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便秘・下痢が続いている人は要注意…食べても食べても栄養がムダになる「腸漏れ」を放置してはいけない

プレジデントオンライン / 2024年11月23日 17時15分

出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)、イラスト=加納徳博

栄養バランスの良い食事を心がけていても、栄養不足に陥ることがある。その原因は、腸粘膜にすき間ができ、栄養が正しく吸収されない「腸漏れ」だという。医師の平島徹朗さんと秋山祖久さんの共著『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)より、一部を紹介する――。

■知らない間に起きている「腸漏れ」

ご存じのとおり、腸は栄養を吸収する場所です。しかし、皆さんの腸はちゃんと吸収できているでしょうか?

実は、不要なものが腸から漏れ出して吸収され、そのぶん摂ったはずの栄養素が正しく吸収されていないケースが珍しくありません。それが、リーキーガット症候群、通称「腸漏れ」です。

正常な場合、小腸では粘膜層から消化酵素が分泌され、胃や十二指腸で消化された栄養をさらに分解し、吸収していきます。しかし、腸粘膜の細胞に炎症が起こると、腸粘膜の細胞と細胞の間にすき間ができてしまいます。

腸は栄養吸収の要であり、免疫の要でもあります。必要な栄養を吸収しつつ、取り込みたくないウイルスや菌、アレルギーの原因物質、有害物質、未消化の栄養素などはブロックし排泄するという働きをこなしています。

■肝心の栄養素が吸収できず、栄養不足に

ところが、腸粘膜にすき間ができて腸漏れを起こすと、本来ブロックするはずの不要なものを取り込んでしまい、その影響で肝心の栄養素の吸収がおろそかになってしまうのです。これが、腸漏れで栄養不足になる理由です。

つまり、腸漏れが起こると、口から栄養を十分に摂っていたとしても体内ではそれを吸収できておらず、栄養不足を招くのです。

たんぱく質をはじめとする栄養素がうまく吸収されないと、栄養が不足し、細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)の周期が乱れてしまいます。腸粘膜の細胞の新陳代謝もスムーズにできず、腸漏れが悪化。腸粘膜で起こった細胞の炎症は体のあちこちに広がってしまいます。すると、さまざまな不調や病気が起こりやすくなり、さらに腸漏れが悪化……という悪循環に陥ります。

■原因はたんぱく質不足と腸内環境の悪化

まさか、自分の体の中でそんなことが起こっているとは、思いもよりませんよね。しかし、疲れが溜まる、やる気が出ない、集中力が続かない、肌が荒れる、お腹の調子が悪い、頭痛がするなど、たとえ些細なことでも、なんとなく不調を感じることが増えているなら、それは腸漏れのせいかもしれません。

せっかくこまめにたんぱく質を摂取しても、腸漏れをしていたらその努力が無駄になってしまいます。そんな悲しいことにならないためにも、まずは原因を知り、腸内環境を整えて腸漏れを防ぐことを第一に考えていきましょう。

では、腸漏れはどうして起こるのか? 考えられる原因を知っておきましょう。

①たんぱく質不足
細胞の材料が不足し、腸粘膜の細胞のターンオーバーがスムーズに行えなくなる

②腸内環境の悪化
腸内の悪玉菌が増加し、腸粘膜を傷つける

腸内環境を悪化させる原因
・ストレス
・睡眠不足、睡眠の質の低下
・小麦粉食品(グルテン)の摂りすぎ
・乳製品(カゼイン)の摂りすぎ
・ビタミンD不足
・糖質の摂りすぎ、高血糖の常態化
・お酒の飲みすぎ
・加工食品に含まれる合成添加物の摂りすぎ
・白砂糖の摂りすぎ
・人工甘味料の摂りすぎ

■悪循環の無限ループから逃れられない

このように、腸漏れの主な原因は身近なことばかりです。

ストレスを抱えている。お酒をたくさん飲む。ときどき甘いものを爆食いする。毎日パンやパスタやうどんなどの小麦粉食品を食べる。チーズやヨーグルトは欠かせない。忙しくて合成添加物たっぷりの加工食品を毎日のように食べる。睡眠不足……。どれかひとつでも習慣化しているなら、ほぼ間違いなく腸漏れしているでしょう。

つまり、腸漏れは誰にでも起こる可能性があるのです。

そして、一度腸漏れが起こり始めると、図表2で紹介したような悪循環の無限ループが待ち受けています。たんぱく質不足は腸漏れの原因になり、腸漏れはたんぱく質不足の原因になるわけです。

【図表2】腸漏れから始まる悪循環
出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)

■日本人の約7割が腸漏れを起こしている?

これはあくまで推測ですが、第1回でお伝えしたように「日本人の8割以上はたんぱく質不足」ということと考え合わせると、「腸漏れの疑いあり」という人も、同程度いるのではないでしょうか。

実際に、健康産業専門紙の『ヘルスライフビジネス』(2023年5月1日発行)では、日本人の約7割は腸漏れを起こしている可能性があることが指摘され、コロナ禍のストレスにより自律神経が乱れた人が増えていることから、腸漏れを起こしている人がさらに増加している可能性にも触れられています。

ただし現在、腸漏れを調べる検査はなく、内視鏡検査でもわかりません。腸漏れの可能性を推測できるのは、IgG検査(遅延型フードアレルギー検査)、ゾヌリン検査(腸壁細胞の間に存在するたんぱく質であるゾヌリンの量を検査)、オーソモレキュラー栄養解析、腸内フローラ検査(便を検査して腸内細菌の種類や数を調べる)などです。これらはすべて自費診療の検査になります。

私たちのクリニックで行っているオーソモレキュラー栄養解析は、「分子整合栄養医学」と呼ばれるもので、血液検査によって栄養状態を解析します。そうして、解析結果の数値を分析し、その人の体の栄養状態を把握することで、必要な栄養素や不足している栄養素を見極め、最適な量を細かく調整しながら補給し、食事や生活習慣を改善して体が本来持っている力を高めていくという栄養療法に用いられます。

■腸漏れの危険度をセルフチェック

オーソモレキュラー栄養解析では、血液検査で体内のたんぱく質量に関わる数値が低いと「たんぱく質の摂取量が不足しているかもしれない」「腸漏れが起こってたんぱく質がうまく吸収されていないかもしれない」または「アレルギーの原因物質が腸から入り込んでいるかもしれない」と考えます。

いずれの検査も「腸漏れの可能性を推測する」というものなので、受ければ明確な結果がわかるというものではありません。

とはいえ「自分は腸漏れしているのか?」気になりますよね。そこで、我々が参考にしている腸漏れの危険度チェックを紹介します(図表3)。生活習慣や食習慣、体調のことなどを振り返りながらチェックしてみてください。

【図表3】手軽にできるセルフ診断「腸漏れの危険度」チェック
出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)

■おすすめは「たまごわやさしげ」食品

たんぱく質をしっかり吸収するためには腸漏れの改善が先決! ということで最後に、腸漏れ対策全般におすすめの食品をまとめて紹介しましょう。

昔から日本人は「まごわやさしい」という語呂合わせで、体にいい食品を提唱していました。ま=豆類、ご=ごまなどの種実類、わ=わかめなどの海藻類、や=野菜類、さ=魚などの魚介類、し=しいたけなどのきのこ類、い=芋類 いずれも、和食に使われる健康的な食べ物です。

私たちは、これをアレンジした腸漏れ対策食品を提案します。

名づけて「たまごわやさしげ」食品。内容は次のとおりです。

た=卵

食物繊維とビタミンC以外のすべての栄養素を含む完全栄養食品です。たんぱく質も豊富でビタミンB群も摂れます! ビタミンDも摂れるので腸漏れ対策にも最適。消化がいいのは半熟卵や温泉卵ですが、生卵でも固ゆで卵でもOK。

ま=豆類

納豆を筆頭に豆腐、味噌などをしっかり摂ると腸が喜びます。私たちは朝食では必ず納豆を1パック、豆腐とわかめをたくさん入れた味噌汁も食べるようにしています。ちなみに、納豆には「世界最強の有用菌」といわれる納豆菌が含まれています。納豆菌は、生きたまま腸に届き、腸内で食物繊維を分解して善玉菌のエサとして食べやすくしてくれるうえ、自身も腸内細菌のエサとなり、善玉菌の増殖に役立ちます。

■わかめや昆布は腸活にもぴったり

ご=ごぼう、玉ねぎ、アボカドなど(オリゴ糖を含む食材)

オリゴ糖は、乳酸菌やビフィズス菌や酪酸菌のエサになります。ごぼう、玉ねぎ、アボカドなどに比較的多く含まれているので、こまめに摂り入れましょう。

わ=わかめ、昆布、のりなどの海藻類

海藻類は酪酸菌の大好物です。不足しがちな水溶性食物繊維が豊富に含まれているので、お通じの改善、腸活にもぴったり。乾燥わかめや焼き海苔を常備して、味噌汁にたっぷり入れたり、和え物やサラダに加えるだけで、手軽に摂ることができます。

や=野菜類

キャベツ、レタスなどの葉物類、にんじん、大根などの根菜類、ブロッコリーなど、偏らずにいろいろな種類を摂り入れましょう。ビタミン類は熱に弱いものも多いので、生野菜のサラダも定期的に食べましょう。

■魚介類やきのこ類はビタミンDが豊富

さ=魚などの魚介類

動物性たんぱく質は、肉類に偏らず、魚介類もしっかり摂りましょう。特に腸漏れ対策に力を発揮するビタミンDは魚に豊富です。また、青魚にはDHAやEPAが多く含まれるので、血液をサラサラにして腸粘膜の細胞の炎症予防や改善にも力を発揮します。

し=しいたけ、きくらげなどのきのこ類

便のカサを増し便通をよくするのに欠かせない食物繊維が豊富。干ししいたけや乾燥きくらげをストックしておいて、味噌汁などに加えれば、こまめなビタミンDの摂取に役立ちます。また、生のきのこ類は太陽の光に当てることでビタミンDが増加するので、晴れた日は2~3時間天日干しにしてから料理するのがおすすめです。

げ=玄米、もち麦などの穀物類

玄米は不溶性食物繊維が豊富、もち麦は水溶性食物繊維が豊富。どちらかに偏らず、バランスよく摂り入れましょう。穀物類に含まれる食物繊維は、酪酸菌のエサになり、善玉菌を増やすのに有効です。

■簡単に作れる「納豆卵かけご飯」

「たまごわやさしげ」を覚えて、呪文のように唱えながら摂ってみましょう。これらすべてを毎日、毎食完璧に摂る必要はありません。「最近、海藻類を食べてないな」「味噌汁を飲む回数を増やしてみよう」「玄米を食べてみようかな」といった感じで、気にかけながら摂り入れていけば、自然と食習慣は改善されていくと思います。

平島徹朗、秋山祖久『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)
平島徹朗、秋山祖久『たんぱく質と腸の新常識 絶対に漏らしてはいけない新しい腸活とたんぱく質の正しい摂り方』(Gakken)

「たまごわやさしげ」に、ちょっとハードルが高いと感じた人は、図表4の「腸漏れ改善のおすすめ食品トップ3」を摂ることから始めましょう。手軽なメニューも紹介するので、試してみてください。

もちろん、好き嫌いもあると思いますので、「たまごわやさしげ」食品の中から好きなものを取り入れて、オリジナルの腸漏れ改善メニューを考案してみるのもいいでしょう。

頑張りすぎるとストレスが溜まって挫折する可能性が高くなりますから、無理なく食事を楽しんで継続してください。腸漏れ対策につながるよい食習慣が身につけば、3カ月後にはきっと腸は生まれ変わっているはずです。

【図表4】腸漏れ改善のおすすめ食品トップ3
出所=『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)、イラスト=加納徳博

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平島 徹朗(ひらしま・てつろう)
たまプラーザ南口胃腸内科クリニック院長
1973年神奈川県生まれ、大分県育ち。日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本抗加齢学会専門医。国立佐賀大学医学部卒業後、大分大学医学部附属病院消化器内科、国立がん研究センター中央病院内視鏡部などの勤務を経て、「たまプラーザ南口胃腸内科クリニック」「福岡天神内視鏡クリニック」を開設し、院長、理事長を務める。「薬の服用は最小限に、食事と生活習慣の改善が最優先」をモットーに横浜と福岡で診療を行っている。趣味はトライアスロン、筋トレ、ランニング、YouTube撮影。豆柴犬をこよなく愛す。

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秋山 祖久(あきやま・もとひさ)
福岡天神内視鏡クリニック院長
1975年佐賀県生まれ。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。中学生のころ、急性虫垂炎で入院したときの主治医のやさしさに感動し、医師を志す。長崎大学医学部卒業後、長崎大学消化器内科に入局。多くの総合病院勤務を経て、「福岡天神内視鏡クリニック」院長に就任。年間4000例以上の内視鏡検査を行っている。ビタミンDを愛し、ビタミンDの大切さを熱心に語ることから「ビタミンD先生」と呼ばれている。趣味はトライアスロン、読書、スポーツ鑑賞。早歩き通勤が日課。

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(たまプラーザ南口胃腸内科クリニック院長 平島 徹朗、福岡天神内視鏡クリニック院長 秋山 祖久)

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