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お金が貯まらない人ほど直感で行動している…新型NISAで資産を減らす人がやっている「残念な行動」とは

プレジデントオンライン / 2024年11月27日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM

どうすれば資産を増やすことができるのか。カナダの経済記者、ニコラ・ベルベ氏は「運用資産について頭を悩ませるのはやめたほうがいい。なぜなら投資ほど直感が災いするものはないからだ」という――。(第3回)

※本稿は、ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■株価が下落した時にはどうするべきなのか

投資家なら誰しも市場が大幅に下落し、低迷している時期に投資したいと考える。だが実際には、ことはそれほど単純ではない。

過去の株価チャートで相場が下がった局面を見つければ、ここが底値で株を買うチャンスだと思うだろう。しかし実際に下落相場を経験すると、チャンスという気分など吹き飛んでしまう。

過去の株価下落について冷静でいられるのは、それがどう終わったかを知っているからだ。だが目の前で起きている下落について、冷静でいるのはとても難しい。それはとてつもない恐怖感をともなう。

真っ暗な洞穴に懐中電灯なしで入っていくような気がする。暗闇に何が潜んでいるかは誰にもわからない。手探りで必死に前に進むしかない。市場の調整はときには数週間、数カ月続くこともある。それは投資家の不安を高め、弱気にさせ、すべてに疑問を抱かせる。

こうした状況では、たいていの人は金融資産を買うことなど思いもしない。そして買えば買ったで、すぐに価値が下落する可能性は高い。投資商品を買った数分後に値下がりするのを目の当たりにしたら、給料袋をロウソクの火の上にかざしているような気になる。控えめに言っても、あまり気持ちのよいものではない。

■「運用資産について頭を悩ませるのはやめよう」

僕の場合、こうした状況で動じなくなるまでに10年かかった。長期的に見れば、株式市場は常に最高値を更新する道筋を見いだしてきた。だが短期的には恐怖感のほうが金儲けをしたいという欲求よりもはるかに強烈だ。

こんな場面で冷静さを保つほど難しいことは人生になかなかない。投資家のバランスシートが危うくなるのはこういうときだ。作家で金融アドバイザーのガース・ターナーは投資家心理をこんなふうにまとめている。

「私は35年におよぶキャリアのなかで、同じストーリーを何度も見てきた。相場は上昇するのがふつうで、調整のほうが例外だ。景気は拡大期のほうが縮小期より多いし、その幅も大きい。危機は急激だがすぐに終わる。景気後退は頻繁には起こらず、常に短期間で終わる」

バランスのとれた分散型ポートフォリオを運用している投資家は、恐怖を煽ろうとする業界の声に惑わされてはならない、そうした声は株式市場が荒れたときほど大きくなる、とターナーは書いている。「運用資産について頭を悩ませるのはやめよう」と説く。

■世界の終わりなのか、そうではないのか

投資家で作家のハワード・マークスは株式市場で大きな危機が発生したときの自分の思考プロセスをこう説明する。

「突き詰めれば、これは世界の終わりなのか、そうではないのかという問題だ。世界の終わりではないのに株を買わなかったら、投資家としてやるべきことをやらなかったことになる」

そう考えれば投資家が何をすべきかは「このうえなくはっきりする」とマークスは言う。

新型コロナ危機が始まった当初、主要な株式指数は軒並み大幅に下落した。S&P500はほんの1カ月ほどで30%以上下落した。これほど急激な下落は過去にも例がない。

数百万人の他の投資家と同じように、僕も市場にくぎ付けになった。投資にまわすお金がある間は、さらなる値下がりを想定しつつETFを買った。

資金が尽きると、もう何もしなかった。同じころ、多くの友人・知人もコンピュータと向き合っていた。長年投資を続けてきた人もいれば、ファイナンスを正式に学んだ人、金融業界で現役で働いている人もいた。

数週間にわたって自分のポートフォリオの価値が急減していくのを目の当たりにした友人たちは、市場の調整は始まったばかりだと結論づけた。そこで保有資産をいったん売却し、さらに値下がりしたところで買い戻そうと考えた。

■「投資には最悪のタイミング」が最善

当時のニュースは悲惨な状況を伝えていた。いくつか見出しの例を挙げよう。

・コロナ暴落が続くなかダウは約3000ポイント下落、1987年以来最悪の下げ178幅(CNBC)

・コロナ患者数の急増を受けてカリフォルニア州知事が全州民に「自宅待機令」(CNBC)

・トランプ大統領、コロナパンデミックで中国を非難「彼らのせいで世界がとてつもない代償を払っている」(CNBC)

・コロナウイルス――致死率は低いものの、死者数はSARSとMERSの合計を上回る(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)

・中国、コロナ流行で7億8000万人の移動を制限(CNN)・コロナ不況は中産階級に大きな打撃(バロンズ)

・ロイター世論調査――コロナ禍で世界はすでに不況に突入(ロイター)

僕は30年近くニュースを追ってきたが、メディアが世界の終わりのような見出しをこれほど大量に出したのはアメリカ同時多発テロを除けば初めてだ。ほとんどの読者や視聴者はおそらく投資するには最悪のタイミングだと思っただろう。だがそうではなかったことが今はわかっている。

 コロナウイルスパンデミック中のニューヨークタイムズスクエア
写真=iStock.com/nycshooter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/nycshooter

前ページに挙げたような恐怖を煽る見出しが並んでから1年間で、S&P500は70%上昇した。誰も予想しなかったほどの急騰だ。

■投資資産が値下がりしても保有しつづける

「平均すると、市場の回復は前向きなニュースが出始める6カ月前から始まる」と語るのはポートフォリオ・マネージャーのリチャード・モリンだ。

「たいてい回復は、新聞がこの世の終わり的なニュースばかりを報じている頃から始まる。コロナのときもそうだった」

僕の友人たちは急いで株を買い戻したが、回復の一部は取りこぼした。それでも運の良いほうだ。どんな危機のときもそうだが、多くの投資家は相場回復に完全に乗り遅れる。彼らが己の損失と向き合っている間に市況は変化し、回復を始める。投資家が呆然とし、株を買い戻す気力を持てないうちに相場は大幅に回復してしまう。授業料の高い、非常につらい失敗だ。

投資資産が値下がりしても保有しつづけることが重要だ。というのも回復は何の前触れもなく始まるからだ。

ミシガン大学のH・ネジャット・セイハン教授が調査した30年間で、米国の相場上昇のほぼすべてが市場の開いていた7500日のうち90日、つまり全体のわずか1%ほどの取引日に生じていた。市場から資金を引き出し、この1%の取引日を逃してしまった投資家は、30年の長きにわたって一切運用益を得られなかったことになる。

■直感ほどやっかいなものはない

市場のパニックの最中に、あるいはパニックが起こると予想して売却するのは、自分には未来を予測する力があると考えることでもある。これほど投資家にとって最も高くつく“直感”はないかもしれない。こと投資においては、直感など舞い降りてこないに越したことはない。

ウォーレン・バフェットもこう言っている。

「市場で何が起ころうとしているかなど、私にはまったくわからない。今日、今週、今月、あるいは今年市場がどうなるかなど自分にわかるはずはないし、知る必要があると思ったこともない。だが10年後、20年後、あるいは30年後に株は今よりずっと高くなっているとは思う」

いずれにせよ、できるだけ安値で投資商品を買うために時間と労力を費やしても、期待するような目覚ましいリターンは得られない。

■「底値で買い続ける」対「定額投資」の結果

ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)
ニコラ・ベルべ著、土方奈美訳『年1時間で億になる投資の正解』(新潮新書)

たとえば信じられないようなツキに恵まれ、相場が下落するたびに底値で投資できた人がいたとしよう。金融アナリストで作家のニック・マギウッリが計算したところ、1970年から2019年にかけて相場が下落するたびに底値で投資できるというとんでもない幸運に恵まれた人でも、市場の変動など一切おかまいなしに毎月一定額を投資しつづけた人と比べてリターンは0.4%高いだけであることを突きとめた。

つまり最高のタイミングで投資を続けること(要は完璧に機能する水晶玉を持っていること)による追加リターンは、たった0.4%だということだ。

実際に毎回完璧なタイミングで投資できる可能性は極めて低いのだから、着実に投資し続けるよりリターンは悪くなるだろう。

改めて書くが、直感に従うのは間違いだ。投資するのを待て、という頭のなかの囁きに耳を傾けるのが間違いなら、心の平穏を得るために投資資産を売却するのも間違い。投資ほど直感が災いするものはなかなかない。

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二コラ・ベルべ 金融ジャーナリスト
1977年カナダ生まれ。カナダの大手新聞ラ・プレスの経済記者。同紙初の米西海岸特派員として活動、全国新聞賞など各賞を受賞。カリフォルニア州ロサンゼルス在住。『年1時間で億になる投資の正解』は当初フランス語版がカナダで出版、ベストセラーとなり、世界各国で刊行の予定。

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(金融ジャーナリスト 二コラ・ベルべ)

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