これをする人は絶対お金が貯まらない…「株価暴落→つみたてNISAが含み損」の時にやってはいけないNG行動
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 7時15分
※本稿は、ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
■数年分の給料が吹っ飛んでも気にならなかったワケ
2020年に起きた新型コロナウイルス感染症に起因する市場の暴落によって、僕の運用資産はかつてないほど落ち込んだ。ほんの数週間で、数年分の給料に匹敵するほどの大きな穴が開いた。それでも売却を考えることもなければ、不安で眠れなくなることもなかった。
とはいえ自分に特別な才能があるとか、マゾの気があるとも思わない。なぜ平静でいられたのか。
それは株式市場の暴落はありふれた事象で、避けることはできず、また必要なものでもあると学んだからだ。
たとえば過去のデータが最もよくそろっているS&P500を見ると、1920年代以降、平均して年3回、5%の下落が起きている。さらに急激な下落も頻繁に起きている。過去100年を振り返ると、ほぼ16カ月に一度のペースで10%の下落が起きている。
では20%の下落はどうか。過去100年で見ると平均して7年に一度のペースで起きている。そして1950年代以降、S&P500の50%近い下落は3回、つまり22年に一度起きている。
■株価が暴落することはよくあること
「株式市場が乱高下すること」は周知の事実で、これほど頻発しているのだから、いまさら驚くに値しない。だがそれでも毎度のことのように投資家は驚かされている。
下落によるダメージは、通常長続きしない。たとえば第二次世界大戦以降、20%以内の調整であれば回復して下落前の状態に戻るまでの期間は平均4カ月だ。そして1974年以降にS&P500が10%以上下落したケースを見ると、底を打った翌月には平均8%以上、1年後には平均24%以上上昇している。
金融史上最悪の惨事であった1929年の大暴落の後でさえ、市場は10年も経たずに回復している。暴落直前の株価のピーク時にニューヨーク証券取引所に投資した不運な投資家も、市場が底を打ってから4年半後の1936年には失ったお金をすべて取り戻せたはずだ。
それが可能だったのは、大恐慌の最中ですら企業は株主に配当金として利益の一部を還元し続けたからだ。
■市場に参加する「入場料」
市場の調整がこれほどつらいのは、それが罰のように感じられるからだ。何か悪いことをして、厳格な先生にお仕置きされるような気持ちになる。だが市場の調整は罰ではない。市場に参加するための入場料のようなものだ。
「タダで市場リターンを得られたためしはないし、今後もないだろう」。金融ジャーナリストで投資家のモーガン・ハウセルの言葉だ。ハウセルは著書『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』で、市場の調整はシステムのバグではない、と書いている。
投資資産の価値が下落する可能性を受け入れることは、長期的に資産を増やすのに必要な対価だ。調整なくしてリスクなし。リスクのないところにリターンもない。だが労せずに報酬だけを得ようとするのが人間の本能だ。
その結果、投資家は「対価を払わずにリターンだけを得ようと小細工を弄し作戦を練る。要するに、株を売買するのだ。次の不況が始まる前に売り抜け、次の上昇相場が来る前に買おうとする。(一見すると)論理的な行動だ。だがお金の神様は対価を払わずに報酬だけを得ようとする者をよく思わない」
■成功している投資家の共通点
ポートフォリオ・マネージャーのマーク=アンドレ・タルコットは、成功している投資家には共通点があることに気づいた。
周囲がみなパニックになっていても、迷わず運用を続けていることだ。タルコットは経済的成功者の例として、起業家や不動産オーナーを引き合いに出す。
「起業家は毎朝目覚めた途端に会社の時価総額を計算したり、保有する不動産の価値を調べたりはしない。事業の利益や売上状況を見る。結局のところ、それが事業の価値につながっていくからだ。彼らは長期的にモノを考える。
会社が株式市場に上場したからといって、そうした姿勢を変える必要があるだろうか。株式市場に投資する人々の問題は、資産価値の変化が毎分、毎秒見えてしまうことだ。スタートアップ企業や不動産の価値は毎日算出されるわけではないので感情に影響を与えない」
重要なのは経験だ。株式市場の変動に最も弱いのは、比較的年を取ってから投資を始めた人、それも遺産相続や事業売却などでまとまった金額を投資しはじめた人だ、とタルコットは指摘する。
「こうした人たちは相当な金額を手にして、それをいっぺんに投資する。しかし市場が上がったり下がったりすることに免疫がない。急な変化が起きるたびにパニックになる。だから私の仕事の8割は、彼らのメンタルを管理することだと思っている。残りの2割がパフォーマンスの管理だ」
■だから個別株はリスクが高い
結論を言うと、成功の対価を払おう。ポートフォリオに余計な手出しをするのはやめよう。運用資産の価値は増えることもあれば減ることもある。一喜一憂しても意味がない。
言うまでもなく、このアドバイスが有効なのは市場を幅広くカバーする、手数料の低いインデックスファンドかETFを保有している投資家だけだ。こうしたファンドには数百、数千社の株式が含まれている。
歴史を振り返れば、株式市場は常に上昇する道を見いだしてきた。一方、個別企業のなかには結局復活せず、最終的に株式の価値がゼロになったところも多い。個別株への投資が市場全体への投資よりリスクが高い理由の一つはここにある。
多くの人が恐れるのは市場の調整だけではない。投資商品を高値づかみすることも死ぬほど恐れている。この恐れは、相場が過去最高水準にあるときに投資をためらう、というかたちで表出する。「相場はここ1年で31%も上昇した。すべてが高すぎるから、今は投資するタイミングじゃないな」と考えるのだ。
■「安くなるまで待つ作戦」はやってはいけない
テレビやスキー板を割安な値段で買おうとセールの時期まで待つのと同じように、市場が下降局面に入るまで投資を手控える人もいる。その気持ちは僕にもよくわかる。誰でもそうだが、僕だって日用品を定価で買いたくはない。
だがスキー板ならうまくいく話が、投資の世界にも当てはまるわけではない。こと投資においては、安くなるまで待つという作戦は資産を減らすことにつながる。
実は、株式市場が史上最高値を記録するのはふつうのことであり、決して珍事ではない。だから市場がしばらく上昇を続けたから、あるいは最高値を更新したから投資を先送りしようなどと言っていると、そうした状態が長く続く可能性がある。
金融ライターのベン・カールソンは、S&P500は1928年以降、平均して20営業日ごとに史上最高値をつけてきたと書いている。1926年から2019年のあいだ、S&P500はほぼ4年に3年は上昇している。上昇相場の翌年も、ほぼ4年に3年は上昇している。10%以上上昇した年の翌年はどうか。それほど上昇した翌年も、ほぼ4年に3年は上昇した。
ではとてつもない、ありえないような、ヒマラヤ山脈並みの高い水準に達した年、たとえば12カ月で50%上昇したら、その後はどうなるか。それほど上がったら間違いなく大きな調整が入るだろう。だが答えは「ノー」だ。
■直感的には受け入れがたい株価の真実
歴史を振り返ると、とてつもなく上昇した翌年は確かにS&P500は平均1.5%下落していた。だが50%上昇した年から3年後の平均リターンは42%、5年後の平均リターンは66%だった。この計算には配当金は含まれていない。
「前年の実績をもとに翌年の株式市場の動向を占うのは、考えるよりずっと難しい」とカールソンは述べている。あるいは、コイン投げを何度も繰り返すところを想像してみるといい。
表が出たか裏が出たかをノートに書き留めていくとしよう。何度か連続して裏が出ることもある。ただ裏が続いたからといって、次は“必ず”表が出ると決まったわけではない。前回の結果は、次のコイン投げの結果に何の影響も及ぼさない。コインを投げたとき、表が出る確率は50%、裏が出る確率も50%だ。
株式市場の場合、確率は投資家にとって有利だ。すでに述べたとおり、北米の株式市場の歴史を振り返ると、10年中7年は上昇している。この教訓は直感的には受け入れがたいが、相場がピークに達しているからと言って投資を手控えるべきではない。
下落はいずれ必ず起こる。だがそのタイミングと幅を確実に予測しつづけるのは不可能だ。
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1977年カナダ生まれ。カナダの大手新聞ラ・プレスの経済記者。同紙初の米西海岸特派員として活動、全国新聞賞など各賞を受賞。カリフォルニア州ロサンゼルス在住。『年1時間で億になる投資の正解』は当初フランス語版がカナダで出版、ベストセラーとなり、世界各国で刊行の予定。
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(金融ジャーナリスト 二コラ・ベルべ)
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