説明下手は「順番を入れ替える」だけで解決する…説明がうまい人が徹底して冒頭に伝えていること
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 15時15分
※本稿は、鶴野充茂『上手に「説明できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■料理名を聞かずにレシピを並べられると大混乱に
できない人は細かいところから話す。
あなたは料理番組の案内役を任されたとします。まず最初に伝えるべきものは何でしょうか。
そう、何の料理を作るのか、ですね。はじめに具体的な料理名を紹介しない料理番組など、ありません。
しかし、今日作る料理名を明かさずに、いきなりこのように始めたらいかがでしょうか。
まず間違いなく、多くの視聴者は戸惑うでしょう。
それは、説明も同じです。何の話をしているのかを聞き手が理解しないまま細かい話を進めると、聞き手は「何の話をしているのだろう」と混乱します。
話の方向性や目的を見失って、話を聞き続けようと思う気持ちもなくなります。人によってはイライラとして、気分を悪くするかもしれません。
■全体像を見せてから詳細を伝えていく
一方、説明上手な人は、全体像から話しはじめます。先ほどの料理番組の例でいうと、このように説明します。
最初に調理が完了した料理を見せながら、何の料理を作るのかを説明するはずです。次に料理の材料を見せてから、料理の工程を大まかに説明します。
そして最後に各工程の細かい説明をするといった流れにすると、聞いている人たちもイメージしやすいはずです。
料理番組だけではなく、あらゆるシーンで全体像を見せてから詳細を伝えていく手法は使えます。
ではなぜ、全体像を説明でイメージしてもらう前に、細かいところから説明してしまうのでしょうか。
もちろん、さまざまな要因はあると思いますが、その細かいところが重要だと思い込んでいるケースが特に多いように思います。
先ほどの料理の例でいうと、玉ねぎの切り刻み方が味の決め手になるということで、それを最優先に説明しなければならないと思い込んでしまうのです。
相手にとって最も重要なものは何かを間違えてしまうと、途端に理解不能な状態になることも意識しておくといいでしょう。
■相手の頭の中に情報を理解するための枠組みをつくる
まず、説明するのなら、話の「全体像」を相手に理解してもらいましょう。
そうすることで、相手の頭の中に情報を理解するための枠組みができ、後に続く情報をどこにどう位置付けるか、関連付けるかを決められるようになります。
また、重要な情報に注意を向けやすくなるため、効率的に情報を処理して理解を深めることができるようになるのです。
最後に、どれくらい情報を正確に伝えられるかを試すゲームを紹介しましょう。
話し手にだけイラストを見せて、イラストを言葉だけで聞き手に説明して、聞き手がどれくらい正確に同じイラストを描けるかというゲームです。このゲームをすると、大枠と全体像を先に伝えたほうが、圧倒的にイラストの再現性が高まることがわかります。
聞き手の頭の中で、話し手のイメージをどのように再現するのかを意識する。そのためには、まずは全体像から伝えることが重要です。
■自身の不安から不確定要素や懸念事項を最初に伝えない
できない人はモヤモヤから話す。
説明しようにもはっきりとしていないところがあって、うまく説明できないときとか、ありませんか?
たとえば、あなたは会社の部署異動を考える人事部長としましょう。誰をどの部に異動させるか、まだ不確定要素が多い段階です。副社長から「次の幹部会議で異動の話をしてほしいんだけど、間に合うの?」と状況説明を求められたとします。
とにかく「完全には決まっていない」ということは伝えておこうと考える人は少なくありません。
というのも、説明する本人が「決まっていないこと」のモヤモヤが気になって仕方ないからです。
不確定要素や懸念事項を最初に伝えておくことで、不安を少しでも軽減したいという人もいるでしょう。または、後で批判されたり質問されたりすることから身を守りたいと、無意識に自己防衛しているのかもしれません。
しかし、自分がモヤモヤしている点から話をしても、相手はかえって状況を理解しにくくなるばかりです。不明確な情報から始めると、聞き手は全体像を把握できずに混乱します。
■まず「決定事項から順にお伝えします」と言えるか
また、話す本人もモヤモヤとした情報を最初につい口にしたことで、何が重要な情報なのか、頭を整理できずに重要な情報が埋もれてしまうことも考えられます。
不確定要素や懸念事項があると、ついそれが気になるという人も少なくないでしょう。
では、そのような場合、どうしたらいいかというと、モヤモヤではなく、クリアになっているところから話すことです。冒頭の例(人事異動)について、説明上手な人はこのようにクリアになっているところを話します。
まず、現在どのような状況なのか、クリアになっているところを説明しています。
「誰がどの部に行くかわからない」ということを伝えていませんが、聞き手はどのような状況なのかの全体像がつかめるのではないでしょうか。
「わからない」「決まっていない」などの不安を伝えたい気持ちをグッと抑えて、確定している事実を伝えるところに焦点を当ててみましょう。
■確定情報に絞って話すための3ステップ
ただ、なかなかこのようにうまく説明できないと思われるかもしれません。そういう人は、次の3ステップを意識して、情報を整理すると良いでしょう。
①情報を確定情報と未確定情報に明確に区別して、確定情報を重要度順にする
クリアになっているもので優先的に伝えるものは何かを考えます。モヤモヤしているものは後回しにするか、必要な場合のみ補足すればいいでしょう。
②話の順番を考え、最も重要で明らかな情報から始める
確定情報を見極めたら、その情報を論理的な順序(たとえば目的→現状→計画など)で並べます。ここでは、各ポイントを明確に区切って説明することが重要です。小さなことだと思いがちですが、聞き取りやすさや理解しやすさに大きな違いが出ます。
③モヤモヤに対する不安や違和感を認識しつつ、それを切り離す習慣をつける
クリアな確定情報だけでも、着実に前進することができますし、価値ある説明ができます。また、次につながる相手の協力を得ることができると捉えておくことです。
■説明上手を目指すなら常に感情コントロールする
できない人は思いをぶつける。
×「このプロジェクトの遅れは本当に許せません! みんなのやる気が足りないんです。会議で決めたことがまるでなかったかのようになっている。もっと真剣にやるべきです。」
自分の意見を伝えるとき、感情的な物言いをしてしまうと、確実に失敗します。中には、こんなことを言われて、ムッとする人も出てくるでしょう。改善につなげようとする話もむしろ協力が得られなくなってしまいます。
説明上手を目指すのなら、常に感情のコントロールができるようにしておくことです。
たとえば、説明上手は先ほどの例では、こんなふうに感情の代わりに事実をぶつけて説明します。
■「感情を抑えて説明する」3つのメリット
遅れが出ていることに、本心はイライラしているかもしれません。
しかし、説明上手な人は、その感情を抑えて説明することで、次の3つのメリットがあることを知っています。
①話の客観性
感情を抑えることで、冷静に事実や数字に基づいた情報を伝えることができます。これによって、聞き手は状況を正確に把握し、適切な判断を下すことができます。
②信頼性の向上
感情を爆発させてしまうと、周りからは「大人気ない」「感情に左右されている」と冷ややかな目で見られます。
逆に、常に冷静な態度を取ることで、「余裕がある」「感情よりも場をマネジメントする意識が強い」と印象づけ、「信頼できる人だ」と評価してもらいやすくなります。
③建設的な対話を促進する効果
感情をぶつけると、相手も冷静な判断ができなくなります。感情を抑えて建設的に話すことで、質の高いコミュニケーションが図れるようになります。
とはいえ、つい感情的になってしまうという人もいるでしょう。私の経験上、次の3つが原因となっているように思います。
一つは、ストレスです。ストレスを感じると、心に余裕が持てなくなります。
次に、関与の度合いです。その物事に深く関与していると、どうしても感情的になりがちになり、客観視できなくなります。
最後は、経験不足の場合も考えられます。未経験のものに着手するときほど、心に余裕がなくなります。
■事実に意識を向ける「ポジティブフレーミング」
では、最後に「感情的にしゃべってしまうくせ」を直す方法を紹介しましょう。
まず、話す前に深呼吸をして心を落ち着かせることです。即座に反応すると、感情のままに説明してしまいます。一呼吸置いて考える時間を作るために、深呼吸をするというのが第一歩です。
次に、「ポジティブフレーミング」の手法を覚えておきましょう。
①事実に意識を向ける習慣をつける
②可能な限り事前に情報を整理し、伝えるべきポイントを明確にする
③問題点だけでなく、解決策や改善点にも目を向ける
この流れを意識しておくと、少しずつ感情を抑えられるようになります。
もちろん、どんな人にも感情はありますし、感情を持つこと自体は間違いではありません。ただ、感情をぶつけて話すことのデメリットを肝に銘じておくことです。
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ビーンスター 代表取締役、広報アドバイザー
社会構想大学院大学客員教授、日本広報学会常任理事。コミュニケーションの専門家として、国内外数百社の経営者や政治家、医師・弁護士など専門家向けに広報アドバイザー、トレーナーとして活動するほか、東京理科大学オープンカレッジなどで説明力や文章力を高める講座を提供するなど広くビジネスパーソンに向けてコミュニケーションを教えてきた。東日本大震災後に国会内に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)でデジタル・コミュニケーションを統括、全国がん登録制度の発足時にはPR責任者を務めるなど、全国規模のコミュニケーションプログラムやPRキャンペーンにも携わる。水循環基本法フォローアップ委員会委員。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)元理事。筑波大学(心理学)、米コロンビア大学院(国際広報)卒。
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(ビーンスター 代表取締役、広報アドバイザー 鶴野 充茂)
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