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これが不足すると「老化+肥満」のWパンチ…日本人の8割が足りていない「超重要な栄養素」

プレジデントオンライン / 2024年11月21日 17時15分

出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)

「三大栄養素」と言われる糖質、脂質、たんぱく質のうち、一番大切なものは何か。医師の平島徹朗さんと秋山祖久さんの共著『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)より、一部を紹介する――。

■日本人のたんぱく質摂取量は戦後レベル

「たんぱく質、ちゃんと摂っていますか?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?

「肉も魚も食べてるから大丈夫」「お肉大好き! むしろ食べすぎてるんじゃないかと心配になる」そう答える人が多いようです。しかし、実際にたんぱく質が十分摂れている人は、とても少ないのです。

厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査などの結果から、1日あたりのたんぱく質摂取量の平均値の推移(図表1)を見てみると、戦後から上昇を続け、1995年にピークを迎えました。

そのときのたんぱく質摂取量の平均値は約80g。2000年ごろまで80g前後で推移しましたが、その後急激に減少し、2019年には約70gとなっています。

たんぱく質の摂取量が約70gとは、1950~1960年代と同程度です。戦後間もないころと同じくらいとは驚きますよね。

■生活習慣病の予防には「目標量」が必要

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には次のように定義されています。

推奨量→母集団に属するほとんどの者(97~98%)が充足している量
目標量→生活習慣病の発症予防を目的として(中略)現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量

つまり、推奨量を満たしているのは当たり前であり、本来は目標量を目指して摂取するようにしなければいけません。

■健康意識が高い人でも8割が不足している

では、私たちはたんぱく質の目標量を摂れているのでしょうか? 図表2のグラフを見る限り、答えはNO! たんぱく質の推奨量は、男性は20~65歳が65g、65歳以上が60g、女性は20歳以上が50gなので、推奨量こそクリアしていますが、目標量に対しては多くの世代でたんぱく質不足になっています。

【図表2】たんぱく質の平均摂取量の推奨量、目標量との比較
出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)

もちろん、これは摂取量の話。「食事で摂り入れたたんぱく質がちゃんと吸収されているのか?」というのはまた別の話です。

私たちのクリニックでは、血液検査によってその人の栄養状態を調べる栄養解析(自費診療)を行っているのですが、たんぱく質量を調べたところ、不足している人がとても多いことがわかりました。

定期的に来院され、内視鏡検査を受けて健康管理をしようと思うほど健康意識が高い人たちが多くいるにもかかわらず、8割がたんぱく質不足という結果が出たのです。そう考えると、日本人のほとんどがたんぱく質不足! 決して大げさではなく、そう感じます。

つまり、“摂っているつもりが摂れていない”。それが、多くの人がまだ気づいていないたんぱく質の現実なのです。

■三大栄養素の中でも「一番大切」

「たんぱく質は筋肉づくりやダイエットのために必要。でも、それ以上のことはよく知らない」という人が多いのではないでしょうか。

たんぱく質は英語でプロテイン。ギリシャ語の「最も大切」「第一の」という意味の言葉が語源とされています。医学も栄養学も発展していない時代から、人間は体験的にたんぱく質の大切さを感じていたのでしょう。私たちも「糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素のうち、一番大切なのは?」と聞かれたら、迷うことなく「たんぱく質」と答えます。

たんぱく質が一番大切な理由を、ぜひ知っておいてください。なぜなら、「知らずに食べるか、知って食べるか」の違いはとても大きいからです。知ることで納得できる→自主的に実践できる→自分に合う方法を考えられる→継続できる→体の変化を実感できる、という好循環が生まれるはずです。

■たんぱく質が必須である5つの理由

①たんぱく質は、全身の細胞の材料
→不足すると、体の材料が足りなくなる

諸説ありますが、1人の体を構成する細胞は約60兆個あり、これは、世界の人口(約81億人)の約7400倍もの数になります。そして、筋肉、内臓、骨、肌、髪、血液などは、すべてこれらの細胞が集まってできています。

細胞はたんぱく質を材料につくられているのだから、たんぱく質は細胞レベルで重要! 体を構成する成分のうち、水分を除くと残りの半分弱はたんぱく質でできています。そのため、たんぱく質が不足すると体は材料不足となり、肌や髪が荒れたり、内臓の働きが悪くなったり、骨がもろくなったり、貧血になったりして、あちこちに不調が表れるわけです。

■臓器や血液、骨は生まれ変わっている

②たんぱく質は、常にターンオーバーを繰り返している
→不足すると、細胞が老化する

体を構成する約60兆個の細胞は、たんぱく質を材料に、絶えず合成と分解を繰り返してつくり替えられています。それがターンオーバー(細胞の生まれ変わり)です。

ターンオーバーの周期は臓器や組織によって異なり、胃・小腸の粘膜は約3日、大腸の粘膜は約10日、皮膚・肝臓・腎臓は約1カ月、筋肉は約2カ月、血液は約4カ月、骨は約5カ月で新しい細胞に生まれ変わっています。

つまり、「今の自分は半年前の自分ではない」のです。しかし、これはあくまでたんぱく質を十分に摂っている場合。たんぱく質不足が続くと、細胞のターンオーバーの周期が乱れ、細胞は老化。体の機能低下や不調の原因になります。逆に考えると、十分なたんぱく質摂取によって「半年後の体を若々しく作り替えることができる」といえます。

③たんぱく質は、ホルモン、酵素、抗体などの分泌物質の材料になる
→不足すると、体の機能が低下する

ホルモン(神経伝達物質)、消化吸収を促す酵素、免疫機能を支える抗体など、さまざまな分泌物はたんぱく質を材料につくられています。たんぱく質不足が続くと、消化吸収力の低下、代謝の低下、神経伝達機能の低下、免疫力の低下など、体のさまざまな機能が低下し、不調が起こりやすくなります。

■イライラする原因はセロトニン不足

④たんぱく質は、心の健康にも欠かせない
→不足すると、“幸せホルモン”が不足する

やる気が出ない、気分が落ち込む、イライラする……そんな心の不調の原因のひとつと考えられるのがセロトニンという脳内の神経伝達物質の不足です。セロトニンは、“幸せホルモン”とも呼ばれ、心身をリラックスさせたり、意欲を増したりする働きがあります。

セロトニン不足は、自律神経や体内リズムの乱れなどによって起こりますが、そもそも、セロトニンの材料となるたんぱく質が不足していると産生量が低下し、意欲が低下したりイライラしたり、落ち込んだりしやすくなります。

また、セロトニン不足になると、セロトニンを材料につくられる睡眠ホルモンのメラトニンの産生量も減り、睡眠のリズムが崩れてしまいます。

ほかにも、たんぱく質不足によって、元気ホルモンであるドーパミン、リラックスホルモンであるGABAなどの神経伝達物質も不足して、精神の不安定な状態につながります。

■代謝が低下し、太りやすくなる

⑤たんぱく質は、消化吸収時に約30%が熱エネルギーになる
→不足すると、冷えやすく、太りやすくなる

平島徹朗、秋山祖久『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)
平島徹朗、秋山祖久『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)

たんぱく質は、20種類のアミノ酸が50個以上集まり、さまざまな配列で複雑に結合してできています。食事で摂ったたんぱく質は、体内の消化酵素(これもたんぱく質からできている!)によって分解され、1個のアミノ酸や、アミノ酸が2~3個結合したペプチドという状態になり、小腸から吸収されます。

このようにして複雑に結合したたんぱく質が体内で分解され、吸収されるとき、その約30%が熱エネルギーになるのです。これを「食事誘発性熱産生」といいます。この熱産生量は午後や夜間よりも午前のほうが高いため、朝食を抜くと熱産生量が下がって、代謝が悪い体質になってしまいます。

つまり、たんぱく質を摂取することで熱が生まれて体温が上昇。逆に、たんぱく質が不足していると、体温が上がらず冷えやすくなり、さらに代謝が低下して太りやすくなります。

自分がたんぱく質不足かどうかを知りたい方は、図表3のチェックシートでセルフチェックをしてみてください。

【図表3】手軽にできるセルフ診断 「たんぱく質不足度」チェック
出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)、イラスト=加納徳博

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平島 徹朗(ひらしま・てつろう)
たまプラーザ南口胃腸内科クリニック院長
1973年神奈川県生まれ、大分県育ち。日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本抗加齢学会専門医。国立佐賀大学医学部卒業後、大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部などの勤務を経て、「たまプラーザ南口胃腸内科クリニック」「福岡天神内視鏡クリニック」を開設し、院長、理事長を務める。「薬の服用は最小限に、食事と生活習慣の改善が最優先」をモットーに横浜と福岡で診療を行っている。趣味はトライアスロン、筋トレ、ランニング、YouTube撮影。豆柴犬をこよなく愛す。

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秋山 祖久(あきやま・もとひさ)
福岡天神内視鏡クリニック院長
1975年佐賀県生まれ。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。中学生のころ、急性虫垂炎で入院したときの主治医のやさしさに感動し、医師を志す。長崎大学医学部卒業後、長崎大学消化器内科に入局。多くの総合病院勤務を経て、「福岡天神内視鏡クリニック」院長に就任。年間4000例以上の内視鏡検査を行っている。ビタミンDを愛し、ビタミンDの大切さを熱心に語ることから「ビタミンD先生」と呼ばれている。趣味はトライアスロン、読書、スポーツ鑑賞。早歩き通勤が日課。

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(たまプラーザ南口胃腸内科クリニック院長 平島 徹朗、福岡天神内視鏡クリニック院長 秋山 祖久)

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