日経新聞で取り上げられた会社の株は買ってはいけない…お金持ちになる人と貧乏になる人の決定的な違い
プレジデントオンライン / 2024年11月21日 7時15分
※本稿は、ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
■「有望だと思う会社に投資」は失敗する
周囲の誰かを適当にとっつかまえて株式投資の方法を尋ねたら、こんな答えが返ってくるだろう。
「そうだな、一番有望だと思う会社を選んで株を買い、あとはその会社が次のアップルやグーグルになるよう祈ればいいんじゃない?」
僕はこの考え方を「レアな真珠の神話」と呼んでいる。この神話によると、投資家はみな水晶玉を持っていて、未来を読むスキルを持ち合わせた者は宝石を見つけられる。一方、未来を読めない者は失敗し、そのツケを払いながら生きなければならない。みなさんの周りにもこの神話に騙された人がいるかもしれない。
あなた自身がその一人かもしれない。たとえば未来の可能性に賭けるというのはどうだろう。今後数年にわたって世界を席巻するようなイノベーションを選び、その恩恵を享受するのに最適な位置につけている企業の株を買うのだ。
小さなバイオテック企業、人工知能(AI)の企業、あるいは電気自動車の急成長にともなって需要が急拡大しているリチウム電池メーカーはどうか。
この投資方法の問題は、実績が惨憺たるものであることだ。未来の世界を変えるような発明を今日知ることができたとしても、その情報を使って金持ちになるのは難しい。
■2900社あった自動車メーカーは3社に
史上最も重要な発明の一つ、自動車の例で説明しよう。20世紀初頭に自動車メーカーに投資した人々は、おそらく自分には未来が見えていると思ったはずだ。実際そのとおりで、今では14億台以上の自動車が世界の道路を走っている。とはいえ自動車メーカーへの投資の多くは大失敗に終わった。
アメリカでは20世紀に入って以降、2900社以上の自動車会社が登場したが、そのほとんどが消滅した。同業者に飲み込まれたケースもあるが、事業を支える収入が得られずに倒産したケースのほうが多い。20世紀が終わる時点で、アメリカの自動車メーカーとして生き残っていたのはわずか3社だ(そのうちGMとクライスラーの2社は2007~08年の経済危機の際、連邦政府の救済を受けてなんとか倒産を免れた)。
自動車に続いて、飛行機が数十億人の仕事や旅行のあり方に革命を起こした。航空業界の競争も激しく利益はほとんど出なかったため、投資家が望んだ結果を得られることはまれだった。
株式投資の話をしていると必ず誰かが大麻の話題を持ち出したのは、それほど昔の話ではない。僕の母国カナダが、中毒性の低いドラッグである大麻を合法化しようとしていた時期だ。大麻を製造していた企業の株価は急騰した。
■もしあの時ファイザーに投資していたら
大麻企業への投資が長期的に成功する見込みは低いと繰り返す僕に、双頭の怪物でも見るような目を向ける人は多かった。自分は金持ちになるための確実な方法を見つけたと思い込んでいたのだろう。誰のまわりにも、大麻業界に投資してほんの数カ月で資金が2倍、あるいは3倍になったという隣人やいとこがいた。
当時ニューヨークのナスダック証券取引所に上場していた国際的な大麻企業ティルレイの株価は148ドルだった。それが数年後には1株4ドルを切った。大麻が引き起こす空腹感を満たすことさえできないレベルだ。
こうした例からも明らかなように、世界を変えそうな企業を選んで未来に投資するのはそれほど簡単ではない。筋が通っていて、必ず儲かる保証が付いているような投資も、残念な結果に終わることが多い。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まり、世界中がパニックに陥った頃には、ワクチンは開発できるのか、それも世界中の人を守るのに十分な量を生産できるのかは誰にもわからなかった。
先見性のある投資家が、ファイザーのような多国籍製薬会社が記録的な速さでワクチンを開発できると予見したとしよう。実際、まさにそのとおりになった。パンデミックの始まった頃にファイザーに1万ドルを投資していたら、1年後には1万1900ドルになっていた。
■バフェットの金言
そのときには同社のワクチンを接種しようと世界中で数百万人が列をなしていた一方、パンデミックの最中に数百店舗を閉鎖したスターバックスの株に同じタイミングで1万ドルを投資していたら、1年後には1万4200ドルになっていた。ファイザーに投資するよりリターンは20%も多い。投資をしていると本当にストレスがたまるのはここだ。
株式市場でのワクワクするような投資話を聞くと、僕はいつも経済学者バートン・マルキールの格言を思い浮かべる。
「息せき切って話す人間からは絶対にモノを買うな」。
ウォーレン・バフェットも同じようなことを言っている。
「拍手喝采を受けるような投資話には注意せよ。最高の投資はだいたいあくびが出るような話だ」
バーのハッピーアワーではおよそ話題に上らないような、そしてメディアの注目を集めたり推奨銘柄になったりしないような退屈な会社が、株式市場では劇的に成長することがあるとバフェットは指摘している。
2000年代半ば、ドミノピザはニューヨーク株式市場に上場した。以来同社の株は60数十年に一つあるかどうかのすばらしい成長を見せた。上場時に1万ドルで買ったドミノ株の価値は、15年後には37万ドルを超えていた。
■プロの投資家の「成績表」
この情報を手に、タイムマシンに乗ってドミノがIPO(新規株式公開)をした日に戻れるとしよう。そして家族や友人にこう伝える。「いいかい、何に投資するべきか教えてあげるよ。絶対にドミノピザの株を買わなきゃダメだ!」おそらく笑いものになるだろう。
投資家はピザなんかに興味はない。バイオテック、リチウム電池、大麻関連株の話を聞きたいのだ。そしてそうした銘柄と命運をともにする。
プロの投資家なら株式市場で長期にわたって驚異的なリターンを得ることができるのだろうか。ほとんどのケースで答えはノーだ。それを裏付けるデータもある。
ニューヨークを本拠とする金融情報会社S&Pグローバルが過去20年以上にわたり年2回発表し、注目を集めてきたのが「S&P指数vsアクティブファンド」レポート、通称SPIVAだ。SPIVAはアクティブファンドの運用成績(パフォーマンス)をアメリカや世界各国の株式市場全体のパフォーマンスと比較評価している。
要するにこのレポートを見れば、プロの投資家が他の人より先にすばらしい宝石を見つけ、市場全体よりも高いリターンを生み出すポートフォリオを組めているかどうかがわかる。ファンドマネージャーにとっては学期末に配られる成績表のようなものだ。
■まさかの成績
このレポートが興味深いのは、中立的な立場から同一条件で多数のファンドを比較しているところだ。インターネット上で簡単に見つかるレポートだが、多くのプロがクライアントとのミーティングで話題にしているかは疑わしい。
SPIVAの2022年中間レポートを見ると、プロが運用するアメリカの大型株ファンドのうち、過去1年の運用成績がS&P500指数を下回ったものの割合は55%、過去3年では86%、過去10年では90%だった。
中型株ファンド、小型株ファンドの運用成績も同じようなもので、成長株ファンドに至っては運用成績はさらに悪かった(その名のとおり「成長」をもたらすはずの商品だが……)。
こうしたデータが何を意味するかというと、プロが運用する投資ファンドのうち、長期的に株式市場全体を上回るペースで成長するものは10に1つもないということだ。
こうしたファンドを運用するのは“専門家”であるという点に注目してほしい。大学でこの分野を専攻し、仕事として打ち込み、個人では入手できないような人脈やリソースを持つ人たちだ。
■レアな真珠の神話に惑わされてはいけない
モニッシュ・パブライのように長年市場を上回る運用成績を残してきたポートフォリオ・マネージャーもいることはいる。なかには今後も株式市場を上回りつづける者もいれば、リターンが落ちていく者もいるだろう。株価指数を大幅に下回る成績しかあげられない者も出てくるだろう。
ホースヘッド・ホールディングスの破綻によってパブライが大きな損失を出したのかはわからないが、おそらくそうではないだろう。致命的損失が出るのを避けるため、同社への投資額を総資産の10%以内に収めていたはずだ。亜鉛価格の下落や工場建設で問題が生じて株価が暴落するより前に売り抜けたかもしれない。
僕にわかるのはレアな真珠の神話に惑わされていたら、今の僕はもっと貧乏だったはずだということだけだ
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1977年カナダ生まれ。カナダの大手新聞ラ・プレスの経済記者。同紙初の米西海岸特派員として活動、全国新聞賞など各賞を受賞。カリフォルニア州ロサンゼルス在住。『年1時間で億になる投資の正解』は当初フランス語版がカナダで出版、ベストセラーとなり、世界各国で刊行の予定。
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(金融ジャーナリスト 二コラ・ベルべ)
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