「ちなみに」を多用する人は要注意…周囲から「いまその話いる?」と思われる人の典型パターン
プレジデントオンライン / 2024年11月27日 17時15分
※本稿は、石田一洋『あなたの話はきちんと伝わっていますか?』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■聞き手とイメージを共有できないとエラーが起こる
突然ですが、質問です。
頭の中で「一匹の犬」を思い浮かべてください。
……
さて、あなたが思い浮かべたのはどんな犬でしょうか?
ある人は柴犬かもしれないし、ある人はチワワかもしれません。
また別の人は、トイプードル、ポメラニアン、ブルドッグ……など、犬種、大きさ、毛色など、人によって思い浮かべた犬は異なるはずです。
待ち合わせをするとき、「集合時間にちょっと遅れます」と言う人がいます。
この「ちょっと」はどのくらいをイメージしますか?
5分でしょうか?
10分でしょうか?
「ちょっと」というのは、人によって解釈が異なります。
自分では5分だと思っていても、人によっては10分かもしれません。
同じ言葉でも、イメージする映像やそこから連想する感覚は人によって違います。
相手の頭の中とズレが生じないように、固有名詞や数字を使うなどして解像度を高めた説明を心がけましょう。
■男女、年代、キャリアなどの違いで言葉の受け止め方は違う
極端な話、男性と女性という違いだけで言葉の受け止め方は大きく異なります。
脳科学の視点から男女の考え方の違いを解説した黒川伊保子さんの『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(ともに講談社)などがベストセラーになりましたが、同じ言葉、同じ話し方でも男女で伝わり方が全く違います。
すれ違いが生じるのは、ある意味避けられないことなのかもしれません。
男女だけではなく、年代、キャリア、部署などの違いによっても、少なからず理解度にギャップは出てきます。
それぞれがすでに持っている情報量によって、「説明に含まれる言葉の周辺情報を補って理解する力」には大きな差が生じます。
家族や恋人、同じ部署の同僚であれば、自分のことをよく分かってくれているので、言葉足らずになっても、聞き手が想像力を働かせて、理解に努めてくれるでしょう。
基本的に、日常会話では自分と周りの人との前提が似通っているから伝わるのです。
それに気づかずに、ビジネスシーンでも初対面にもかかわらず前提を合わせずに説明不足のトークをする人は少なくありません。
ただし、日常会話でもお互いの前提が揃っていなければ、とたんに話が噛み合わなくなることもあります。
■顔と名前がすぐに浮かばない「ママ友の話題」
私がついていけない会話の一つに、妻によるママ友の話題があります。
○○君のママ、○○ちゃんのママ、というように、子どもの名前で説明されるママ友コミュニティは、私には無限に登場人物が出てきているように聞こえます。
子どもの名前が次々と登場してくるため、誰が誰だかよく分からないまま苦笑いで話を聞くしかありません。
きっと妻の頭の中には、それぞれの人物が明確に描かれているのでしょう。
しかし、私があまり面識がない子どもやママ友については、名前を聞いても顔や関係がすぐには思い浮かびません。
それでも、妻が悪気なくその日の出来事について喋り続けるのを聞いていると、前提条件を揃えることの大切さを実感します。
■説明で「絶対に」「必ず」はタブーワード
話の価値は聞き手が判断するものです。
子どものためを思って「将来のためにも絶対勉強したほうがいいよ」と一生懸命伝えても、子どもにとっては大きなお世話かもしれません。
子どもに限らず、話を聞いてもらえないときにやってはいけないのは、「絶対に」「必ず」「なんとしても」などの言葉を使うことです。
これらの言葉に含まれる過剰なプレッシャーは、説明をどんどん高圧的に変えてしまいます。
テレビの制作現場は個々の主観がぶつかり合うため、意見の食い違いがひんぱんに起こります。歴戦のプロデューサー、構成作家、新進気鋭のディレクター、そして自己主張の激しい出演者など、アイデア勝負の猛者たちの意見はそれぞれ十分に根拠があって、どれを採用するのか難しい場面もあります。
正解も不正解もないだけに、各々が自分の意見だけに固執すると現場が紛糾します。
そんなときには、まず他人の意見をポジティブに評価します。「もし相手の意見を採用したらどうなるか」を頭でシミュレーションしてみるのです。
また、自分の意見が聞き入れられないときには、自己否定されたと思わないことも重要です。
建設的な話し合いの場にするためにも、「他人の意見をよりブラッシュアップするにはどうしたらいいだろうか?」という意識を持ちましょう。
そうすることで、自分の意見と比較しながら客観視するきっかけになりますし、まず他人の話をしっかり聞くことで、自分の話も聞いてもらえるようになるのです。
■やってはいけない典型的な3パターンの説明
まれに、説明を「自分のプライドを満たすためのツール」にしてしまう人がいます。
説明で守らなければいけないのは、「聞き手にとって分かりやすい」ことです。
自分のプライドを満たそうとした途端、分かりやすい説明から遠ざかってしまいます。
次の典型的な3つのタイプに当てはまっていないか確認していきましょう。
①経験談や過去の結果を自慢する
1つ目は、やり方やノウハウを教えてくれるだけでいいのに、いつの間にか自分語りに話がすり替わってしまっている次のようなタイプです。
このような過去の経験談は、役に立つことも多いので、話してはいけないわけではありません。
しかし、全く関係ない場面で自分語りをしてしまうと、話が長くなるだけでなく、要点がかすんでしまいます。
何より、エピソードトークはイメージが湧きやすいため、聞き手の記憶に残りやすいのです。
本来覚えなければいけない要点よりも、余談であるエピソードトークのほうが記憶に残ってしまうことになり、説明の目的を果たすことができなくなります。
■ゴールは聞き手に説明の内容を理解してもらうこと
②知識や専門用語を使って尊敬を集めようとする
2つ目は、「ちなみに」「余談ですが」「そういえば」といった言葉を起点に、自分の知識をここぞとばかりに展開してしまうタイプです。
思わず、「いまその話いる?」と突っ込みたくなります。
説明の流れと関係なく、余談や補足のようにして、自分の知識を披露してきます。
似たようなタイプで、簡単な言葉で説明できる話を、あえて難しい言葉を選んで使っている人もいます。
同じ業界内で専門用語を使うならまだしも、別業界の人がいる状況でも使い、挙句の果てには、「あ、ごめん。○○って言われても分からないですよね?」と言っている人を見ると、なんとも残念な気持ちになります。
自分の仕事に誇りを持っている裏返しなのかもしれませんが、説明する上では不要です。
「シンプルな言葉を使うと、レベルが低いと思われるかも……」と不安に思って無理に難しい言葉を使おうとする人がいます。
しかし、説明の目的は、自分の印象を良くすることではありません。
聞き手に説明の内容を理解してもらうことです。
ゴールを見失わないように注意しましょう。
そもそも、難しい言葉や専門知識で印象が良くなると思っていることが間違いです。
むしろイメージダウンにつながると思ったほうがよいでしょう。
■頑張ったことより、まずは結論・結果を話す
③頑張ったアピールをする
3つ目は仕事の提案や報告をする場面などで、自分の努力を認めてほしいあまり、頑張った話を真っ先に話してしまうタイプです。
聞き手からすると、まずは結論や結果が知りたいのです。
一番知りたい内容を聞くまで、話の内容は頭に入ってきません。
また、結果が出ていないときに限って、そのプロセスの努力だけでも評価してほしいと熱弁をふるう人もいるのですが、聞いているほうは冷めるだけです。
あくまで、頑張ったかどうかの評価は他人がするものと考えて控えましょう。
ここまで読んで、「自分は大丈夫!」と思われたかもしれません。
しかし、かなり多くの人が、気づかないうちにいずれかのタイプの説明をしています。
人はそのくらい自己承認欲求が強い生き物なのです。
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関西テレビ放送アナウンサー
広島県出身、2002年早稲田大学商学部卒業。RKB毎日放送を経て2014年から現職プロ野球日本シリーズや、競馬G1、大阪国際女子マラソンなど全国ネットのスポーツ中継のほか、番組MCやリポーター、ニュース、ラジオパーソナリティ、ナレーション、司会と幅広く担当。アナウンスメントやドキュメンタリー制作のコンテスト優勝、受賞歴多数。第10回全国講師オーディションではグランプリを獲得。学校や企業研修では、「伝わる説明の技術」や「人を動かす伝え方」を中心に、「アサーティブコミュニケーション」「獲れる採用説明会の作り方」などを指導している。
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(関西テレビ放送アナウンサー 石田 一洋)
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