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専業主婦歴20年超の離婚と起業…「自分の人生と子どもの学費全て引き受ける」母に覚悟を決めさせた娘の言葉

プレジデントオンライン / 2024年11月21日 12時15分

写真=本人提供

人生には突然、転機が起きることがある。それは一見マイナスな出来事かもしれない。片づけ習慣化コンサルタントの西崎彩智さんは「結婚20年目、夫のリストラをきっかけに夫婦関係は壊れた。それでも不安と世間体を気にして離婚できずにいた私が、自分の人生も子供の学費も全部引き受けて生きていくと決意を固めたのは、1本の電話がきっかけだった」という――。

※本稿は、西崎彩智『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■「女性の幸せは結婚にある」という時代に生きた父

少しだけ私、西崎彩智の人生のビフォーアフターを聞いてください。

私は大阪生まれの岡山育ち。1700グラムで生まれた体の小さな私は、なんでもできる姉と比べて成長がゆっくり。周りの子たちから、童謡「サッちゃん」の「だけど ちっちゃいから~♪」のところを歌ってからかわれたりして、両親は私の将来をとても心配していたそうです。

Homeport代表 お片づけ習慣化コンサルタント 西崎 彩智
Homeport代表 お片づけ習慣化コンサルタント 西崎 彩智(撮影=プレジデントオンライン編集部)

「女性の幸せは結婚にある」という時代に生きた父は、私の幸せは結婚しかないと思うあまり、家事に関しては厳しくしつけをしました。2歳のときに住んでいた家で、おもちゃの片づけをしないまま寝ていた私は、父に起こされて、おもちゃの片づけをさせられた記憶があります。片づけると父はいっぱいほめてくれました。片づけたら喜んでくれる。その嬉しさは、あのとき幼心に刷り込まれたのかもしれません。

■「建築は男の世界」と反対されて…

温かかったけれどちょっと窮屈だった岡山の家を出て、大学は神戸へ。建築学部を志望していましたが、「建築は男の世界」と言う父の反対にあい断念。心理学や教育学、社会学が学べる人間関係学科へ進みました。

建築は諦めても住まいやインテリアの世界に身を置きたくて、大学卒業後はインテリアプランナーとして地元の住宅会社に就職しました。仕事はすごく楽しかったけど、家庭に憧れていた私は24歳のとき6歳年上の男性と結婚して専業主婦に。当時は家事と育児に夢中でした。目が届きすぎるくらい子どもと関われる毎日は幸せでした。とはいえ、誰もほめてくれないのが主婦業です。ふと「自分には何もない感」に引きずり込まれる瞬間がありました。でもその頃は自分の将来を見ないフリをしていました。

そのころ唯一、自信を持てたのが毎日普通にやっていた片づけ。ママ友が家に来たとき、「片づいて気持ちのいい部屋だね」とほめられたのがすごく響きました。ママ友や子どもの友だちが集まれる部屋を作ることが、趣味のようになっていきました。

ここまでがいわば私の人生の「ビフォー」です。そんな穏やかな生活は、結婚20年目に強制終了。夫がリストラにあってしまったのです。

■夫婦関係崩壊。不安と世間体から2年が経ち…

夫がリストラにあったのは上の娘が高校、下の息子が中学に入る直前。夫の仕事はなかなか見つからない上、「今まで俺が食わせてやってきたんだから、これからはお前が俺を食わせろ」と言うような封建的なタイプでした。

口答えして怒鳴られるのも嫌なので、働きに出ることにしました。仕事はヨガスタジオの運営スタッフ。やりがいはありましたが、先の見えない不安が続き、思春期の子どもたちの前で夫婦ゲンカをすることも増えました。

夫婦関係は壊れ、40代半ばで再就職した私にこれから何ができるだろう。不安と世間体を気にして現実を直視できないまま2年が過ぎ……「そろそろしっかりしてよ」と、体当たりで教えてくれたのが娘と息子でした。

■1本の国際電話が…決意を固めた娘からの言葉

ある朝、海外に留学していた娘から国際電話がかかってきました。

「どうせママ、忙しくなってご飯も作らなくなってるやろ? 家だって散らかっているやろ? 家、絶対におかしくなってるやろ? もう、私たちのために! っていう生活はやめて‼ 離婚していいから‼」

この言葉でやっと決心し、夫に離婚を伝えることができました。離婚直後、「もう、家に友だち呼んでいい?」と息子が言い出しました。

かつては友だち同士のたまり場だったのに、家がすったもんだしてから、私は息子に友だちを家に呼ぶことを禁止したのです。家が散らかった様子は誰にも見られたくない。そうやって問題を先送りにしたことを激しく後悔しました。中3の部活最後の打ち上げはウチでやろう! と、これを機に片づけに取り掛かりました。

2年の間にたまった不用品や夫が残していったモノは、なんと2トントラック2台分。モノを家から出すと心がスッとしました。私に一番必要だったのは、本当は自分ってどうしたいの? と、自問自答しながら整理する時間だったのです。

片づけながら自問自答を繰り返すうちに「人生も子どもの学費も全部引き受けて生きていく」という覚悟ができました。

■「片づけなんかで子どもを育てられるはずがない」

アラフィフのシングルマザーという逆境の中で、もともとの超負けず嫌いな性格が現れました。「小さくて不器用だから」「お姉ちゃんと比べて……」「女に建築は無理」なんて呪いに抑えられてきたかつての「サッちゃん」が、「サッちゃんだってできるもん‼」と、うわぁー! って叫びながら暴れ出しました。

ヨガスタジオでは店長にまで上りつめました。起業するときは、「片づけなんかで子どもを育てられるはずがない」といろんな人に心配されました。心配されればされるほど、「そんなことはない」と証明したくなりました。

信じたのは、ヨガスタジオで相談してくれた女性たちの本音、専業主婦時代の孤独感、仕事と家事と子育て、すべてを背負ったときの閉塞感、問題を先送りにした後悔、片づけで自信を取り戻した経験まるごと。そして負けず嫌いの自分。

全ての苦い経験から、家庭力アッププロジェクト®が生まれました。今では3千人以上の卒業生を出しました(2024年10月現在)。子ども2人は独立し、私自身は2016年、49歳のときに再婚。公私ともども充実した毎日を送っています。

(左)スープなどは薄く固めて、縦に収納 (右)冷蔵庫をいかに省スペース収納でスッキリさせるかなど、さまざまな片付け術を発信中の西崎さん。
撮影=プレジデントオンライン編集部
(左)スープなどは薄く固めて、縦に収納 (右)冷蔵庫をいかに省スペース収納でスッキリさせるかなど、さまざまな片付け術を発信中の西崎さん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

■片づけが最高の「セルフコーチング」である理由

令和の現代になっても、女性の家事負担は大きく、多くの女性が仕事と家庭の両立で悩んでいます。私の負けず嫌い根性が「そんなのおかしい」って騒いでいます。

事務所にて撮影
写真=本人提供

しかし、部屋が散らかるのを、家事をしない夫や子どものせいにしたところで、部屋は片づいてくれません。社会構造のせいにすれば気持ちがおさまるかもしれない。本当に残念ですが、そうであったとしても、家族は察してくれないし、何も変化は起きません。

じゃあ私はどうしたいの? と考えて、「いろいろあるよね。でも片づけたいのは私だし、まずは自分からやってみよう」と、自分から率先して片づけるのが私たちのやり方です。片づけを「やればできる」から「やっている」状態にするのです。

私は「片づけは最高のセルフコーチング」とお話しします。

片づけを通して自らが本当にありたい姿に答えを出すことができるし、片づけの習慣が身につけば、勉強にも仕事にも生かせる。片づけは人生をポジティブにするスキルなのです。

今も女性たちの悩みに現場で耳を傾け、発信や活動に生かし続けている
写真=本人提供
今も女性たちの悩みに現場で耳を傾け、発信や活動に生かし続けている - 写真=本人提供

■選択する力を養い「自分の人生」を生きる

片づけは、一度やったら終わりではありません。大事なのは習慣化することです。以前、個人宅の片づけをやっていたことがあります。そのとき、あるお客様に「夫のゴミ箱はどれがいいでしょうか?」と聞かれたことがあります。それを聞いたとき、軽い衝撃を受けました。私がいろいろアドバイスした結果、お客様はゴミ箱を選ぶことさえ、自信を持てなくなってしまったのです。

人から指示をされて片づけても、ライフイベントやお子さんの進学などで変化があるとあまり再現性がなく、汚部屋のリバウンドになってしまうのです。

片づけに一つの正解はありません。ですから私たちは講座の受講生さんたちに「あれを捨てましょう、これを捨てましょう」「服は何着にしましょう、食器はいくつまで」とは言いません。それを決めるのはあくまでご自身だからです。

片づけを習慣化するためにまず大事なことは「自分で決めること」=「自己決定力」をつけることです。そんな当たり前のこと! と思うかもしれませんが、実は片づけられない人の特徴として「捨てていいかとっておくのか決められない」という人が非常に多いのです。

「何を選ぶか」「何を捨てるか」「どこに置くか」など、片づけは自己決定の連続です。

まずは自分自身で選択する力をつけなければ部屋は片づきません。自己決定力をつけることは自分の人生を自分で決定することにもつながります。

今までなんとなくやってきたこと、嫌だなと思いながら目をつむってきたこと、人に合わせて流されてやってきたことに向き合い、自分で決定する。片づけをやっていくと人生が良い方向に変わるのは、このあたりに理由があるのかもしれません。

■「片づけができない」は思い込みにすぎない

片づけが苦手な人の中には、「実家も汚いので、私には片づけができないと思っていました」「小さい頃から片づけができない子だと言われ続けていたので自信が持てません」とおっしゃる方がいます。

西崎彩智『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)
西崎彩智『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)

確かに、親から片づけを習っていないと、自分も片づけが苦手になってしまうことはあります。また、脳の特性的に片づけが苦手な方は確かにいます。

しかし、片づけられないことをいつまでも何かのせいにしていては前に進めません。むしろ、あなたの子どもにも同じように連鎖しないよう、少しずつでもいいので、あなたが変わりましょう!

「○○のせいで片づけられない」と言っているのは、紛れもなく、片づけられないことを他人のせいにしている証拠。

言い訳をしている自分に気づき、できるところから始めましょう。

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西崎 彩智(にしざき・さち)
お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表
1967年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、住宅メーカーのインテリアコーディネータとして従事。結婚し、20年専業主婦を経験したが離婚。その後はヨガスタジオの店長としてスタジオに通う多くの女性のさまざまな相談に応じる。2015年、得意の片付けを生かして起業。お片づけ習慣化講座「家庭力アッププロジェクト」修了生は全国で3000名を上回る。

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(お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表 西崎 彩智)

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