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「片づけなさい」よりずっと効果的…"片づけの苦手な子ども"が本当に変わった母たちの言い換えフレーズ

プレジデントオンライン / 2024年11月27日 10時45分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Inna Kandybka

子どもに片づけをできるようになってほしい……そう願う親は多い。お片づけ習慣化コンサルタントの西崎彩智さんは「私は中高生に『片づけ』のワークショップをやることもあるが、最初生徒たちは『片づけは苦手』『片づけをする時間がない』と言う。しかし、今まで『片づけ=叱られながら嫌々やるもの』と思っていた子たちも、片づけのメリットがわかるようになると、がぜん興味が湧くようだ」という――。

※本稿は、西崎彩智『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■子どもへの「片づけなさい」がダメなわけ

多くの親が子どもに対して「片づけができるようになってほしい」と思っています。でも片づけって、「大きくなれば自然にできるようになる」というものでもないんですね。やはり片づけって親の背中を見て学ぶことが大きいです。

いつも部屋の中がぐちゃぐちゃの中で育ったのであれば片づけ方は学べないし、モノの置き場所がきちんと決められていない家であれば「片づけなさい」と言われてもどう片づけていいのかわかりません。

しかも、中学生、高校生になり親からの自立が進むと、一緒にいる時間が減る上に、思春期は日常のコミュニケーションも難しくなります。「もっと小さい頃に片づけを教えるべきだった」というのは多くの親御さんがおっしゃいます。

でも、お子さんが今何歳であっても諦めるのは早いです! 今日が子どもにとって一番若い年齢ですし(もちろん、私たちもですが)、もし今親御さんが片づけに真剣に向き合おうとしているなら、その姿にお子さんは刺激を受けるはずです。

片づけを学ぶことで“自律した生活”を送れる力が身につきます。

時間通りに起きられない、自分の荷物も片づけられない、家のことも何もできないという大人では、たとえ立派な大学や会社に入っても生活や仕事をしていく上で困ることが多くなります。

ですから一日でも早く、子どもたち自身に片づけることの重要性、メリットを伝え、実践していくことが大事だと思っています。

・忘れ物をしない整理整頓された部屋を維持する力
・受験勉強するときに自分でプリントやノートを整理する力
・部活などで忙しくても勉強する気になる環境をつくる力
・やりたいことをやるための時間管理能力

これらの力も、“自律した生活”で身につきます。

■まずは片づけの目的を話そう

私は中高生に「片づけ」のワークショップをやることもあるのですが、最初は生徒たちは「片づけは苦手」「片づけをする時間がない」と言います。

そこで、実際に生徒たちに1日の時間の使い方を書き出してもらうこともあります。そうすると結構スキマ時間やムダに過ごしている時間があることがわかります。その時間を活用すれば、さっと片づけもできるし、効率的に時間が使えることがわかるんですね。

片づけはモノをしまうだけでなく

●必要なモノをすぐに取り出せて生活や勉強がしやすい環境をつくることが大事であること
●片づけは時間管理と密接に関係があること

を話すと、みな納得した顔になります。

今まで「片づけ=叱られながら嫌々やるもの」と思っていた子たちも、片づけのメリットがリアルにわかるようになると、がぜん興味が湧くようです。

■子供の自信をなくさせる「親のNGフレーズ」

ここで気をつけたいのは、片づけをしてほしいことを子どもに伝えるときは「期待」でなく「希望」で伝えること。「いつまでに○○を片づけてね!」と「期待」を押しつけてしまう親御さんは多いと思いますが、どんな小さな子どもでも自分の意思があります。

自分が「やる」と選択するまで待つことも大事。そこを待てなくてどんどん親が片づけてしまうと、いつになっても子どもの片づける力はつきません。

また、子どもなりに一生懸命片づけをしたのに、「なんでこんなにぐちゃぐちゃなの?」「なんでこんなに捨てるの?」とダメだしをしてしまう親御さんも要注意。

子どもが自分の基準で片づけたものにダメだしをしてしまうと、子どもは自分自身の判断に自信がなくなってしまいます。親御さん自身の価値観とは違ってもそこは目を瞑り、できないことにフォーカスをするのではなく、できたことを見つけてほめるのが鉄則です。

実際に受講生のひとり、44歳のリーナさんは「子どもの頃、母親が私のぐちゃぐちゃな机の中身を全部出して『片づけなさい!』と怒ったことがありました。どうしていいかわからずに泣きながら元に戻していたのを覚えています」と語っていて、そこから44歳になるまで片づけられないコンプレックスを抱え続けたそうです。

そんなリーナさんですが、一念発起し、自分で考えて、自分たちの暮らしやすさを考えながらモノの定位置を決めていくと、あるべき場所が自然とわかってきたそうです。すっかり部屋がキレイになったあと、「以前、母が片づけてくれたことがあり、しっくりこなくてすぐ散らかってしまいました。自分で考えながら片づけたら、こんなにも暮らしやすいのかとビックリ!」と語ってくれました。

次に紹介するイズミさんも、イライラする気持ちをぶつけるように怒鳴っているうちは、子どもが片づけることはなかったようです。しかし、怒鳴るのをやめて声かけを変えたことで、子どもが自ら片づけるように変化したといいます。

■自分でも怖いくらいの声を出していた

4歳と1歳の子どもを育てるイズミさんは、毎日自分でも怖いくらいの声を出して、子どもに怒鳴っていました。

「朝の準備が遅かったり、床に散らかっているミニカーを踏んだり、スイッチが入るきっかけはさまざま。よくないとはわかっているんですけど、子どもに怒って、自分も落ち込んで、ということをくり返していました」

何かあると、長男に対してイライラをぶつけてしまいます。冷静になってから「あんなに怒ることじゃなかったな」と反省したのも、一度や二度ではありません。

夫は単身赴任で2~4週間に1回ほど帰ってくる生活。基本的にワンオペで家事・育児をこなしています。

マンションから一軒家に引っ越したときは、とりあえず生活できるように整えただけ。きれいな家で暮らしたいと思いながらも、リビングはおもちゃが散らかり放題、ダイニングテーブルはモノが置きっぱなし。掃除をしようと思っても、片づけから始めなければいけないのでそこまでたどりつきません。

本当は怒りたくないのに怒ってしまうため、自己嫌悪や精神的な疲労も蓄積されて、イズミさんは負のループに陥っていました。

「もしかすると、部屋が散らかっていることがイライラの原因なのかも」と思い、忙しいながらも片づけてみることにしました。

週5日のパートに加えて家事・育児に時間を取られる中、活用したのがタイマーです。「10分だけ時間がある」と思ったら、タイマーをかけて片づけをスタート。棚の引き出し一つ分だけなどできるのは部分的ですが、これが積み重なって着実に家の中のモノが減っていきました。

お母さんと息子
写真=iStock.com/diignat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/diignat

長男に『ママ、家が散らかっていると心がザワザワするんだ』って話したんです。すると、少しずつですが、片づける日を決めて自分で片づけてくれるようになりました! ほめたり、『ありがとう』って伝えたりすると、うれしそうにしてくれて」

■モノを捨てられない息子を変えた声かけ

イズミさんは声かけも工夫しました。

たくさんのおもちゃを手放したくない長男に、「使っていないおもちゃが入っているこの箱がなくなったら、新しいおもちゃが一つ置けるね」と、モノを手放すメリットをちゃんと話すように。

結果、古いおもちゃを大量に手放すことができ、長男は大好きなおもちゃを一つ手に入れて、イズミさんも長男も大喜び。

こうして家の中がきれいになるにつれて、イズミさんの怒鳴り声が家から消えました。叱ることはありますが、大きな声を出さなくなり、子どもが文句を言ってきても「今はそういう気分なんだね」と受け止めてあげられるように。

「環境って大切なんですね。きれいな部屋の中だと、怒っている自分が不釣り合いに思えてきたんです。片づけが終わってから毎日お花を飾っているんですけど、『きれいなお花がある場所でイライラしている私って、どうなの?』って(笑)」

お花は、お店で長男と一緒に「どれがいい? せーので言ってみよう」と選んで買っています。今では、「今度はいつ行く?」と2人の楽しみにもなっています。

もうすぐ夫の単身赴任が終わります。そのときには、家の中を見直してもう一度片づける予定です。

【図表1】イズミさんの片づけbefore/after
出所=『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』
【図表2】イズミさんの片づけbefore/after
出所=『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』
◎西崎さんコメント
家族に「片づけて」という前に「自分はどういう暮らしをしたいのか」「こんなところを助けてほしい」と正直に伝えてみましょう。お子さんがたとえ小さくても、きちんと話せば意外と伝わるものです。

もうひとりの片づけ事例を紹介します。お子さんの不登校に悩んでいた、千春さんの事例です。

■片づくと子どもへの対応にも「余裕」が…

「真ん中の子が、小学4年生の2学期から体調を崩して登校できなくなって。原因は学校のストレスでした。うちの子に起きたことがショックで、そのときは受け止めきれなかった」

当時を振り返る千春さんは、時短勤務で働く3人の子どものママ。子どもを気づかい、仕事と家事の傍ら、検査入院など療養を優先しました。体がよくなれば学校へ行けるだろうと願いながら。

「年が明けて回復はしたけど、パワーが十分じゃなくて。学校へ行く怖さや、周囲の目を気にして本人は不安だったんです。でも、私は『もう行けるんじゃないの?』と思ってしまった」

親として言って聞かせなければと、言い方がきつくなることも。暗中模索でした。

視点が変わったのは、不登校の事例が書かれた書籍と出合ったとき。親の不安や焦りみたいな感情が子どもに伝わっているのだろうかと、自身に目を向け始めました。これまで家事に仕事に追われて殺気立ち、さらに不用品だらけの部屋でイライラ。

西崎彩智『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)
西崎彩智『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)

そこで、SNSのミニマリストの部屋を参考に、片づけ始めます。収納は、戸建ての理想の6割収納にしました。下の子は、寝る前に片づけるママを見て、おもちゃを自分で片づける習慣ができました。自分だけ頑張らなくても家が整うように。

家事の負担が減ると、子どもへの対応にも変化が。

「ありのままを受け止められるというか。『勉強イヤや』ってときは『そうやんな。体育と図工だけやったらいいのにな』とか、余裕がある感じです。年末には、家の中がだいぶスッキリしていました。真ん中の子は、年明けに学校へ行けるかなと思っていたら『行く』と言ってくれました」

家族みんなが心にゆとりを持てるようになったようです。

【図表3】千春さんの片づけbefore/after
出所=『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』
【図表4】千春さんの片づけbefore/after
出所=『人生が変わる 片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』

■子どもの「自分はできる」という意識をつくる

ある心理学者の方が、自己肯定感が低い子には掃除をさせるといいと言っていた記事を読んだことがありますが、全く同感です。掃除も片づけ同様、自分がやった成果を目で確認することができますし、どんなに短い時間でもやれば必ず結果にあらわれます。

片づけと自己肯定感は関連があります。

私自身、片づけができていないときは自己肯定感が下がっていました。仕事から帰ってきたときに散らかった部屋を見ることは自分のダメな部分を突きつけられるのと同じですから、自己肯定感が上がるはずがありません。

5分でも10分でもやれば、「あ、今日これ私が片づけたんだ」と「自分でできたんだ」という成果を確認することができ、これが自己肯定感を上げることにつながります。

子どもの意識も「自分はできる」という意識に変わると、だんだん当たり前のように片づけができるようになります。

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西崎 彩智(にしざき・さち)
お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表
1967年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、住宅メーカーのインテリアコーディネータとして従事。結婚し、20年専業主婦を経験したが離婚。その後はヨガスタジオの店長としてスタジオに通う多くの女性のさまざまな相談に応じる。2015年、得意の片づけを生かして起業。お片づけ習慣化講座「家庭力アッププロジェクト」修了生は全国で3000名を上回る。

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(お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表 西崎 彩智)

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