「必要なときのみ」話すのは三流…顧客と連絡をとる頻度を見れば一発でわかる一流営業マンとの決定的な違い
プレジデントオンライン / 2024年11月25日 15時15分
※本稿は、鶴野充茂『上手に「説明できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■定期的かつ相手にとって価値のあるコミュニケーションを取る
できない人は用事がないと話さない。
ビジネスの世界で、こんな経験はありませんか?
契約してから1年ぶりに営業担当から電話があり、出てみると、
「山田様、契約更新の時期となりました。ご検討いただけますでしょうか?」
この一言だけで終わってしまう。
商品に不満はないけれど、1年間何の連絡もなかった営業担当に対して、どこか冷めた気持ちになってしまう。これは、説明下手な人の典型的な例です。
説明下手な人は、必要なときのみ話す機会があればいいと考えがちです。
しかし、これでは相手との関係作りを軽視していることになり、結果的に説明を受け入れてもらう難易度を高めてしまいます。
一方、説明上手な人は、定期的に顧客と接触する機会を作ります。たとえば、こんな具合です。
・1カ月後
「山田様、ご利用でご不明点などありませんか?近くまで伺う予定がありますので、ご様子をお聞かせいただければと思いますが。」
↓
・3カ月後
「山田様、お世話になっております。最近の業界動向や他社事例などご紹介できればと思いますが、ご都合はいかがですか?」
↓
・6カ月後
「山田様、先日の業界セミナーで得た新しい情報がございます。ご興味があればシェアさせていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
↓
・9カ月後
「山田様、弊社の新サービスについてフィードバックをいただきたいのですが、お時間をいただけますでしょうか?」
↓
・11カ月後
「山田様、年末のご挨拶と来年度の展望について少しお話しさせていただきたいのですが、お時間はございますか?」
このように、定期的かつ相手にとって価値のあるコミュニケーションを取ることで、顧客との信頼関係を築いていきます。
■日々の何気ないやりとりが長期的な信頼関係構築の礎に
そして、契約更新の時期が来たときには、このようなやりとりになります。
こちらとしても自然な気持ちの流れで更新の話をすることができるのです。
この方法には、心理学的な裏付けもあります。「単純接触効果」という現象で、繰り返し接触することで相手への好感度や信頼度が高まるというものです。また、「返報性(互恵性)の法則」により、価値ある情報を提供し続けることで、相手も何かを返したいと思うようになります。
説明上手な人は、こうした心理学的効果を理解あるいは実感した上で、計画的に関係構築を行っています。日々の何気ないやりとりが、実は長期的な信頼関係構築の礎になることがよくわかっているからです。
定期的にやりとりをしていると、相手の状況に変化が起きていることを知ることができます。変化は新しいニーズが生まれるきっかけでもあります。そこに立ち会うこと自体が良い関係を作るきっかけにもなっているのです。
■相手の意見を聞こうとしない姿勢はただのマイナス
できない人はミスを防ごうとする。
一通り説明した後、相手から否定的なことを言われたり、批判されたりするのではないかと、怖くなることはありますか?
特に、失敗したと思われたくないといった完璧主義な人や自分に自信がない人は、そのような否定的なフィードバックを恐れているように思います。
また、説明する前に、しっかりと考えて準備して臨んでいるだけに、厳しいことを言われると「自分を認めてもらえなかった」と感じる人もいるかもしれません。中には、他者の意見を受け入れることへの抵抗感を持っている人もいます。
ここで、一例をあげましょう。
チームミーティングで、社内のある問題の解決策について話し合っているとします。
「これが唯一の解決策です。これ以上の議論は不要だと思います。」
これは自分の考えに自信がある、しかし説明下手な人の例です。
相手から何か言われることをミスや失敗だと考えて、「これ以上の議論は不要」と説明を終わらせようとしています。
当人としては、十分考え尽くした思いでいっぱいなのでしょう。
しかし、相手の意見を聞こうとしない姿勢によって、結果的に聞き手が心を閉ざしてしまい、話の通じ方にも関係性にもマイナスにつながります。
■ミスや失敗の捉え方が180度違う
また、いろいろな視点で見ると、まだまだ詰めが甘い点があるかもしれません。チームミーティングが終わった後、詰めるべきところが詰められていないことが発覚した場合、再度ミーティングを設定することになったら、時間がもったいないですよね。
一方、説明上手な人はこう伝えます。
説明がうまくいくときというのは、良いものであれ悪いものであれ、何らかの相手からの反応があるものだと知っているため、途中で反対されたり批判されたりすることを怖がることはありません。
むしろ、内容面もより完成度が高くなることにつながるので、相手からのフィードバックを積極的に求めます。
「ご意見、ありますか?」と対話を心がけて、フィードバックを引き出していくのです。
つまり、説明が上手な人とそうでない人とでは、ミスや失敗の捉え方が180度違うのです。
■良いアイデアは自分一人では作れない
説明下手な人は批判をされると、「ああ、あの部分、もっと詰めておいたほうがよかった」と失敗したととらえてしまいます。
「私はなんて物事の見方が甘いんだ」と思う人もいれば、「あの指摘はピントが外れている」と相手が間違っていると思う人もいるかもしれません。
いずれにしても、改善案を活かす発想がないという面で、同じタイプと言えるでしょう。
説明上手な人が、批判をもらうことでさらに内容が充実すると考えるのとは対照的です。
まずは良いアイデアは自分一人では作れないと理解する。その上で、謙虚さをもちながら相手の意見を受け入れるようにしましょう。否定的なフィードバックを受け入れるようになるには、感情のコントロールも不可欠です。
そして、指摘されることは学びの機会であることを心に留めておくことです。
■相手のペースに合わせて、理解度を段階的に確認
できない人は一度でたくさんの確認をする。
ビジネスの現場で、こんな経験はありませんか?
新入社員の教育を任されて、最後にこう尋ねてしまう。
「業務フロー、システム操作、社内規則、顧客対応マニュアルについて、すべて理解できましたか? 順番に説明してみてください。」
この質問を受けた新入社員は、きっと頭が真っ白になってしまうでしょう。これは、明らかに説明下手な人の典型的な例です。
説明下手な人は、一度にたくさんの確認をしようとします。聞くべき内容を忘れまいと、まずは質問としてあげて相手に投げかけるのです。しかし、これでは相手に過度なプレッシャーをかけてしまいます。
また、相手の理解度を正確に把握することも難しくなります。さらに、自分の理解度や記憶力を過信している可能性もあります。
一方、説明上手な人はこう尋ねます。
ぜひこの表現の違いはもちろん、発想の違いに意識を向けてもらいたいと思います。
説明上手な人は、ひとつずつ確認をします。
これにより、話を相手のペースに合わせられ、理解度を段階的に確認できます。必要に応じて説明を補足することも可能で、相手が質問しやすい雰囲気も作れます。
■手間がかかりそうだが、実際は時間もストレスも少なく済む
たとえば、業務フローの確認が終わったら、次にこう続けます。
「システム操作について、特に難しいと感じた部分はありますか? 実際に操作しながら確認してみましょう。」
このように、一つひとつ丁寧に確認していくことで、相手の理解度を正確に把握し、必要な支援を提供することができるのです。
そんな手間のかかる聞き方は面倒だ、と思いますか?
しかし、実際にやってみるとわかりますが、これが結果的に、時間もストレスも少なく済むことが多くなるはずです。相手に合わせて、もっと大雑把な質問でも大丈夫な相手だとわかれば、調整していけば良いだけなのです。
まずここで大切なのは、情報を小分けにして優先順位をつけ、段階的に確認をしていくことです。また、相手の理解度や反応を見ながら進める柔軟性も重要です。状況に応じて確認の順序や内容を調整できるようにしましょう。
さらに、相手の立場に立って不安や負担を軽減する姿勢も心がけたいものです。相手が自由に答えたり、質問できる余地を作ることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
また、必要に応じて後日再確認の機会を設けることも忘れずに。
■「いつでも聞いてくださいね」で効果的なコミュニケーションに
たとえば、こんな風に伝えてみましょう。
このようなアプローチをとることで、やりとりがフレンドリーな雰囲気で進められ、良好な関係性を保ちながら、効果的なコミュニケーションが可能になります。
勘のいい相手なら、どんどんスピードアップできるはずです。段階を踏むことでその見極めも楽になります。
誰かに何かを確認する機会があれば、一度にたくさんの質問をするのではなく、少しずつ確認していく方法を試してみてください。
きっと、その相手のことが、より解像度高く見えてくることに気付くはずです。
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ビーンスター 代表取締役、広報アドバイザー
社会構想大学院大学客員教授、日本広報学会常任理事。コミュニケーションの専門家として、国内外数百社の経営者や政治家、医師・弁護士など専門家向けに広報アドバイザー、トレーナーとして活動するほか、東京理科大学オープンカレッジなどで説明力や文章力を高める講座を提供するなど広くビジネスパーソンに向けてコミュニケーションを教えてきた。東日本大震災後に国会内に設置された東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)でデジタル・コミュニケーションを統括、全国がん登録制度の発足時にはPR責任者を務めるなど、全国規模のコミュニケーションプログラムやPRキャンペーンにも携わる。水循環基本法フォローアップ委員会委員。公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会(PRSJ)元理事。筑波大学(心理学)、米コロンビア大学院(国際広報)卒。
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(ビーンスター 代表取締役、広報アドバイザー 鶴野 充茂)
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