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「新NISAを今すぐ解約して二度と手を出すな」という森永卓郎さんが唯一持ち続ける"例外銘柄"の種類

プレジデントオンライン / 2024年11月28日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

いまある資産は、老後生活に向けてどう振り分けるべきか。経済ジャーナリストの森永卓郎さんは「株価が乱高下する最近の状況は、バブル崩壊の前兆だ。一度バブル崩壊が始まると、株価の下落は長期間続き、投資が可能な資産の価格は、軒並み下落していく。新NISAの口座はいますぐ解約して、二度と投資に手を出さないことが、老後生活を守るカギであり、最も重要な生前整理だ」という――。

※本稿は、森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館)の一部を再編集したものです。

■「資産はすべて金庫の中にある」という思い込み

亡き父の資産整理で体験した相続地獄について続けて話そう。

父は「預金や株式はあちこちにある」と言っていたので、私は父の資産をあぶり出すことから始めたのだが、初めの一歩で激しく出鼻をくじかれた。

まず出向いたのは父のメインバンクだ。父は銀行から貸金庫を借りていて、私も金庫の鍵を開けられるように手続きをしてくれていた。だから、金庫を開ければ通帳など、父の資産に関するものがすべてあると思い込んでいたのだ。

ところが金庫の中に入っていたのは、大学の卒業証書や思い出の写真といった資産とは無関係のものばかりで、唯一金目のものといえば、現在でも100円ほどの価値しかない第一回東京オリンピックの100円銀貨だけだった。

貸金庫事件のあと、私は高田馬場の実家にこもって、リビングに山積みになっていた郵送物の中から金融機関からのものを探し出す作業に取り組んだ。

父が脳出血になって以来、私が実家に定期的に行ってポストの中の郵送物を取り出すようになった。そうしないとポストが溢れ、空き巣の標的にされかねないからだ。

リビングに積まれていたのは、私がポストから取り出して投げ入れた郵送物の山だった。溜まった郵送物を一つひとつチェックしていくのは、気の遠くなるような作業だった。

■役所手続きから本格的な相続地獄へ

こうして父の口座がある可能性のある金融機関を絞り込み、銀行や証券会社などに連絡をして父の口座はないかと問い合わせていったのだが、ここからいよいよ本格的な相続地獄へと突入していく。

情報開示のためには、所定の手続き書類の提出に加えて、相続人全員の合意書と、父が生まれてから死ぬまでに戸籍を置いたすべての市役所の戸籍謄本が必要なのだ。なぜすべての戸籍謄本が必要なのかといえば、隠し子の存在を把握するためだという。

「親父に限って隠し子なんてありえない」と言ったところで通用しない。

しかし自分が生まれる前に親がどこに住んでいて、あるいは小さな頃にどこからどこへ移り住んでいたかをきちんと把握している人がどれほどいるだろうか。

父は佐賀県の出身だったのだが、私が佐賀の役所に出向くのは難しいし、旅費もかかる。そこで父が過去に戸籍を置いていた自治体に電話をかけた。

すると「郵便小為替と返信用封筒を同封して、役所に申請書を提出してください」と言う。

しかも全国統一のフォーマットはないので、父が暮らしていたと思われる自治体に一つずつ申請方法を問い合わせ、いちいち別の文書を作成しなければいけないという不合理を強いられた。

さらに言えば、当時は郵送でのやりとりという方法しかなく、役所から返信が届くまでに早くても1週間はかかる。作業は遅々として進まなかった。

■遺産相続の信じがたい壁

父は戦争中には東京の文京区に戸籍を置いていたが、文京区の役所が空襲で焼け、その時に焼けてしまった戸籍は残っていないという壁にもぶつかった。

文京区時代の戸籍は存在しないのだから取り寄せようもない。

そこで文京区の戸籍が欠けたまま金融機関へ書類を持ち込んだところ、「文京区の役所が焼けて戸籍がないという証明書を提出してください」と言われた。

ところが役所に戸籍謄本焼失証明の書式はないという。

そこで幾度も足を運び、どうしたらよいものかと相談しているうちに、1カ月近くたって、ようやく戸籍謄本焼失証明に準ずる書類を発行してくれた。

結局のところ、父は頻繁に本籍を移していたこともあり、生まれてから死ぬまでのすべての戸籍謄本を揃えるという作業だけで3カ月以上の期間を要した。

契約
写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

戸籍謄本問題を乗り越え、ようやく父の持つすべての口座を把握できたと思ったのは、父の死から6カ月後だ。

東日本大震災のあとメディアは一斉に自粛した。

それに伴い私の仕事も次々にキャンセルになっていた時期だったので、何とかやり遂げることができたが、通常だったら、10カ月という申告期限に間に合わなかっただろう。

■10年以上、取引が行われていない口座は休眠口座に

膨大な労力を費やした末に、次々と父の口座を把握していくことができ、全部で数千万円の預金があることがわかった。

ただ、なかには苦労してつきとめた通帳に700円しか入っていないということもあった。

銀行員に「この通帳、どうなさいますか」と尋ねられた私は、咄嗟に椅子から立ち上がり、「放棄します」と言って、銀行を立ち去った。

筆舌に尽くしがたいほどの苦労をもってしても、父が持っていたすべての口座がみつかったかどうかは藪の中だ。

父の死後、業者に依頼して行った遺品整理の荷物に通帳が紛れていた可能性も否めない。

銀行は10年以上、取引が行われていない口座を休眠口座とみなす。

その総額は850億円にのぼるという。

もちろん口座の持ち主や遺族からの請求があれば払い戻しに応じるが、現実的に払い戻されるのは350億円程度で、残りの500億円は政府に納付される。

知らぬが仏とはいえ、事実上、相続税で100パーセント持っていかれるのと同じことだ。

父の遺産整理では煮え湯を飲まされた。

ただ人生に無駄はないと今になってつくづく思う。

相続地獄の経験がなければ遺産整理を甘く見ていただろう。

私の死後、家族を同じ目に遭わせるわけにはいかないという想いも生まれなかったはずだ。

私は父の遺産整理が終わるや否や、自分の預金口座、証券口座リスト作りを開始した。

【図表1】資産リストを作成する
出所=『身辺整理 死ぬまでにやること』

リストはパソコンのハードディスクに保存していたのだが、数年前に私のパソコンのハードディスクが突然死してしまうという事件も起きた。

妻のパソコンにバックアップしてあったので事なきを得たが、今にして思えば、リスト自体が使い物にならない代物だった。

■預金口座の一本化にかかる多大な労力と時間

がんになってから私がまず挑んだのは、預金口座の一本化だ。

リストを作成してあるからと安易に考えていたのだが、これが大変な作業だった。

口座と通帳と印鑑。ネット口座の場合は暗証番号が完璧に揃っていないと、本人でさえ金を引き出すのは極めて難しい。

どう難しいのかと言うと、数々の手続きを踏まねばならず、労力と時間がかかるのだ。

一本化を実際にやってみると、時代の変化を強く感じた。

【図表2】預金口座は一本化する
出所=『身辺整理 死ぬまでにやること』

父が亡くなった13年前と今とで一番大きく変化したのは金融機関におけるシステムだ。

わかりやすく言うと、父の時は思い立ったタイミングで銀行の店舗へ出向くと銀行員が対応してくれたが、今は完全予約制。

この予約はWEBから行う必要がある。しかも予約が取れるのが、1週間とか2週間先になることもある。

だから、手続きにとてつもない時間がかかるのだ。

予約ができて、銀行へ出向く日が決まっても安心するのはまだ早い。

私の場合、思わぬ壁に直面した。

昔は銀行で口座を開設した時に使用した印影が通帳に載っていたが、今はセキュリティ対策で、通帳自体に印影を残さなくなった。そのため、どの通帳にどの印を使ったのかわからなくなっていたのだ。ちなみに我が家には印鑑が11本もあった。

■経験から伝えたい「資産整理の2つのポイント」

この場合、可能性のある印鑑を銀行で一つずつ試してみるしかないのだが、ここで注意すべきは思い込みだ。

思い込みとは怖いもので、こんな猫ちゃんのイラストの入った印鑑を通帳に使用するはずがないと候補から外して銀行に出かけたことがあった。最終的には、そのイラスト入りの印鑑が通帳印だった。

どうしてもわからないという時は印鑑変更をする必要があるのだが、同じ「銀行」というカテゴリーであっても、本人確認が必要だと身分証明の提示を求められるところもあれば、求められないところもある。すぐにやってくれるところもあれば、何日もかかるところもある。

【図版】どの印鑑なのか?
どの印鑑なのか?(出所=『身辺整理 死ぬまでにやること』)

忍耐力も求められる。

私は2024年6月にすべての銀行回りの手続きを終えた。だが、ただ一つ、暗証番号がわからなくなってしまったネットバンクが残っていて、ここは、暗証番号を変更できるまで、4週間もかかった。

ここで私の経験から資産整理のポイントを伝えると、

①資産リストは金融機関名と資産内容だけでなく、通帳の保管場所、その通帳で口座を開いた時に使った印鑑、暗証番号をセットとして捉え、資産リストを完璧にしておくこと。
②通帳を一本化する場合には、思いのほか時間がかかることを考慮したうえで、なるべく早い段階で動き始めること。

この2点を守ることが必須だと思う。

■最近の株価乱高下は、バブル崩壊の前兆である

私には、銀行とは別に証券会社との取引もあった。

ただ、私はもうすぐバブルが崩壊して株価が暴落すると判断しているので、株式に関しては数年前から少しずつ処分を進めていた。

最近は株価が乱高下するようになっているが、これはバブル崩壊の前兆だ。

一度バブル崩壊が始まると、株価の下落は長期間続く。例えば1929年のニューヨークダウ下落は3年近く続き、株価は8割以上下落した。1989年末から始まった日本の株価暴落は9年近く続き、この時も株価は8割以上下落した。

新NISAが始まって、世界株やアメリカ株の投資信託に、すでに国民のお金が10兆円も流れている。

しかし、そうした投資は、カネをドブに捨てるようなものだ。バブル崩壊にともなって株価が大幅に下落するだけでなく、今後の円高も加わって、投資資産の価値が9割以上棄損するとみられるからだ。

このところ続いている円安は、日米金利差が原因だとか、日本の国力低下が原因だと、いい加減なことを言う「経済の専門家」が多いが、それは真っ赤なウソだ。

為替レートは、単に通貨の交換比率で、一時的には投機によって相場が大きく変動するが、長期的にみると、同じものが同じ価格で買える「購買力平価」に落ち着いていく。

■今後とてつもない円高が待ち受けている理由

IMF(国際通貨基金)が2024年の世界経済見通しのなかで明らかにした円ドル為替の購買力平価は91円だ。

つまり、今後、とてつもない円高が待ち受けていることになるのだ。

だから、私は最近、「日経平均株価は3000円まで下落する可能性が高い」という警告をずっと続けてきた。

だが、誰も聞く耳を持ってくれない。40年前にバブル到来を警告したのに誰も聞いてくれなかったのと同じ状況がいま起きている。

実は、私が40年以上ずっと追いかけてきた研究テーマは、「人はなぜ狂うのか」ということだ。バブル期には陶酔的熱狂(ユーフォリア)と呼ばれる状態に多くの人が陥る。

1630年代のオランダでは、チューリップの球根一つに数千万円の価格がついた。それでも、誰もおかしいと思わない。

いまも、例えばエヌビディアという半導体メーカー1社の時価総額が、日本のGDPと肩を並べるようになっても、誰もおかしいと思わない。

東京23区の新築マンションの平均分譲価格が1億円を超えても、誰もおかしいと思わない。しかし、その過剰な評価は、ある日突然、音を立てて崩れていく。

しかも、そのときは、株価や不動産価格だけでなく、暗号資産や穀物や原油など、投資が可能な資産の価格は、軒並み下落していく。

値下がりしないのは、現金と借金だけだ。

■最優先の生前整理は、新NISAの解約と投資からの撤退

だから、新NISAの口座はいますぐ解約して、二度と投資に手を出してはならない。

それが、老後生活を守るカギであり、最も重要な生前整理になるのだ。

森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館)
森永卓郎『身辺整理 死ぬまでにやること』(興陽館)

ただ、株は買うより売るほうが100倍難しい。

特に上げ相場の時はどんどん値段が上がっていくので、保持してしまいがちだ。私自身も過去最高値の更新が続く中、決断が鈍っていた。

結局のところ、私は2024年7月12日に株主優待がどうしても必要な株を除いて、すべての株や外貨資産を売却した。

なぜ優待のある株を残したのかと言うと、たとえば玩具メーカーであるタカラトミーの株を持っていると、年に一度、オリジナルの「トミカ」と「リカちゃん」が送られてくる。それをB宝館に展示しているので、どうしても必要なのだ。

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森永 卓郎(もりなが・たくろう)
経済アナリスト、獨協大学経済学部教授
1957年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業。専門は労働経済学と計量経済学。著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』『グリコのおもちゃ図鑑』『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』『なぜ日本経済は後手に回るのか』などがある。

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(経済アナリスト、獨協大学経済学部教授 森永 卓郎)

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