません。心理的ストレスは病気や体調不良なども引き起こします。心臓や脳の血管にも負担をかけます。

■やることが多い「四十九日」のメリット

伴侶に先立たれると、生活も一変します。2人だからこそどこかに出かけていたものが、出かけにくくなります。運動量も低下して病気の発症を促します。話す相手もいなくなるため、会話量も減ります。毎日家の中で何気ない会話をしていたものが「いまではテレビを見て独り言を言っている」ということになります。そうすると、発話自体が減り、声帯機能の低下や肺活量の低下が危惧されます。

そういう意味で、仏教における「四十九日」の法要は、一定の役割を果たしています。四十九日まではいろいろとやることが多いので、忙しく過ごすことになります。気持ちが落ち込むこともありますが、「親戚に連絡をしなくては」「手紙を送らなくては」「お返しを考えなければ」と、やるべきこと、考えることがいっぱいあります。

こうした作業は気持ちが沈んでいる人にさらなる負担をかけてしまい、良くないのではないか、と思われがちですが、四十九日に向けたさまざまな準備によって、人とのコミュニケーションをとり、寂しさを紛らわす時間ができるというメリットはあるわけです。

■「夫が残されるケース」は特に要注意

両親のどちらが残されても心配はありますが、特に注意が必要なのは、父親が残された場合です。残されたのが男性だと、食事の内容が偏りがちになります。アルコール依存症になるリスクも上がります。うつになるリスクも上がります。よく冗談交じりに「女性が残されたほうが長生きする」と言われますが、それは冗談ではなく、本当のことなのです。

あなたの父親はご飯を自分で炊いて、料理を自分でできるでしょうか。いまの高齢者は、「男性は外で働き、食事は女性が作る」という時代に生きた人が多い。そうすると、妻が亡くなったとたんにお米1つ炊けない。鍋の場所も、おたまの場所も分からない。そういう人が多いのです。

最初はコンビニやスーパーで総菜を買ってくればよいでしょう。けれどもいつまでもそういうわけにもいきません。できる限り自炊をして、健康的な生活をしてもらいたいものですが、それができないのです。結果として「糖質や脂質の多い食事」や「塩分の多い食事」に偏りがちです。もともと持っていた高血圧が悪化してしまうことも珍しくありません。

■アルコール量や食事の変化を見逃さない

精神的なダメージにも注意が必要です。男親のほうが子どもに弱い面を見せないことが多いので、一見あまりショックを受けていないように振る舞っているかもしれません。けれども実際はかなりのショックを受けています。

アルコールの量も増えていきがちです(※)。以前はそれほど飲んでいなかったのに、いつのまにか毎日お酒を飲むようになっていないだろうか、どんな食事をしているのだろうか、など、特に男親が残った場合、半年間はこまめに連絡をして生活を見守る必要があります。

※Byrne GJ, et al. alcohol consumption and psychological distress in recently widowed older men. Aust N Z J Psychiatry. 1999;33(5):740-7.

ウイスキー
写真=iStock.com/PixelsEffect
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PixelsEffect

とはいえ、忙しい日々の生活の中で、ついつい連絡する機会を失ってしまいがちです。時間があるときに電話をかけようと思っているだけでは、いつまでたっても時間はできません。そういう場合は、「いつ電話をかけるのか」を具体的に決めておくほうがよいでしょう。

■「最近どう?」より効果的な質問

例えば週に1回、日曜日の夜8時に電話する、という具合に決めておくのはどうでしょうか。すると親も「そろそろ電話が来る時間だな」と分かってくるので、お風呂に入っていて出られなかった、という行き違いも避けられます。

せっかく電話をするのなら、要件だけで済まさずに、あえて雑談をちょっとだけ混ぜてみてください。「最近どう?」というあいまいな質問だと答えにくいので、「食事はちゃんと食べてる?」「最近よく眠れてる?」などと聞けば、こちらが心配していることもしっかりと伝わります。

平松類『老いた親はなぜ部屋を片付けないのか』(日経プレミアシリーズ)
平松類『老いた親はなぜ部屋を片付けないのか』(日経プレミアシリーズ)

本当はあまり食べられていなくても、眠れていなくても、なかなか正直に言ってくれないということもあるでしょう。それでも、あなたを気にかけているという気持ちは伝わります。

また、独居になったとたんに地域で孤立してしまうことを防ぐために、近隣のカルチャーセンターやジム、音楽教室など、ある程度人とコミュニケーションをとる場を持っておけるとよいでしょう。

本当は「親しい友人を作って」と言いたいところですが、人と深い関係を作ることはなかなか難しいものです。カルチャーセンターやジムなどのように有料の場であれば比較的気が楽ですし、参加している人の興味・関心も似ているので入っていきやすいというメリットがあります。ぜひ検討してみてください。

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平松 類(ひらまつ・るい)
眼科医 医学博士
愛知県田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ! 講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。

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(眼科医 医学博士 平松 類)

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